山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜 作:ギノっち@カマタラル
ビール「皆さん初めましてっ![ばーんなっこーチャンネル]のビールちゃんですっ!ばーんなっこー!!」
全員「.........」
ビール「ちょ!!!皆一緒にやるって言ったじゃん!!!ほらいっせーのーで!!?」
全員「ば、ばーんなっこー.........?」
太陽が俺達を照りつけているグラウンドの上。そこでチームメンバー全員集まってカメラの前で自己紹介をする。
掛け声と共にバンザイをしてから片手を前へ出す動作をする決めポーズ。う〜んやはり完成されている.........
ビール「このチャンネルは[アオハル杯予選]が終わるまで毎日配信する予定ですっ!!アーカイブも残すから、皆コメントと高評価宜しくね〜♪」
シリウス「.........どうしてこうなった?」
―――私は頭を抱えた。何故こうなったか?その原因は良く分かる。しかしどうしてこの現状へ至ったのか?それが分からない。
カメラの目の前であのバカは大袈裟な身振り手振りでチャンネルの説明をしてやがる。
そして正面にはパソコンを持ったバカの親友二人が配信画面を確認している。
タキオン「.........厄介な事になったねぇ」
デジ「あの人、作戦も全部配信するみたいですよ」
桐生院「えぇ!!?き、聞いてないです私!!!」
カフェ「マックイーンさんがこっそり教えてくれました.........」
あぁ、頭が痛い.........いや最早頭痛が痛い。このチームはそういうチームだが、その根本的な原因がこの[トレーナー]だ。あまりにも無茶苦茶すぎる.........
ビール「え?このチャンネルの解説理由?なんだっけ名前?[らいじんたっこーチャンネル?]」
カレン「ビールちゃん。[ばーんなっこーチャンネル]だよ?自分で決めたんでしょ?」
ビール「あっそうそう!んでその[ダサダサ風神拳チャンネル]なんだけど」
バク「ちょわ!!?カレンさん!!お顔が大変怖い事になっておりますよ!!?」
背中にカレンの圧が突き刺さってるっつうのに、アイツは素知らぬ顔で話を進める。
その間にチャンネル名は[運びすぎ奮迅竜巻チャンネル]だの、[バカすぎ迅雷脚弱派生チャンネル]だの、終いには[ベガとエドとキャミィはナーフしても良いけどケンだけはナーフすんなよチャンネル]になってやがった。長すぎる。
そんな長すぎるチャンネルの主が、事の顛末を口にして行くのだった。
ーーー
ビール「なんじゃァァァこりゃァァァ!!!??」
のどかな昼のトレセン学園。身体を温める為のウォームアップをし終えた俺は、[アオハル杯予選]のトーナメント表が張り出されている廊下に立ち、その出走チームを見て度肝を抜かれた。
[アオハル杯]。とてつもなく大きなレースだ。チーム対抗。参加チーム数を加味すれば下手すれば[URAファイナルズ]よりも大きなレースとも言える。
予選では[ディヴィジョン分け]がされており、それぞれA。Bとなっている。そこから一位通過のチームが決勝でぶつかり合う.........という事になっているが.........
ビール「なな、なんで[リギル]が[2チーム]もあるんだよ.........!!?」
俺達の参加するのはA。そしてそこにはリギルが居る。それだけならば良かった。決着を早めに付けられる上に、マックイーンを取り戻せる。
そう思っていたが、同じ所に何故かもう一つの[リギル]が存在していた。
「ホント、姑息な事を考えるわね。あの男.........」
ビール「!」
『っ!Mさん!!?』
隣で呆れたような声を上げる少女の声。その方を振り返ると、げんなりとした表情で貼り出されているトーナメント表を見るマックイーンがそこに居た。
ビール「どどどどういうことだってばよ!!?リギルって確かに人数多いけど、分ける程じゃ.........」
マック「本来ならそうね。けど、[外部]のウマ娘を寄せ集めて人数をかさ増ししたなら話は別」
マック「端からこれが[狙い]だったのよ。あの[男]は」
『チッ、クソダリィなァ』
そう。ダルい事この上ないのだ。リギル対策に対して俺達は[二倍]の対策を施さなければ行けない。
その理由は単純。一回目のレースで大方の戦略がバレてしまうからだ。
そうなってしまえば二回目の対策済みレースでかなり苦戦を強いられる.........
