山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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第七部 夢繋ぎ人編
気付いたらベテラントレーナーになってたけど俺の人気が無くなっていた話


 

 

 

 

 [ウマ娘]。

 

 

 彼女達は、[走る]為に生まれてきた。

 

 

 時に数奇で、時に輝かしい歴史を持つ[別世界の名前]と共に生まれ、その魂を受け継いで走る。

 

 

 それが、彼女達の運命―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だァァァァァ!!!限界ギリギリトップスピードォォォォ―――ッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たづな「ひゃ!!?さ、桜木トレーナーさん!!?」

 

 

 突然、閉めかけていた校門を爆走で駆け抜ける男性。

 

 

 赤色のジャケットに白いパンツ。逆立った天然オールバックという外見とは裏腹に、誰よりも優柔不断で優しいトレセン学園のトレーナーさんです。

 

 

 校門を通り、校舎の方へと駆け抜けて行こうとした彼ですが、そのままの向きと体勢で器用に何故か後方へと戻ってきました。

 

 

桜木「ごめんなさいたづなさん!!みっともない姿見せちゃって!!」

 

 

たづな「い、いえ.........危ないですから、遅刻しても大丈夫なので連絡して、ゆっくり来てくださいね?」

 

 

桜木「つ、次からはそうさせて頂きます!!」

 

 

 ビシッと敬礼を決めた後、彼はそのまま先程の速度をもう一度出して校舎内へと入って行きました。

 

 

 .........全く、人がせっかくナレーションごっこでもして暇な時間を潰していたというのに.........今度にんじんラーメンを奢ってもらいましょう。

 

 

たづな「他に学園関係者は.........居ないみたいですね。では」

 

 

 今度こそ、校門を閉めさせて頂きましょう。

 えっと確か、今日の予定は.........理事長が独断で購入したターフ整備マシンの確認と、今後導入する[AIシステム]の資料の確認.........どちらも時間が掛かりそうですね.........

 

 

たづな「あっ、いけない。大切な事を忘れてました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「山あり谷ありウマ娘。始まります♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 [ベテラントレーナー]の朝は早い。

 

 

 新米のトレーナーとは違い、多くのウマ娘を見るチームトレーナーの資格を有するベテラン達は皆、その日に行うトレーニングの内容をしっかりと見直す。

 

 

 これをする事によって怪我をしないか。当日に確認するウマ娘達に不調を感じないか。それを吟味しながらその日その日を調整して行くのだ。

 

 

「.........何を言ってるんだ君は。そもそも遅刻して来ただろう?」

 

 

桜木「.........ただし、[俺を除く]」

 

 

「顔の前で手を組んで言っても威厳は出てきませんよ.........」

 

 

 昼休みと言うのは学生にとって一番の憩いの時間。トレセン学生たるウマ娘にとってもそれは例外では無い。

 ここはチーム[レグルス]のルーム。[桜木 玲皇]。つまり俺のチームルームであり、昼休みにはチームメンバーが集まって来てくれる。

 

 

 今目の前で俺をイジメて来るのはかの有名なアグネスコンビ。[アグネスタキオン]と[アグネスデジタル]だ。

 

 

タキオン「大体、今日はトレーニング無しだろう?新学期だよ新学期。早めに寮に返して欲しいんだがねぇ〜」

 

 

桜木「そうは行かぬのだ。タキオンよ」

 

 

デジ「その口調続けるんですね」

 

 

 そう。季節は春。日本にとっては始まりの季節とも言える4月の1日である。そんな日にトレーニングをするのは直近のレースがある子達だろう。

 だが何を隠そう、この俺のチームはデジタル以外URAファイナルズに出場し尚且つ決勝まで駒を進めた強者達。期間的にもまだ休みを挟む必要がある。

 

 

 だが.........それをしたくても出来ない諸事情が、俺にはある.........!!!

 

 

桜木「デジタル。新入生のお試し体験会。有ったよね?」

 

 

デジ「ありましたね」

 

 

桜木「タキオン。ウチのチームのお試し体験に来た人数は?」

 

 

タキオン「大物Y〇uTuberが動画を出すレベルに来なかったね」

 

 

桜木「どう゛してだよ゛ォォォォ!!!!!」

 

 

 そう.........何を隠そう、このチーム[レグルス]。不人気なのである。

 理由は分からないが、何故か不人気なのである.........!!!

