山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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話すべき事はしっかりと口で言っとけ

 

 

 

 

 

 初夏は完全に過ぎ去り、蒸し暑さが支配する真夏となった日本。

 トレセン学園では終盤に差し掛かった[アオハル杯予選]に意気込むウマ娘達とトレーナーが日々トレーニングに励んでいる。

 

 

ビール「.........っ」

 

 

 .........それが日常。それが普通。それが正解だった。廊下に張り出された張り紙。[重大事項]と銘打って記載されたその内容は、今の俺達にとってとてつもない[爆弾]だった。

 ザワついた集まり。知ってる顔も知らない顔も、この貼り紙を見て冷静さを保てないでいる。

 そりゃそうだ。なんせ前代未聞。と言っても差し支えない程の情報が書き込まれているのだから。

 

 

 [アオハル杯予選第4回戦、期日前倒しのお知らせ]

 

 

 前略

 URA委員会は現競技とアオハル杯の日程被りを防ぐ為、秋のG1までの間に予選決勝を終わらせるべく、期日を前倒しにします。

 

 

『お、おいおい.........!こんなの反則じゃねェのか!!?』

 

 

『反則な物ですか.........URAがルールなのです.........こんな横暴も彼らなら.........!!!』

 

 

ビール(.........やっぱ、腐る時はとことん腐るんだなぁ。組織って)

 

 

 何もこちらの事なんて考えちゃ居ない。自分達の作った既存レースの為に行事レースを潰してくる。それだけなら文句は無い。

 だが.........その日程が最悪だ。なんせ、レースが終わって[一週間後]に[第4回戦]。しかも、連絡は次の日だ。もっと早く出来ただろうに.........

 

 

ビール(まぁ、大人に期待って柄でももう無いわな。さぁどうしまし―――『っ!!?トレーナーさん!!!』んあ?)

 

 

『さ、最後の注意事項に.........!!!』

 

 

『んァ?.........「尚、会場には必ず[チームトレーナー]が姿を現す事」.........だってェ!!?』

 

 

ビール「.........はぁぁぁ。完全に[潰し]に来てるなぁこりゃ」

 

 

 人混みの中から這い出るようにその場を後にする。こんな注意書き、完全に[俺]を狙い撃ちしてる様な物だ。

 大方、[奴]が裏で手引きしたに決まっている。今のアイツは[花道]だ。URAとの関わりがあってその顔が効くなら使わない手は無い。

 

 

ビール(.........参ったなぁ。こりゃ参った)

 

 

『どうしましょう.........今は.........』

 

 

 言いにくそうに言葉を考えるマックイーン。その先が何なのか直ぐに察しがつく。[バクシンオー]の事だろう。

 

 

 あの後直ぐに病院へ行って検査して貰った。その結果、二週間程の怪我。疲労による炎症だった。

 幸い軽い物で済んだから良かったものの、これで骨折だとかになってたらそれこそ彼女のトレーナーになんて謝れば良いのか.........

 

 

 .........そして、彼女の怪我の影響はそれだけに留まらなかった。

 

 

ビール(バクシンオーだけじゃない。オペラオーもカフェも、ポッケやウチの他のメンバーだって脚が丈夫じゃない子が多い.........)

 

 

ビール(.........[出せない])

 

 

 無意識の内に親指の爪を噛み始める。[あと一勝]。そうすれば全てが元通りになる。だがその道のりがあまりに険しい。

 何かを犠牲にしてまでの事か?否。では諦めても良い事か?否。葛藤と言える程迷っている訳では無い。ただ答えの無い問答に嫌気がさして苛立ちが治まらないだけだ。

 

 

 どうしたものか。たかだか一週間。そんな期間でレースの疲れを癒し切れるか?癒せたとして出せる判断が出来るか?無理だ。俺には到底できやしない。

 

 

ビール(.........とにかく、出来ることから、だな)

 

 

 考え込んでも仕方が無い。時間だけが前に進むだけだ。解決には程遠い時間の使い方だ。

 騒々しい学園の中、俺は一度話し合いをするべく、チームルームへと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バク「面目ありませんっ!!まさかこんな形でチームにご迷惑をお掛けしてしまうとは.........!!!」

