山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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T「メジロ家専属トレーナーになりました」ラモーヌ「嘘は嫌いよ」

 

 

 

 

 

 晴れ渡る空。広がる太陽の光。まるでこれからの俺の物語がそうなると言うように、世界は全てを祝福してくれていた。

 

 

桜木「ん〜.........!完治!!!」

 

 

 最後の試練を終え、川が流れる中で気絶していた俺は、[ある人]によって引き上げられた。

 その後、エディの検診を受けて全治二週間の打撲と診断されてから、ずっとあの森の家で療養していたのだ。

 

 

エディ「.........おい」

 

 

桜木「ん?」

 

 

エディ「貴様の愛バと同じ[繋靭帯炎]の気があるルビィを連れて行くのは分かる。だが何故私まで日本に行く事になっている?」

 

 

 荷物を転がしながら歩いていると、俺達の前を通せんぼするかのようにエディの爺さんがにゅっと視界の端から現れた。

 それを聞いた俺達はまたか、と呆れ果て、流石の爺やさんも面倒臭そうにある人達の方へ向いた。

 

 

「ちょっとパパ!皆で決めたじゃない!!桜木くんの愛バを治せるのなら、ウチの子もきっと治せるから日本に行こうって!!」

 

 

「そうですマイファーザー!!パールもこう言っているのですよ!!!」

 

 

桜木「言ってやれトニー!!!」

 

 

「No!!!My name is ジミー!!!」

 

 

 通せんぼする爺さんを通せんぼする二人。そう、この人達こそ、川で溺れた俺を助けてくれた張本人。デトロイトで世話になったパールさんとジミーその人だ。

 縁というのは不思議な物で、パールさんは爺さんの娘さん。そしてルビィちゃんのフルネームはクレセントルビィ。こうして相関図が分かって見れば、確かに面影がある。

 

 

ルビィ「おじいちゃん。一緒に行こ?」

 

 

エディ「.........むぅ」

 

 

桜木「おいおい。可愛い可愛い孫娘のお願いくらい聞いてやれよ。老い先短ぇんだからさ」

 

 

ナリブ「アンタ、偶にとんでもなく失礼だよな」

 

 

 爺さんのキッとした眼光と、ブっさんの呆れた様な目が俺に突き刺さるがさして問題は無い。なぜならそんな物、物の一日程度で回復出来るからだ。

 

 

桜木「まっ、こんな所でうだうだしてないでさっさと行こうぜ!チケットももう買ってあるし、後は飛行機乗るだけだしさ!」

 

 

主治医「嬉しそうですね。桜木様」

 

 

桜木「あったりまえじゃ〜ん主治医〜。なんせもうすぐ〜、マックイーンに会えんだからさ〜!」

 

 

ナリブ「.........アイツ、あんなキャラだったか?」

 

 

爺や「恐らく、お嬢様と会えない時間が長すぎてストレスがオーバーフローを起こしているのでしょう.........」

 

 

 お可哀想に.........なんて言葉を呟き、静かに泣きながらハンカチで目元を抑える爺やさん。それすらももう何も効かない。俺には何も通用しない。

 そう。後は飛行機に乗るだけ.........それだけで日本に帰れて、俺はもう一度、トレセン学園でトレーナーが出来る.........彼女達とまた、日常を過ごせる.........

 

 

 そんな思いで、俺達はそれぞれの思いを胸に、日本へと向かったのだった.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう思っていた時期が私にもありました。

 

 

 端的に言おう。日本へは帰れた。長いフライトを終え、成田空港へと着いた俺は直ぐにトレセン学園に向かおうとして費用なんて気にせずタクシーを電話で呼ぼうとした。

 

 

 しかし、それを爺やさんに止められて連れられた先は、また滑走路だった。

 

 

桜木「.........あの、爺やさん?俺トレセン学園に向かいたいんですけど.........?」

 

 

爺や「何を仰っておられるのです?約束いたしましたでしょう?」

 

 

桜木「約束?」

 

 

主治医「桜木様にはもう一度トレーナー試験を受けて頂きます」

 

 

桜木「oh.........」

 

 

 な ん と い う こ と で し ょ う

 

 

 爺やさんが受けた試練。それは英国トレセンのトレーナーになるための試験だった。爺やさんは見事合格し、試練を乗り越える事が出来たが、俺は問題を見ても分からんかった。

 そしてそれを見たメジロ家従者二人は絶句し、ブっさんは俺に罵声を浴びせてきた。あの時確かに、メジロ家に行って勉強しろと言われた気がする.........

