山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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マックイーン「やってしまいましたわ.........」

 

 

 

 

 

マック「え.........?」

 

 

 運命というのは、非常に残酷なものです。それを告げられた時、私は心底、自分の体を恨みました。

 

 

マック「嘘.........こんなの、何かの間違いですわ.........!!」

 

 

 それでも、目の前の現実は変わってはくれません。自然と口元に伸ばした手が震え、身にまとっていたバスタオルがしゅるしゅると床へ、重力に従います。

 目に映る数字は、一週間前のそれと違う姿を見せていました。

 

 

マック「うぅ.........トレーナーさんに申し訳が立ちませんわ.........」

 

 

 思い当たる節は多々あります。ここ最近、ウララさんやライスさん。そしてゴールドシップさん達とお食事をする機会が多かったのです。羽目を外しすぎてしまいました.........

 ですが、今日から節制してみせます!トレーナーさんの献立表に誓って!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 春一番という名も聞かなくなり、暖かさがその身をくすぐるような季節になってきた。緑も深さを持ち、夏の季節を予感させている。

 

 

桜木「よし、点呼するぞー」

 

 

 ザザザッ.........と集まるという訳でもなく、それぞれがそれぞれのペースで集まってくる。

 

 

桜木「よーし。まずはチーム[スピカ]。リーダーゴールドシップ」

 

 

ゴルシ「おう!!」

 

 

桜木「元気良いのは嬉しいんだけど、頼むからソイツを離してやってくれ」

 

 

 一番右側に先陣切るは、チーム[スピカ]のリーダー。ゴールドシップ。いつものように白銀にヘッドロックをかましながら登場しやがった。

 

 

桜木「お前いつも嫌じゃねえの.........?」

 

 

白銀「πがあるから良い」

 

 

桜木「殺していいぞ」

 

 

白銀「」

 

 

 そうだった。コイツはおっぱい星人だったな。忘れてた。ゴールドシップに首の骨折ってもらわなきゃ

 それにしてもウマ娘が強くて本当に助かる。普通の女子だったら今頃セクハラしまくってて訴えられてるところだ。こいつの為にもありがたい。

 

 

桜木「ダイワスカーレット」

 

 

ダスカ「はい!」

 

 

桜木「ウオッカ」

 

 

ウオッカ「おう!!」

 

 

桜木「.........ウオッカの方がいい返事だったな」ボソ

 

 

ダスカ「はァァ!!!???」

 

 

 目の前で競り合いを始めたスカーレットとウオッカ。すぐ喧嘩するから煽りあいがあるぜこの二人は。

 出席名簿にはサイレンススズカの枠にチェックが付けられている。これはレース出場のために、沖野さんと遠征しているためだ。

 さてさて、うちのメンバーはっと.........

 

 

桜木「チーム[スピカ:レグルス]。リーダーメジロマックイーン」

 

 

マック「はい」

 

 

 うんうん。落ち着いてて品のある返事。いつ聞いてもいいね。

 そう言えば、ここ最近で変わった事がある。それは俺のチームの名前を付けた事だ。

 沖野さん曰く、分裂したチームは、ファンの反感を買いやすいらしい。この子とこの子を応援していたのに、分けられてしまったら応援しにくいというクレームも少なくない。

 そこで言われたのが、前もってチーム名を持つ事。そうすることによって、分裂しますよー。という事を前もってファンに伝えるのだ。

 因みに、レグルスは小さき王。という意味だ。名付けた理由は簡単。俺は金色のガッシュベルが大好きだからだ。

 

 

桜木「タキオンラボ所長。アグネスタキオン」

 

 

 .........

