山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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シリウス「革命だっ!!」マック「はぁ......?」

 

 

 

 

 トレセン学園に記者が押し掛けてきた日の夜。今まで生きてきた中で想像もつかない事態を良い方向で終わらせる事の出来たことで、私は安心して布団の中で目を瞑る事が出来た。

 

 

シリウス(.........全く、帰ってきてそうそう、こうもバタバタしてると実感なんて湧きやしねぇ)

 

 

 呆れながらも、昔の甘いだけじゃない空間。レースとはまた違う刺激のある毎日が、色んな経験として身体の中に蓄積されて行く感覚はあった。

 それが果たして良いものか悪いものなのかはまだ判別はついて居ないが、少なくともなんの身にもならないよりはマシだと思っている。

 

 

 そして一日の振り返りはやがて、あの映像に移り変わる。一人の男があの滅茶苦茶な三人を相手にどつき回す動画。その男に、私は見覚えがあった。

 

 

シリウス(まさかとは思っていたが、やっぱり空港で会った奴だったのか.........)

 

 

シリウス「.........[桜木 玲皇]、ねぇ」

 

 

 不思議な奴だった。最初に会った時は覇気など感じなかったのに、あの映像を見れば確かに、どんな出来事もなんとでもしてくれるような雰囲気を感じ取ることが出来た。

 

 

 アイツがもし、あの時私が感じた居心地の悪い学園を変え、刺激に溢れながらも他の奴らも楽しめ、そして成長出来る場所に変えた存在だったら.........一度この目で、本物の[桜木 玲皇]と対面願いたいもんだ。

 

 

シリウス(.........ハっ、何を思ってんだが、状況がおかしすぎたせいで、どうせ次会っても最初とそう変わんねぇだろ)

 

 

 私もアイツらの様に毒されてきたのかもしれない。そんな自分に自嘲しながらも、それでもどこか期待をしている自分がいる。

 果たして桜木とかいうトレーナーが、どんな奴なのか.........その期待を胸に秘めつつ、私は意識をゆっくりと眠りに沈めて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「.........」ボー...

 

 

ゴルシ「お〜い、マックイーン〜?」

 

 

マック「.........?」

 

 

ゴルシ「ダメだこりゃ、完全に頭のブレインのスイーツエネルギーが枯渇しちまってるぜ」

 

 

 アタシは両手を広げて、タキオン達の方に完全にダメだって事を伝える。そんな姿を見てもマックイーンは何も言わず、窓の外。空の方にまた目線を移した。

 

 

タキオン「かれこれもう一週間はこんな調子なんだ。君ならと思ってみたが.........」

 

 

テイオー「いや〜、ボクもこんなマックイーン初めてだよ〜.........」

 

 

カフェ「何かに取り憑かれてるかも知れないとタキオンさんに言われて来ましたが.........そういう訳でも無いですね.........」

 

 

ゴルシ「.........あっ.........いや、やめとこ。それやったら命がマジで足りなくなる」

 

 

 一瞬、マックイーンを強く反応させる方法を思い付いたけど、直ぐにそれを実行に移すのは辞めた。それは一瞬で嘘だってバレちまうし、バレた後が滅茶苦茶怖ぇー。多分無限一機アップしても足りねー。

 流石におっちゃんが帰ってきた〜、なんて言った日にゃ終わりだぜ。ホントだったら良いんだけどよ。

 

 

タキオン「ふむ.........何か他にいい手は.........」

 

 

テイオー「.........あっ!そうだ!!」

 

 

 何か妙案を思い付いたテイオーは、これしかないという笑いをアタシらに見せた後、意気揚々とマックイーンの方に向かって行った。

 最初は小手調べと言ったところか、他愛も無い会話から始まったが、アタシの時と違ってマックイーンは応対してやがる。なんでだ。ふざけるなよ。泣いちゃうだろ。

 そしてその雑談に手応えを感じたテイオーはトドメと言わんばかりに、大きな声で話し掛けた。

 

 

テイオー「そういえばさマックイーンっ!!今年はWBCがあったよね!!!」

 

 

二人(あっ!!その手があったか〜!!!)

 

 

カフェ「?」

 

 

 嬉々とした表情で王手を打ったテイオー。それを聞いたアタシとタキオンはしてやられた。と思った。カフェの奴は何が何だか分からねー感じだけど、まぁ仕方ない。

 なんせマックイーンは大が何個着いても足りねーくらいの野球好きだ。その話題を分かち合える相手が目の前にいると来たらそら、ベラベラとすぐに喋り出すに決まって.........