 

 

桜木「ま、ままま待て待て待て!!!メジロ家ってアレだろ!!?トレセンから車で20分位の豪邸だろ!!?あそこに滑走路なんて無かったけど!!?」

 

 

爺や「これから向かわれますはメジロの総本家。北海道の羊蹄山でございます」

 

 

桜木「は!!?俺マックイーンからあそこが実家だって聞いたんだけど!!?」

 

 

爺や「お嬢様.........!私共が居る場所こそ実家だと.........未だに言って下さって居たのですね.........!!!」

 

 

 何故かマックイーンから聞いた情報を伝えた瞬間。爺やさんは感極まって泣き始めてしまった。なんなんだこの人。情緒が激しすぎる.........

 俺はもう爺やさんは頼れないと思い、代わりに主治医の方へ説明を促す為の視線を向けた。

 

 

主治医「現在のメジロ家は確かに、府中にあるあの御屋敷が拠点となっております」

 

 

主治医「しかし大奥様の生まれ、もといメジロ家の本家は羊蹄山の麓なのです」

 

 

主治医「今現役で活躍なさっているマックイーンお嬢様を始め、多くのメジロのウマ娘達が安心出来るよう、大奥様は今府中に身を置いている次第でございます」

 

 

桜木「な、なるほど.........?」

 

 

 そ、それなら確かに納得が行く説明だ。一家の大黒柱が普段住んでいるのならそれは最早実家に違いない.........

 だ、だがそれでもまだ疑問の余地はある!!!俺はそこを突くだけだ!!!

 

 

桜木「異議ありっ!!俺は兎も角として、無関係なパールさん達はまずトレセン学園に行かせてやらないか!!?」

 

 

爺や「ご安心下さい。現在本家の方は観光施設として機能しており、数多くの美術品が展示されております。貴方も北海道生まれなら知っておられるでしょう?」

 

 

桜木「へぇ!!?そ、そうなの!!?」

 

 

 し、知らなかった.........マックイーンからはメジロは結構幅広く事業展開しているとは聞いていたけど、まさか北海道の観光スポットとして名を馳せていたとは.........まぁ俺が貧乏人って事もあるだろうけども。

 いや、それでも納得が行かない!!!それでパールさん達が良し行くかなんてなる訳が―――

 

 

パール「まぁ!美術品ですってルビィ!!」

 

 

ルビィ「すっごーい!!ねっねっ、私見に行きたい!!」

 

 

ジミー「HAHAHA!ルビィは昔っから美術館が好きだねぇ!」

 

 

桜木「なん.........だと.........?」

 

 

 な、なんということだ.........か、感情論にすがりついた結果.........その感情論に裏切られてしまった.........こ、これではもう、どうする事もできやしない.........

 絶望に染まる心の中。もう希望などどこを探しても無い。そう思っていた俺の肩を、誰かの優しい手が乗せられた。

 

 

桜木「っ、ありがとう。慰めてくれ―――」

 

 

エディ「Don't worry. Be happy(^^)」

 

 

桜木「」

 

 

 振り返ったそこには、どす黒い太陽と言っても過言では無い笑顔をしたクソジジイが、俺を嘲笑って居た.........

