山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜 作:ギノっち@カマタラル
「ミホノブルボン!!この目黒記念にて復帰後初の勝利を収めました!!!」
実況の言葉にレース場の盛り上がりがヒートアップを見せる。約一年半ぶりに見る彼女の勝利に、この場にいる誰もが興奮を隠せ無いで居た。
俺達もその内の存在であり、次のレースが一番重要だと知りつつも、その勝利した姿に、涙をうっすらと瞳に浮かばせていた。
ルビィ「すごいすごい!!ずーっと一番前だったよ!!」
マック「ええ!本当.........ブルボンさんも完全復活ですわね.........!」
桜木「ああ!メンバーもG1と遜色無い状態で体内時計を駆使した逃げ戦法.........!これなら.........!!!」
最早完全復活と言っても過言じゃないだろう。会場からはまばらにだが、もう次のレースに期待している声が聞こえてきている。
彼女は既に、俺の予想を超えて完璧にその力を戻していた。
だが.........
黒沼「.........」
沖野「ん?どうした黒沼?それに東まで.........」
東「.........まだ、か」
快勝。その言葉が似合う程の勝利を見せ付けてくれたブルボン。しかし、その彼女のトレーニングを見てくれていた二人の表情はまだ浮かない。
それに、東さんは[まだ]。と言った。それはつまり、この先を想定しているということにほかならない。
俺はその詳細を聞く為に口を開こうとしたが、その前に黒沼さんが疑問に答えてくれた。
黒沼「ミホノブルボンにはまだ、[迷い]がある」
ライス「ま、迷い.........?」
東「ああ、俺達とのトレーニングで新たに編み出した[新形態]だ」
全員「.........ん?」
し、新形態.........?何言ってんだこの人。うちのブルボンを何かロボットだとかマジンガーZだとかガンダムだとかと勘違いしてないか?
そして黒沼さん。アンタも頷いてんじゃねぇ。何でそれに乗っかってるんだ?いい歳してそんな事言ってたりそれに乗っかったりして恥ずかしく無いんか?
黒沼「その名も.........」
「心頭滅却状態だ」
「スーパーモードだ」
二人「.........ん?」
「.........心頭滅却状態だ」
「.........スーパーモードだ」
二人「.........」バチチチチ
桜木「沖野さん。俺任せる人間違えてたかもしれない」
沖野「ああ、俺もまさかこんな事になるとは思わなかった」
俺は溜息を吐き、沖野さんは頭を抱えた。二人は未だにお互いのその名称を言い争っている。他の子達もその二人をジト目で見て居る。何を競っているんだこの人達は。
しかしまぁ、前哨戦は抑えることが出来た。この先があるのなら、宝塚記念でも活躍する事が出来るだろう.........
桜木(.........ホント、歯痒いよな。トレーナーってのは)
ライス「.........?お兄さま?」
視線をターフから外し、ライスの方を見る。すると彼女も俺のそんな視線に気が付き、少し不安げな表情で応えた。
俺は.........俺はそれに、笑顔で応えた。本番を迎えて、この場に立った時。その時にはもう俺に出来る事は、[信じる]事だけしか残って居ない。
だから、俺は彼女に不安を感じさせないように笑顔を作る。
その笑顔を見て、ライスもにこりと微笑んでからもう一度、ターフに立つブルボンを目に写す。
彼女の勝利を心から祝福する彼女を横目に、俺はこれからの苦難を乗り越える為の覚悟をしっかりと整えていた.........
ーーー
ライス「っ―――!!!」
時計の針が動く音。等間隔で、規則的に聞こえてくるそれが、自分が跳ね飛ばした掛け布団と乱れる息に混じって少しづつ、ライスの耳に聞こえて来る。
時計を見ると、午前4時。まだ起きるにはちょっと、早い時間帯。
またあの夢だ。何なんだろう。最近あの夢が頭から離れてくれない。
ただの夢。ちょっと緊張してるだけ。そう考えてもう一度掛け布団を被って寝ようとするけど、またあの夢を見ると思うと、眠るに眠れなかった。
ライス(何なんだろう.........あの夢.........)