 

 

 有り得ない.........!自分で言うのも何だが、ウチのチームはかなりの強者揃い。中距離では無類の強さを誇るタキオン。芝とダート両方走れるデジタルが居る。

 

 

 それに.........

 

 

「マスター。ミッション[食料の買い出し]を完了しました」

 

 

「お兄さま!にんじんがとってもお買い得だったんだよ!」

 

 

「あのねあのね!!ウララにんじんのあるお店沢山回ったんだよ!!」

 

 

 安定感のある逃げ戦法を得意とする[ミホノブルボン]。相手をマークして勝ち切る技術が卓越している[ライスシャワー]。ダート専でありながら有馬記念で良い走りをした[ハルウララ]まで居る。

 

 

 その上.........

 

 

「.........その様子だと、まだ落ち込んでる様ですわね」

 

 

桜木「!マックイ〜〜〜ン」

 

 

マック「はいはい。貴方のマックイーンですわよ〜」

 

 

 長距離。いや、綺麗なレースに置いて右に出る者は居ないと程されており、現役最強と揶揄される程に強い[メジロマックイーン]も居る。

 

 

 しかも.........俺の[恋人]だ。隙は無い。

 

 

タキオン「はぁ.........君がそうやって甘やかすから彼もメンタルが弱くなるんだよ?」

 

 

マック「だって、好きなんですもの。仕方ありませんわ」

 

 

デジ「うわぁ.........これには流石のデジたんもおこですよおこ。時と場所と場合と周りを見てください」

 

 

桜木「.........いぢめられてるの」

 

 

マック「まぁ!それは大変ですわ!」

 

 

二人「このバカップル(が).........」

 

 

 二人から白い目で見られているが、知らん。だってマックイーンの事大好きなんだもん.........温泉旅行に行ってからも全然気持ちが収まらないんだもん.........

 そうやって彼女の胸に顔を埋めていると、やがて俺を撫でてくれていた彼女の手が離れて行く。それに名残惜しさを感じつつも、どうやら雰囲気はシリアスになり始めていたようだから、それ従う。

 

 

マック「ですがこれはチームの死活問題。早急に何とかしなければいけない案件ですわ」

 

 

ライス「どうして来ないんだろう.........?」

 

 

ウララ「う〜ん.........分かんない!!ブルボンちゃんは?」

 

 

ブルボン「まだチームルームの内装に[メカ]が足りないのかもしれません。マスター。ここにHGデスティニーガンダムspec2&ゼウスシルエットの着艦許可を」

 

 

桜木「ホホ。ダメ☆」

 

 

 とまぁこんな様子で、その不人気の理由が分からないのだ。

 まさかこんな形で壁にぶち当たるとは.........愛想は良くしていたと思うし、なんならトレーナーの中じゃ一番接しやすい人間タイプだと思ってはいたんだが.........

 

 

タキオン「こういう時こそネットの評価だよ。ウマッターで検索しよう」

 

 

桜木「ワオ!めいあ〜ん☆」

 

 

デジ「なになに.........?[顔が怖い]。[何言ってるか意味不明]。[レースの仕方が常識外れで安定しなさそう].........」

 

 

桜木「ワ〜オ.........クリティカルヒッツ.........」

 

 

デジ「[アイスティーに睡眠薬混ぜてそう]。[屋上で焼いてそう]。[うんち]」

 

 

桜木「開示請求するわ。誰書いたか分かってるけど最高裁まで持ってく」

 

 

 酷い言われようだ。試しにデジタルの端末を覗いてみると一人は普通のアカウント(俺がフォロー済み)だが、他二人は公式マークが付けられている。

 しかも寄りにもよって俺の事をどう思ってるかというトレセン学園公式アカウントのリプ欄に直接書き込んでやがる。神経がおかしい。

 

 

マック「ま、まぁ後半は宛になりませんが、前半部分は確かに、このチームの近寄り難さを物語っておりますわね.........」

 

 

桜木「え、俺のせいってこと.........!!?」

 

 

デジ「面白い人だとは思いますけど、確かに自分の夢を背負って貰うには頼りない感じしますよね。傍から見たら」

 

 

 くっ.........!まさかここに来て俺のネタキャラ政策が裏目に出るとは.........!確かに、そんなネタキャラに命なんて賭けられる訳が無い.........!

 失念していた.........俺とした事が、俺の存在自体がチームを危機に陥れている.........