 結局俺はトレセン学園に帰ることは出来ず、まさかの北海道へ突然の里帰りをする事になったのだった.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「.........」

 

 

 煌びやかな内装。歴史を感じる空気。自然と人工物が柔和する匂い。それらを感じながら、俺はそのメジロの本家の廊下を歩いていた。

 

 

『随分不服そうね?』

 

 

桜木(当たり前だろ。こっちはマックイーン達にようやく会えると思ってたのに.........期待を裏切られたぜ)

 

 

 チャーター便とか言う、人の人生で一度でも乗れれば幸運な乗り物に乗せられ、北海道へと降り立ち、最初の一日目はこの本家で食事をして就寝についた。

 二日目については昼過ぎから俺に教えてくれる人がみっちり着くという話で、その前だったら自由にしていいと言われている。

 

 

『でも、本当に凄いわね。やっぱりメジロってとんでもないわ』

 

 

桜木(そうだね.........俺もここに来て改めて実感させられるよ.........ん?)

 

 

 どれもこれも高価な美術品なのだろう。展示パネルの説明には16世紀のフランスだの18世紀のイタリアだのと、その絵が描かれた背景が説明されている。

 そんな中で一つ。俺の目を引く大きな絵があった。所出は不明と説明があり、ウマ娘の背中に大きな翼が生え、そして大空を飛んでいる物だった.........

 

 

桜木(おぉ.........!言葉に出来ないけど、なんかこう―――)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良い絵だなー」

「酷い絵」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「.........ん?」」

 

 

 隣から聞こえてきたのは、俺の物とは正反対の意味を持つ言葉。誰かと思いその方向を見てみると、そこにはウマ娘の女性が俺と同じ絵をつまんなそうに見て居た。

 まさか.........この絵が酷いと言うのだろうか?俺が描いた訳じゃないし、絵心とか美術に触れる機会の無い俺だが、何だか感性を踏み躙られた気がした。

 

 

 いかんいかん。ここで争っても無益だ。この人にとってこの絵は好きじゃなかった。ただそれだけだ。

 そう思い、俺はその隣にある彫刻に目を移した。無数の群がる蛇を足元に、天へと必死に手を伸ばす男の銅像。一体これを作るのにどれ程の時間を費やしたのだろう?

 そんな事を考えつつも、俺は失礼ながらに言葉を発してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「気持ち悪い〜」

「素敵ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「.........」

 

 

「.........」

 

 

 お互いの言葉が同時に響き、少し経ってから二人して顔を見合わせる。

 何だこの人は。さっきから俺の言葉を逐一否定してきて、何かの当て付けか?どMを自覚してるからって流石に辛いものがあるぞ。

 

 

「貴方、見たところ新入りの執事ではなさそうね?」

 

 

桜木「ええそりゃ、無理やり勉強の為に拉致られたんでね」

 

 

「勉強.........?まさか、メジロ専属のトレーナー試験を受けに来たと言うのは.........」

 

 

爺や「桜木様。そろそろトレーナー試験の講義を.........おや」

 

 

 初対面のウマ娘から養豚場の豚を見る目で見られる男桜木。その視線に反射的に少し喜びを感じつつも、俺は奥の曲がり角から現れた爺やさんの方の反応に注目した。

 

 

爺や「これはこれは![ラモーヌお嬢様]!わざわざ御足労頂き、誠に感謝致します!」

 

 

ラモーヌ「良いのよ爺や。今この本家の管理は私がしているのだし、新たなメジロ家専属トレーナーを雇うのなら喜んで協力するわ」

 

 

桜木「え!!?ちょちょちょ!ちょっと待って!!![メジロ家専属トレーナー]ってなに!!?」

 

 

 聞き馴染みのないインパクトのでかい単語を急に出され、俺は思わず二人の間に割って入って説明を求めた。

 爺やさんからは言ってなかっただろうかととぼけられ、ラモーヌと呼ばれた女性からはそんな事も知らないのかとまたなぶる様な視線をぶつけられる。

 

 

爺や「[メジロ家専属トレーナー]とはその名の通り、メジロ家が直接雇用するトレーナーの事です」

 

 

ラモーヌ「学園に居るメジロのウマ娘達のトレーナーは皆、メジロ専属トレーナーよ?」

 

