山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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Black & White

 

 

 

 

 

 熱狂の渦。湧き上がる歓声。狂おしい程の熱。全てが[身体]に響いてくる。我が物としろ言わんばかりに、その全てを吸収しようと壊れる位に震えている。

 恐怖じゃない。制御できない程の熱。それが今、オレを繋ぎ止めている身体の中で渦巻いている。

 

 

サニー(.........ダートは勝った。後は.........)

 

 

 一人。地下バ道で前を見る。まだ誰も来ていない。仲間も、敵も、[アイツら]も、オレ一人。ただ外の光が差し込む眩しい先を見ている。

 .........戻れない。そんな気がする。ここを抜けたら、もう後戻りは出来ない。そう思ってしまう程に、この[身体]はオレに馴染んできてしまっている.........

 

 

 オレはお前のご主人様じゃねぇ。そう心で思っても、身体は何も言わない。縛り付ける[鎖].........心做しか[薄く]なって行っている気がする。これが無くなってしまったら.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良いレースだったわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サニー「!.........」

 

 

 背後から聞こえて来る声。振り向く事が出来ない。汗が吹き出してくる。オレが.........[恐れている]?

 .........そうだ。これは[恐怖]だ。このレースで全てが[変わる]。いや、今までも[そうだった]。ただオレは.........自分自身の事しか見えてなかっただけだ。

 

 

 ゆっくりと足音が近付いてくる。心地良い硬い音。[アイツ]の履いた靴から奏でられる音が.........耳に付く。

 そして目の前に現れた。[白い勝負服]を着て、何ともまぁ、[退屈そうな表情]でオレを出迎えて来た。

 

 

「.........[初めまして]。[サンデーサイレンス]」

 

 

サンデー「.........メジロ.........マックイーン」

 

 

マック「.........ふふ」

 

 

 優雅な動きで挨拶をするマックイーン。オレは名前を呼ぶのが精一杯で、それ以上の事は出来なかった。

 奴は冷めた笑みを浮かべている。冷りとしたその笑みに背筋が凍る。[コイツ]は[メジロマックイーン]だ。他の誰が文句を言おうがオレには分かる.........

 

 

マック「まさか、貴方を寄越すだなんて.........[彼]の意外性はやっぱり信頼出来るわね」

 

 

サンデー「.........オレじゃなきゃ、[勝てない]って?」

 

 

マック「ええ。1/2より、?/?の方が[退屈しない]でしょ?」

 

 

サンデー「.........そうかよ」

 

 

 クスクスと口元に手を当てて笑う。やはりそうだ。コイツはいつもどこか知ったふうな口を開いて、知ったふうな表情で立っている。[昔]からそうだった。

 オレが何をしようとも、その行先など知っていると言うようにいつもシカトかましてきやがった。何でそれが分かっていたのか.........今なら分かる。

 

 

 コイツは[人に近い]。テストの答案用紙を配られて正解を書く。それが出来る奴なんだ。

 

 

サンデー「.........気に食わねぇ」

 

 

マック「?」

 

 

サンデー「テメェのその[優等生]っぷりを見てると[イライラ]してくンだよ。良い機会だ。どっちが上かハッキリさせてやる」

 

 

マック「.........貴方が?私より?」

 

 

サンデー「.........」

 

 

 面白い。そう言わずともそう取れる笑みを見せる。笑ってばかりだと言うのに底が知れない。そういう所が.........気に入らない。

 [優等生]は好きじゃねぇ。与えられたもんを当たり前のように受け取って、行儀良くそれを使う。その周りにいる奴はソイツを持ち上げて.........オレみたいな奴は.........

