山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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Will To Live

 

 

 

 

 

『何だ、醜いヤツだな』

 

 

 生まれて初めて聞いた人間の言葉はそんな物だった。目もろくに見えていない。なにがこの世界にあるのかも分からない中でオレに掛けられた言葉は、その意味が分かっても尚、俺の中に残り続けた。

 

 

 後ろ脚がひん曲がった醜い馬。過激なルッキズム思想が、最早そう言われない程に浸透し繁栄して行った時代。誰一人として逆張りすらしない。それがオレ。[サンデーサイレンス]の生まれた国だった。

 いつからだろうか。このオレの身体を縛り付ける[鎖]に気づいたのは.........いや、本当の意味で気付けた時は無かったのかもしれない。

 

 

 けどオレは、[愛されていた]。文字通り、誰が消えようが、オレだけが残った。そしてそんなオレを、アイツらは見捨てなかった。

 オレが[弱い]からだと思っていた。弱いから、そうでもしないと生きて行けない奴なんだと見くびられていると思った。

 

 

 だからオレは[勝ってきた]。誰が相手であろうと構わなかった。オレはオレの存在を認めさせたかった。確かな[個]としての存在を。

 だけどそれは結局、[レース]の中でだけだ。ルッキズムに囚われた奴らの根本を変えるのはオレ一匹じゃ到底無理な話だったんだ。

 

 

 [血]。オレ達を延々と縛り付けて宿命付ける切れない[鎖]。例え[個]が突出しようとも、後に続く存在を見据えられなければ容赦なく切り捨てられる。

 オレは疎まれ、[アイツ]は持て囃された。

 

 

 .........だからか?だからオレはずっと、[アイツ]の影を―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――[違う]。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 手が離れて行く。身体がふわりと不気味に浮き、地面から遠ざかって行く。全てと解け合うように透き通っていく手を見て、それはちょっと困ると思った。

 .........でも俺は[トレーナー]だ。彼女が全力を出せる土台。舞台を作るのが俺達の役目だ。それを作るためなら何だってする。それが俺の思うトレーナーだ。

 

 

(けどマジ弱ったなぁ.........こんな早く消えるもんなん?現世ってハードモード過ぎん?)

 

 

(もっとこう、あるじゃん?幽霊的な?一応澄した感じ出してるけど未練タラタラよ?マックイーンとデートだってまだそんな(ガチィンッッッ!!!!!).........ゑ?)

 

 

 天へ昇る。正にその表現が正しい程に空へと吸い込まれて行きそうな身体(?)を、突如現れた[鎖]が雁字搦めにして止めてくる。

 それが何なのか。考える暇もなく強い力で思い切り地面へと引っ張られ、辿り着いた場所は.........

 

 

 先程、俺が手放した彼女の[背中]だった。

 

 

『ぐぇっ.........!!?』

 

 

サニー(―――[違う])

 

 

サニー(オレが.........[悪かった])

 

 

『?サン、ちゃん.........?』

 

 

 静かに。だけど力強い心のまま彼は謝った。けれど良い意味で申し訳なさは感じさせられなかった。自分が悪いと言いながらも、前を向いている。

 背中に縛り付けられながらも、どこか心地良さを感じる。こんなに激しいレースの最中なのに.........どこかゆりかごの様な優しさを感じられる。

 

 

 .........そうか。これが.........[君の走り方]なんだね.........

 

 

 

 

 

 ―――オレはずっと。[弱い奴]が嫌いだった。

 

 

 何も言わず、何も行動を起こさず、ただじっとしている奴が嫌いだった。自分の意見を言わない。表現しない奴は、きっと自分が[弱い]と自覚しているんだって。

 そんな状況が、自分が嫌な癖に一歩も踏み出せない。そんな[弱者]が大嫌いだった。

 

 

 .........けど、ここに来てようやく分かったんだ。[強さ]ってのは、色んな形があるんだって。

 レースが強い奴。心が強い奴。身体が強い奴。考え方が強い奴.........今まで傍から見ているだけだったけど、こんな身体を手に入れて初めて分かった。

 

 

???(.........オレの求める[強い奴]ってのは、本当は居ないのかもな)

 

 

『.........そんな事ありません』

 

 

???(.........?)