 

 

マック「.........」

 

 

テイオー「.........あれ?」

 

 

マック「W.........BC.........あぁ、[そんな催し]も有りましたわね.........」

 

 

マック「すっかり忘れていましたわ.........」

 

 

三人「う、嘘だ.........!!?」

 

 

 その時アタシらに電流。いや、天候雨の雷が空を飛んでるアタシらにぶち当たる。マジでそれくらいの衝撃が走った。まさかあのマックイーンが.........WBCの存在すら.........忘れていただなんて.........!!!

 

 

ゴルシ「もうダメだぁ.........おしまいだぁ.........」

 

 

タキオン「私の中で.........決定的な可能性が切れてしまったよ.........」

 

 

テイオー「野球の話が出来ないマックイーンなんて.........そんなのメジロじゃないマックイーンの方がマシだよ.........!!!」

 

 

カフェ「それはちょっと酷すぎると思うんですけど.........」

 

 

 帰っていいですか?という視線をアタシ達に向けてくるカフェ。そんな突き刺さる物を無視しながら、アタシらは床に両手を着いた。もう.........マックイーンの気を持ち直させる手段は.........無い.........!!!

 

 

ゴルシ「.........つーかさーっ!!そもそもこんなんおっちゃんが帰ってくりゃ良いだけの話じゃねーかッッ!!!」

 

 

タキオン「それを私達がどうにも出来ないからこうなってるんだ」

 

 

ゴルシ「んだとー!!?アタシは事実を言ってるだけじゃねーか!!!じ・じ・つ・をっ!!!」

 

 

タキオン「私は出来るか出来ないかの話をしているんだ!!君に出来るんだったら是非お願いしたいねぇ!!!さぁ今すぐトレーナーくんをここに呼んできてくれたまえよ!!!」

 

 

 

 

 

カフェ「.........喧嘩が始まりましたね」

 

 

テイオー「気にしなくていいよ。あの二人も結構こんな感じになるから」

 

 

カフェ「帰っていいですか?」

 

 

 ―――ボク達の目の前で喧嘩が始まって、それを流し目で見守る。まぁサブトレーナー達みたいに取っ組み合いになる事なんて無いから、そこはあんしんだけどね。

 マックイーンは相変わらず我関せずって感じで窓の外を見ている。結構激しめの口論になってるんだけど、本当に気にしてない。こんなマックイーン、初めて見たよ.........

 

 

テイオー「ねぇ、本当になんか取り付いて無いの〜?」

 

 

カフェ「はい......そうなってたら私の[お友達]も退治してやるって意気込んでたのですが.........反応は無いので.........」

 

 

テイオー「.........はぁ〜、やっぱりサブトレーナーを待つしか無いのかな〜?」

 

 

 ゴルシが帰ってきて、もう二週間は経ってる。ゴルシは直ぐに帰ってくるぜ。なんて言ってたけど、日が経つにつれてその自信もふにゃふにゃになってって、最終的にはその話を聞いても逆ギレされるレベルになっちゃってる。

 せっかく、チーム[スピカ:レグルス]のメンバーがトレーニングに打ち込める様になったのに、肝心のエースのマックイーンがこんな調子じゃ元も子も無いよ〜.........

 

 

 ボクは肩を落として、この状況をどうしようかと頑張って考えていると、不意に廊下の方から慌ただしい音と声が聞こえて来た。

 

 

「待って欲しいっス〜!!今シリウス先輩マジヤバっスから!!出ない方が身のためっスよー!!」

 

 

「うるせェ。アタシは今ようやく、自分が本当にやるべき事が分かったんだ。口出しするな」

 

 

「頼むっ!!アタシらが悪かった!!まさか飲み物一杯でこうなるとは思わなかったんだよ!!」

 

 

 その騒がしさはどんどんこっちに近付いてきて、最終的にその騒がしさを引き連れたままチームルームのドアが開いた。

 そしてそこに立っていたのは、シリウスだった。

 

 

シリウス「よう」

 

 

タキオン「?何かあったのかい?トレーニングの時間はまだの筈だが.........」

 

 

シリウス「トレーニング?はッ、良くもそんな事を抜け抜けと言えたもんだなァ?問題児ども」

 

 

マック「.........」ピクッ

 

 

 刺々しい言葉を口にしながら、ボク達を値踏みするような目で観察するシリウス。元々シリウスはこんな感じだったからボク達はあまり気にしなかったけど、ここに来てマックイーンが少し反応を示した。