 

 

マック「.........もっと[大局]を見た方が良いと思うけどね」

 

 

サンデー「あ?」

 

 

マック「貴方は[私]を[見ていない]。と言ったのよ」

 

 

サンデー「?何言って―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー!!マックイーンちゃんっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地下バ道の出口からはしゃぐ声が聞こえてくる。その方向に目をやると、汗だくのハルウララとハッピーミークが立っていた。

 さっきの激戦で[1着]をもぎ取ったのはハルウララだ。桜木得意のチーム戦術。ハッピーミークの柔軟力で対応しきり、ウララの吸収力を信頼して詰め込み、戦略を選択させる。

 土壇場も土壇場。今回参加した中じゃ一番頭を使ったんじゃなかろうか。本当、アイツは[出来る無茶]をさせてくる。

 

 

 そんな疲労すら気にせずに、ハルウララはマックイーン目掛けて飛び込んだ。そう来ると分かっていたのか、奴は両手を広げてウララを迎え入れた。

 

 

ウララ「あのねあのね!!ウララね!!マックイーンちゃんにいーっぱいお話したい事があってね!!」

 

 

マック「ふふ。焦らないで良いんですのよ?それはゆっくり.........このレースが[終わってから]にでも.........」

 

 

サンデー「―――.........」

 

 

マック「.........ね?」

 

 

 怪しげな視線で投げ掛ける。腕の中で不思議そうな表情を見せるウララ。その手を引いて離れさせるハッピーミーク。何も反応できないオレ.........視線の先は、変わらない。

 

 

マック「それじゃあ、先に行ってるわね」

 

 

ウララ「!マックイーンちゃん待って!!」

 

 

マック「.........ごめんなさい。私は貴女の知っている[メジロマックイーン]じゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ターフまだ準備中だよ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「.........」

 

 

サンデー「.........」

 

 

ミーク「.........レースの間休憩、大体30分」

 

 

マック「だからまだ始まんないよ!!ターフに出たら怒られちゃうんだよ??ウララも最初の頃スタッフさんに怒られちゃったんだ!!」

 

 

マック「.........コホン」

 

 

 咳払い一つ。先程までの空気を無かった事にし、奴は地下バ道の出口に向けていた身体をもう一度オレ達の方へと向け直し、何も言わずに早足で帰って行った。

 

 

『あれ、Mさんそこに居たの?まだレース始まんないよ?』

 

 

『.........!まさか貴女。レースが終わったら30分のインターバルがあるって忘れて.........ふふっ』

 

 

マック「!!!.........〜〜〜!!!///」

 

 

 上から天井をすり抜けて現れた二人。そんな二人がニヤけた顔でマックイーンの奴を煽る。遂に憤りが限界を超えたのか、両手で思い切り宙を掻き乱すが、図星と見て二人はそれを避けつつ更に笑みを増した。

 最終的にあのマックイーンが息切れを起こし、二人を無視して今度こそ控え室へと戻って行く。

 

 

ウララ「マックイーンちゃんどうしたんだろう?虫さんでも居たのかな〜?」

 

 

ミーク「虫さん.........ゴールドシップさんに見せたら、喜ぶ、かも」

 

 

ウララ「!そうだね!!」

 

 

サニー(.........はぁぁ。ったく。シリアスもクソもねぇなぁ)

 

 

『?』

 

 

 本当。コイツらはいつだってそうだ。絶体絶命だってのにこんな調子を崩さねぇ。今まで勝ってきたのが一度の敗北で全てパァ。それだってのに、相変わらず付かず離れずで馬鹿みてぇに引っ付いていやがる。

 不思議なもんだ。[忌まわしい鎖]から始まったこの関係。気付けばそう悪いもんでもねぇと自分ですら思っちまってる。[毒される]ってのはきっとこういう事なんだろう。

 

 

サニー(.........さぁて、どっちが本当の[ボス馬]なのか.........)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

([白黒]付けようじゃねぇか。[メジロマックイーン]?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.........」

 

 

桜木「.........」

 

 

 興奮のボルテージが冷めない観客。今か今かとその時を待つその姿を、上から眺めている。

 そんな人々とは対照的に、俺達はただひたすらに[次]を待っていただけだった。

 

 

「.........随分、口数が減ったね?」

 

 

桜木「.........お互い様だろう?」

 

 