ライス(段々、ハッキリとしてきて.........それにライスの身体も.........)
変な部分が沢山あるの。走ってるのに、[見えるはずの手]が、全く見えない。普通は、手を振って走ってるはずなのに。ただ前に進んでいるだけしか分からない。
それに、何だか背中に、[何か乗っていた]様な重さもあった。あんな感覚、今までのレースで感じた事なんて無かったのに.........
10分。20分と時間が経って、全然眠る事が出来なかったから、ライスは充電してたウマフォンを取って、眠くなる様な安心する音楽を聞こうとしたの。
そしたら.........
ライス「.........![ニコロ]お兄さまからだ.........!」
ライスが寝てから一時間くらい経った頃の不在着信に、お兄さまからの電話があったの。外国に帰る前に交換してて、偶にレースの結果を報告したり、お兄さまの近況を聞いたりして.........
今掛けちゃっても大丈夫かな?そう思って今のアメリカが何時か調べたら、まだお昼の15時くらいだったから、そのまま折り返ししちゃった。
ライス(だ、大丈夫.........かな)
「.........もしもし」
ライス「!も、もしもひ!ライスでひゅ!」
か、噛んじゃった.........ど、どうしよう.........お兄さま、何も言ってくれない.........うぅ、なんでいつも噛んじゃうんだろう.........
最近変な夢ばっかり見てるせいで、ライスはもう泣きそうだった。目の奥が熱くなって、風邪もひいてないのに、鼻水が鼻から出てきそうになって.........
でも、電話の向こう側から、お兄さまが小さく笑う声が聞こえて来て、ライスはちょっと安心したの。
ライス「な、なんで笑ってるの.........?」
「いや、すまない。宝塚記念一番人気のウマ娘と聞いたから、どんな子だろうかと思ったが、君は変わらないな」
ライス「!も、もう!ライスをからかいに来たの?」
さっきまで不安でどうしようもなかったけど、何だかどこかに行っちゃったみたいに安心してた。
それから色々喋った。ロブロイさんが寝てるから、ライスは小声で、お兄さまもそんなライスに気付いて、少し声を抑えて喋ってくれた。
最近の事、マックイーンさんの事、トレーナーのお仕事が大変な事、ブルボンさんがまた走る事。
それと.........最近見る、夢の事も.........
「.........そうか」
ライス「うん。夢占いで検索しても、何かパッとしなくて.........」
「.........」
少しの間、お兄さまもライスも、何も言わないままの時間が過ぎてった。それに対する答えも、考え方も欲しかった訳じゃない。ただ人に話して、安心したかった。
だから、今のこの時間は不思議と不安にはならなかったの。自分の持っている物を地面におろせたようで、本当にほっとした。
「.........ライス。実は黙っていようと思っていたんだが.........」
ライス「.........え?」
ーーー
ブルボン「.........」
ライス「すぅー.........はぁー.........」
外の騒がしさが聞こえて来る地下バ道。年に一度のお祭り騒ぎ。その有り様は正に、[夏の有馬記念]と言えば予想出来るだろう。
二人の姿は対照的。片方は落ち着きを見せ、片方はソワソワとしながらも自身を落ち着かせようと深呼吸をする。
そんな二人を見て微笑ましく思いながらも、これから起こるかもしれない事態に対する覚悟だけはしっかり決めておく。
それでも、そんな事が出来るのは大人である俺だけだ。事情を知っている子達は、そうは行かない。マックイーンもタキオンも、それにゴールドシップ達も、皆緊張が抜けきらないで居る。
桜木「.........よーっし!んじゃ二人が緊張しないようにしてやるか!」
全員「!」
誰もが緊張で動けないでいる。うちのチームはマックイーン達の緊張に無意識に呑まれ、沖野さん達はこれからの激戦に武者震いが収まらずにいる。
動けるのは俺だけだ。だったら、俺は俺の責務を果たすだけの話になる。俺は出口を向いていた二人に声を掛け、その視線を一度、それとは正反対の俺へと向けて見た。
桜木「ブルボン。緊張してるな?」