 

 

タキオン「悲劇のヒーローを気取っている所悪いが、そんなに深刻な問題かい?」

 

 

桜木「はァ?君何言っちゃってんの?」

 

 

タキオン「考えてもみたまえよ。私達はG1ウマ娘だ。それが六人。人員補強も必要無いだろう?」

 

 

桜木「.........だって、正直もう君達手が掛からないから給料泥棒してるみたいで気が引けるし」

 

 

 申し訳ない気持ちを込めてそう伝えると、タキオンはその言葉に納得し、新人を迎える為の案を考え始めた。

 俺のチームメンバーは優秀だ。トレーニングの言う事は聞いてくれるし、なんなら自主的にこうしたい。というのを提案してくれる。

 最近では俺が1から10までトレーニングを考えるという手間もなくなってしまい、他のチームトレーナーよりも仕事が無いのだ。

 

 

デジ「確かにそうですね〜。トレーナーさん暇そうですし」

 

 

マック「.........暇だったらダメなんですの?」

 

 

タキオン「君。イチャつきたい気持ちが溢れているよ?」

 

 

 頬を膨らませて疑問を呟くマックイーン。その意図を掴めずに居たが、タキオンの一言で合点が行った。

 最近暇な時間になるとマックイーンが来てくれる。もちろん皆との時間を潰すような事はせず、五分とかそんな時間。じゃれつく時間がある。

 

 

 なるほどなるほど.........偶然だと思っていたけど、あんなに会うのは意図して会おうとしてくれていたのか.........

 

 

 俺が事情を察したのを見て、マックイーンは話題を逸らすように咳払いをした。

 

 

マック「コホン!とにかく、ここはトレーナーさんの誤解を払拭するチャンスです」

 

 

桜木「チャンスって.........何する気なのさ?」

 

 

マック「それは勿論、私達で貴方の良い所をプレゼンするんです。きっと皆さん考えを改めてくれますわ!」

 

 

桜木「.........どう思います?タキオン博士?」

 

 

タキオン「素晴らしい名案だねぇ。それをすれば私がチームを脱退するという点に目を瞑れば」

 

 

マック「!!?な、何故ですの!!?」

 

 

 いやいや。恥ずかしいからに決まってるでしょう。いくらタキオンが目的の為なら色んな事に無頓着になれると言っても限度がある。

 チームメンバーの、それもエースである存在がトレーナーの好きな所を堂々と大勢に発表しはじめたらそれこそ恥ずかしい。

 

 

マック「で、では一体どうするんですの!!?このままではチームに新たなメンバーなんて.........」

 

 

桜木「まぁそこんとこは考えるよ。それこそ俺の仕事だからねぇ〜。んじゃ、皆のお昼下げてくるよ〜ん」

 

 

マック「あっちょっと!!まだ食べます!!おかわりします!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「とは言ってみたものの、どうしたもんかねぇ〜」

 

 

 学園の屋上にて、一人風に当たって考える。現在は午後の授業中。学生であるならばこの時間帯にここには来ないだろう。超が着くほどの不良かゴールドシップを除いて。

 しかし、マックイーン達にああは言ったものの一向に案は思い浮かばない。自分の事ながら、セルフプロデュースする才能は全くもちあわせて居ないのだ。

 

 

 溜息を吐きながら金網に項垂れる。

 

 

「幸せは〜、溜息吐くと〜、死ぬ〜」

 

 

「貴方を詐欺罪で訴えます。理由は勿論、お分かりですね?」

 

 

桜木「真面目に相談応える気無いなら帰れ〜」

 

 

 背後から聞こえて来る脳みその通っていない会話を繰り広げる男二人。それに俺は苦言を呈した。

 にも関わらず、二人はそれに返事を返す事もせずスマホで[シャドウバース]で対戦している。残念ながら俺はプレイしていないので良く分からない。

 

 

「つうかさ〜、別に良くね〜?今更人増えたって大変だろ〜?」

 

 

桜木「俺の話聞いてなかった?[創くん]耳だけじゃなく頭も悪いのかな?」

 

 

「その辺にしとけって玲皇。コイツさっき一ターン目に使えないカードトリプルで揃って投げやりなんだよ」

 

 

桜木「そんな創を容赦なくボコしたせいだと思うんですけど?[宗也くん]って本当に人の心に寄り添う医者なの?」

 

 

 スマホに目を向けながら会話をする男二人。普通の大人の付き合い同士なら絶対に失礼だが、俺達は子供の頃からの親友である。

 