 

 

 

 

 

 ―――走る彼女の背中。乗せている彼ごと抱き締める。何かを追い求めて走る。それは私達[ウマ娘]にとって与えられた、人生の[ゴール]。それに辿り着いた時、ようやく[その先]を見る事が出来る。

 でもゴールは無数にあって、枝分かれしている。気が付かないウチにマイナス思考に囚われて、本来の行き先とは違うゴールにたどり着く事がある。

 [行きたい場所]に[導く]。それが今まで、[彼]がしてくれていた事。もし、今彼にそんな余裕が無いのなら、私が肩代わりすれば良いだけです。

 

 

『[強さ]とは、[立ち上がる事]だと思います』

 

 

『例えどんな苦難に膝を崩しても、立ち上がる事さえ出来れば、行きたい場所。居たい場所に辿り着ける』

 

 

『どんなに[弱くても].........それさえ出来るならば』

 

 

???(.........[弱くても]、[強くあれる].........)

 

 

???(ククク.........それが、今のオレの[自信]なんだな)

 

 

 

 

 

マック(.........気配が変わった)

 

 

 ―――後ろから感じる[異物感]が消えた。それは、この場に最早そぐわない存在は居なくなったという事。適応し、進化した事を知らしめている。

 隣を走るトウカイテイオー。後ろに張り付くライスシャワー。懐かしい感覚と共に新鮮な気持ちもある。皆、[過去]とは違う。

 

 

マック(.........結局、[ひとり]ではそのステージには立てない)

 

 

マック(ようやく[気付いた]のね。坊や.........いえ―――)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(―――[サンデーサイレンス]ッッッ!!!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第2コーナーを回って中盤戦ッ!!先頭は未だ12番だがすぐ後ろにはメジロマックイーンが迫っているッッ!!!」

 

 

カフェ「.........」

 

 

 ―――縦長の展開が広がっている。これは明らかにあの人の理想系。正に[王道の先行策]をするのに打ってつけな陣形。

 誰も彼も怖気付いている。あんな形にされて、ここに居ても分かるほどにプレッシャーを出されたら誰だってそうなる.........

 

 

 .........でも。

 

 

シャカ「.........[寒い]な」

 

 

フジ「うん。でも、不思議と嫌な感じはしない」

 

 

タキオン「.........それが[予感]と言う物だよ。シャカールくん」

 

 

スペ「な、何だかゾワゾワしてきます.........!!!」

 

 

スズカ「そうね.........まるで、私達も走ってるみたい」

 

 

 何かが起きる.........それも、[お友達]を中心とした物。それを感じさせている.........

 

 

 .........?

 

 

カフェ「.........えっ」

 

 

全員「?どうかした(の)(か)(かい)?」

 

 

カフェ「.........マックイーンさんが、桜木トレーナーさんごと押し込み始めてます.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.........ゑ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ちょちょちょ!!?流石に無理ッ!!!無理があるって!!!』

 

 

サンデー(うるせェッッ!!!こうなったらとことんやるんだよッッ!!!)

 

 

『君は知らんけどマックイーンは違うでしょ!!!こんな方法で勝ってもレースを侮辱してる事になるんじゃ!!?』

 

 

『私は押し出しでサヨナラが決まっても別に構いませんッッ!!!』

 

 

『野球はそうだけどさァ!!!レースはさァ!!?』

 

 

 ―――第3コーナーの手前で押し込まれる。見える人が見れば反則と言われても差し支えないこの行為。その提案はサンちゃんからだった。

 身体が言う事を上手く聞かない。ならばその分、押し出せば良い。と.........理屈は分かるがルールを破るのは流石にNG.........いや、そもそもルールに規定すらされていない?俺のモラル的な?

 

 

『第3コーナーですわよ!!!』

 

 

サンデー(押せェェェェ―――ッッッ!!!!!)