一体どうすれば良いのだろうか.........
マック「.........はぁ、大変大変。[アオハル杯]って疲れるわ」
ビール「え?」
マック「だって[バレる]じゃない?同じ出走者でレースを固めてしまえば対策されやすいでしょう?」
マック「何度も[見せる]んだし」
ビール「[何度]も.........[見せる].........」
白々しい言い方でマックイーンはそう言った。彼女はそのまま俺の回答を聞くこと無く、優雅にこの場を去って行く。
彼女の後ろ姿を見つめながら、脳裏に過ぎる[作戦]。それに言葉で肉付けして行く。
必要なのは[撹乱]。悟らせない事だ。一度のレースで全てバレない様にしなければ行けない。
だが確実に奴は紐付けで対策を講じる。東条さんも居るんだ。俺達の戦略一つ対策して終わり。なんて事は絶対にしない。
ではどうする?
簡単だ。
[見せ続ければ良い]。
ビール「.........く、ククク」
『?おい、大丈夫か?』
ビール「おいおいィ.........そりゃ[俺の土俵]だぜ?態々登ってきてくれたのかよォ.........」
『.........あぁ、この顔は相当悪い事を企んでますわね』
ビール「だったらもてなしてやるさ.........[ド派手]になァ.........!!!」
こうして、俺は[相手の頭を破壊する]奇策を思い付き、それを実行していく事に決めたのであった.........
ーーー
ビール「はいっ!という訳でアタシは水中ハンドボールをファインさんとやって行きまーす♪」
ファイン「水中ハンドボール?ねぇねぇ!どうやってやるの!!?」
配信場所を移し、プールサイド。ボールを片手にまだあまり話せていないファインモーションとの合同練習を画策する。
.........そのつもりなのだが。
ビール「.........それで、あの。そちらの[方々]は.........?」
ファイン「この人達は私の[護衛]なの」
「.........」
明るく笑顔でそう紹介するファインさん。しかし当の本人達は俺を養豚場の豚を見るような目で俺を見てきている。
え、何その目。めちゃくちゃ俺の事睨みつけてきてるんだけど。何かした?俺、何かやらかした!!?
い、いやいや!!いくら世間知らずで有名人に疎い俺でも?ファインさんが[殿下]と呼ばれる立ち位置に居らっしゃるのは重々承知しております!!(チーム加入時にマックイーンに口酸っぱく粗相はするなと言われた)
故に今の今までこう、あまり失礼の無いように.........というか怖すぎてコミュニケーションすら取らずに来たんだ。何かを言われる筋合いは無いっ!!!
ファイン「あの、何故ビールさんを睨みつけているのですか?隊長」
隊長「殿下。この者の[正体]を私達は[突き止めました]」
ファイン「え?し、正体って」
隊長「この者はべふっ」
―――隊長がビールさんの正体を言いかけた時、その顔にボールが当たった。
でもそれは投げつけたって言うよりは、優しくパスを出すような感じ。本気で投げてたら後ろに倒れてプールに落ちちゃうし。きっと手加減してくれたんだと思う。
隊長「.........何か?」
ビール「ごめん。手が滑っちゃって」
隊長「.........はぁ。良いですか殿下。この者は」
ビール「あぁぁぁぁ!!!」
隊長「今度は何ですか!!!」
ビール「あぁあ!!あぁああああ!!!何も思い付かない〜〜〜!!!」
ビール「叫んでみたけど〜!!!♪何も思いつかないから〜〜〜!!!♪あぁぁぁオペラ座の怪人〜〜〜!!!♪」クルクルクルクルドボン
わっ、ビールさんが凄い勢いで回転してプールに落ちて行っちゃった。
しかも隊長が無視して口を開こうとしたら今度は無言で一人シンクロし始めちゃって.........中には吹き出しそうな人も居るし.........