 

 

カフェ「あの、タキオンさんとゴールドシップさんはともかく.........その、まるで私達まで含められている言い方は.........」

 

 

シリウス「事実だろ?テメェら揃いも揃って腑抜けてんだよ。まっ、それはこのチームだけに限った話じゃねぇけどな」

 

 

テイオー「もー!!どうしちゃったのさーシリウスー!!最近優しくなったかと思ったのにー!!」

 

 

 あんまりに強い言葉をぶつけてくるシリウスに、ボクは思わず立ち上がって怒った。確かに海外遠征に行く前はこんな感じで、カイチョーとか、ボクを含めたカイチョーを目標にして頑張ってる子に言ってきた事もあったけど、最近は応援してくれる様になったって言うのに.........

 けれど、そんなボクの言葉が気に入らなかったのか、シリウスはさっきまでの余裕そうな笑顔を無くして、ボクを睨み付けてきた。

 

 

シリウス「.........そうだな。確かに甘ちゃんになっちまってたみてぇだ」

 

 

シリウス「お前みたいな.........いや。今の日本に居るウマ娘共がこんなんでG1、か」

 

 

ゴルシ「.........おい。何が言いてぇんだ?」

 

 

シリウス「分かんねぇのか?読解力がねぇなぁ.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そもそも、コイツに[三冠バ]の重みは分からねぇっつってんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タキオン「ッッ.........!!!君は何を―――」

 

 

 

 

 

 ―――言っているんだ。そう言おうとした時、この場の空気が変わった。[二つ]の怒りの感情を中心とした渦が吹き荒れているのが、手に取るようにわかった。

 一つはマックイーンくんの。そしてもう一つは、オルフェーヴルくんの物だった。

 

 

マック「[重み].........ですって?」

 

 

マック「理解して居ないのは、貴女の方で無くて?」

 

 

フェスタ「おば、マックイーン!!悪かった!!シリウスはこんな事言いたくて言ってる訳じゃ.........」

 

 

オル「[三冠バ]の重みなんて、なった人にしか分からないよ?分からない事は、口出ししない方が良いんじゃないかな?」

 

 

フェスタ「オルフェ!!!」

 

 

 目の前で何とも不思議な展開が繰り広げられている。マックイーンくんとオルフェくんが並び立ち、シリウスくんと睨み合っている。その間を諌めるように、フェスタくんが間に割って入っている。

 

 

ゴルシ「.........そもそも、なんでこうなったんだよ」

 

 

シリウス「.........フッ、私も求めたのさ。会長殿と[同じ力]を、な」

 

 

タキオン「なっ.........!!?まさか、感情刺激薬を持ち出したのかい!!?」

 

 

オル「.........ごめんなさい。シリウス先輩が興味を持っちゃって、あの方向性なら、レースで勝てれば何とかなると思ったんだけど.........」

 

 

フェスタ「.........とんだ思想家が、眠ってたみてーだ」

 

 

 .........なんという事だ。あの薬は今は既に厳重保管の措置を施し、一滴より先は絶対に服用しないよう心掛けている.........それを、飲ませてしまっただなんて.........!!!

 ネタばらしを済ませて気を付ける必要も無くなったのか、彼女はその身に[青白い炎]を纏い始めた。そう、[ヘル化]の炎だ。例えどんな些細な勝負事だろうと、精神的なダメージが肉体に直接届く程の現実改変を起こせてしまう状態.........

 しかし、そんな姿を見てもマックイーンくんは動じること無く、そのまま真っ直ぐとシリウスくんを見つめて口を開いた。

 

 

マック「.........それで?貴女のやりたい事は何です?まさか、ただ単にそのお口の悪さを披露しに来た訳では無いのでしょう?」

 

 

シリウス「ハンっ、そんなもん決まってんだろ.........?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――革命だっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員「」

 

 

 声高らかに、そしてその表情は極限までのシリアスさを持って彼女はそう宣言した。その言葉を聞いた私達は、思わず絶句した。

 

 

ゴルシ「.........Revolution」

 

 

タキオン「やめろォ!!!折角想像しないようにしていたと言うのにッッ!!!」

 

 

フェスタ「ゼーンサーイ」

 

 

カフェ「.........生徒会長が黙っていませんね」

 

 

タキオン「カフェ!!?まさか君もなのかい!!?」

 

 