ブルボン「はい。心拍数、心理状態共に平常時との差異があります」
桜木「うん。良い事良い事。その緊張を楽しむんだぞ?ライスは.........」
ライス「っ!ひゃい!」
桜木「.........見るからに緊張してるな」
俺の声に反応して、ライスはビシッと背筋を伸ばし、気を付けのポーズで返事を返した。
これから出走するって言うのに、こんな姿を見せられたらこっちが緊張感を無くしてしまう。
けれどその姿を見て、周りの空気は少し和んでくれた。ライス自身は返事を噛んだせいか、少し顔を赤らめて俯いてしまっている。
俺はそんな彼女の肩に手を置いて、目線を合わせるように膝を着いた。
桜木「なぁライス。これからブルボンと走る事になるけど、怖いか?それとも、嬉しいか?」
ライス「!え、と.........どっちも、かな」
桜木「.........そうか。じゃあ怖い気持ちの方は十分皆に伝わったから、嬉しい気持ちを伝えてくれ。一番、伝えたい人に」
ライス「一番、伝えたい人.........」
肩から手を離し、後はライス自身の行動に委ねる。彼女は俺の手が離れた瞬間からブルボンの方へと顔を向け、そして一歩一歩ゆっくりと近付いていく。
みんな、待っていたはずだ。この瞬間を。このレースを。俺達だけじゃない。この[宝塚記念]を見に来た全員が、勝ち負け関係無く、ただライスとブルボンが一緒に走るこのレースの行方を、見届けに来ているはずだ。
だから.........
桜木(.........だから、ちっとは優しくしてくれねぇか?運命さんよ)
ライス「ブルボンさん.........」
二人の少女が向かい合う。これからレースで競い合い、勝ち負けを決める戦いが始まる。しかし、今の二人の間にはそんな熾烈な感情は生まれていない。
どこか穏やかで、それでいてこの時を待ち望んでいたという思いがひしひしと伝わってくる。それは二人の表情を見れば誰でも分かるほどだった。
ライス「.........ライス、今日の為に強くなったんだ」
ライス「ライスのせいで、ライスに負けたブルボンさんやマックイーンさんまで、強くないって思われたく無かったから.........」
ライス「.........だから今日のライスは、手強いよ.........!」
ブルボン「!.........望むところです」
傍から見れば、これは宣戦布告だろう。だが二人の間ではそうでは無い。待っていた少女と、それに追い付いた少女。その二人が、互いに固い握手をしてからもう一度、光差し込むターフの方へと歩みを進めていく。
そんな二人を見て、俺に出来る事はもう無くなったと確信した。
桜木「二人とも!」
二人「?」
桜木「.........最後に一つだけ、言って置く」
二人が最大限力を発揮できるようにする事は出来た。後はもう待つだけだ。
けれどそれでは心許ない。だからこれは、言わば保険の様なもの。
男なら潔く。なんて言う言葉もあるが残念。女家族でほぼ育ってきた俺は意外でも何でもなく、女々しいんだ。
「[ヒーロー]の条件は」
「[最後まで立っている事]、だ」
片や[無敗の二冠バ]。
片や[菊花賞がG1初勝利のウマ娘]。
歴史を探せば、そんな子達はゴロゴロといた事だろう。
だが、この二人はその中には居ない。
お互いがお互いを認識し、そして、強い思いを同時に抱いている。
同年代でデビューし、そしてこの時代に生まれた.........
[二人で無敗の三冠バ]なのだから。
ーーー
ブルボン「.........」
遂に来てしまいました。今日というこの日が。復帰後初のG1レース。そして、ライバルであり、親友でもあるライスさんとの再戦.........一体どれほど、今日という日を待ち続けたのでしょう。
既にゲートは目の前。他の選手達も続々とその中に入っていく中で、私は一人、耳に付けた[王冠のアクセサリー]を指で撫でました。
ブルボン(.........)
不思議な感覚です。公式レースは既に慣れるほどに走ったと言うのに、まるでこれから初めて走り出すとでも言うような感覚.........デビュー戦の時。いえ、それ以上の物を感じます。
それでも不安とは違うその感情を抑えつつ、私はゲートの中に入りました。
ブルボン(東トレーナー。そして、黒沼トレーナー.........)
