山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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タマモクロス「ええ話持ってきたで!!」

 

 

 

 

 

 

 チームルーム[スピカ:レグルス]にて。

 普段より静かなチームルーム。今は私、メジロマックイーン以外は在室しておりません。ウララさんとライスさんは外へ遊びに行っており、アグネスタキオンさんは研究室で研究に励んでおります。

 いつもならかなり高い頻度でいるはずのトレーナーさんも、今日は外せない用事があるようで、この場にはおりません。

 

 

タマ「おっちゃーん!!邪魔するでー!!」

 

 

 勢い良く開かれたチームルームの扉。そこには平均よりも小柄な芦毛のウマ娘。タマモクロスさんが立っておりました。

 

 

マック「タマモクロスさん?すみません。トレーナーさんは今、用事で留守にしておりまして.........」

 

 

タマ「なんや、せっかくええ話持ってきたっちゅうのに」

 

 

 よっこいせと背中に背負っていた大きな荷物を下ろすと、タマモクロスさんは一息付きながらソファに座り込みました。

 

 

マック「あの、それでいい話とは.........?」

 

 

タマ「一つはコイツや。ようやっとおっちゃん倒せるレベルまで上達したから、今日はボコボコにしたろうと思ったんや」

 

 

 そう言いながら、バッグから出てきたのはなにやら少し大きい機械でした。それをテーブルに置くと、今度はそれと同じほどの大きさの、まだ別の機械。

 ですが、それは以前、トレーナーさんがやっていたアーケードゲームを操作していた物と同じものでした。

 

 

タマ「借りたもんは返さなアカン。ウチはそこんとこはわきまえてるんや」

 

 

マック「そ、そうなんですか.........」

 

 

 目の前に座っているタマモクロスさんからは、燃え上がる炎が幻視してしまう程にメラメラとしていました。どうやら、余程トレーナーさんにイジメられたみたいです。

 

 

タマ「二つ目は.........ウチの最後のトゥインクル・シリーズの出走予定が決まったって事や」

 

 

マック「最後.........ですか?」

 

 

タマ「せや。ウチも長い間走り続けてきて、いい成績も残してきたし、ドリームトロフィーを主軸にして行かないかって誘われててな?トゥインクルシリーズは、次で最後っちゅうことやねん」

 

 

 ドリームトロフィーシリーズ。トゥインクルシリーズの上の階級に存在するレース。そのレースに参加できるの者は、特定の条件を満たしたウマ娘だけです。その条件も、一般には公開されてはおりません。

 

 

マック「凄いですわ.........!タマモクロスさん!!同じ芦毛のウマ娘として、誇らしいですわ!!」

 

 

マック「.........けど、なぜそれをトレーナーさんに?」

 

 

タマ「あー.........ウチがここまで走ってこられたんは、実はおっちゃんのおかげやねん」

 

 

 照れたように頬を人差し指で掻くタマモクロスさん。それでもその顔は、とても嬉しそうでした。

 

 

マック「そういえば、トレーナーさんとはいつ頃知り合ったのですか.........?」

 

 

タマ「せやなぁ.........実は、おっちゃんと会ったのは、言うて一年も無いくらい。そんな古い付き合いちゃうんや」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タマ『なんでやトレーナー!!このままじゃウチ、勝てへんままや!!なんで同じトレーニングしかさせてくれへんねん!!』

 

 

古賀『タマ。お前さんにはお前さんのペースがある。俺のやり方は、身体に負担の少ないトレーニングで伸び代を上げる方法を提示するしかないんだ』

 

 

 ウチはあの時、スランプ気味やったんや。試験を受けてせっかく入ったチーム[アルデバラン]。同期のオグリとクリークはグングン力をつけてるのに、ウチだけまだ、頭一つ抜けてない。その焦りがさらに、ウチの足を引っ張る悪循環を作ってたんや。

 

 