 

 

桜木「タキオンさん?タキオンさん!!」

 

 

 返事が無い。という事は居ないんじゃないか?全く、来ないなら来ないと言ってくれよ面倒くさい。後でメッセージ送っておくか。

 

 

桜木「切り込み隊長。ハルウララ」

 

 

ウララ「ふっふっふっ.........ウララ抜刀斎ぜよー!」

 

 

 そう言いながらシュルシュルシュルと木刀を引き抜いて見せるウララ。可愛いな。小学生の頃修学旅行の洞爺湖で買って良かった。

 これを見ている諸君。洞爺湖と彫られた木刀は高くなるぞ。俺は彫ってない方を買った。

 

 

桜木「アサシンヘッド。ライスシャワー」

 

 

ライス「えい!」

 

 

 グサッ!と、太ももにナイフを突き立てられる.........とは言っても、押し込むと引っ込むおもちゃだ。1種のメンタルトレーニングとも言えよう。

 

 

桜木「.........見よ。愛はこうして人を狂わせる」

 

 

桜木「愛ゆえに、人は苦しまねばならぬ」

 

 

桜木「愛ゆえにッッ!!!」

 

 

ウララ「ハッ!ならば俺は、愛のために戦おう!!!」

 

 

ウオッカ「あ!!今日は俺が言いたかったのに!」

 

 

ウララ「うっららー♪早い者勝ちだもんねー!!」

 

 

 最近、うちのチームでは漫画がブームになっている。火付け役はもちろん俺だ。ライスシャワーが俺の太ももにナイフを刺してこの流れが始まる。

 まぁ乗ってくれるのはいつもウララとウオッカだけなのだが。

 

 

桜木「今日は沖野さんがスズカの付き添いで不在だ。トレーニングメニューは預かってるから、ゴールドシップ。スピカの方は任せてもいいか?」

 

 

ゴルシ「あ?あったりめえだろ!!アタシに出来ねぇ事なんざひとつもねえんだよ!!」

 

 

 俺の手に持っている紙を奪い取り、その内容を確認するゴールドシップ。破天荒な奴だが、とても仲間思いだ。その点に関してだけは信頼のおけるウマ娘だ。

 

 

桜木「白銀の奴を頼ってもいいぞ。アレでも世界ランカーのスポーツ選手だ。練習の腕も一流なのは間違いないからな」

 

 

ゴルシ「だってよ」

 

 

白銀「カス」

 

 

桜木「は?」

 

 

 そういうところだぞ。お前はなんでそんなに口が悪いんだ。

 中指を立てていたが、ゴールドシップのヘッドロックをもう一度決められ、スカーレット達と一緒にトレーニングコースへと連行されて行った。

 

 

桜木「さて、こっちはデータ収集だ。マックイーンはスタミナ管理に関する情報の収集。ライスはメンタル面にプラスの影響を及ぼす情報の収集。ウララは、集中力を鍛えていくぞ」

 

 

マック「分かりましたわ、トレーナーさん」

 

 

桜木「うっし!図書室まで競争するぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウララ「やったー!!!2着だよー!!!」

 

 

桜木「ゼェ.........ゼェ.........!」

 

 

マック「大丈夫ですか?」

 

 

 流石ウマ娘。速さではやはり敵わない。ウララのライスは先に到着したが、マックイーンは俺の速度に合わせてくれた。優しい。

 それでもやはりびり欠は俺だ。流石にあのレベルの距離じゃ息も乱れないか。

 

 

ライス「おにい.........司書さんいるかなぁ?」

 

 

桜木「仲良いのか?」

 

 

ライス「うん!たまに数学のお勉強を教えてくれるの!」

 

 

 司書さんか。そう言えば、ここに来てから一度も図書室に入ってないな。初対面か、なんだか緊張するな。

 

 

ウララ「コンコン!失礼しまーす!!」

 

 

ライス「ウララちゃん。司書さんいる?」

 

 

ウララ「うん!!新聞読んでるよ!!!」

 

 

「やぁライスちゃんにウララちゃん。おやおや、これはどうもトレーナーさん」

 

 

桜木「.........」

 

 

 貸し出しカウンターの受付に座り、顔全体を新聞紙で覆っている男。俺はその男におもむろに近づいた。

 

 

桜木「おい、それ三日前の夕刊だぞ」

 

 