ファイン(.........凄い。私でも笑わせた事一度もないのに)
幼い頃から知っている人達。私の護衛をしているSP部隊は私の顔見知りしか居ない。
新しく入ってくる人も居るけど、それも私と関わりのある人。知らない人がなる事は本当に無い。
それに対して不満も不安も無い。私は王家の生まれだもん。何かあったら大変な事になるって私が一番知っている。
けれど.........知っている人の笑顔が見れなくなるのは少し、悲しくなる。
隊長「.........もう良い。殿下、この件については後で「ううん」?」
ファイン「私も[知っています]。シャカールから聞きました」
隊長「なっ.........!!?では何故面識の無い者と水着の姿で!!!」
ファイン「シャカールが言ってたんです。[チームも悪くない]って」
ファイン「彼女がそう言ってしまう程の素敵な場所。私も黙って居たくないんです」
ファイン「―――ご忠告ありがとうございます。隊長」
隊長「!」
―――ファインモーションはSPを統括している隊長であるウマ娘に微笑みそう告げると、延々とシンクロしながらオペラを繰り広げるウエスタンビールの元へ向かうためにプールへと飛び込んで行った。
SPはまた頭を抱えた。トレセン学園に来てからという物、彼女の奔放さに拍車が掛かり、いつか泡沫のシャボン玉のように忽然と姿を消してしまうのでは無いかと、一抹の不安を抱えていた。
しかし、それを拭い去ってしまうほどに今を楽しむ彼女の姿を見て、かつての息苦しい生活から解放され、報われたと思ってしまう。
彼女の事も、そして自分達の事も.........
.........そんな会話を交わし、お互いの心情を察していた二人だったが、当のウエスタンビール(桜木)の心情なのだが。
ビール(バレたら殺されるッ、バレたらバラされるッッッ!!!!!)
既にバレている事も知らずに、ただひたすらに[道化]を演じ続けるのであった。
ーーー
フジ「これと、これと。あとこれも。スープは.........」
ビール「お、おいおい。流石にこの量は.........」
ポッケ「ああなったフジさんは止められねぇよ。大人しく待っとけって」
時刻は夕飯時。トレーニングを終えたオレ達はカフェテリアでそれぞれの晩飯を調達していた。
オレもそうしようと思ったが、何の飯が一体どう作用すンのか分かンねェ状態だったから、フジキセキを頼ってみたンだが.........
フジ「お待たせ♪今の君に必要な栄養素を沢山盛り込んだから、しっかり食べてね♪」
ビール「.........ゴクリ」
ポッケ「懐かしいなぁ。俺もナベさん所に来た頃はこれくらい食ったっけ」
思わず唾を飲み込む。別にこれは目の前の飯に唾液が出てきたとかじゃねェ。この飯を残さず食えンのかっていう自分への疑念だ。これを食い切る覚悟が出来てねェ。
ビール(.........フジには悪ィが、ここは[代わって]貰うか)
ビール「!.........頂きます♪」
二人「.........?」
―――ふっふっふ。まさかこんなタイミングで代わってくださるだなんて、あの人も偶には優しいのですね。
お二人はまだ私の変化に気付いて居ないはず.........ここは少しはしたないですが、急いで食事を―――
タキオン「おっと。これは回収させてもらうよ〜?」
ビール「な!!?わ、私のデザート!!!返してくださいましっ!!!」
フジ「ん?
ポッケ「ほらフジさん。この前説明した奴っすよ」
ま、まさかタキオンさんにデザートを取られてしまうだなんて.........しかもそれでフジキセキさん達にも私の事がバレてしまって.........
うぅ、意地悪な人です!タキオンさんはやはり意地悪な人ですわ!!!
タキオン「.........そんな顔を向けてもダメな物はダメだよ。君の傾向からこの量を食べたら歯止めが効かないだろう?」
マック「う、うぐっ」
タキオン「だからこっちだ。半端に量の無い物よりしっかり量を取れば満足出来る筈さ。普段の君と同じならね?」
マック「!タキオンさん.........!」
な、なんて優しい人なんでしょう.........!私の傾向をしっかりと見抜き、決して食べ過ぎないよう食事の量を調整して下さるなんて.........!!!
誰ですか一体!この人を意地悪で捻くれた性格をしていると言った人は!!!私がその根性を叩き直して差し上げますわ!!!
フジ「この雰囲気.........確かにマックイーンの物だね」
ポッケ「ビックリっすよねぇホント」
タキオン「コホン。一応ビールくんの[人格]の一つ。と設定しているから、君達もそういう振る舞いを頼むよ?」
ポッケ「つってもよ〜タキオン?ここまでマックイーンだと、あの無茶苦茶な奴の名前で呼ぶの何か違和感あるぜ?」
ビール「そ、それは.........」
私としましては、トレーナーさんの評価がそこまで下がっている事に反論したい所ではありましたが、最近の彼の奇行を見ていると流石に擁護も出来ませんでした。
しかし、呼び名については一理あります。私自身もこう、違和感と言いますか、皆さんが私に変わった時に呼びにくいだろうと言う実感は感じておりました。
良い名前.........うぅ、中々難しい.........