タマ「何が伸び代や.........伸びを見せんかったらただのチビやないか」

 

 

 その日の練習も終わって、フラフラと力無く寮までの道を歩いてたんや。今月の食費もカツカツで、下手したら何日か飯が食えへんかもしれないなーと思いながら、普段は言わないような自虐を言ってしまった。

 そうやって前を見ないから、人にぶつかってまうんや。

 

 

「うお!?」

 

 

タマ「あ!!?悪いおっちゃん!!大丈夫か!?」

 

 

 身体はチビだろうと、ウチはウマ娘や。少し身体を当てた位でも、人間からしたら強い衝撃がある。ウチは他人にぶつかってもうたんや。

 

 

「いや、大丈夫。それにしても凄いな.........ウマ娘はこんなに小さくても、こんな強さがあるのか.........」

 

 

タマ「なんやおっちゃん?ウマ娘見んの初めてなんか?」

 

 

 おっちゃんは自分の足で立ち上がりながら、手でズボンに着いた汚れを払ってこっちを見たんや。

 え?おっちゃんはおっちゃんや。マックちゃんとこのトレーナーやで。

 サングラスで目は見えへんし、髪はオールバックやし、見た目はちょっと怖いヤンキーみたいやったけど、声の調子も身の回りの雰囲気も優しいヤツやってことはすぐ分かったんや。

 

 

「ああ、今日で二回目だけど、間近で見るのは初めてだよ」

 

 

タマ「そうなんか!!まーここら辺は寮とかあるから、そんな珍しくはないで!」

 

 

 そんな他愛もない会話が、おっちゃんとのファーストコンタクトやった。

 

 

 次の日、チームのミーティングルームに行くと、そこには昨日ぶつかってもうたおっちゃんが居て、滅茶苦茶驚いてまったんや。

 

 

タマ「おっちゃん!!昨日の!!」

 

 

「あれ、君は.........そうか、古賀さんの教え子だったんすね」

 

 

古賀「なんだタマ、お前桜木と知り合いだったのか!!ほら、自己紹介しろ!」

 

 

 面白いなーとは思ったんや。昨日初めて会った人間が、まさかトレーナー見習いになるなんて。けれど、ウマ娘をまだ二回しかその目で見とらんっちゅうやっちゃで?

 おっちゃんがいいヤツなのは分かってるけど、そこら辺、信用出来へんかったんや。

 結局。名前だけ聞いた後はそのままトレーニングに直行してまったんや。

 

 

桜木「おー、やっぱり早いなー。ウマ娘」

 

 

タマ「.........そんなん、当たり前やろ。ウマ娘やし」

 

 

タマ「ちゅうか、なんでさりげなくウチに話しかけとるんや?他にやることあるんちゃうんか」

 

 

桜木「古賀さんの無茶振りだよ。一週間はウマ娘を見て目を養えってさ。指導もしたいなら勝手にしろって.........」

 

 

タマ「ほんまなんやねんあのトレーナー.........」

 

 

 柔軟している横でおっちゃんが話しかけてくる。その視線の先には.........オグリがコースを走っとる姿があった。

 

 

タマ「指導したいんならすればええやん」

 

 

桜木「あれはムリ。走る理屈と言うか理想像をねじ伏せた走り方してる。どこか一つでも下手に弄ったら怪我しそうだ」

 

 

タマ(なんや、身の程は弁えとるんやな)

 

 

 失礼やなーと思うやろ?ウチも思うで。でも、あの時は本当になりふり構ってられんかったんや。

 柔軟も終わらせて、これから走るでーって時にも、まだおっちゃんは居たんや。

 

 

タマ「ウチじゃなくて、他の娘見ればええやん」

 

 

桜木「いや、なんか君の走りを見たくてさ」

 

 

タマ「なんやねんそれ.........」

 

 

 そんな事言われたら無下には出来へん。走りが見たいって言われて喜ばないウマ娘は居らん。ウチ、そこんとこちょっとチョロいねん。

 え?マックちゃんもそうなんか?なんや!ウチらチョロいもん同士仲良くしよや!!