 にやり。とした表情を一瞬見せた後、カフェもまるで乗っかるかのようにそう呟いた。やめてくれカフェ。その言葉は私に効く。

 しかし、当の本人はそんな私達の様子など全く気にした様子はなく、私達の反応に困惑しているマックイーンくんとテイオーくんの方へと睨みをきかせている。

 

 

シリウス「お前らも変だと思わねぇか?こんな空気で、レースの時だけ気を張るなんて。そんなのどこかで絶対無理が来る」

 

 

シリウス「だから私はこのトレセン学園を変える.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は、[生徒会長]になる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員(何言ってんだコイツ)

 

 

 あまりの発言に冷や汗が頬を伝う。痛いなんて物じゃない。もう、なんかこう.........苦しい。笑い事にすら出来ないくらい彼女は重体だ。早く何とかしなければ行けない。

 

 

マック「せ、生徒会長って.........ルドルフさんはどうするんですの?」

 

 

シリウス「ルドルフはもうダメだ。[あんな男]に絆されてるようじゃ、頂点には立っては行けねぇ」

 

 

マック「.........なんですって?」

 

 

 あんな男。彼女の言うその存在とはきっと、私達のトレーナーくんの事だろう。それを貶す様な発言が、またマックイーンくんの逆鱗を撫でるように刺激する。

 それに気圧されることなく、むしろ楽しそうな表情を、彼女はマックイーンくんに見せ付けるように表した。

 

 

シリウス「そうだろ?一人きりで出て行って、お前ら全員置いてけぼり。やってる事は独り善がりのヒーローごっこだ。そういうのはガキの頃に卒業するもんだろ」

 

 

マック「.........」

 

 

シリウス「そんな男に絆されて、影響を受けて、待ってんのはまた同じ結末だと思うけどな」

 

 

 その言葉に心は込められて居ない。だが、そんな何の気なしに言ってきたから、それが彼を見る人が見た時の風評だと感じ、余計に胸が苦しくなる。

 絆されて、影響を受ける。それはそうだろう。ここに居る者達はほとんど、彼の影響を受けている。

 そしてそのせいで、一時破滅の道を歩み掛けた。それは何とか時の運で回避する事が出来たが.........もし次、同じような事が起こってしまえば.........

 

 

マック「―――せん」

 

 

シリウス「.........あ?」

 

 

マック「有り得ない。と言ったのです」

 

 

タキオン「ま、マックイーンくん.........?」

 

 

 その顔を伏せ、影を顔に作らせながら、彼女はそう言った。車椅子の肘掛の上で両手の拳を握り、力強く震わせている。普段から感情豊かな彼女を見ていたが、こんなにも怒った姿を見るのは、初めてかも知れない。

 

 

マック「絆された。影響を受けた。ダメになった。それは結局、貴女が今の私達を見た事による主観でしかありません」

 

 

マック「変化は常に起こります。何かに追いやられ、追い詰められ、どうしようも無く、仕方無く、息付く暇も無く、生き抜く為に何かを捨て、何かを得る選択を余儀無くされます」

 

 

マック「.........けれど私達は、そんな変わり方をした訳ではありません」

 

 

マック「行き詰まり、壁が見え、広い世界を知らず、空に囲われ、宙に放り出され、目移りする世界の中で.........」

 

 

マック「彼は、手を差し伸べてくれた.........私達はその手を、掴んだだけですわ」

 

 

 淡々と、しかしその言葉一つ一つに重みを乗せて、彼女は声を紡いだ。凛とした表情のまま、彼女は真っ直ぐとシリウスくんの顔を射抜くように見定めている。

 それを聞き、これ以上の論争は無駄だと察したシリウスくんは肩を竦めて首を振る。そして呆れた様な溜息を吐いた。

 

 

シリウス「.........まぁいいさ。今日の所はただ宣言しに来ただけだ。私はもうお前らには関わらない」

 

 

シリウス「これから生徒会長殿に宣戦布告しに行くんでね。非日常を届ける邪魔者はさっさと「待ちなさい」―――?」

 

 

 私達のことなどもう気にも止めること無く、彼女はその扉に手を掛けて教室の中から出て行こうとした。そしてそれを止める声が、マックイーンくんから発せられる。

 私達の視線が一斉にマックイーンくんに集中する。そんな中でも彼女はそれを気にする様子も無く、ただひたすらにシリウスくんだけをその目に捉えていた。

 

 

マック「それも気に入りません。[私達]が貴女に今[宣戦布告]を叩き付けます」

 

 

全員「.........えぇ!!?」

 

 

シリウス「.........ふぅん?」

 

 

 唐突な宣戦布告。そして寄りにもよってここで主語を大きくしてきてくれた。君、多分自覚は無いかも知れないが、大分彼の巻き込み方に似てきてるよ?