 

 

カレン「謝らないでバクシンオーさん。怪我は仕方無いよ」

 

 

ファイン「そうだよ!寧ろ軽くて良かった〜」

 

 

 松葉杖を立て掛けて椅子に座っているバクシンオーくん。頭を下げ続けて皆に謝っているが、私を含め誰も彼女を責める訳が無い。

 最早見慣れたやり取りだ。ここに来る全員に座りながらも謝り倒すという行動。見ていて気分は良くないが、止める事も出来ない。彼女自身の気持ちを考えるならば、それをしなければ壊れてしまう恐れすらある。

 

 

タキオン(.........やれやれ。以前までの私だったら、何も気にせず止めさせていただろうね)

 

 

 紅茶を一口、口内に含めながら外を見る。昼休みだと言うのにもうトレーニングを初めて居るウマ娘達も居る。

 そんな中、知っている顔が窓から見える。それは一人のトレーナー。[黒沼トレーナー]に対して何かを懇願している様子だった。

 

 

シャカ「はァ.........まだやってンのかァ?[ブルボン]の奴」

 

 

シリウス「テメェで[捨てた才能]。[拾い直す]とはな。焼きが回ったか?」

 

 

タキオン「今更だろうね。だが、君達ももう分かるだろう?」

 

 

タキオン「このチームに来て、走ってみて実感した筈さ。[繋がり]が持つ[力]と、その[呪縛]をね」

 

 

二人「.........」

 

 

 彼女の考えは分かっている。抜けた[短距離エース]の穴埋め。それをかつて捨てた[才]を拾い直してでもやろうとしている。

 個人で走るだけならば考え付かなかっただろう。だがチーム。取り分け[レグルス]は.........[繋がり]を大事にする。意識していようがしてまいが関係無い。現にこの私ですら既に毒されきっている。恐ろしいと思ってしまう程に.........

 

 

 そこまで考え、不意に視線を彼女らの方へ戻すと、廊下の方から足音が聞こえて来る。近くから遠くへ向かう音.........誰かがここに来る所だったのだろうか?

 

 

 .........或いは

 

 

タキオン(.........責めて、私達にも分かる程度の[奇行]に留めてくれよ?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒沼「.........何度も言っているだろう。指導はしない」

 

 

ブルボン「っ!ですが.........!!!」

 

 

 私の前に立つ人。黒沼トレーナーはキッパリと私の願いを断りました。

 .........分かっています。今の私は[中長距離路線]のトレーニングを積み、かつて[スプリンター]として期待されていた力は無くなりつつあります。

 例え今からトレーニングしたとしても.........数日後に開催される4回戦では戦力になれるか怪しい。データの算出が出来ていない以上、不安が残り続けます。

 

 

 しかし、だからと言って何もしない訳には行かないのです.........!!!

 

 

ブルボン「彼女は.........バクシンオーさんは、私の[友達]です.........!!!」

 

 

黒沼「.........」

 

 

ブルボン「だから「何をしてるの?」!.........[東条]、トレーナー.........」

 

 

 女性からの声。掛けられた方を見ると、そこにはバインダーを手に持ったスーツ姿のトレーナー。[東条 ハナコ]さんが立っていました。

 .........今、彼女とは敵チーム。マスターに対する[悪感情]が渦巻いている存在。私が何をしていたかを知ればきっとまた、マスターに迷惑が.........

 

 

黒沼「.........ブルボン。俺にお前の[指導]は出来ない。特に[短距離]についてはな」

 

 

ブルボン「!そん、な.........」

 

 

黒沼「.........すまない」

 

 

 一言。私に対して背を向けながら謝罪の言葉を伝えて彼は去っていきます。私はその後ろ姿を見ているだけで、何も言えず、何も出来ませんでした。

 

 

東条「.........そう。そういう事ね」

 

 

ブルボン「.........失礼しました。見苦しい所を」

 

 

東条「良いのよ。全く、何も[説明しない]んだから」

 

 

ブルボン「?」

 

 

 呆れた様な様子で。しかし、それ以上にどこか嬉しそうな顔で彼が去った後を見つめる東条トレーナー。

 その表情のまま、彼女はぽつりぽつりと話し始めました。

 