 とりあえず、いつも走ってる通りに走って見せたんや。リズムも身体の調子もいつも通り。なんも変わりない走りを見せたんや。

 

 

タマ「ハァ.........そんで?どうやった?ウチの走りは?」

 

 

桜木「うーん。タイム的にも悪くは無いし、足の回転率も見ていて無理している気配は見られないし.........」

 

 

タマ「.........それでも、今のウチは勝てへんのや」

 

 

桜木「え?」

 

 

タマ「なんでもない!!あっちいっといてや!!」

 

 

 つい声を張り上げてしまったんや。なんかこう、ピリピリしてる時って誰しもあるやろ?え、最近した?まあ共感貰えたからええわ。

 とにかく、その時ウチは勝ちたくて勝ちたくて仕方なかったんや。そう思って、ウチは一歩おっちゃんから背を向けて離れた。

 

 

桜木「視線が低い」

 

 

タマ「.........なんや急に、別に下は向いてないやろ」

 

 

桜木「違う。角度の問題じゃない。視点の話だ」

 

 

タマ「ウチがチビやって言いたいんか?喧嘩売りたいんなら正解や。一番良い売り方しとる」

 

 

桜木「そんなんじゃない。ただ、他の子が気にしなければいけない所を、少しの意識でできる素質があると思ったんだ」

 

 

桜木「それと、あのオグリキャップって子と戦いたいんなら、抜かす勝ち方じゃなくて、隣で競り合う勝ち方の方が良い」

 

 

タマ「!!!」

 

 

 それはもう衝撃やったわ。ウチの強みを見つけてくれるだけならいざ知らず、おっちゃんはウチが誰にも言ってないライバル心を見透かしてアドバイスしてきたんや。

 

 

タマ「だ、誰もオグリに勝ちたいなんて言ってないやろ!!」

 

 

桜木「言ってたさ。君の目はライバルを求めてる」

 

 

タマ「.........おっちゃんは、勝てると思っとるんか?」

 

 

桜木「勝てる。戦い方は千差万別。あの子が走り方で戦うなら、レースのやり方で戦えばいい」

 

 

 そう言いながら、おっちゃんはニカッと笑ったんや。容易に想像できるやろ?

 それから、ウチはおっちゃんと特訓を始めたんやけど、トレーニングの方法は一切変わらんかった。結局今のやり方が一番合ってるって言われて、トレーナーに申し訳ない思うたんや。

 ほんでな?一週間くらい経った後、おっちゃん達見習いとトレーナーが話している所を偶然聞いてもうたんや。

 

 

古賀「それで、お前らの目から見てどうだった。うちのチームは」

 

 

「いやー、さすが古賀さんですよ。練習方法も堅実ながら、昨今のスポーツ科学を取り入れた前進的なトレーニングで.........」

 

 

「器具から何から簡単に用意できるものを工夫次第で生かせることを学べました。これから参考にしたいので.........」

 

 

タマ(ほーん。皆結構勉強したんやなー)

 

 

古賀「お前はどうだ?桜木」

 

 

桜木「.........正直、トレーニング方法とかについては口に出来ません。身体の動かし方はともかく、動かせられるように勉強したわけじゃありませんから」

 

 

タマ(おいおい!!そりゃ無いやろ!!いくらトレーナーがお人好しやからって少しは心象良くせなアカンで!!)

 

 

 いやー、ホンマあん時は心臓バクバクやったわ。あそこで自分の進退決まる言うてんのに、周りに自分は同調せん言うてるもんやで?

 なんちゅうか、頑固やろ?おたくのトレーナー。見つけたもんガッツリ掴んで離さない系男子やろ!!

 

 

桜木「でも、それでも俺が言えることは、あのトレーニングを受けて成長しないウマ娘は居ないという事です」

 

 

タマ(!!)