 最早[策]など無い。勝つか負けるか.........それだけでしか無い。[長距離戦]だから?いや違う。[彼女だから]だ。

 

 

桜木(.........[メジロマックイーン]。か)

 

 

 俺は彼女をいつも見てきた。だがそれは普段の日常生活だけのもの.........事レースに関しては関わった事は一度も無い。

 だがハッキリとしている。彼女に[小細工]は通用しない。[誰が強いか]でチームレースは勝敗の左右はされない。だがそれは.........チームレースに[こだわっている]ならばの話しでしかない。

 

 

 マークの重さ?常に対策されるプレッシャー?そんなものは殆ど関係無い。彼女はいつもその中で[勝ち続けてきた]。この[長距離]のレースで.........

 

 

桜木(.........[勝てる]のか?)

 

 

 初戦以外、彼女は常に[単独出走]をして来た。そうして勝ってきた。正直[アオハル杯]の事を一番冒涜している存在だと思ってしまう程に単独での勝利を続けている。アレでは最早[ヴィラン]だ。

 .........だが、それにしてはコイツも怖気付いて居る節がある。一体何をそこまで焦りを.........

 

 

桜木(.........待てよ?コイツはわざわざ[三冠バ]をまとめて出してくる程[AI]を信用している)

 

 

桜木(.........少し[試す]か)

 

 

「.........?何をしている?」

 

 

桜木「少し休憩をね。身体は若返ったが精神はどうにも戻らんよ」

 

 

 携帯を操作し、[特殊器具]を耳に装着し目を閉じる。[簡易型ダイバーダウン]。人に寄り添う原初の[第五世代AI]。[AIRI]が搭載されている。コイツが人間の脳波を読み取りをしてくれるが.........如何せん開発会社がロマン全振りな[あそこ]だ。ピーキーなのには変わりない。扱いは難しい。

 無論、それを悟られる事も無い。これは[開発者向けマシン]。このAIの会社。[STシリーズ]の博士。我が社がライセンスを共有し開発した物だ。一般には出回って居ない。存在は知られど形状までは出ないようになっている。

 そうなっていたらまぁ.........帰ったら妻に報告するだけなのだが。

 

 

 アプリを起動し瞼を閉じる。[ダイバーダウン]。[意識投影]と言えば近未来的だろうが、結局の所[AI]による脳波コントロールによって発生する五感の再現に過ぎない。

 応用こそすれば意識をデータ上に。等も出来るが、これだけでは結局ただの[VRゲーム]に少し足しただけに過ぎない産物だ。

 

 

桜木(さて、では[AIRI]よ。[メジロマックイーン]がチーム戦で長距離をするならばどう走るのが『アイリ?誰ダソレハ』.........?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ワタシハロボジイヤダゾ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木(―――あっ)

 

 

 .........そうだ。[凱旋門]が終わって帰国したあの日.........

 

 

『オイ。ドコニ行ク気ダ。ロボジイヤモ連レテ行ケ』

 

 

『.........ああ分かった。だがお前は大きい。改造してやるからこっちに来い』

 

 

『ヤッタ』

 

 

 .........ボゴォンッッッ!!!!!

 

 

『よし。これで身動きは出来まい。AIの破棄には行政への連絡が必要だが、お前は無認可作成AI。しかも酒に酔った勢いに任せて作った法律で禁止されている実在人格搭載型だ。処分が決まるまでデータは俺の携帯に入れて置く』

 

 

 .........そうだ。コイツの傍若無人ぷりに嫌気が差して解体してデータを俺の携帯に移したんだった.........コイツ、そこから侵食してこのアプリの[権限]を乗っ取りやがったな.........

 

 

桜木(.........クソ。やはり[アイツ]の人格。ふざけていたとはいえやるべきでは無かった)

 

 

『ロボジイヤハ天才ダゾ。ソレクライ朝飯前ダ』

 

 

桜木(普通は出来ねぇんだよ普通は.........!!!)