 

東条「.........昔。まだ私達が[新人トレーナー]だった頃の話よ」

 

 

東条「[アオハル杯]が毎年開催されて、まだ樫本理事長代理が.........[樫本トレーナー]だった頃。私達全員、あの人のチームのサブトレーナーだったわ」

 

 

ブルボン「!データに無い情報です」

 

 

東条「ふふ。相当前の話だもの。無理もないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの頃は.........今と違って、皆手探りでトレーニング方法を探していたわ。沖野も東も、私だってそう。

 そんな毎日が新しい発見ばかりで、特に黒沼なんて、私達分のドリンクを仕入れるくらい熱を上げててね.........

 

 

 そう。丁度、今と同じ時期位だったかしら。

 

 

 樫本トレーナーが元々担当していた子が居てね。その子はチームの為に色々していたのよ。

 

 

『お願いしますっ!!私に[短距離]の知識を教えて下さい!!!』

 

 

『!何を言ってるんだ!!君の適正は[中長距離]―――』

 

 

『分かっています!!でも、私.........[アオハル杯]で勝って.........樫本トレーナーに恩返しがしたいんですッッ!!!』

 

 

 .........最初は反対したわ。でも、その熱意に押されてね。皆彼女に、出来る限りの事を教えて上げたわ。

 アオハル杯をきっかけに入った子達と、私達トレーナー陣の架け橋に、率先してなってくれた。それに甘えてしまったの。私達も.........樫本さんも。

 

 

 そして、事件は起こったわ。

 

 

 アオハル杯のレース。あの子は第3コーナーで[転倒]した。

 

 

 もう二度と走る事は出来ない。そんな怪我を負ってしまった.........

 

 

 それを機に、チームは解散してしまったわ。

 

 

 樫本さんはURA委員会へ。

 

 

 私はデータに基いたトレーニング管理法の模索。

 

 

 黒沼は事の発端を自らの意思の弱さとして受け止め。

 

 

 東は全体が強くなければ行けないと固執し。

 

 

 沖野は一度、学園を去ったわ。

 

 

 .........黒沼は二度と同じ事が起こらないようにしたい。だから、貴方の申し出も断ったのよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 衝撃でした。そんな過去があの人にあったとは知らずに.........私は、酷く残酷な事をしてしまっていた。

 

 

ブルボン「.........」

 

 

東条「.........ふふ。気にしないで。貴方は当たり前の事をしてるだけよ」

 

 

ブルボン「えっ.........?」

 

 

東条「[チーム]の為。[仲間]の為。[友達]の為。不思議な事じゃないわ。何かしなきゃって、気持ちでいっぱいだったんでしょう?」

 

 

 彼女は的確に私の心を読み解いてきました。バクシンオーさんが怪我に伏せた今、彼女の心の負担を軽くする為に、私が出来る事。それをただひたすらに考え抜いた結果が[短距離路線]への[復帰]でした。

 .........しかし、今の話を聞いてそれは[不確定]且つ[不安定]な物だと実感しました。私にはそれに耐えうる程の耐久性が無い事は以前のデータから確認出来ます。

 

 

ブルボン「.........東条トレーナー。ありがとうございます」

 

 

東条「良いのよ。[支えてあげて]ね」

 

 

ブルボン「?誰をですか.........?」

 

 

東条「?決まってるじゃない。貴女達の[トレーナー]よ」

 

 

ブルボン「.........!!!」

 

 

 .........それを聞いて私は衝撃を受けました。彼女は[悪感情]を抱いて居ない。[あの人]と同じチームに居ながら、影響を受けて居ない.........?

 その事実が私の思考回路をオーバーヒートさせていきます。意味がわかりません。マスターからも周りに嫌われ始めているという話を聞き、その筆頭に彼女の名前が挙げられて居たはず.........