ビール「[エール]ちゃんってのはどう?」
ポッケ「お!良いなそれっ!!.........って!!?」
ビール「ふっふっふっ。本家本元ビールちゃんだよ〜ん♪」
フジ「なるほどなるほど。確かに[彼]らしさを感じられるね」
い、いつの間にか彼に身体の主導権を乗っ取られ.........いえ、この場合は戻されたと言えるのでしょうか?
ま、まぁとにかく、私の呼び方で困る事は無くなりました。これで皆さんの混乱は起きないはずです。
因みにではありますが、あの方の名前もサンちゃんから[サニー]という呼び方をトレーナーさんが提案なされました。
やはり少々距離感が近い呼び方だった為、呼ぶのがはばかれる方もいらっしゃいましたが、この日以降、あの人が身体の主導権を握る際はそう呼ばれる様になって行ったのでした.........
ーーー
チーム[レグルス]がその活動を配信し始めて一週間が経過した。
ビール「アイィィィィィッッッ!!!!!」
並走練習では本番顔負けの熱意の籠った応援を飛ばし。
ビール「これはもうっ!!!負けないっす!!!」
時には行き過ぎた発言がレース界隈にて物議を醸し。
ビール「ミホちゃんデストロイモードッッ!!!ミホノデストロイッッッ!!!!!」
全員「やかましいッッッ!!!!!」
ブレーキの壊れた振り切れたテンションは、次第にチームのファンとアンチを尽く増やして行った.........
そして、予選の初戦が翌日に控えた金曜日の作戦会議にて.........
桐生院「で、ではこれより。チーム[レグルス]の作戦会議を行います」
ビール「よっ!!待ってましたっ!!!」パチパチ
―――いよいよ、初戦に向けての作戦会議が始まる。ここでようやく、ウチから誰が、どの距離どのコースに出るのかが決まるのだ。
桐生院「まず第一レースの中距離ですが、シャカールさん。ブルボンさん。そしてサニーさんで行きましょう」
シャカ「脚質をバラけさせて相手の意識を削ぐか.........まァ悪くはねェ」
人員の内容から察したのだろう。シャカールは言葉通りの表情を浮かべつつ、レース本番の走りを頭の中で構築し始める。
ブルボンも同様に瞬時に頭の中で展開を浮かべているのが見て取れる。サンちゃんも同じ様子だ。やはり思っているより生真面目な人だ。
桐生院「第二レースのマイル。こちらはデジタルさんとファインさんにお願いしましょう」
ファイン「よろしくね♪」
デジ「ふぉお.........!なんと神々しい.........!全力でお願いいたしますっ!」
フジ「ごめんね二人とも。まだ調子が戻りきって無くて」
申し訳なさそうに謝るフジキセキだが、それを聞いて二人は勢いよく首を振る。彼女達もフジさんの脚の状況は知っている。出来ることなら無理はさせたくないのが俺の本心でもある。
ビール(屈腱炎か.........しっかり見極めねぇとな)
彼女の脚も一番酷い状態からは脱している。だがだからと言って無理をさせれば再発する可能性は極めて高い。
彼女の[出番]は必ずある。けれどそれは数少ない。主役以上に目立つ[助演]は不服かもしれないが.........出来ることならこれ以上にない仕上がりを感じさせてやりたい。
ビール(その為にも、早く見つけねぇとな)
今のところ、フジキセキを治す手立ては無い。しかし無いながらも、今の状態でもトレーニングは出来る。
脚への負荷を極力減らし、動きの部分でトレーニングを詰めるのならば.........そう考え実行しているのが、今の俺のトレーニングだ。
一見、走りに関することばかりか他のスポーツしかやっていないように見えるが、その中で走りに、レースに役立つ物はある。
彼女は賢い。わざわざ口で伝えなくとも、自分がそれをする中で何が必要なのかが自ずと見えてくるはずだ。
桐生院「第三レース。ダートはウララさん。そしてミークで行きます」
ウララ「ミークちゃんっ!一緒に頑張ろうねっ!!」
ミーク「うん.........頑張ろう」
元気の良いウララと息を巻くハッピーミーク。今回のダートはデジタル不在の二人出走となる。
ウチのマイルの層が薄いのが根本的な原因ではあるが、正直二人にかなり任せられるという事もある。
桐生院さんもそう考え、距離適性とバ場適正の広いミークをダートレースに向けて更に仕上げてくれた。