「知ってる」

 

 

桜木「岩山両斬波ァッッ!!!」

 

 

「あぁ!!三日前の夕刊がビリビリに!!!」

 

 

 目の前でわなわなと手をふるわせる男。三人目の親友。神威創がそこにはいた。薄々なんかそんな感じはしていた。こいつの事だから極端まで俺らと関わらないか、関わっておきながら気付くまで放置するかの二択だ。

 いつもそんなだから、まさかとは思ったが、三日前の夕刊を活字中毒症状を抑える為に読むのはこいつしか居ない。

 

 

マック「えっと、トレーナーさんのお知り合いだったのですか?」

 

 

桜木「知り合いも何も.........親友だ。これで俺達全員キモイレベルでトレセン学園関係者だ。お前いつからここで働いてるんだ?」

 

 

神威「去年からだけど」

 

 

桜木「一番乗りじゃん.........」

 

 

 まさか俺よりも早くここで働いていたらしい。だったら言ってくれればいいのに。

 

 

マック「ではトレーナーさん。私達はあちらでデータを収集していますわ」

 

 

桜木「あ、悪いな。気を使わせちゃって」

 

 

マック「いえ、楽しく強くなる。それがあなたのモットーなのですから、あなた自身も楽しいと思った方へ梶を切れば良いのですわ」

 

 

 本当に、この子は思慮深い子だ。人にここまで言わせておいてそれを無下にすることは出来ない。ここはその言葉に甘えさせてもらおう。

 

 

桜木「ありがとうマックイーン。なるべく早くそっちに行くよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「ふぅ、さてと。調べますわよー......」

 

 

 気合を入れる為に、ジャージの袖を捲りました。目の前には数々の栄光を残したステイヤーの走りについて記された書物が置かれています。目の端には食物エネルギーの消費について書かれた本もありますが、必要な文献です。

 

 

ライス「えっと、メンタルコントロール、不安の解消法、プラス思考の作り方.........」

 

 

 隣に座るライスさんも、トレーナーさんに言われた通りのメンタルトレーニングに関する本をどっさりと机に置きました。

 

 

マック「凄いですわライスさん!この短い時間でもうそんなに見つけられたのですか?」

 

 

ライス「うん!ライスね?本を読むのが好きだから、朝とか放課後のトレーニング前の暇な時間は、ここで過ごしてるの。そしたらね、本の場所も大体覚えたんだよ?」

 

 

マック「まぁ.........」

 

 

 素直に凄いと思いました。私自身。あまり物覚えがいいとは言えないので、ライスさんと一緒の立場だったとしても、恐らくそんなことは出来ないでしょう。

 

 

マック「本が好きなのですね」

 

 

ライス「うん!」

 

 

 元気よくそう答えるライスさんの姿を見て、微笑んでいると、奥からウララさんが大量の本を積み上げながらやって来ました。

 

 

ウララ「前が見えないよ〜〜.........あっ!!!」

 

 

ライス「ウララちゃん!?」

 

 

マック「行けません!!!」

 

 

 視界の前方がふさがっているせいで、ウララさんは椅子の足に躓きました。

 このままでは大怪我になってしまうかもしれません。チームメンバーが怪我をする事態は、リーダーとして何とかして避けなければ!

 そう思い、私は倒れてくる本の横をすり抜けて、ウララさんの体を抱き寄せながら、反対方向へと倒れました。

 

 

マック「ふぅ.........大丈夫ですか?」

 

 

ウララ「うん.........ありがとうマックイーンちゃん!!」

 

 

 マック「ええ、これくらい。チームリーダーとしては当然の.........ウララさん?」

 

 

 彼女の視線が何故か、私の腹部に注がれています。なんでしょう。嫌な予感がします。お願いしますから、何も言わないでください。

 

 

桜木「大丈夫か!?凄い音が聞こえたんだが!?」

 

 

神威「うおーい!!本がぐちゃぐちゃじゃねーか!!」

 

 