 

 

ブルボン「あ、あの。東条トレーナーは[AIアプリ]を入れてますか?」

 

 

東条「ああ、最近流行りの?入れてないわよ。データ整理は趣味なんだから。わざわざ楽しみを機械任せになんてしないでしょ?」

 

 

ブルボン「.........その、マスターの事を最近、良く思ってなかったりは.........?」

 

 

東条「そうねぇ。[天狗]にならないよう沖野から伝えて置いてとは言ったけど、実の所そう思っては無いわ」

 

 

東条「彼に関してはその心配も無いでしょうけど、でも人の意見を聞いて自分の身の振り方を直せる人よ。それで良くなるなら何でもするわ」

 

 

 .........驚きました。まさかあの情報が[善意]から出てきたものだとは.........直ぐにでもビールさんに、マスターに伝えなくては.........!!!

 

 

ブルボン「ありがとうございます。情報データが更新されました」

 

 

東条「そう。頑張ってね」

 

 

ブルボン「はい」

 

 

 笑顔で手を振る東条トレーナーに対して、私は頭を下げて礼を言って、その場を後にしました.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『って、事だとよォ』

 

 

ビール(そっか。東条さん。俺の為に言ってくれてたのか)

 

 

 廊下を歩きながらサンちゃんの話を聞く。チームルームの前まで来てみたはいいが、バクシンオーの話とブルボンの事を聞き、一旦状況を確認したかった俺はチームルームを後にした。

 そして三階の空き教室で原作ドラゴンボールを読みながらサンちゃんにお願いしてブルボンの様子を見て貰いに行ったのだ。

 

 

ビール(それにしても結構綺麗な状態だったな〜)

 

 

『しっかり手入れしてるみたいです。唯一の癒しだと言っておりましたわ』

 

 

 マックイーンはその最中、教室の幽霊と仲良くなっていた。どうやら彼女は俺の置いていったドラゴンボールをまだ大切にしてくれているらしい。

 今度他にも持ってきてあげよう。Dr.スランプとかジャコとかネコマジンとかサンドランドとか。

 

 

『それで、これからどうするんですの?』

 

 

ビール(そうだね。考えも纏まったし、[覚悟決める]よ)

 

 

 彼女に問われ、一つの解が出た事を伝える。

 それだけで察してくれたのだろう。それ以上は何も言わずに二人は黙って俺の後ろに移動した。

 

 

 歩が進んでいく。重くは無い。だが決して軽くも無い。今からする事は[恥]だ。一人の[チームトレーナー]として、するべきでは無い愚行。

 だがそれすらも霞む程に、俺は[チームの皆]が大好きだ。これ以上傷付く事があるのなら、どんな手を使ってでもそれを止めなきゃいけない。

 

 

 それが.........[トレーナー]だ。

 

 

ビール(.........着いた)

 

 

『!ここって.........』

 

 

 閉じられた扉。目の前に立ってノックをする。帰ってくる返事は一つ。気配も一人。話をするには丁度良い。

 俺は臆する事無くその扉を開いた。

 

 

ビール「失礼します。[沖野トレーナー]」

 

 

沖野「!お前は.........入団希望。じゃ、無いよな?」

 

 

ビール「.........単刀直入に言います―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――[桜木]です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「助けてください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沖野「.........話が見えてこないんだが?」

 

 

 怪訝な表情で俺を見つめる沖野さん。無理も無い。突然こんな事を言われたら誰だって疑うだろう。俺だって同じ反応を見せるはずだ。

 だが事態は一刻を争う。手をこまねいている暇は無い。納得させるしか道は無い。

 

 

ビール「俺は今、訳あって表に立てない状態です」

 

 

ビール「けどどうしても、あの子達の力になりたかった」

 

 

ビール「それが現状です。そして今.........それだけではどうにもならない事態に直面しています」

 

 

沖野「.........バクシンオーの事。それと時期変更か?」

 

 

 彼の言葉に頷く。バクシンオーの怪我。それと重なって通達された時期変更。それが重なれば嫌でも想像してしまう。

 また誰かが怪我をしてしまうという事態。それを想起させてしまう.........