それに彼女の走りは力強い。その適正の広さから見せておくだけで勝手に他のチームは圧が掛かるはずだ。
桐生院「第四レースの長距離はライスさん。カフェさん。オペラオーさんで行きます」
ライス「よっ、よろしくお願いしまひゅ!!」
カフェ「ライスさん。そんな緊張しなくても.........」
オペ「あぁそうか!ライスさんもきっとボクの煌めきの眩しさに当てられて、冷静になれないのだろう!!でも大丈夫っ!!この光はきっと君の身体を暖めてむぐっ」
二人「うるせェ」
脳内で生まれた設定をまるで事実かのような口調で捲し立てるオペラオー。それをシリウスとシャカールが口を抑えて止め、大半は苦笑いを浮かべる。
長距離に関しては不安要素は無い。あるとするならばやはり、オペラオー。マンハッタンカフェ。ライスの[脚]だろう。
三人一緒に出すのは今回で一旦終わり。次回からは各々の様子を見てローテーションを回して行けばダメージは最小限になるはずだ。
.........それに、いざとなればこっちには[彼女]が居る。
ビール(.........もしもの時はお願いするね。マックイーン)
『!ええ、でももしもの時。なんて言わずに好きに頼ってください♪』
俺の隣に居る彼女は微笑みながら俺の言葉を了承してくれた。その後に続く言葉には更に甘さを高めた笑みまで乗せてくれた。う〜ん勝てない.........
洗練された[レース力]。既に彼女は限界値に近いレベルで完成されている。
[繋靭帯炎]の影響のせいで以前ほどの圧倒的な力量差は見せつけれなくなったが、だからと言って彼女の培ってきたレースの展開力。そしてそこに至らせる為の圧の掛け方は変わらない。
いや、むしろ以前以上に増している。
未だ[影]は払えていない。当たり前だろう。想像を絶する痛み。忘れる方がどうかしている。
俺ですら未だに右肩のありもしない痛みに目を覚ます時もある。彼女はむしろよくやっている方だ。
.........しかし。
ビール(これは俺の身体だ。コイツに慣れちまった時、元に戻って走り方がおかしくなったら笑いもんだ)
ビール(彼女を出すなら[二回]が限度。それ以上の練習は影響を残す事になる.........)
確証はない。だが杞憂とも言い切れない。未だかつて誰も経験していない状態だ。参考にできる物なんてありはしない。備え、予測する事に損は無い。あるとするならば気苦労くらいだ。
だがそれだけで済むなら安い。むしろ株で儲けたと言っても良いレベルの出来事だろう。なるべく彼女には頼りたくない。
桐生院「第五レース。最後の短距離戦なんですけど.........」
カレン「?どうしたの桐生院さん?早く発表しよ?」
バク「はっ!!もしや余りにお疲れで私のお名前を忘れてしまったのかもしれません!!私の名前はサクラバクシンオーですっ!!!」
桐生院「そ、それは分かります!えっと、カレンさん。そしてバクシンオーさん.........」
「.........それと、[ビール]さんです」
全員「.........ん?」
―――聞き間違いだろうか?今確かに、[彼]の名前が呼ばれた様な気がする.........
いやいや。待て待て待て。いくらトレーナーくんが無茶苦茶だからと言ってそれは無い。この仕事を初めてもう彼も[八年目]だ。明らかに聞き間違いだ。
そう思い桐生院くんの方を見たが、その顔は気まずそうにしていて、視線を横へと背けていた。
タキオン「おいおい.........おいおいおいおい!!?」
ビール「ふっふっふ。勘のいい君達と視聴者諸君は既に察したと思うが.........」
オペ「ままま待ちたまえ!!!サニーさんも出走するんだろう!!?わざわざもう一度出る必要はあるのかい!!?」
バク「ハッ!!もしや中距離と短距離を走る事で実質的に[長距離]を走った事にするという理論なのでしょうか!!?」
全員「なんだ(なんですか)その理論!!?」
突然唱えられた長距離理論。確かに1200mと2000m。合わせれば天皇賞・春の3200mに及ぶ距離だ。
だがしかし、どう頑張っても同等とは言えない。2000mを全力で走った後、1200mも全力で走るとなるなるばそれ以上にスタミナと体力を消費するはずだ。
カレン「その、エールさんは良いって言ってるの?」
ビール「え?うん。好きにしなさいって」
全員(それ了承じゃなくて呆れなんじゃ.........)