 走ってきたトレーナーさんと、その3倍ほどの速度で本を整理し始めた司書さん。慌ただしい中でどう説明しようか迷っていると、ウララさんが話してくださいました。

 

 

ウララ「本をね!たくさん持ちすぎちゃって、前が見えなくなっちゃったの!!」

 

 

桜木「怪我は!何ともないか!?」

 

 

ウララ「うん!!マックイーンちゃんがね!!ビューンって助けてくれたの!!かっこよかったー!!!」

 

 

桜木「ホッ」

 

 

マック(ほっ)

 

 

ウララ「そう言えばマックイーンちゃんがぷにぷにしてたよ!!!」

 

 

桜木「何だって!??」

 

 

マック「」

 

 

 何か、私の中でガラスのような何かが割れた音が聞こえました。なんでしょう。顔が熱いです。今すぐにでも走り出したい。この人の前から消えてなくなりたい.........

 

 

マック「わ、私失礼させていただきますわ〜〜〜〜!!!!」

 

 

桜木「マックイーン!!!!??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「.........」

 

 

 どうしましょう.........恥ずかしくなってしまい、つい逃げ出してしまいました。トレーナーさんは許してくれるでしょうか.........

 夏を予感させる風が素肌を撫でますが、今はさほど、心地良いとは言えませんでした。

 

 

マック「トレーナーさん.........」

 

 

「大丈夫か?」

 

 

マック「っ!トレーナー.........さん?」

 

 

白銀「よっ、結構似てただろ?」

 

 

 木の影から現れたのは、トレーナーさんのご友人である、白銀翔也さんでした。

 なぜここにいるのでしょう?彼は確か、トレーナーさんにゴールドシップさんの補佐を頼まれていたはずです。

 

 

マック「えっと.........」

 

 

白銀「ゴルシは置いてきた。はっきり言って、俺が付いて行けないんでな」

 

 

マック「そ、そうですの.........」

 

 

白銀「なんか悩み事か?」

 

 

マック「そんな所ですわ.........」

 

 

 私は体育座りのまま、うずくまるようにして顔を伏せました。頭の中ではどう謝れば良いかという思考がグルグルと回ったままで、まとまることはありません。

 白銀さんは距離をとりながら、私の隣に座り込みました。

 

 

白銀「玲皇には言ったのか?」

 

 

マック「いえ.........」

 

 

白銀「なんで、言えばいいのに。アイツ優しいから何でもしてくれるぞ?」

 

 

マック「今の私にはその優しさが苦しいのです.........」

 

 

 そう、彼は優しい。その優しさのおかげで今の自分がいるというのに、私はその優しさを無下にしたのです。それに甘えることは、許されざる行為だと思います。

 しかし、そんな私の思いを感じ取ったのか、目の前の人は、カラカラと笑いました。

 

 

白銀「そんなの気にしなくていいぞ!アイツお前のこと好きだから!!」

 

 

マック「.........えぇ!?」

 

 

白銀「やっべ」

 

 

 目の前の白銀さんは顔を逸らし、口元を手で抑えました。

 いえ、この際この人の所作などどうでも良いのです。問題は.........

 

 

マック「あの人が.........私のことを.........?」

 

 

白銀「あー.........俺が言ったって言わねえでくれ。学生の頃それやってブチギレられたことあっからさ」

 

 

 初犯ではないのですね.........この人にこういう相談事を言うのはやめて起きましょう。

 

 

白銀「まぁ傍から見てりゃ分かるぞ。アイツお前と居ると素になりやすいから」

 

 

マック「そうですの.........」

 

 

 体温が徐々に上がっていくのが分かります。あの夕焼けで誤魔化した熱さが、もう一度蘇りつつあります。

 ですが、好きというのも種類があります。それが友愛なのか、親愛なのか、それとも.........その、恋人の様なものなのか。ハッキリとはわかりません。

 

 

白銀「いやか?」

 

 

マック「い、いえ!嫌というより、むしろ.........」

 

 

 って、私は何を言おうとしているんですの! ?まずいですわ、ここは一度心を落ち着かせなければ.........