 

 [神威 創]。過去としてはとある企業の研究員.........なのだが、如何せん表沙汰に出来ないほどブラックな環境であり、あれよあれよと言う間に退職。気が付けばトレセン学園で[図書室司書]兼[マンハッタンカフェのトレーナー]を務めている。正直頭の出来で言ったら俺よりスペックは高い。

 

 

 [黒津木 宗也]。え医者ァ.........ニューヨークに居た。俺に嫉妬してキャリア街道をぶん投げてトレセン学園の保健室医になった。おい。その道は地獄だぞ。

 

 

桜木「あ〜あっ![翔也]だったら真面目に聞いてくれたのになぁ!」

 

 

神威「嘘つけ絶対首傾げてたゾ」

 

 

黒津木「その後下ネタ言ってお前の発言にされてボコられるのが見える見える.........」

 

 

 .........とまぁこんな感じで俺達にはまともな奴は一人として居ない。まともこそ異常。そう言っても差し支えない程に異常者で構成されているこの友人関係。

 

 

桜木「あ〜どうすんべ。良い案思い付かないし、理事長室行って久しぶりに花火でもしようかな」

 

 

神威「?朝やってなかったか?」

 

 

黒津木「バレないとやった事になんないんだってさ。バカだよな?」

 

 

 頬杖を付いて下を見下ろす。学園の生徒どころかトレーナーすら居ない。そんな入口前を見た所で面白味などありはしない。

 

 

 .........そう、思っていた。

 

 

桜木「.........?あれ.........」

 

 

 誰も出てきやしない。そう考えていた俺の予想を裏切り、堂々と職員玄関の方から人が出てくる。

 普通の人間よりも一回り大きい体格。まん丸としてずんぐりとしたその存在は学生服に身を包み、そしてそのままある地点に立ってフリップを持っていた。

 

 

 その瞬間。俺に電流が走る―――

 

 

桜木「アレだ.........!!!」

 

 

二人「アレ?」

 

 

桜木「こうしちゃ居られねェ!!!じゃあなバカ共ッッ!!!誰も居ねぇからって淫夢(意味深)すんなよ!!!」

 

 

二人「しねぇよッッ!!!」

 

 

 頭に降りてきた天啓。それに体を突き動かされて俺は屋上を後にする。

 階段を駆け下る最中、俺の頭の中はそう.........新人ウマ娘に囲まれる想像でいっぱいになっていた.........

 

 

桜木(ケケケ、俺の.........玲皇ちゃんの、チーム[レグルス]の時代が来たって事だぜ.........!!!)

 

 

 そうして、俺の求めていた案は頭の中で構成が完成し、後はその為に道具を揃えるだけとなったのだった.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「〜〜〜♪」

 

 

 新学期から一日経った放課後。高等部三年目。私を含めた一部は大学部の最初の授業を終え、それぞれが所属するチーム。或いはトレーナーの元に行く為に身支度を整えていました。

 私も久しぶりのトレーニング。身体を鈍らせない為のランニングや柔軟などはしていましたが、久しぶりの本格トレーニングは胸が踊ります。

 

 

 鼻歌を歌いながら教室の扉を開けると、そこにはチームメンバーであるアグネスタキオンさんが立っていました。

 

 

タキオン「やあやあマックイーンくん。随分ご機嫌そうだねぇ」

 

 

マック「タキオンさん。ええ、久しぶりのトレーニングですもの。精が出るという物です」

 

 

タキオン「感心感心。私も取り溜めていたデータを粗方研究し尽くしてね。今日からトレーニングに専念出来そうだよ」

 

 

 わざとらしい口調ではありますが、彼女の口から出た言葉は本心だと分かります。長い付き合いですもの。この人がどういう人かももうよく分かっています。

 

 

マック「では先日はそのデータを終わらせる為にあの提案を?」

 

 

タキオン「もちろんともさ。URAファイナルズに出場はして居なかったが、[ポッケくん]の走法データをその後に取っていてね。いやはやこれが難解で難解で」

 

 

マック「ポッケさん.........確か、タキオンさんと同期で、ダービーを制覇したジャングルポケットさんですわよね?」

 

 

タキオン「そうともさ。彼女、私への執着心が強くてねぇ〜。いや〜参った参った。決勝で負けて傷心の私を朝方に引っ張り出して何度も並走に付き合わされたんだよ」

 

 

 あっけらかんとまたわざとらしい口調で話しますが、その後ろにある彼女の喜びの感情を感じ取りました。

 口ではそんな事を言っていますが、実際のところ助かっているのでしょう。この人も中々素直で無いところがありますから.........