『良いかブルボン。レースで分からない事は、レースから得るんだ』
『そうだ。レースで走る。その走りの中に、答えはある』
これまで、多くの人に支えられてきました。その中には勿論、マスター達や沖野トレーナー。チームの方々も居ます。
その人達のこれまでに、報いる為に.........!!!
「今年も貴方の、そして私の夢が走る宝塚記念!!!」
「ゲートが開いて十七人!!一斉に飛び出しました―――!!!」
ーーー
十七人の少女。ウマ娘達が走る。その足音は重く、そして速い。まるで地響きにも似た重低音のターフを踏む音と、それに負けない人々の歓声が耳に入ってくる。
マック(トレーナーさん)
桜木(!分かってる。問題はこれから、だよな)
俺の隣に立つマックイーンが隠れるように袖を引き、視線を合わさずに小声で話しかけて来る。俺もそれに応え、小声で返事を返しながらレースの状況を整理する。
鼻を突き進むのはやはりミホノブルボン。得意のラップ走法は健在のようで、その正確無比さが他の子達にもプレッシャーを与えている。
彼女を先頭にし、その少し離れた後方には先行策で駆け行く者達の集団。その中に、ライスシャワーも居る。
沖野「おお!こうしてみると本当に変わんねぇな!!ミホノブルボンは!!」
東「当たり前だ。ここまで戻すのにどんだけ掛かったか.........」
黒沼「悪くない時間だったがな」
周りの話題は既に、今一番手を走っているブルボンの方へと向けられている。特に彼女の事を任せた二人は最早担当トレーナーと言っても良い程の入れ混み具合を見せている。少し面白い光景だが、ここまで彼女の事を思ってくれているのなら、任せて良かったと心底感じている。
テイオー「うっわー!!ホントにG1でやってるよあの走りー!!完全に復活してるじゃん!!ミホノブルボン!!」
デジ「トレーニングの時に確信はしていましたが、まさかこれ程とは.........!!やはりブルボンさんは桁違いですね!!」
タキオン「.........ふゥン」
目玉ということもあって、やはり周囲の観客の話題もミホノブルボン一色だった。それは仕方の無いことだろう。
だが、内情を知っている者達はそうでは無い。それを知っている者は俺含め全員、ライスの事を見ていた。
神威「うっへー.........あの走りを打ち崩すのは相当腕が折れそうだなぁ」
カフェ「そうですね。ですが、一度一緒に走ってみたいです」
黒津木「ほら!玲皇もんな顔してねぇでライスの応援もしろ!!」
桜木「あ、あぁ.........ん?」
黒津木の奴に肩を寄せられ、レースをしっかり見るよう促される。だが俺は、視界の端に写った数人に目を奪われてしまった。
そこに居たのは、ゴールドシップ御一行。彼女達にはライスの事を話しているし、何故かまた居る.........と言うより、完全に歴史的瞬間を狙ってきているリョテイさんと、何故か険しい表情の白銀。そしてウララが居た。
白銀「.........やべぇな」
全員「え?」
ぼそり。と呟いた言葉が地響きと歓声の合間を通り抜け、俺達の耳へと入ってきた。白銀は完全に俺達に聞こえないよう呟いたのか、聞かれたと気づいた瞬間、バツが悪そうに頭をかいた。
白銀「[勝ちたい]って強く思いすぎんてんだよ。あれじゃあ空回りしちまう」
ウララ「なんかライスちゃん.........危ない、かも.........」
桜木「.........ライス」
危険だと言う言葉に釣られ、この場に居る全員がライスの方へ注目する。そこには普段とは明らかに違うペースで呼吸をする彼女の姿があった。とても.........息苦しそうだ。
嫌な結末が頭に過ぎる。もし、未来が変わらなければ.........待っているのは絶望だけだ.........
桜木(必ず無事で帰ってきてくれよ.........!)
桜木(俺は最後にヒーローが犠牲になる話は大っ嫌いなんだ.........!!!)