 しかし、そんな言葉に興味を示したのか、一度外に出掛けた足をもう一度教室の中へと戻し、シリウスくんは戻ってきた。

 

 

シリウス「別にいいぜ?けどどうすんだ。お前の足はこの有様だぜ?」

 

 

マック「ええ。本来ならばレースで、芝3200mの長距離でコテンパンにしてあげたかった所ですが、それは出来ません」

 

 

テイオー(ねぇねぇ。マックイーンって案外大人気なくない?)

 

 

タキオン(ストレスが溜まってるんだろうね)

 

 

ゴルシ(ストレスねー。そいえば最近スイーツも喉も通らなくてライスに横流ししてる見てーだぜ?やべーよな)

 

 

カフェ(それは.........本当に重体ですね.........)

 

 

マック「野球で勝負ですわ」

 

 

全員「なんて?」

 

 

 なん、いやな、なんて?彼女は今なんて言ったんだい?野球!!?なんでそんな一体一とは程遠いスポーツをわざわざ選んだんだい!!?

 ほら見ろ!!!あまりの予想外さにシリウスくんも戻ってきているぞ!!!折角シリアスくんに戻っていたのに!!!

 

 

マック「最近WBCがあったでしょう?」

 

 

シリウス「あ、ああ.........それが?」

 

 

マック「私見てませんの」

 

 

シリウス「.........それだけ?」

 

 

マック「ええ」

 

 

ゴルシ「おい誰かマジで糖分用意してくれ。マックイーンが壊れてる」

 

 

 む、無茶苦茶だ.........まさかスイーツを食べていないマックイーンくんがこんなにおかしくなるだなんて.........この酷さは夏の猛暑日のトレーナーくんに匹敵する酷さだぞ.........

 

 

マック「勝負は一日後ですわ」

 

 

テイオー「ちょっと早すぎじゃない!!?」

 

 

マック「勿論メンバーを集めきれなかった場合は不戦敗です」

 

 

オル「り、理不尽だ.........」

 

 

マック「私のチームエントリーは既に六人ですから.........」

 

 

全員(頭数に入れられてる.........!!?)

 

 

 そのあまりの強引さに、思わず私達は震え上がった。そういえばアグネス家に代々伝わる家訓があった。[メジロが怒ってる所に居合わせるな]、と.........アレはこういう意味だったのか.........

 普段の彼女であれば、あの一連の言葉だけで済んだと思うが、今は食欲不振とトレーナーくん不在によるストレスの板挟み状態。早急に脱出を図らなければ.........

 

 

タキオン「あ、あ〜。そういえば明日は実家のお茶会があったんだっ「キャンセルの連絡を入れますわね」(絶句)」

 

 

テイオー「ぼ、ボクウマインフルエンザの予防「掛かれば良いじゃないですかそんなの」そんなの!!?」

 

 

ゴルシ「ア「あ?」ぁ...わぁ.........(泣)」

 

 

マック「.........全員参加らしいですわ」ニコ

 

 

全員(悪魔だ)

 

 

 思い出した。家訓はもう一つあった。[メジロからは逃れられない]だ。なんてことだ。もう助からないぞ。

 一人残らずこの場にいる全員、マックイーンくんのチームに入る者たちは絶望した。涙を流し、ある者は両手を床に着き、ある者は天井を見上げた。

 そんな中で、私達を何故か憐れむように見る存在が居た。シリウスくんだ。その視線に少し経って気付いた私達は一斉に彼女に私怨の念を込めた視線をぶつけた。

 

 

マック「う〜ん。後は先発と中継ぎと抑え.........控えに数人でしょうか.........」

 

 

フェスタ「そんなに必要なのか!!?」

 

 

マック「は?まさかフェスタさん。貴女野球が九人ポッキリで出来る様な甘い。スイーツの様なスポーツだと思ってるんですの?」

 

 

フェスタ「この度はただの小娘である筈の私が軽い発言をしてしまい大変申し訳ございませんでした」

 

 

 先程までシリウスくんに向けていた圧が可愛く感じてしまう程の物をフェスタくんに向けるマックイーンくん。その結果彼女は育ちの良さが分かってしまう程の謝罪を披露した。

 あ、頭が.........いや最早頭痛が痛い.........真夏日の彼を相手にした時だってもっとマシだった筈なのだが.........これが糖分不足の影響なのか.........!!?