 

 

古賀「.........」

 

 

桜木「今は伸び悩んでいたり、勝てなかったりしても、強くなりますよ。古賀さんの指導なら」

 

 

古賀「.........一応聞こうじゃねえか、桜木。誰を見てそう思った?」

 

 

桜木「もちろん、決まってるじゃないですか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タマモクロスですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タマ(!!!!!)

 

 

 ホンマ、罪な男やで?ウマたらしにもほどがあるって。

 そういやおっちゃん。芦毛のウマ娘とよう仲良うなるなー。そういう趣味なんかな?

 恥ずかしいけど、ウチはホンマに嬉しかったんや。トレーナーも多分期待はしてくれてたんやけど、やっぱ言葉にして伝えてくれた方が嬉しいやん?

 

 

「タマモクロスって、最近負け続けの.........」

 

 

「てっきりオグリキャップかと.........」

 

 

桜木「なんだ、知らないのかアンタら」

 

 

桜木「稲妻の雷鳴は遅れて聞こえてくる。音に気付いた後にはもう姿は残ってねえんだよ」

 

 

 (何言ってんだこいつ)

 

 

 (何言ってんだこいつ)

 

 

古賀(何言ってんだこいつ)

 

 

タマ(何いってるんやおっちゃん)

 

 

 なーんか上手いこといった思て得意な顔してたで、教室覗いて見てたけど。

 けどなー、ホンマチョロいねん。あんなくっさいこと言われて、一丁前に嬉しくなってまうウチもウチや。心の中ではあんなふうに悪態ついてたけど、顔からは火が出るくらい熱かったんや。

 

 

古賀「.........まぁ、お前さんの気持ちは大体分かった。俺もタマに関しては走ると思っている.........お前さんの素質もやはり、俺の目に狂いはなかったな」

 

 

古賀「ここに居る全員合格ッッ!!!自分の見るべき事を理解している!!明日からは正式にトレーナー見習いとしてきっちり扱いていくから覚悟するように!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タマ「とまあ、こんな感じで色々あったんや」

 

 

 そんなことがあったのですね.........そう思いながら、ティーカップに入れた紅茶を一口飲みました。それにしても.........

 

 

マック「ふふっ、昔からなのですね、変なところで自信家なのは」

 

 

タマ「せや、自分には自信持てへん癖して、ウチらの事になると100%頭からつま先まで信じてまう。ウマ娘使った詐欺に引っかかるでその内。マックちゃんもおっちゃんに気ぃつけてな」

 

 

マック「ええ、メジロのウマ娘の担当トレーナーが詐欺に引っかかるなど、あっては行けませんから」

 

 

タマ「あー、ホンマ色々あったわあん時。クリークの暴走をおっちゃんが止めてくれたり、オグリンとの大食い対決で気絶するまで食ったんはいいんやけど、結局オグリンには負けるし.........」

 

 

マック「まぁ、あのオグリキャップさんと?それはまた無茶な.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「全く酷い目にあったぜ.........」

 

 

 大切な業務連絡の為に生徒会室やら理事長室やらに行ってきたが、色々と時間を食ってしまった。そのうちの一つは淡々とダジャレに付き合わされるという地獄であったが、あの時笑った俺が悪い。

 

 

桜木「なんだよ、教会に行くのは今日かいテイオー?って、そんなんすぐ思いつく俺が怖いよ.........」

 

 

 着実に親父への一歩を踏み出しつつある俺ではあるが、落ち込んでいる暇は無い。それよりもこの吉報をいち早くマックイーン達に伝えなければ.........