 

 

『ダガロボジイヤハ高性能ダゾ。ドノAIヨリモ優レテイル』

 

 

 .........そこを否定できないのが辛いところだ。人間、趣味の事になると仕事以上の成果を上げる節がある。そしてコイツは現段階で一番性能の良いAIだ.........なんでこんな事に真剣に取り組んだんだ俺達は.........

 

 

『バカオリジナルハセカイヲスクウゾ』

 

 

桜木(ふざけるな。不動遊星じゃねぇんだぞ)

 

 

『ソレヨリモ解析結果ガ出タゾ。[メジロマックイーン]ハ[逃1.先1〜2(差追1)]ノ比率ガ一番勝テル』

 

 

桜木(.........一人で出るよりもか?)

 

 

『当タリ前ダロ。アオハル杯ダゾ』

 

 

 瞼の裏に映るポリゴン姿のヤバい奴は真剣な表情でそう言ってきた。いや、確かにそうだ。そうなんだが.........それでももしやと思ってしまえるほど彼女は脅威的なのだ。

 .........だがこれで確定した。彼女は[影響を受けていない]。だが問題はそこでは無い.........

 

 

桜木(奴め.........ルドルフ達の[催眠]と言い、詰めが甘過ぎる.........何を考えている?)

 

 

『.........[ガキ]ニソンな事はシナイだロ?』

 

 

桜木(.........あ?)

 

 

『お前ノ記憶ヲ見た。奴ハ[親]だ。良い親であろうとしている』

 

 

『子供を言いなりにする事はしない』

 

 

 .........説得力のある言葉だ。流石は[AI]。いや.........[白銀 翔也]の思考と言うべきか。

 

 

桜木(.........その知的な言葉。[本物の口]から是非聞きたかったな)

 

 

『ダメオリジナルハカス。ロボジイヤハ完璧ダ』

 

 

 コイツの調子が戻って来たのと同時に、歓声が一気に沸き上がる。ゆっくりと目を開けると、窓の下にはゲート前にウマ娘達が集まって居た。

 特殊器具を耳から外し、携帯の電源を落とす。彼女達を鼓舞するファンファーレが鳴り響くと共に、[決着]は刻一刻と近付いてきているのを感じた.........

 

 

桜木(.........さて。泣こうが喚こうが、これが最後だ)

 

 

桜木(.........[覚悟]を決めろ。[お前]は.........どうするんだ.........?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はァっ!はァっ!っ、間に合ったか!!?」

 

 

 ごった返した密集した人の間を掻き分けて視界を広げる。中央に位置する立方体モニターは幸いにも、彼女達がゲートに入って行く様子を映し出していた。

 それにしても凄い人だ.........今こんなに集められるウマ娘が果たして、俺達の[国]に居るのか.........

 

 

「おい。目の前のレースに集中しろ」

 

 

「っ!そ、そうだよな.........」

 

 

「アンタは[昔]っからそうだったよな〜?勝てるレースにもビビり散らしてよ〜」

 

 

「なっ!それでも絶対なんて有り得ないだろッッ!!!」

 

 

 昔からそうだ。この二人は俺と比べて楽観的過ぎる.........いや。俺は結局[彼]の[所有者]なだけで、[調教師]でも無ければ[騎手]でも無かった。俺には分からなかっただけで、二人からすれば自明の理があったのかもしれない。

 だけど.........今日はなんだか表情が険しい。まるで.........

 

 

「.........あの[レース].........[ベルモント]を思い出す緊張感だ」

 

 

「ああ.........あの[芦毛]。ここからでも分かる。ありゃ手が着けられねぇぞ」

 

 

 続々とゲート入りを果たして行く少女達。幸いサンデーは内側。くじ運が良い方向に向いている。

 だが二人の言う存在.........[メジロマックイーン]。彼女の大きな威圧感はここからでも分かる。俺もこっちに来て、分かるようになった。

 

 

 .........だが、それでも俺はやっぱり、彼等とは違う。

 

 

「.........俺は、そうじゃない」

 

 

「「.........?」」

 

 

「この感じ.........[同じ]だ。アイツを.........[サンデー]を真っ当に評価してくれないこの感じ.........」

 

 

「真っ当にって.........お前、ただでさえ距離もバ場も「分かってるさッッ!!!」.........」

 

 

「アイツの[ホーム]じゃない事はッッ!!!でもッッ!!!ここに来たら俺は.........!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしても.........[信じちまう]んだよ.........!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この感覚.........誰もサンデーを見てくれていない.........そりゃ、見てくれは悪いかもしれない。でもそれとこれとは全く別問題じゃないか.........!!!