 

ラモーヌ「.........[貴方を除いて]、ね。メジロ家の筆頭。メジロマックイーンの担当トレーナー。[桜木 玲皇]さん?」

 

 

桜木「.........なるほどね」

 

 

 どうやら知らなかったのは俺だけだったようで、お二人の間ではもう既に俺の事をメジロ家専属にしようと言うのが進んでいたらしい。

 まぁそれは構わない。肩書きというのはいくらあっても困るもんじゃない。資格と違って自分が忘れていても顔も知らない他人が勝手にそうだと教えてくれる。これほど便利な物は無い。

 

 

桜木「専属.........専属かぁ、なんか響きが良いっすね。こう、洗練されてるって感じ」

 

 

ラモーヌ「.........この人、本当にマックイーンのトレーナーなの?あまり発言に利発的な物を感じないのだけど」

 

 

爺や「紛れもありません。ただ.........少々変人でございます」

 

 

『良かったわね。変人[程度]で済まされて』

 

 

桜木(ホント。アイツらと同じヤベー奴判定喰らわなくて助かったよ)

 

 

 心の底から安堵する。たかが変人程度、今更弁明する気も無い。むしろそれ以上だと伝えられたらやばかったが、流石気遣いの達人爺やさん。俺への配慮もしっかりしている。その証拠に汗が額に滲んでいる。

 

 

 そしてトントン拍子にまた話が進んで行く。どうやらラモーヌさん。俺のトレーナー勉強の為に急遽爺やさんに呼ばれたらしい。本来ならばこの季節、この本家も一般の方に解放してないそうで、完全なオフ期間だと言う。

 そんな中来てくれたのだから、しっかり勉強するようにと、強く釘を刺されてしまった。そんなに信用無いのか俺は。

 

 

『無いでしょ。テストで0点取るんだから』

 

 

桜木(俺は得意な部分で点数を荒稼ぎするタイプなんです〜)

 

 

『あ〜良かった。貴方があの時試練を受けなくて、受けてたらあの子は今頃〜』

 

 

桜木(っ、ええい分かった!!分かりましたよやりますよ!!満点取ってやりますよこんちくしょう!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(今日から俺もメジロ専属だぞッッ!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、四十分後.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドガァッッッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然、平和な日常の中に響き渡る衝撃音。屋敷に居る者達はその音に驚き、使用人達は何があったのかと慌ててその音の発生源へと向かう。

 場所は玄関。その大きな扉が開いた音なのか、それとも開こうとした時に出た音なのか。きっと後者だろう。

 

 

 何故なら、その扉の目の前には、片足を思い切り突き出している桜木の姿があったからだ.........

 

 

爺や「桜木様!!?ラモーヌお嬢様の講義を聞いて居たのでは!!?」

 

 

主治医「何があったのです!!?」

 

 

ナリブ「おいッ!!!お前また何かやらかしたのか!!?」

 

 

 続々と集まる人物達。しかし桜木はそれに意を返す事は全くせず、その手に持った謎の煮込まれた液体を勢い良く煽った。

 

 

ラモーヌ「ちょっと!!私はトイレに行くと言うから行かせたのよ!!それを貴方.........何を、飲んでるの.........!!?」

 

 

パール「ね、ねぇジミー?私アレ、見覚えがあるのだけど.........」

 

 

ジミー「ぼ、僕もさマイハニー.........確か、[デトロイト]のビルの屋上で.........」

 

 

ルビィ「お、美味しいのかな.........?」

 

 

エディ「私達の郷土料理の方が美味しいと思うぞ」

 

 

 その桜木の奇行に誰もが驚き、そして憤りながらも、それを止めに行く者は誰も居なかった。

 それは、今の彼には気迫があったからだろう。執念。執着。目には見えないはずのそれが見えてきてしまう程に、平然とした姿から滲み出るそれに激しい違和感を感じ、誰も動け無いでいた。

 

 

桜木「.........ぷはっ、ふぅ」

 

 