 

 

 それだけは絶対にあっちゃいけない。俺のチームも、臨時で入ってくれている子達にも。

 

 

ビール「.........都合の良い話だと思ってます。けど.........」

 

 

ビール「沖野さんの.........チーム[スピカ]の力を、貸して下さい.........!!!」

 

 

沖野「.........」

 

 

ビール「.........」

 

 

 長い沈黙が訪れる。下げた頭を上げることなく、ただ痛々しい静けさに突き刺されながら返答を待つ。

 ひたすらに、後頭部に突き刺さる視線。それがどんな物かまでは判別出来ない。ただ沖野さんが俺の事を見つめているのは間違い無い。もしかしたらそれは[睨んでいる]のかもしれない。

 

 

 後悔は無い。だが反省はしなければいけない。それだけの事をやってしまっている。予測不可能だったとはいえ、もっとやりようはあったんじゃないかと思ってしまう。

 そんな重く、そして長い沈黙を破ったのは沖野さんだった。

 

 

沖野「.........はぁぁぁ〜」

 

 

沖野「お前.........よりにもよって[今]かァ〜?」

 

 

ビール「えっ―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ガララッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビール「っ!!?」

 

 

 突然開かれたチームルームの扉。普段なら聞かない程の勢いの強さに思わず振り返ると、そこには顔を伏せた[スピカメンバー]が立っていた。

 その状態のまま一人ずつ、ゆっくりと部屋の中へと入って行き、終いには俺と沖野さんとの間に並んで立つ。

 

 

 そして.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「―――遅いッッッ!!!!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビール「いっ.........!!?」

 

 

 腕を組んだ状態で顔を上げたと思いきや、俺の顔を睨み付けて全員。そう言いきったのだ。

 

 

ビール「お、遅いって.........」

 

 

テイオー「言葉通りだよッッ!!!何やってんのさー!!!」

 

 

スペ「私達っ!!ずっと待ってたんですよ!!!」

 

 

ビール「ま、待ってたって.........」

 

 

 見た瞬間に分かる。全員怒った表情だ。何が何だか分からない俺はとりあえずマックイーンの方を見たが、彼女は助け舟を出すつもりは無いらしく、額に指を立ててやれやれと首を振っていた。

 

 

スズカ「サブトレーナーさんが何をしていたかは分かってた。急に現れた貴女がそうだと確信してたわ」

 

 

ウオッカ「偶にサブトレーナーっぽくねぇ時もあっけど、まぁサブトレーナーだしなんかやったんだろうなって思ってたしな」

 

 

ダスカ「だけど!!それでも[アオハル杯]やるにはかつかつよ!!!ただでさえアンタら[マーク]されてたんだからっ!!!」

 

 

ビール「えぇ!!?ノーマークじゃ無かったの!!?」

 

 

沖野「バカ。ただでさえ何考えてっか分からない奴がチームトレーナーで、バンバンチーム加入させてってたんだぞ?大体が躍起になって対策してたっての」

 

 

ビール「お、俺の作戦が.........全部無意味だった.........ってこと.........?」

 

 

『はぁ。本当、[URAファイナルズ]の影響をいつも度外視するんですから。しゃんとしてくださいまし』

 

 

 ま、まさかそんな.........つまり俺達は今までマークされてたけど、その対策を実力で切り抜けて来たって事なのか.........?

 い、いやいや。流石にそんなレベルが低いわけ.........いや高いのか?それを更に上回っていたのか?ウチのチームが.........

 

 

ダスカ「.........まぁでも、良くやったと思うわ。4回戦まで[最低限の人数]で漕ぎ着けて来るなんて思わなかったわよ」

 

 

テイオー「ホントだよね〜。ボク毎回ヒヤヒヤしちゃってたよ〜」

 

 

沖野「そうだな。バクシンオーの件はウチでもどうしようも無いが、他の奴らが怪我する前に来てくれて良かったぜ」

 

 

ビール「.........?ということは.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういう事だーっ!!!レグルスのトレーナーっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビール「っ!この声は.........!!?」

 

 

 またもや入口から声を掛けられる。聞き覚えのある特徴的な声。その声に振り返ると、そこにはやはり、思い描いた通りのメンバーが立っていた。

 

 

ターボ「.........アレ?レグルスのトレーナーは?」

 

 

ネイチャ「いやターボ。さっきタキオンから話聞いたでしょ?」

 

 

マチタン「ほは〜。見れば見るほど私達と同じだ〜」

 

 

イクノ「流石タキオンさんと黒津木先生の薬。雰囲気も仕草も女性そのものですね」

 

 

ビール「それは俺の企業努力によるもの.........じゃなくて!!!なんで[カノープス]まで!!?」

 

 

 思わず立ち上がって疑問をぶつける。スピカは兎も角、何故彼女達まで.........