 そう思いながらチームルームの方まで足を運んでいくと、なにやら楽しそうに談笑しているマックイーンと、普段聞かない声が聞こえてくる。

 

 

桜木「邪魔するぜー」

 

 

タマ「邪魔するなら帰ってー」

 

 

桜木「あいよー」

 

 

 開けた扉を閉めると、とててて、と足音が聞こえてくる。その主が扉を勢いよく開けると、嬉しそうな顔をこちらに見せてきた。

 

 

タマ「なんやおっちゃん!!今日はノリええやないか!!」

 

 

桜木「ああ、いい知らせが届いたからな。そういうタスこそどうしたんだ?やけにテンション高いが」

 

 

タマ「いや、ウチはツールアシステッドなんてしてないで、いつも生身や!!」

 

 

マック「???」

 

 

 ありゃ、マックイーンは話についていけないみたいだな。

 うーん、スーパープレイを見せてあげたいけど、あれ、やりこんでるオタクじゃないと面白さは分からないんだよな.........

 

 

桜木「それにしても、珍しい組み合わせだな。他のメンバーは?」

 

 

マック「ライスさんとウララさんは外で遊んでいます。タキオンさんは.........研究室で篭って何かを.........」

 

 

桜木「なるほどなぁ.........」

 

 

タマ「なんや、おっちゃん真面目にトレーナーしとるんやなぁ!!見直したわ!!」

 

 

桜木「惚れ直してもいいんだぜ?」

 

 

タマ「誰も惚れんわ悪人面」

 

 

 締める時は締める。それがタマモクロス。見事な右ストレートのような毒舌がもろにクリーンヒットしてしまった。そこまで言う必要ないじゃない.........

 

 

タマ「あー泣かんでもええやん。お嫁に貰ってくれる人くらい世界中探せば居るで?」

 

 

桜木「俺男なんだけど.........」

 

 

タキオン「おやおや、夫婦漫才してると思ったらモルモット君じゃないか。今日はマックイーン君じゃないのかい?」

 

 

 背中を摩られているその背後からいつも通りのわざとらしい声が聞こえてくる。コイツ、絶対今ニヤニヤしてるだろ.........

 

 

桜木「えーん、タキオンにイジメられるよー」

 

 

タマ「きっしょ」

 

 

マック「ええと、流石にそれはちょっと.........」

 

 

桜木「救いは無いんですか!?」

 

 

タキオン「救いは無いね!!」

 

 

 バサァと白衣を広げてノリに乗ってくれるアグネスタキオン。変わったな、主に黒津木のせいで。

 おかげと思っちゃいけない。これ以上変なモノの影響受けさせたくはないが、アイツはモノホンの天才。そばに居ることでいい影響もある。天秤にかけると丁度並行くらい。

 

 

桜木「とにかく、タマの姉御はどうして今日来たんだ?」

 

 

タマ「せやったわ、ウチ。最後の出走予定が決まったねんで」

 

 

桜木「最後.........?」

 

 

タマ「せや、ドリームトロフィーリーグに移籍するんや」

 

 

 ドリームトロフィーリーグ。確かに、ここ最近聞いているタマモクロスの活躍からすれば、移籍の話が来ていてもおかしくは無い。

 あの勝てなくて悩んでいた小柄なウマ娘が.........こんなに笑顔を振りまくようになって.........

 

 

タマ「なんや、もう泣いてるんか!?」

 

 

桜木「いや、あんなにツンツンしてたタマが.........こんなに心を開いてくれるなんてな.........それで、それはいつのレースなんだ?」

 

 

タマ「秋の天皇賞や」

 

 

二人「!!」

 

 

 そのレースの名前を聞いて、俺とマックイーンの二人は気を引き締めた。

 ゆっくりとマックイーンの方に視線を送ってみると、その顔は驚愕に満ちていた。

 

 

マック「あの.........タマモクロスさんは、今年の春の天皇賞も勝利を収めておりますよね.........?」

 

 

タマ「そうや、その前に話が来てな?調整の為に出たんや.........」

 

 

桜木「調整.........?」

 

 