エディ「!なん、だ.........アレは.........!!」

 

 

ナリブ「.........やはり、チーム[レグルス]一番の問題児は、桜木だな」

 

 

ルビィ「ね、ねぇねぇ!あのお兄さん!![お耳]が生えてきたよ!!?」

 

 

 口元を拭い去り、身体の調子を確かめる。体内物質の急激な変化。ウマムスコンドリアの影響により、代謝が大きく増加した桜木の体表からは、汗が蒸気となってまとわりつき、そしてウマ娘にしか無いはずの耳としっぽが現れた。

 

 

 その現実について行けない者。桜木という男を改めて認識する者。それらを置き去りにするように桜木は、一歩外に出て、言葉一つを置いて爆走を始めたのであった.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろマックイーンに会わないと死ぬぜッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、一人爆走を始めたトレーナーさんに追い付いたのはパールさんだけであり、彼の熱意を知った彼女が、ここまで来るのを手助けした。という話でした。

 

 

「.........」

 

 

桜木「ガツガツムシャムシャ!!!」

 

 

 野球の大会が終わりを迎え、ラモーヌお姉様率いる残りの海外メンバーの方々の邂逅を終え、私は彼の話をお腹がすいたといって注文した彼の料理を待ちながら、その口から途中まで話を聞いていました。

 料理が来てからはチラチラとそちらの方を見始めたため、どうしようかと思っていましたが、お姉様が代わりに語り始め、彼は食事に専念し始めた訳です.........

 

 

ゴルシ「.........なんつーか、ヤベーな」

 

 

テイオー「うん.........」

 

 

スペ「私、サブトレーナーさんのこと。よく分からなくなっちゃいました.........」

 

 

 ここに居る生徒の方々は全員引き気味で彼の方を見ました。しかしそれでも目の前の食事の方が大事なのか、その視線に気を取られるということも無く、彼は箸を進めています。

 チャーハンを口にかき込み、ラーメンの麺を一口で啜り切った後にスープを一口のみ、それを飲み込んでいる間に魚のしっぽを箸で掴み、その頭から口に入れて器用に身だけを食べて綺麗な骨を皿に乗せました。

 

 

フェスタ「おーい。頼まれてた奴持ってきたぞ」

 

 

桜木「ふほ?はうふー♪」

 

 

シャカ「人間ってこンなに食える物なのかよ.........?」

 

 

タキオン「筋力ウマ娘化薬の副作用は未だ解明できていない.........食欲の増加はその一つだろうが.........だから私が居ない所で複製や服用をするなとあれほど.........」ブツブツ

 

 

 食べている間にフェスタさんに何を頼んだのか、大きなバケツの中に水が沢山入った状態で彼に渡され、それを嬉しそうな顔で受け取り地面へと置きます。

 ひとしきりテーブルに乗った食事を全て平らげた後、彼は待っていたかのようにそのバケツを手に持ち.........

 

 

「な.........!!?」

 

 

桜木「ゴクッ♪ゴクッ♪」

 

 

桜木「.........くはーっ!!!日本の飯!!!日本の水!!!やっぱこれだわ!!!」

 

 

 手に持った10Lは入るバケツ。そこに並々注がれていた水を彼は一気に飲み干してしまいました。その様子を見て、流石の私達も愕然としてしまいます。

 

 

ルビィ「.........パパも出来る?」

 

 

ジミー「え!!?あー、ははは!コンディションが整ってたらね!!!」

 

 

パール「.........アマゾンの奥地で遭難した時もあんなに食べられないのに、いつ食べられるのよ.........」

 

 

 仲の良さそうな会話をするクレセントパールさん達ご家族。ICPOと言う職業は映画の中でしか知りませんでしたが、やはりそんな所にまで行く時は行かれるのですね.........

 .........と、危うく話が逸れましたが、私が言いたいのはそういう事ではありません。今言うべき事は.........!!!