 そんな俺を見て、カノープスの面々はお互いの顔を見合わせ、くすくすと笑った。

 

 

マチタン「皆で考えたの!!名付けて[サプライズ恩返し大作戦]っ!!」

 

 

ネイチャ「桜木トレーナーと[スピカ:レグルス]には助けて貰いましたからね〜。ここでひと肌脱がなきゃいつ脱ぐのって思って」

 

 

ターボ「アレからターボもっともっとも〜っと強くなったぞ!!!だから大丈夫!!!」

 

 

イクノ「[あの日]。テイオーさんを再起させてくれた[恩]を、返させてください」

 

 

ビール「!」

 

 

 眼鏡の奥に煌めく光。その瞳は俺を射抜くように真っ直ぐと捉えている。他のメンバーも同じように笑顔で、俺の事を見てきている。

 

 

ビール「.........まいったな。俺、みんなにこういう事してきたわけ?」

 

 

沖野「ああ、どうだい本人さん?渾身の[桜木ごっこ]は」

 

 

ビール「.........最高。100点だ。だが[桜木 玲皇]は難しい役だぞ?今だけ100点じゃ駄目。100点を取り続けてもダメ」

 

 

ビール「[桜木 玲皇]ってぇのは、[点数付けられちゃ終わり]なのさ」

 

 

『ふふ。違いありませんわね♪』

 

 

 そうだ。どこまで行っても行き当たりばったり。100点を取る日もあれば0点を取る日だってある。

 けどそれじゃあダメだ。評価されるだけが[人生]じゃない。例え0点だろうが、胸を張れりゃ良いんだ。

 沢山0点を取って.........[神様]から採点の筆を投げ出されりゃ、誰だって立派な[桜木]だ。

 

 

 俺の言葉を聞き、皆が笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トレーナーサン?」

 

 

ビール「ん?LINEだ」

 

 

沖野「お前.........着信音やべぇな.........」

 

 

『.........愛されてンなァ』

 

 

『.........私は何度も変えてくださいと言いました』

 

 

 俺のメールの着信音を聞いて殆どの人間がドン引きした。何故だ?俺は別に何もおかしいことはしていないと思うんだが.........

 まぁ今はそこに反論したとしても仕方がないので気にせずに届いたメールを確認する。

 

 

 相手は.........

 

 

ビール「.........[ゴールドシップ]!!?」

 

 

スピカ「えぇッッッ!!!??」

 

 

カノープス「?」

 

 

『ご、ゴールドシップさん!!?内容は!!?』

 

 

ビール「.........[今日の午後5時過ぎに帰ってくるからパーティの準備しとけ。姉ちゃん達と爺ちゃんも連れてくっからよ!!!(ᐛ )].........だってさ」

 

 

沖野「.........はぁ。こういうタイミングの良さは、お前に似てんな」

 

 

 まさかのタイミングでゴールドシップも帰還。となると、完全にメンバーが出揃う事になる訳だ。

 .........だが、あの目茶苦茶さに振り回されっぱなしって言うのもなんだか癪だというのも事実。実際ほかのメンバーもどちらかと言えば呆れ果てていた。

 

 

ビール「.........ねぇ。良い機会だしさ。ここいらでちょっといつもの[仕返し]しない?」

 

 

全員「?し、仕返し.........?」

 

 

ビール「ふふ、そう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「[ドッキリ大作戦].........ってのは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 .........夕暮れの空き教室。もぬけの殻になっていたそこに机だの何だのを運び込ンで、わざわざ手を掛けて[それっぽく]見せ掛けた舞台。

 その窓際でまァ、オレ様ちゃんは外を見て立っておけとか言われて気分は良くなかった。

 

 

『!きたきたきたきた!来ましたよ〜.........!!!』

 

 

サニー(テメェ.........ンでそンなに乗り気なンだよォ?)