 まぁ、分かり易い人が多いトレーナーさんのチームには丁度良いくらいです。

 

 

 そうやって他愛も無い話を繰り広げていると、不意にタキオンさんが窓の外を見ました。

 

 

タキオン「ふぅン?今日も居るねぇ。彼。いや、彼女だったかな?」

 

 

マック「?一体誰ですの.........ん?」

 

 

 目を細めてニヤリと笑う彼女。それに釣られて窓を覗き込むと、そこには[ウマ娘の着ぐるみ]を着た存在が学園の外の中心に立ち、何やらフリップを掲げていました。

 その文字を良く見てみると.........

 

 

マック「[アストンマーチャンをよろしく].........?アレは一体.........」

 

 

タキオン「スカーレットくんの同期。アストンマーチャンのトレーナーだよ。実に涙ぐましい行動じゃないか」

 

 

マック「.........思いましたけど、この学園のトレーナーの方々は変人しか居ませんの?」

 

 

タキオン「アーッハッハッハ!!それこそ今更じゃないかマックイーンっ!!どこか狂って居ないとトレーナーなんかやらないさっ」

 

 

 そ、それはまぁ一理あるとは言えますが.........とは言ったとしても、もう少しまともな方が居てもおかしくは無いはずです。

 現に私以外のメジロのウマ娘。彼女達を受け持つ[メジロ家専属トレーナー]は皆さん優秀で品行方正な方々です。

 そのレベルとは行かなくても、もっとまともな.........それこそ、私達のトレーナーさんはウマ娘に対してはとても優しく真摯な方で.........

 

 

タキオン「んん〜?どうやら今日は[お友達]も居るみたいだねぇ」

 

 

マック「!本当ですわ。もう一人着ぐるみを着た方が.........」

 

 

 職員玄関の方から出てきたのはまたもや[着ぐるみ]の方。先に立っていた方と違う点を上げるとするならば、こちらは完全に動物。愛くるしい[ライオン]の着ぐるみを着た方がゆっくりとそのマーチャンさんのトレーナーの方へと歩いて行きました。

 

 

タキオン「おや。フリップも持っているぞ?これはお友達所か、商売敵かもしれないねぇ」

 

 

マック「.........はぁ、まぁ私達には関係の無い事です。早くチームルームへ―――」

 

 

 そこまで言って、私は彼女の方を見ました。そこには先程までの飄々とし、まるで全て見通し済みと言わんばかりの自信に溢れた表情は無く、ただあんぐりと口を開けて汗をダラダラと流すタキオンさんが居りました。

 

 

 何があったのかと聞く前に、彼女は窓の外に向けた視線を変えずに空いた手で私の視線を外の方へと誘導しました。

 そこには先程の、ライオンの着ぐるみを着た誰か。その手には隣に居るアストンマーチャンさんのトレーナーと同じくフリップを―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『チームレグルスをよろしく』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『スピカモネ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人「な、ァガ.........!!!」

 

 

 フリップに書かれていた文字。それを理解して私も同じ様に口を開けます。そして察しました。あのライオンの中身は疑いようも無く、私達のトレーナーさんです。

 

 

マック「あ、あの人は一体何をやっていますの!!?」

 

 

タキオン「.........まぁ良いんじゃないかい?好きに.........やらせて置けば.........っ?」

 

 

 っ、この人はまた最近になって放任的になりましたわね.........!少し前までは私と同じく彼の奇行を叱りつけて居ましたのに.........!!!

 何かを考え始めた彼女は放って置き、私は彼の方へと目線を向け直しましたが.........その瞬間にはもう先程までの場面は無く、お互いがお互いの場所を分捕ろうと体当たりをしあっていました。

 

 

マック「な、なんて愛くるしい.........ではなく!そんなスポーツマスコットの様な事をしても人気は―――」

 

 

 .........ポイポイポイポイ!!!

 

 

マック「あぁ.........あぁ!!!」

 

 

 遂に己の身だけでは飽き足らず、その手に持っていたフリップとどこに隠していたのかもすら検討の付かない予備フリップをお互いに投げ付けて居ます。

 周りではその白熱した交戦に声援を送る生徒達が.........一体この学園はどうなっていますの!!?