 

 

マック「トレーナーさん?」

 

 

桜木「はいはい!なんでしょう.........か」

 

 

マック「.........」ニコ

 

 

桜木「ヒエッ.........」

 

 

 彼の方を見て、ニコりと微笑みかけます。彼はそんな私の内心を察したのか、最初こそ嬉しそうな声と表情をしながらも、直ぐにそれは怯えだけとなりました。

 私の方を見て、まるで熊を見たかの様に視線を動かすことも無いまま、ゆっくりと席から立ち上がり距離を取ろうとしますが、その裾を掴んで動けなくしました。

 

 

桜木「.........その、マックイーンさん?」

 

 

マック「.........なに、やってるんですのォォォッッ!!!」ゴスゥッ!!!

 

 

桜木「おごッ―――」

 

 

 片手の指を揃え、そのまま彼の弱点である脇腹の方へ突き立てます。もちろん骨が折れたり、ケガをしたりしないよう手加減はしましたが、やはり彼にとってこの攻撃の効果は絶大の様で、立ち掛けた所からまた椅子に座り戻しました。

 

 

マック「貴方はっ!!いつもっ!!そうやって!!」ポカポカ!

 

 

桜木「お、お、お!お待ち下さい!」

 

 

マック「きちんと試験を受けて居ればメジロ家専属トレーナーでしたのよ!!?」

 

 

桜木「それってそんな凄いことなの!!?」

 

 

マック「当たり前じゃないですか!!このおバカ!!何年この世界に居るんですの!!?メジロの名がどれほどこの業界に名を馳せているのか!!もうとっくのとうにご存知でしょう!!?」

 

 

桜木「ヒィィィィ!!!ご、ごめんなさいぃぃぃ!!!」

 

 

 彼の身体を叩きながら、私は彼を叱責しました。もう怒りまくりです。もし怒りで髪が伸びるのならもうそれこそ天を貫く勢いで上の方に行く程に.........

 

 

 しかし、そんな事をしていると皆さんの視線が私達から違う方へ向いている事に気が付きました。その方向を見ると、私達の姿を見て、クスクスと一人で笑うラモーヌお姉様がいたのです。

 

 

マック「ら、ラモーヌお姉様?」

 

 

ラモーヌ「ふふ、良いじゃないマックイーン。許してあげなさい」

 

 

マック「.........へ?」

 

 

 その言葉を聞き、私は.........いえ、[私達]。つまり[メジロ家]のウマ娘達は大きく驚きました。

 普段、厳しいと他者から言われるお姉様。もちろんそれだけではありませんが、それを知るには長く付き合って行かなければ見えて来ないほど、自分にも他者にも、そのストイックな厳しさを見せる方です。

 そんなお姉様が、まさか許せなんて言うとは.........あまりにも予想外の出来事でした。

 

 

ラモーヌ「桜木トレーナー」

 

 

桜木「は、はい!」

 

 

ラモーヌ「.........マックイーンの事、よろしく頼むわね」

 

 

桜木「.........え?あの、ちょっとぉ!!?」

 

 

 優しい微笑みを彼に向け、お姉様はそう言いました。どうしてそんな事を言ったのか。彼に何を感じたのかなんて言うこと無く、お姉様はカフェテリアから出て行ってしまわれました。

 あの人の性格を考えれば、きっと府中のメジロ家には寄らず、その足で北海道に帰るのでしょう。それを察した方々は私を含め、その振る舞いに酔い知れてしまいました。

 

 

ライアン「うわぁ.........やっぱり、ラモーヌさんは凄いなぁ」

 

 

ベル「そうね.........トリプルティアラ、ううん、それ以前の持ち前のカリスマ性.........」

 

 

パーマー「私達と根本が違うって、嫌でも思い知らされちゃうね.........」

 

 

アルダン「パーマー。それを聞かれたら姉様にまた怒られますよ?」

 

 

ブライト「私も、いつかあの様な女性になりたいですわ〜」

 

 