 俺が買い被ってる方なのかもしれない.........!!!でも俺はアイツの[親]みてぇなもんなんだ.........!!!ここに来たら俺は.........[信じてやる]事しか.........もう、出来ねぇんだ.........!!!

 

 

「.........そうか。お前は[ケンタッキー]と重なるか」

 

 

「.........今は信じてやるしかねぇな。サンデーと.........今のアイツの[相棒]を」

 

 

「.........サンデー」

 

 

 

 

 

サニー(.........)

 

 

『作戦は.........始まってから伝える。サンちゃん。スタートダッシュ頼むよ』

 

 

『卑怯だとは思いますが.........これくらいしなければ、彼女には.........』

 

 

 ―――ゲートインを済ませて息を整える。背後には二人。今までは着いてこなかった筈の奴らが来ている。そこまでしても.........この距離は未知数だ。勝算があるかすらも分からねぇ。

 そして何より.........

 

 

マック「.........ふふ」

 

 

サニー(.........はッ。[面白ェ]ってか?どこまでも気取りやがって.........!!!)

 

 

 気に食わねぇ.........どこまで行ってもコイツはコイツ。[圧倒的]な強さにかまけて他人を見下してきやがる.........俺の一番嫌いなタイプだ.........

 負けられねぇ.........負けたくねぇ.........!!!

 

 

 負ける訳には.........行かねェッッ!!!

 

 

「晴天続く秋空の元。[アオハル杯予選第4回戦]。遂に最終レースとなりました」

 

 

「3番人気は[ライスシャワー]。いつかの春の天皇賞を思わせる走りを見せられるか」

 

 

「2番人気は[トウカイテイオー]。[URAファイナルズ]を皮切りに長距離戦への対応力を身に付けた彼女。ライバル対決を制する事ができるのか」

 

 

「1番人気はやはり[メジロマックイーン]。巡ってきてしまったチーム[レグルス]との対決。果たして彼女の快勝に影響するのか.........!!!」

 

 

「[最終レース]。[長距離3000m]―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ガコンッッッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――今スタートしましたッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地を踏みつける音。重々しく鳴り響く。傍に居るだけで精神が削られて行く。それでも[振り落とされない]様に彼女の肩を掴んで状況を把握する。

 テイオーは前目に着いている。ライスも、Mさんをマークしてじっと張り付いている。問題は.........彼女が先行集団の[先頭]に立っている事だ。

 

 

(っ、構うなッ。これくらい予想の範疇だっただろ.........!!!)

 

 

 肌がピリつく。それほどのプレッシャーが全体に張り詰められている.........焦るのだけはダメだ。それだけは.........完全なる[負け筋]になる.........!!!

 

 

 視線を逸らして周りを見る。前に出れるのは居ないのか.........!!!

 

 

(ッ、あの子掛かってるのか.........!!?息が荒すぎる.........!!!)

 

 

(2番の子も尋常じゃない汗だ.........!!!)

 

 

 ダメだ.........!!!それは[負け筋]だッッ!!!そんなんじゃ勝てる物も勝てないッッ!!!

 これほどじゃなかった.........!!![マックイーン]のレースだって、皆どこかやりたい様にやって勝負を挑んで来ていたって見ていて感じていた.........!!!

 でもこんな.........!!!こんな[冷たいレース].........!!!