 

 

桜木「マックイーン!!!」

 

 

マック「ひゃあ!?」

 

 

白銀「うわ、こんなところ見られたら面倒くさそうだから退散するわ。頑張れよー恋する乙女よ」

 

 

マック「な!?誰が恋する乙女ですか!!?」

 

 

 背を向けてバタバタと走り去る白銀さんに、思わず叫び声を上げてしまいます。そんな私の声が聞こえたのか、トレーナーさんが走ってきてしまいました。

 

 

桜木「ハァ.........ハァ.........マックイーン.........やっと見つけた.........」

 

 

マック「トレーナーさん.........ごめんなさい。私.........」

 

 

桜木「コラっ!」

 

 

マック「っ!!」

 

 

 彼の大きな声が辺りに響き渡ります。怒られる。そう思い、まるで小さい子供のように目を瞑ってしまいました。

 

 

桜木「.........って、言った方がいいかな.........?」

 

 

マック「へ?」

 

 

桜木「いや、人に怒った経験は無いけど、マックイーンは怒られたそうだったから.........」

 

 

 ハハハ、と力なく笑う彼の姿が目に写ります。全く、貴方はどこまで優しいのですか?そんな呆れも混じった素敵な感情が、私の笑いを溢れさせます。

 

 

マック「ふふっ......もう、私に聞かないでください」

 

 

桜木「でもまぁ、今回の件は正直予想はしてたんだ」

 

 

マック「え?」

 

 

桜木「あの献立表はまだ未完成。人伝に聞いた健康志向料理とバランスの良い栄養素の兼ね合いを測っただけのもの。こういう失敗を繰り返して、あの献立表をそれこそ、マックイーン用にカスタマイズしていく予定だったんだ」

 

 

 そうだったのですね.........少し、安心しました。自分の不摂生が原因だったとはいえ、こうなってしまうことが許されると思うと、気が楽になります。

 

 

桜木「.........と言っても、マックイーンはそれでも自分を責めそうだから、提案しよう」

 

 

マック「提案ですか?」

 

 

桜木「ああ、俺と一緒にダイエットする事だ」

 

 

 そう言いながら、トレーナーさんは私の頭に手を起きました。寝ぼけていた時とは違う、今度はちゃんとした意識のある手で、優しく頭を撫でてくださいました。

 

 

マック「と、トレーナーさん.........」

 

 

桜木「マックイーンは責任感が強すぎる。それは今に始まったことじゃないから、俺は別の角度で、お前の責任感を軽くしてやる。まぁ、流石にスイーツ制限は一人でやるのは辛そうだから、俺も一緒にやるぞ」

 

 

 一緒に頑張ろうな!と、元気に笑いかけてくださるトレーナーさんの顔を見ると、胸が苦しくなります。

 けれど、まだです。まだ、この感情に名前を付けては行けません。私にはまだ、それをする勇気も、力もまだ無いのです。

 

 

マック「一緒に頑張りましょう。トレーナーさん」

 

 

桜木「おう!」

 

 

 今は.........この感情を親愛だと思いましょう。大丈夫です。トレーナーさんの言っていた通り、私達にはまだ、時間があるのですから。

 そう思うと、胸を締め付ける何かが、緩まってくれた気がしました。

 

 

桜木「じゃ、明日から作戦開始だな!!」

 

 

マック「えぇ!さしずめ、ダイエット作戦と言ったところですわね!」

 

 

桜木「ハハハ!まんまじゃん!」

 

 

 夏を感じさせる青い風。彼の離した手の温もりを払う様に涼しさを感じさせますが、それが嫌だと思う事はありません。

 なぜ、そう思うのか、理由はまだ見つけようとはしていませんが、いずれ見つけてしまうと思います。その時には私達がどうなっているのか、とても楽しみですわ。

 

 

桜木「よっし!せっかくだからどっちが体重減らせるか勝負しよう!勝った方が負けた方に一個お願いをする!」

 