 

 

マートレ「―――ッッ!!!」スゥゥゥ

 

 

マック「な!!?」

 

 

 刹那。フリップを投げようとしたトレーナーさんの予備動作を察知し、投げ合いを続けるフェイントを仕掛けたアストンマーチャンのトレーナー。

 見事それに引っ掛かってしまい、彼は余りにも滑らかな接近に対応出来ずにそのまま.........

 

 

 ―――ドゴォォォ!!!

 

 

 着ぐるみ同士の筈の中、器用にパイルドライバーを決められてしまったのでした.........

 

 

タキオン「.........終わったかい?」

 

 

マック「なんでそんな興味無さそうなんですの.........」

 

 

 先の先までずっと考え事をしていたタキオンさん。彼女の視線を誘導するべく外に指を指しました。

 私もその方を見ると、勝者の着ぐるみトレーナーはそそくさとフリップを片付け、一目散に現場から離れていきました。悪評になる可能性があると考えたのでしょう。中々賢い方です。

 一方私達のトレーナーさんは仰向けに倒れたままピクリとも動きません。暫く様子を見ていると、彼はゆっくりと頭の部分を外し、その表情を見せました。

 

 

タキオン「.........泣いてるねぇ」

 

 

マック「.........ええ」

 

 

 痛みによるものか。或いは負けの感情によるものか。定かではありませんが、彼は涙を流していました。

 そして学園に、彼の声が響いたのです.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は!!!!弱いっ!!!!」ドン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人「.........はぁぁぁ」

 

 

 二人で顔を見合せ、深い溜息を吐きます。この調子ではチームの人気を上げることなど夢のまた夢.........

 また前途多難な生活が始まると思うと、悲しいような.........そして何故か嬉しいような気になってしまいます。

 

 

 そして、そのまま私達は春の新入生歓迎イベントに向かうのでした.........

 

 

 

 

 

......To be continued

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 .........今にして思えば、不可思議な事だ。彼は今やURAファイナルズの長距離決勝を勝利したマックイーンくん。彼女を導いたトレーナーだ。そこに疑う余地は無く、明らかな事実だ。

 だと言うのに、世間一般からの評価からギャップを感じる程に走るウマ娘。そしてトレーナー陣達からの評価は低い。それどころか.........以前より[低くなった]気さえある。

 

 

 そしてそれは、[私自身]も感じている。

 

 

タキオン(あの時.........)

 

 

『悲劇のヒーローを気取っている所悪いが、そんなに深刻な問題かい?』

 

 

 何故かあんな事を言ってしまった。普段の私ならば少なくともあんな風に彼の悩みを蹴るような真似はしなかった。

 寮に帰りたいと言ったのもそうだ。研究データは確かに膨大だったが、それも今までトレーニングの片手間で鯖けていた。そのデータに興味はあったが、態々休みを取ってする程重要な物では無い。

 

 

 何かが起きている.........私達。いや、[レース関係者]の間の[無意識下]で、何かが.........

 

 

デジ「.........来ませんね。新入生」

 

 

タキオン「!ああ.........来たとしても、[スピカ]の方だ。こっち側のパンフレットは一枚も取られていないよ」

 

 

デジ「.........何があったんでしょうかね」

 

 

 憶測すら出来ない。だがこの[異常事態]に気付いている者も居る。マックイーンくんはどうか知らないが、デジタルくんは私と同様にこの現状を危惧している。

 最も、その原因も対策も分からないでいるが.........

 

 

桜木「.........はぁ、もうそろそろ時間だな」

 

 

マック「トレーナーさん.........そ、そう気を落とさずに!私達がレースで結果を出せば自ずと新人さんは.........」

 

 

桜木「はは、これ以上君達に望めないよ。十分やってくれてる。後は俺が―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「すみません」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員「!はいっ!!」

 

 

 突然の呼び掛け。待っていたと言わんばかりにその方へ振り向く。

 

 

 そこには手にパンフレットを持った人物が二人。明らかにチームに興味がある人物だ。

 だが残念な事にウマ娘では無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無かった、が.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その、サブトレーナーの募集ってしてますか?桜木トレーナー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一人はトレセン学園トレーナー名門の桐生院家の人間。

 

 

 そしてもう一人は.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、自分もサブトレーナーとして入りたくて.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 名前も知らない、好青年だった.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

......To be continued

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