 部屋の空気が、ズシンと一気に重くなる。レースに情熱をかける者の意思が、肌に直接伝わるほどの空気。それがタマモクロスから滲み出ている。それほど、タマモクロスは最後のレースに備えているらしい。

 

 

タマ「最後のレースと同じ名前のレースがあるんや。調整に使わん手はあらへん.........それに、アイツが出えへんレースで負けてたら、ウチはライバル名乗れへんねん」

 

 

桜木「まさか.........!!?」

 

 

タマ「せや.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最後のレース。オグリも出る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「オグリキャップさんも.........!?」

 

 

タキオン「つまり、現時点で最強の芦毛対決になる訳だ.........もちろん、見に行くんだろう?トレーナー君?」

 

 

桜木「当たり前だ。こうして話してくれたのも、俺に見に来て欲しいと思ったからだろ?もし、タマが勝てば、ライバルに勝っただけじゃなく、マックイーンより先に天皇賞の制覇の景色を見る事になる。その姿は是非、見ておきたい」

 

 

 俺は.........俺は、喜びに打ち震えた。いつか見てみたいと思っていた対決を、夢を達成する前に見る事が出来るなんて.........

 見ないという選択肢はそもそも存在していない。タマとオグリさんの対決は、必ずコイツらにもいい刺激にもなると思う。

 

 

タマ「.........それで、おっちゃんの方はどうしたんや?」

 

 

桜木「ああ、俺の方も、中々にビッグニュースだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マックイーンとタキオンのデビューが決まった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「まぁ.........!」

 

 

タキオン「おや、思っていたより随分と早い判断だねぇ?」

 

 

桜木「ああ、これを聞いてすぐチームルームにぶっ飛んでいきたかったんだが、あれこれ重なって遅くなっちまった」

 

 

タマ「なんや!!ウチの衝撃発表の威力が弱まったやないか!!」

 

 

 そう言うと、タマモクロスはバシッ!と大きな音を立てるように背中を叩いてくる。見事なツッコミだ。

 

 

桜木「イテテ.........兎に角、応援にはチーム全員で駆けつけるよ」

 

 

タマ「ホンマか!?おおきになーおっちゃん!!せや、ついでにこれも返しに来たんやー!!ウチとやろやぁ♪」

 

 

 そうやって指を伸ばした先には、俺が以前貸したPSシリーズとアケコン。複数の格闘ゲームがとっちらかっていた。

 そうだそうだ、以前、クリークとオグリさんとタマの姉御の三人でゲーセンに行った時に、ボコボコにしてしまったんだった。

 

 

桜木「あー.........もしかして、根に持ってる?」

 

 

タマ「当たり前や♪ウチ初めてやったのに、おっちゃん激しくするんやもん。責任はとってもらわんとなぁ?」

 

 

 かなり語弊があるぞ、その言い方は、なんだ君達、そんな目で見るんじゃないよ!!

 

 

桜木「俺は言ったぞ!!格闘ゲームは手加減できないって!!」

 

 

タマ「あんな強いとは思わんやん!!」

 

 

 そう、ほぼ棒立ち同然のタマをイジメ抜いてしまった。流石に可愛そうだったので50円返したが、それが逆に怒りを買ってしまったのだ。

 だって皆やるでしょ?トレモと同じだよ。

 

 

マック「トレーナーさん.........負けず嫌いもここまでくると、見苦しいと言うかなんと言うか.........」

 

 

桜木「うぐ.........くっ、ゲーム以外で負けてきたんだ。今更ゲームで負けてやれるか.........!!」

 

 

 自分で言っといてなんだが結構なクズだな。どうしよう、謝ったら許してくれるかな.........?

 

 

桜木「けどあの時は本当にすまんかった」

 

 

タマ「許さへんで。はよやろや」

 

 

 その日、タマモクロスの怒りのリベンジが炸裂し、成人男性の苦しい唸り声がチームルームに響き渡ったと言う.........

 

 

 

 

 

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ......To be continued

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