 

 

マック「.........まぁ、必要な取り決めはこの辺でいいでしょう」

 

 

シリウス「は、ハンっ。良いぜ。乗ってやるよその勝負。数なんざ私が声をかけりゃ直ぐにでも」

 

 

マック「あっ、開催名目はどうしましょうか?」

 

 

シリウス「おいッッ!!!」

 

 

 冷や汗をかきながらも余裕さを出そうとしたシリウスくんだったが、それを無視するようにマックイーンくんはまた人差し指をこめかみに当て考えを深め始めた。もうこうなったら誰にも止められない。

 私達も最早止める事は考えず、事態がこれ以上悪化する事ないよう務めるしかない。その思いひとつで、私達の結束はより深まった。

 

 

シリウス「ふ、ふざけんじゃねぇ.........!!!私はなァ!!!お前らのそう言う主体性の無さが気に入らねぇっつってんだよ!!!」

 

 

マック「?おかしな人ですわね.........主体性が無い方が貴女にとって都合がいいのではありませんか?仲良しこよしのぬるま湯がお嫌いなんでしょう?」

 

 

シリウス「なっ、ぐ.........っ」

 

 

 至極真っ当な正論をあまり頭の回っていないマックイーンくんに叩き付けられ、彼女は呻き声を上げる。ヘル化の影響で精神ダメージは表に現れるため、さっきの一言は相当図星だったようだ。

 そしてその言葉に何も言い返せなかった彼女は汚い言葉を一言吐き捨て、今度こそ教室を後にする。勿論その言葉も、マックイーンくんには届いてすら居ない。

 

 

マック「う〜ん.........折角ですから、何かの記念としてのイベントにしたいですわね.........」

 

 

テイオー(なんかさ、ここまで来ると逆に可哀想だよね.........シリウス)

 

 

タキオン(ああ.........寧ろ勝って欲しいまである.........)

 

 

フェスタ(良くこんなのと結婚したな.........爺さん.........)

 

 

オル(フェスタちゃん!!?そんな事言っちゃダメっスよ!!!)

 

 

ゴルシ(けど怖かったのは確かだしな.........だろ?ニューヨークウイスキー)

 

 

カフェ(マンハッタンカフェです.........)

 

 

 次いつどんな無茶を要求されるか溜まったものじゃない中で、私達はヒソヒソと己の心境を語り合う。普段の彼女の前ならば絶対に出来ない行為だが、私達の声に反応を示しずらい今なら耳にすら入らないだろう.........

 そう思いながら徐々に彼女から距離を取っていたのだが.........

 

 

マック「―――思い付きましたわ!!」

 

 

全員「!!」ビクッ

 

 

マック「思えば今日は記念日です。これしかもう思いつきませんでしたが、きっと皆さん納得して下さいます.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「[トレーナーさんが居なくなってしまって二ヶ月目記念イベント].........ですわ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 良い名前を思い付いた。そんな様子で彼女はルンルン気分であったが、傍から見てしまえばもう、それはそれは何と悲しい記念な事か.........

 久々にはしゃいでお腹が空いてきたと言い、彼女は自分で車椅子を動かして教室を出て行く。私達はその後ろ姿をただ、涙を流しながら見送る事しか出来なかった。

 

 

タキオン「ま、マックイーンくん.........」

 

 

ゴルシ「おっちゃんが居なくなっちまうと.........こうなっちまうんだな.........」

 

 

オル「ばあばの時と違って.........絶対帰って来ないって言えない分.........ストレスが半端ないのかもしれないっス.........」

 

 

フェスタ「あんな婆さん.........見たくなかった.........」

 

 

カフェ「何と言いますか.........健気に待ち続けた結果がこれだと思うと.........やるせないですね.........」

 

 

テイオー「うん.........でも、もうこう思うしか無いよね.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(お願いだから早く帰ってきて.........!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 壊れかけた。いや、既にもう壊れているのかもしれない彼女の姿を思い出しながらも、私達はそうさせた元凶にそう願わざるを得なかった。

 早く帰ってきて欲しい。早く彼女を元の[メジロマックイーン]に戻して欲しい。そんな願いを込めながら、私達もこの教室を後にするのだった.........

 

 

 

 

 

......To be continued

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