愕然とした.........彼は確かに無茶苦茶だ。だがレース当日はそれも鳴りを潜め、れっきとした一人の[トレーナー]としての振る舞いを見せてくれていた。
それが今、身体は[学生時代]の[ウマ娘]となったことで精神的にも[若返った]ということなのかもしれない。私は、彼の見たことも無い[少年時代]を念頭に置くことを忘れてしまっていた.........
ビール「という訳で.........♪」
「ビールちゃんは[短距離]と[中距離]っ!二つも走っちゃいま〜す♪」
机の上に置かれたカメラ。それを持ち上げて自分を映し出しながら、彼女はとびっきりの笑顔と決めポーズを決めて視聴者にそう宣言した.........
前代未聞の[二回出走]。日を跨がずに連続の出走は前例が無い。
それを逆手に取り、彼はこの[アオハル杯予選]の話題を、更にかっさらって行くのであった.........
......To be continued
オマケ
|突如現れたとてつもない程にどうしようも無いバカ《ウエスタンビール》に対するネット民の反応集
「これ誰?」
「知らない子だな…」
「知らないけど何か知ってる」
「マックイーン&桜木トレーナーとでトレードされて入ってきたヤベー奴」
「ジェネリック桜木」
「相対的に見てトレセン学園の殆どがまともに見えてくる存在」
「本当に頭のおかしい奴は嫌いらしいよ」
「おまいう」
「でも多重人格者なんでしょ?主人格の子が可哀想...え?これが主人格?」
「主人格お前身体降りろ」
「今レグルスで人気投票したらエールちゃんとサニーは良いところ行きそうだけど酒カスは最下位になって発狂しそう」
「でも酒カっさんの事だから三人分の人気投票合体させてこれが本来の人気だって言い張りそう」
「合体ロボの各形態は投票されるだろうけど付属パーツに投票するバカ居る?」
「俺達の桜木トレーナーとマックイーン返して…」
「本当にヤバい時はタキオンが引っぱたいて止めてくれるから」
「アグネスのヤバい方をまともにするヤベー奴」
ビール「アイィィィィィッッッ!!!!!」
「うるさい」
「でかいセミ」
「抜けないセミ」
「セミで抜くな」
「セミの方が抜ける」
「応援も煽りも格ゲーマーっぽいよね」
「騒ぐのは良いよ?」
「でもアドバイスは的確なんだよね」
「素人意見も参考にしたり並走でどうなるか見せてくれる位には優しいよ」
「ビールちゃんのパーフェクトボディが甘いぜチャンネル」
「ばりりばぽりてきたぼーチャンネルって何?」
「ギースのコマ投げと当身の声だぞ」
「こんな滅茶苦茶なのにケン使いってマジ?」
「そもそも格ゲーマーにまともな奴はいないです」
ビール「ちゃんと普通の練習も出来るから!!!」
「凄い!!!普通に将棋してる!!!」
「おい…なんで将棋で超融合使ってる…?」
「A.負けたくないから」
「相手のコマ取った後通常融合でキマイラ出して相手の場全破壊は禁止っすよね?」
「そもそも使えねぇよ!!!」
「遊戯王やれよもう」
「遊戯王は戦略ゲーじゃなくて先行ゲーだから…」
「あ〜もう滅茶苦茶だよ〜」
ビール「中距離と短距離二回走ります!!」
「な ん で ?」
「わからん…」
「人格沢山あります←まだ分かる」
「人格分適正あります←まぁそういう事もある」
「なのでその分走れます←???」
「変身したら回復するタイプのボス?」
「頭バクシンだろ…」
「バクちゃんも流石に短距離走ったあとマイル走らないから…」
「もう長距離走れよ」
「Q.なんで二回も走るの?」
「A.アタシがアタシだからってアタシの全てを理解していると思うな」
「理不尽すぎて草」
「このスタイルで全距離全コース全勝したらマジでこのチーム伝説になるだろ」
「もう既に伝説級のバカ娘なんだよなぁ…」
ご視聴ありがとうございました。