ーーー
身体が重たい。ゲートに入るまで何も無かったのに、急に調子が悪くなっちゃった。それに、何だか心も.........
胸の奥にどんどんと沈殿していく良くない感情。グズグズと心を腐らせていくその原因も分からないまま、ライスは先行策を取る人達の後方にまで下がっていた。
ライス(どうしよう.........このままじゃ負けちゃう.........)
もうブルボンさんとの距離は三バ身くらい離れちゃってる。まだ半分しか進んでないけど、このままのペースで行ったら絶対、一着にはなれない。
.........ダメだよ。
みんな、ライスの事を応援してくれてる.........
だから.........勝たなくちゃ.........!!!
第3コーナーの手前
『第三コーナーで大アクシデント!!!』
ブルボンさんを追い抜く為に
『[一頭落バ]!!!これは誰が落バしたのでしょうか!!!』
ライスは.........私は、重い身体のまま.........
『あの、あの天皇賞で先頭を走っていた[ライスシャワー]が[落バ]しています!!!』
頭の中で知らない声が響いてくる。
頭の中でバランスを崩して、全身に痛みが走ってる。
けれど、それを気にせずに、ライスは.........
全力で、走ろうとしちゃったの.........
「―――あっ」
ーーー
―――その瞬間。時間が止まった。
絶え間ない歓声も、実況の声も、一瞬にして静寂になり、耳に入ってくるのは彼女達の走る音だけで、それも頭には到底届いてこなかった。
バランスを崩した。ライスの身体が、走っている時よりも前傾姿勢になり、そしてその重心が落ちる先に、自分の身体の部位は何処にもなく、地面へと向かって行っている。
手を伸ばしても届かない。身を乗り出しても間に合わない。結局、こうなってしまうのか.........?
「―――?」
時間が止まった。さっきは確かにそう表現した。けれど俺は、俺の目には未だに地面に着く前のライスが映っている。
一体何が起きているのか、理解が出来なかった。そんな俺に追い打ちを掛けるように―――
―――[ガコン]ッッ!!!
何故か、聞こえるはずの無いゲートが開く音が聞こえて来る。宝塚記念が始まった場所。スタート位置に思わず視線を合わせると、そこには少女達とは違う姿をした、[名も無き女神]から[同じ存在]だと言われていた生物達.........
[ウマ]の達とその背中に乗る人達の姿があった.........
レースの展開はほとんど同じ。唯一違う点を挙げるとするなら、一人あからさまに抜け出しているはずの存在。ミホノブルボンの様な存在が居ない事だ。
徐々に俺達の知っているウマ娘達の場所まで、その[ウマ]達が近付いてくる。それと同時に、見慣れないその姿に[ノイズ]が覆いかぶさってくる。
そして、ライスがバランスを崩して居る場所まで[ウマ]が重なる。その姿も彼女と同じように、バランスを大きく崩した姿を見せると同時に.........
世界に大きな[ノイズ]を、発生させた。
ーーー
ライス「.........あれ」
ライス「え?え!!?」
力を入れて走ろうとしたライスは、その後上手く力が入らなくて、転びそうになった。強く目を瞑って、これから来るかもしれない痛みに怯えてたんだけど、それが全然来なかったの。
だからもしかしたら、全部夢だったのかもって思って.........目を開けたら、[知らない教会]に居たの。
ライス「.........!」
どこなのか分からないけど、もしかしたら分かるかもしれない。そう思って中を見回してると、さっきまで居なかった[女の子]が、私に背中を向けて教会の教壇の前に立ってたの。
ライス「だ、誰.........?」
『初めまして!ライスシャワー!僕もライスシャワー!』
ライス「え!!?え、えぇ.........!!?」
くるりと振り返って見せてくれた顔は、確かにライスと同じだった。そ、そっくりさん.........?でも、この子も自分の事ライスだって.........