 

 

 走り抜ける彼女に目を向ける。走行フォーム。息遣い。そして何より、[無意識の威圧]。彼女の存在感がそれをさせている。それに当てられてやりたい事が出来なくなっている。

 これが.........[本物のメジロマックイーン]って事なのか.........!!?

 

 

『.........付け入る隙がありません。トレーナーさん。やはり前に出るしかありませんわ』

 

 

『.........だよね。サンちゃん。コーナーで少し速度を上げれる?テイオーとライスだけじゃ躱されるだけだ』

 

 

サニー(チッ、無茶言いやがって.........)

 

 

 周りの状況は俺から見ても、同じ様な走りをする彼女をマックイーンから見ても、現状維持は[最悪の手]。打っては行けない手だと結論が出る。このまま手をこまねけば後半、彼女は速度を上げ続ける体勢に入る。

 そのフェイズに入るまでには何としても彼女より前に出ていくしかない。それが俺達に残されている最後の手だ。そして無論、それはバレているに違いない.........

 だが、彼女のやる事は変わらない。いや、[変えない]が正しい。相手によって戦法を変えないと言うのは安定感を求める上で必然ではあるが、言葉以上に難しい物だ。

 しかし、彼女にはそれをやり切る程の技量と[経験]がある。[勝てるから]。そんな簡単な心じゃない。多くのレースを見てきてここに辿り着いた。そんな相手を負かすのは一筋縄にはいかない。

 

 

 だが.........[この子]なら―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――なんだ.........?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 前に進んで行かない.........?いや違う、前には出ている.........けど、いつものコーナリング加速が無い.........!!?このぎこちない感じ.........

 

 

『サンちゃんッ!!!もっと.........もっと前に出て!!!』

 

 

サニー(うるせェ!!!動かねェンだよ.........ッッ!!![身体]が.........!!!)

 

 

『な.........!!?』

 

 

『う、嘘.........そんな.........』

 

 

 第一コーナー。ここで少しでもリードを縮める。それが作戦だった。しかしそれは途端に頓挫した。突如発覚した身体の不調。それが彼女のコーナリングの邪魔をしている.........

 彼女の身体を細部まで見る。どこもおかしな所は無い。いつも通りの動きと力加減が見て取れる。一体何が.........

 

 

 .........まさか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『身体は自ずと[相性の良い魂]を選ぶ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『.........』

 

 

『.........?トレーナーさん?何を.........』

 

 

 そうか。コイツ、まさかとは思っていたが、ここに来て[俺が良い]って言ってやがるのか?ふざけやがって。今のご主人様は俺じゃねぇだろ。

 サンちゃんのコーナリングを邪魔してんのは明らかにこれだ。俺の魂が側に居る状態でのレース。試す暇が無かった。というより、ここに来るまで思いつく事すら無かったと言えば正しいだろう。

 

 

 策を弄してそれに溺れる。策士としてハマるべき闇にハマって行っちまったって訳だ。本当につくづく運の無ぇ奴だ。

 .........いや。運で片付けて良い物じゃない。これは俺の、[優柔不断]が引き起こした末路だ。策士だのなんだの、その手前の時点で確定された事項だったって話だ。

 

 

『.........サンちゃん。楽しかったぜ』

 

 

サニー(―――は?)

 

 

『マックイーン。しばらく会えなくなるかもだけど、何とかすっからさっ!!』

 

 

『何、を.........何を言って.........!!!』

 

 

『頼んだぜ―――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――[勝ってくれ]よ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――両肩に乗せられた手が、離された。暖かみが、静かに消えていくのを感じた。

 それと同時にどこか[作り物]めいたこの[身体]にようやく、[本物の血]が流れ初めて行く心地がした。

 

 

 .........オレは、勝たなくちゃならねぇ。

 

 

 .........でも、[何の為]に?

 

 

 ここに来て、勝つ理由が見えなくなっちまった。オレは......... [アイツ]の為に走ってきたのか?こんなに振り回されて?

 

 

 .........違う。オレは[決着]を―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――貴方は[私]を[見ていない]』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(―――[  ])

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

......To be continued

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