 

 

『だって!!あのゴールドシップにドッキリ仕掛けられるだなんて超〜レア体験だぜ!!?やらなきゃ損っしょ!!!』

 

 

サニー(.........マックイーンは?)

 

 

『!わ、私は止めましたわ!!決してゴールドシップさんに今までからかわれた仕返しとか全然考えてなくて.........なんですかその目!!?本当ですわよ!!!』

 

 

 .........めンどくせェ。

 

 

サニー(突っ立ってりゃ良いンだろォ?)

 

 

『そうそう.........!きたきたきた.........!!!』

 

 

「着いたぜじいちゃん!!ここが[レグルス]のチームルームだ!!!」

 

 

「.........何の変哲もない[教室]だが?」

 

 

 背中を向けた扉の方から騒がしい声が聞こえて来る。丁度オレから見えない位置で話している。アッチもオレを認識して無いだろう。

 慌てながら、不思議になりながらその扉を開く。

 

 

 振り向いた先には.........桜木と似た姿のジジイが立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『.........誰だテメェらって言って』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――誰だ?テメェら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 .........?は?何言ってンだ?わざわざこんなお遊びに付き合う必要なンてねェだろ。オレはどうして[乗せられた]ンだ?

 い、今からでも遅くはねェ。こンな茶番とっとと終わらせて―――

 

 

「.........っと、すまない。実はあるチームを探していてね。[レグルス]と言うんだが」

 

 

『「知らねェ。他を当たりな。老いぼれ」』

 

 

ゴルシ「っ、おい!!!初めましてで悪口言うなんて良い度胸だなッ!!!」

 

 

「良い。では質問を変えよう。[桜木 玲皇]はどこにいる?」

 

 

『「それも知らねェな。[聞いた事もない]」』

 

 

 おい!!?コイツオレに何しやがった!!?一挙手一投足同じ動きしか.........ま、まさかここに来てコイツの[身体]を使ってる[弊害]が出てきやがったのか.........!!?

 クソッ、オレァこういう人に良いようにされるってのが一番嫌なンだよ!!!こンな事するンならさっさと身体返して―――

 

 

サニー(ぐえっ)

 

 

ゴルシ「知らねェだって?嘘言ってんじゃねェよ」

 

 

『「はァ?オレ様ちゃんがいつ、どこで嘘ついた?あンま頭悪ィ事言ってンじゃねェよ[クソガキ]」』

 

 

サニー(う、嘘嘘嘘!マジで嘘!!!)

 

 

 や、やべぇ.........ゴールドシップの奴マジで切れてやがる.........つうかテメェッッ!!!自分の身体だろうがッッ!!!どうなっちまっても知らねェぞ!!!

 

 

ゴルシ「.........テメェの匂い。何でか知らねェが[ゾクゾク]して来やがる。姉ちゃん達にも[似てる]し、スペとかスズカっぽさもある」

 

 

『「.........ヘェ?」』

 

 

ゴルシ「けどよォ、そんな中でなんで―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっちゃんの匂いが[一番強ェ]んだよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、ぁ.........!!?」

 

 

サニー(ッヘェ!!?匂い!!?桜木の匂いは兎も角としてオレそンな匂いしてンのか!!?)

 

 

『自分ではあまり気が付かない物ですから、仕方ありませんわ』

 

 

サニー(テメェは何呑気な事言ってんだ!!!桜木を止めろ!!!死ぬ!!!)

 

 

『「嫌ァ、負けた負けた.........流石は[ゴールドシップ]。頭良いなァ?」』

 

 

サニー(テメェこれもうオレが居なくても成り立つだろ!!!ぐえっ!!?ギブ、ギブギブ.........)

 

 

ゴルシ「っ、アタシの質問に応えろッッ!!!おっちゃんはどこにいんだよッッ!!!」

 

 

『「チッ、うっせェなァ。オレ様ちゃんの機嫌を損ねさせんな―――」』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『「―――[噛み殺す]ぞ」』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴルシ「っ!!?」

 

 

サニー(!)ゾワゾワ!