 

マック「あら、私に勝つ気でいらっしゃるのですか?トレーナーさん。ずいぶんとまぁ、強気ですのね」

 

 

桜木「ったりめえだ!アスリート相手には本気でやんなきゃ勝てっこないからな!ガチでやらせてもらおう!」

 

 

マック「ふふっ、楽しみしていますわ。結果は二週間後.........で、よろしいですわね?」

 

 

桜木「ああ。それで構わない。勝敗はともかく、痩せたという事実があれば俺は満足だからな」

 

 

タキオン「トレーナーくぅーん。なんで君は私を起こしてくれないんだぁ〜」

 

 

 トレーナーさんと二人で笑いあっていると、校舎の方からフラフラと現れたアグネスタキオンさんがこちらへと駆けてきました。

 

 

マック「タキオンさん?今日はどうされたのですか?」

 

 

タキオン「ああ!聞いてくれマックイーン君!そこの木偶の坊だがてんで役に立たないぞ!」

 

 

桜木「ああ!?何言ってんだワガママタキオン!!寮まで起こしに来て欲しいなんて無理に決まってんだろ!!トレーナーは立ち入り禁止!この前それやってガッツリ怒られたの忘れたのか!?」

 

 

タキオン「いや、怒られたのは君だけだろ」

 

 

桜木「お・ま・え・も・だッッ!!!なんならお前と俺7:3位の意識配分だっただろうが寮長も!!お前も何か言ってやってくれマックイーン!!」

 

 

マック「へ!?私がですの!?」

 

 

 目の前で繰り広げられる怒涛の展開に、つい思考を放棄していました.........迂闊でしたわ。

 ですが確かに、タキオンさんのこの堕落具合は目に余ります。ここは一つ。チームリーダーの私がガツンと一言言わなければ!

 

 

マック「コホン!良いですかタキオンさん。私達はアスリートです。トレーナーさんはトレーニングを見てくださっておりますのに、そのうえプライベートまで管理しろというのはいささか酷ではありませんこと?」

 

 

タキオン「えー?起こしてくれよー。減るものなんて君の時間くらいだろー?」

 

 

桜木「信用も減るんですよね」

 

 

 ギリギリと歯を擦り合わせながら受け答えするトレーナーさん。普段の優しい姿とは違うはずなのに、いかにも怒っていますよー。という顔を見せてくれると言うのは、やはり彼の優しさなのでしょう。思わず、笑ってしまいました。

 

 

タキオン「仕方がない。君がそこまで言うのだったら諦めよう」

 

 

桜木「おう、ぜひそうしてくれ。そしてその手に持っている薬を俺によこせ」

 

 

タキオン「君と居ると、どちらが実験しているのかわからなくなるよ.........」

 

 

 嬉々としてあの見た目の怪しい薬を飲み干す彼の姿。もう見なれてしまいましたが、傍から見ると本当にすごい光景ですわね.........

 タキオンさんと二人で引き気味になりながらも、体全身を発光させて満足気なトレーナーさんを見ている。いつも通りの日常の風景が完成していました。

 

 

桜木「さ、図書室に戻るぞ。ウララとライスも待ってるからな」

 

 

マック「そうですわね。行きましょうか、タキオンさん」

 

 

タキオン「そうだね。今行っている実験も割と静かになってきた所だから、今日はトレーニングに付き合うよ」

 

 

桜木「出来れば今日『も』っていう状態になって欲しいんですがね」

 

 

 苦笑いを浮かべながら、図書室へと向かうトレーナーさん。その隣を私達が歩きます。こうした日々が続いてほしい。そう思いながら、図書室へと向かいました。

 

 

「そこの発光しているトレーナー!!直ちに止まりなさい!!」

 

 

桜木「げっ!!エアグルーヴ親衛隊だ!!」

 

 

 .........やっぱり、もう少し光る強さは押えて欲しいと思いますわ。

 

 

 

 

 

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ......To be continued

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