 多くの方に短い時間ながらも、その印象を深く刻み込んで行ったラモーヌお姉様。私も久方振りに拝見するお姿を見て、以前と変わりないその雰囲気を再び目標にしつつも、今は目の前の問題を片付ける為に、お姉様の言う通り怒りを鎮ました。

 

 

マック「.........それで、トレーナーさん」

 

 

桜木「っ、ああ」

 

 

マック「単刀直入に聞きます。この脚は.........[治る]のでしょうか.........?」

 

 

 目線を一度、左脚の方へと向け、不安を抑え込む為に手で撫でた後にもう一度、彼の顔を見ます。

 先程までのおふざけはどこにも無く、あるのは真剣そのもの。先程までの彼しか知らない人から見れば、そんな顔も出来るのかと驚いてしまうくらいです。

 

 

桜木「.........[治る]」

 

 

マック「!」

 

 

桜木「例え世界中の人に、世界一のAIに、世界を創った神様に0%を提示されても」

 

 

桜木「俺は.........俺が[0から作り上げた100%]を、信じるだけだ」

 

 

 真っ直ぐと、決してそらさずに、彼は私の事を射抜くように見ながら強く答えました。そこに保証なんてどこにもないと言うのに、彼は[また]、その言葉一つだけで私を肯定し、そして茨の道を切り開こうとしてくれている.........

 

 

シリウス「.........なんだよ、やる時はやるんだな。アンタ」

 

 

オルフェ「当たり前っス!おじじはマックイーン先輩の事がむぐぐっ!!?」

 

 

ライス「だ、ダメだよオルフェーヴルさん!」

 

 

桜木「?まぁ俺はそれしか出来ないからな!ははは!」

 

 

ブルボン「.........ふふ、久し振りにマスターのその言葉が聞けました」

 

 

 そう言って、普段滅多なことでは表情を変えないブルボンさんが微笑みました。それに釣られるように、私や彼を含めたチームメイトの皆さんが笑い始めます。

 それしか出来ない。けれど彼のその言葉の奥には、それ以上をしようという意思が感じられます。隠された物。見えない物が簡単に見えてしまうくらいに.........ようやく私達の良く知る彼が、目の前に帰ってきてくれたのです。

 

 

桜木「あっ、そうそう!その脚の治療なんだけどさ。宗也に頼もうと思うんだよね」

 

 

黒津木「は?俺?」

 

 

桜木「だって、ほら。これ能面の奴が言ってた天才医の遺言みたいな物らしいからさ」

 

 

黒津木「あ〜、なるへそね」

 

 

 事情を良く知らない方々はその言葉に首を傾げましたが、[繋靭帯炎]の治療法は未来の世界で、黒津木先生が編み出し、残したものだと言われています。

 それを知っているのは未来から来た方々と、未来へ行った私達だけです。普通に話しても信じて貰えないでしょうし、そこら辺の濁し方は本当に上手な人です。

 

 

桜木「.........まっ、そこら辺の話はまた後でにしよう。マックイーン」

 

 

マック「?な、なんでしょう.........?」

 

 

桜木「手ぇ出して」

 

 

 ニコニコと、まるでこれからサプライズをするという事を伝える様な顔でそう言いました。

 私はそれに戸惑いながらも、彼の言う通り手を伸ばします。するとその手の下を支えるように彼の片手が伸び、何かを握り締めた手を私の掌に乗せました。

 

 

マック「っ、これ.........って.........」

 

 

 その手の中の物は薄く、そして硬い小さい物。けれどその形が直ぐに分かる程に、それは私にとって身近な物でした。

 それを見る前に顔を上げ、目を見開きながら彼の顔見ます。そこには先程の笑顔とは違う、優しさが詰まった物となっていました。

 

 

桜木「[ひとりじゃない]。今の君には沢山。守ってくれる人が居る」

 

 

桜木「そこにはもちろん、[太陽]には程遠いかも知れないけど、君が[レグルス]だって言ってくれた俺も居るんだ」

 

 

桜木「.........ちょっと、頼りないかもだけど」

 

 