 

 

 な、なんだこの感覚.........まるで昔したまま誰にも気付かれずに片付けられてねぇ[それ]を見つけちまったみてぇな.........[ヤバい]物を見た様な[悪寒]は.........

 

 

 そんな俺の気すら止めずに、桜木の奴はこの身体を遠隔操作するように良いように操ってくる。

 ケタケタと壊れた玩具みてぇに笑わせてから、ゆっくりと人差し指を目の前のジジイに向けた。

 

 

『「テメェらの言う[桜木 玲皇]は、ソイツの事か?」』

 

 

全員「なっ.........!!?」

 

 

『「.........キヒッ、それとも―――」』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後の最後の詰め。そう悟らせるかのように桜木の奴はもうノリに乗ってやがった。邪悪な笑みを浮かべて、それがこの身体にシンクロしやがる。

 その伸びた人差し指を自分の方へと持っていき、その手を開いて自分の胸に押し当てて口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『「この[身体]の、[宿主]の事かァ?」』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――真夏の夕暮れ。一人の少女は薄ら笑う。

 

 

 鴉は飛び去り、学園のチャイムが響き渡る。完璧なシチュエーション。近代的サスペンスホラー展開.........漫画の展開なら確実に読者を引き込めるワンシーンが完成してしまった.........!!!

 

 

(ククク.........やっぱ俺って天才なんだなぁ.........?)

 

 

ビール「.........アレ?」

 

 

ゴルシ「―――せよ」

 

 

ビール「?」

 

 

ゴルシ「おっちゃんを.........返せェェェェ―――ッッッ!!!!!」ガバァッ!!!

 

 

ビール「ぐぇ!!!??」

 

 

 アレアレアレアレ!!!??アイエエエ!!?生身!!?生身なんで!!?さっきまで確かに俺は安全圏でこのドッキリを楽しんでいたはず.........!!?

 そ、それがなんでゴールドシップに掴み挙げられて.........!!?

 

 

 慌てて視界だけを動かして辺りを見てみると、酷く怯えた様子のサンちゃんが教室の隅っこで体育座りをして頭を抱えていた。

 

 

ビール(は、話が違う!!!話が違う!!!)

 

 

『う、うるせェ!!!話が違ェのはこっちのセリフだ馬鹿!!!死ね!!!死んでくたばれ!!!』

 

 

オル「早くおじじを助けなきゃ!!!」

 

 

フェスタ「おおおちおちおちつ落ち着けゴルシ。こここここはまず霊媒師を呼んでたな.........」

 

 

ゴルシ「そんな暇ねェよ!!!ぶん殴っておっちゃんの意識を戻してやる!!!」

 

 

桜木「念入りに頼むぞ。一度寝たら起きないからな」

 

 

 うおおおお不味い!!!完全に怒り浸透爆発寸前拳直下ファイヤー3秒前!!!このままじゃ俺の頭がカチ割られる!!!流石にウマ娘も耐久性は無い!!!

 

 

 そうだ!!!別働隊!!!ヤバくなったらドッキリの看板持ったスピカが入ってきてくれる約束してる!!!なんとでもなるさ!!!

 

 

『スピカなら帰りましたわよ?』

 

 

 は?

 

 

『黒津木先生と神威先生がそんなのに付き合う必要は無いって先程確認したら廊下で言ってました』

 

 

 死ね。

 

 

 .........そう!!!弁解!!!話し合いこそが平和への道筋!!!憲法九条こそ生き残る唯一のルールなり!!!

 

 

ビール「あああああ!!!ジョーク!!!ウマ娘ジョークでさぁ!!!やだなぁもう!!!暴力は行けません!!!話し合いで解決しましょう!!?ね!!?桜木さんもそれを望んでますよね!!?」

 

 

桜木「いや?」

 

 

ビール「は?死ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――その日。学園史上最も事件性の高い叫び声が近所にまで響き渡った。

 

 

 しかし、配信中その類の奇声と特定されやすい特徴的な声からウエスタンビールの物だと察されてしまい、誰も通報する者は居なかった。

 

 

 結局、誤解が解けたのはタコ殴りタイムに入って一時間が経過した後の事だった.........

 

 

 

 

 

......To be continued

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