『あはは!驚いてる驚いてる!嬉しいなー!』
ライス「え、えっと」
『君が悪いんだよ?』
ゾクっ。て背筋が凍った。さっきまで可愛くて元気そうな子が、いきなりその顔を冷たくした。その理由も分からないから、余計怖くなっちゃった。
ゆっくりとその子は、ライスの方に近付いてくる。ライスは怖くて、逃げる事も出来なかった。
『僕が見せてたんだよ?あの夢』
ライス「!.........そんな、どうして.........?」
『だって、こうなるって知ってたから。こうなったから、僕はここに居るんだ』
『君は怖がりだから、ちょっと怖がらせれば走るのやめてくれるかな〜って考えたけど、僕が甘かったみたい』
何を.........聞かされてるんだろう.........?この人はまるで、当たり前だって感じで話してきてるけど.........そもそも、この子は一体.........ここは.........[ライス]は.........
頭の中が混乱する。聞かされたお話と、自分の考えとがぐるぐるって混ざりあって何もわからなくなっちゃう。
ライス「ライスは.........どうなっちゃうの.........?」
『.........ごめんね。もう僕じゃ、どうしようも無いんだ』
『君は転んで.........走れなくなっちゃう』
ライス「.........そんな」
身体から熱が逃げ出した。レースで走ってたはずなのに、そんな熱なんて最初からなかったみたいに、とっても寒くなった。
寒い.........寒いの。今まで感じた事ない寒さがライスを包んでる。もうどうしようもないんだ。もう終わっちゃったんだ。そう思えば思うほど、身体を震わせても温まることは無かった。
そして.........その震えは自分を温めるものから変わって行ったの.........
ライス「.........グス.........ヒグ」
『.........』
ライス「ライス.........折角変われたのに.........!!!」
ライス「新しい夢も.........見つけれたのに.........!!!」
ただ悲しかったんだ。どうしてライスだけ、 こんな目にあっちゃうんだろうって.........折角、マックイーンさんも復活して、ブルボンさんの怪我も治って.........みんなようやく、前を向けたのに.........また、ライスのせいで.........
その時、石ころがライスの頭に落ちてきたの。いつもの事だと思って気にもしなかったけど、その後ずっと、ミシミシって音がライスのお耳に入ってきてて.........
ライス「も、もしかして.........」
『うん、崩れる.........』
やっぱり。そう思ってライスは、天井を見上げた。すると、さっきの石ころがどんどん落ちてきてて、本当に崩れるんだと思った。
そう思った瞬間。ライスの隣に建物の一部が落ちてきて、その子の隣には大きいのが二つ落ちてきた。
ライス「ひぃっ.........!」
『これはちょっと.........僕も怖い.........!』
綺麗な教会はどんどん崩れてきちゃってる。もう何にも出来無い。そう思ったライスとその子はお互いに抱き合ってただひたすらにその時が来ない事を祈っていたの.........
そして遂に.........天井の大きいのが落ちてきちゃったの.........
『やっば〜.........!!!』
ライス(っ、ごめんなさい.........お兄さま.........)
ライス(ライス.........ヒーローになれなかった.........!!!)
この教会の中に逃げ場がないくらい大きな天井。それが丸々落ちてきちゃったの。この子もライスを抱えて何度も避けてくれたけど、今度こそもう無理だと思っちゃった.........
瞼の裏の光がどんどん無くなってく。多分、ライスのお耳には何も聞こえてこないんだろうな。そう思って、もう諦めちゃってたの.........
けど―――
―――[ズシン]ッッッ!!!!!
『「.........え?」』
『.........』
その音は、聞こえたの。絶対聞く事は無いって思ってたのに.........ライス達は、潰れずに済んだ。
そして、その落ちてきた天井を支える人が居たの。その人の後ろ姿を見て、ライスは直ぐに分かったんだ。
ライス「!ブルボンさん.........!!!ありがとう!!!」
『うわ!!久しぶりだねミホノ.........ブルボン.........?』
『やれやれ。諦めるのは頂けないな』
.........後ろ姿を見た時は、ちゃんとブルボンさんだったの.........けど、ライス達が見たその顔は.........
『ヒーローの条件は、最後まで立っている事だろう?私のヒーロー』
『「ぁ、ぁが.........」』
その顔は、ロボットさんだったの.........
......To be continued