 そう言ってる間に、彼は少し困った様に眉を曲げて笑いました。いつも私達の事になると自信満々なのに、自分の事になると卑屈になる。いつもの彼らしい姿です。

  そんな彼に私も釣られて笑ってしまいます。自分の手を開き、[少し汚れた王冠]がある事を確認した私は、それを右耳へと付け直します。

 

 

マック「.........トレーナーさん。貴方は一つ勘違いしていますわ」

 

 

桜木「え?」

 

 

 王冠のアクセサリー。チームの証を付けながら、私は彼に言いました。そして彼は私の予想通り、疑問の声を上げました。

 天体に詳しくない彼の事ですから、分からなくて当然です。ここに居る中でそれを理解しているのも、タキオンさんやシャカールさん。そしてシリウスさんと生徒会長くらいです。

 

 

マック「私達が普段目にする太陽の等級は[-27等級]程です」

 

 

桜木「えっ.........と?」

 

 

マック「つまり、他の恒星よりも強く光を感じるという事です」

 

 

 そう。地球から見える太陽の光は[一等級]すら超えてマイナスの世界になります。それほどの光で、太陽は地球に光を与え、それが生命や植物の進化を促してきたのです。

 しかし、その光は恵みだけではありません。光のエネルギーが強すぎるせいで地球はオゾン層が無ければたちまち、死の惑星へと早変わりする。

 けれどそれは、地球との[距離]が近いからです。

 

 

桜木「そりゃ.........すごい数字だな」

 

 

マック「ええ.........ですが、それとは別に[絶対等級]という概念があります」

 

 

マック「それで表すのなら、太陽は精々[4等級]。一等星には程遠いんです」

 

 

桜木「へ?」

 

 

 ポカン、とした表情で私の言葉を受け止めるトレーナーさん。その顔は正しく、思ってもみなかったと言っても過言では無いでしょう。

 その姿を見て、やっぱりそういう勘違いをしていたのだと分かり、私は笑いました。けれどこれでようやく、彼に伝える事が出来ます。

 [レグルス]という星は、見かけの等級でも、そして絶対等級でも、誰がどう見ようとも[一等星]だと言うことを.........

 

 

マック「.........私は、貴方を信じています」

 

 

マック「そしてそれと同時に、一生思い続けます―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――貴方が[トレーナーさん]で、良かったと.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 例え、この世界の誰もが彼を否定しようとも。例え彼自身がそれを否定しても、私は肯定し続けます。

 彼でなくては行けなかった。彼と一緒に歩かなければ見えなかった景色が沢山あります。

 チームで過ごす意味。仲間が居る事で強くなる理由。誰かが隣に居てくれる安心感。そして、自分の弱さを受け入れる大事さ.........

 それらは全て、彼がいなければきっと知る事が出来なかったものです。それをくれた彼に目を向けていると、静かに顔を背け、しばらくの静けさの後、鼻をすする音が聞こえてきました。

 

 

桜木「あはは.........おかしいな、俺結構涙腺は締まってる方なんだけど.........」

 

 

マック「.........私は、泣き虫さんの方が気が合いますわ」

 

 

マック「私も.........泣き虫ですから.........!」

 

 

 彼が居る。ようやく離れていた物が戻ってきた。その安心感から私も、少し涙が出てきてしまい、それを人差し指で拭います。

 そして、涙する私達をすぐ側で見守る存在が現れます。私の姿と似た存在。[もう一人のメジロマックイーン]が、それで良いと言うようにその表情を和らげています。

 

 

 チーム[レグルス]。小規模の人数だけど、他のチームとは掛け離れた異質な集まり。

 

 

 夢を追い

 

 

 夢を守り

 

 

 夢を探し

 

 

 夢に覚め

 

 

 そして.........[夢を駆ける]。

 

 

 たった一人の[夢が壊れた]ことで起きた、有り得ない確率をかいくぐって巡り会えた人達。

 

 

 そんなチームがようやくまた.........もう一度一つに集まったのでした.........

 

 

 

 

 

......To be continued

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