 

 

『もうどうにでもなれェェェェ―――ッッッ!!!!!』

 

 

 更に押し込む力がぐっと加わる。普段だったら彼女の身体が密着している事で色々と意識してしまっていたがそういう状態じゃない。

 しかし、先程とは違いコーナリングで大きく距離を詰めて行く事に成功している。ライスの少し後ろだったのが今やテイオーの少し前。Mさんまで残り僅かという距離にまで達する事が出来た。

 

 

『やった!!!上手く行きましたわ!!!この調子で次も.........!!!』

 

 

『クッソ.........!!!この優柔不断ボディが!!!テメェがそんなだからこんな不正してんだぞ!!!』

 

 

サンデー(言ってる場合かッッ!!!)

 

 

 身体を強く密着させることによって、サンちゃんと俺の存在を強く検知する我がボディ。先程感じさせたぎこちなさは無い。このまま行けば.........或いは。

 最終コーナーの手前。テイオーは早めに仕掛けに行く。Mさんを抜かす為に。改良された独自の走法。通称[テイオーステップ:零式](命名者俺)を駆使して前へと躍り出る。

 それと対照的にライスはMさんに圧を掛け続ける為にその側面後方へと移っていく。態々視界の端に自分をチラつかせる位置につき、彼女に自分の存在を嫌でも認識させに行く。

 

 

 .........それでも、この牙城は崩せそうにも無い。それほどまでに徹底している。[先行策]という物がどんな物なのか。[一つの境地]を見せ付けている。

 

 

サンデー(コーナー前だッッ!!!もう一度行くぞッッ!!!)

 

 

『全力で押しますわよッッッ!!!!!』

 

 

『曲がれェェェェ―――ッッッ!!!!!』

 

 

 スピードを加速させながらインコースに入って行く。少しの膨らみもなく、他のウマ娘が作り上げた隙間をスルスルと抜けて前へと出て行く。

 Mさんを追い抜き、先頭の逃げを打っていた子も最早目の前。このまま加速を続ければ.........?

 

 

 .........この子、バテて無いか.........?

 

 

『―――ッッ!!?サンちゃんッッ!!!もっと加速付けて!!!』

 

 

サンデー(あァ!!?何言ってんだテメェッッ!!!マックイーンは抜かしたしこれ以上は―――!!?)

 

 

『う、嘘.........!!?』

 

 

 逃げを打つウマ娘を抜き去って行く。予定通りの展開。しかし、それにはまだ速すぎる。予定外の展開。

 彼女はスタミナが優秀だ。この長丁場でも走り切れる速度を保つ実力。[オブザーバー選手]ではあるが、彼女の出場を知ったと同時に、申し訳ないがペースメーカーとして設定させて貰った。

 

 

 その彼女が狂わされた。その[原因]が今.........向こう側から[同じタイミング]で彼女を抜く.........

 

 

(―――浅かった.........!!!)

 

 

 [並ばれた]。最終コーナーで抜け切れなかった。これが意味する事はただ一つ。作戦の瓦解だ。

 本来この作戦はマックイーンの走りに対抗出来るテイオーとライスで連携を取り、彼女に圧を掛け続けながらコーナーから抜き去る事だ。そうする事で彼女の動きを制限。そしてレースを制する。そうした[机上の空論]に近い作戦ではあった。

 土台無茶な作戦だったんだ。相手はマックイーンの[ウマソウル]であるMさん。彼女の聡明さは底知れない。無論、対策してくる事は想定済みではあった。

 

 

 しかし、ここまで影響を及ぼすレースを仕掛けるとは思っても見なかった。アオハル杯は既に予選準決勝。オブザーバー選手もGI出走者ばかりだ。そんな彼女達が、こんなにさせられているんだぞ.........?

 

 

 浅かったのは認めよう。だが一体誰がこれほどのレースを仕掛けてくると予想出来ただろうか?これが.........こんな[可愛げもないレース]が、彼女達にとっては日常だったのか.........?

 

 

 拳を握り締め、奥歯を噛み締める。後悔の念に心を潰すのと同時に、身体にも同様の[圧]が掛けられた。

 

 

『.........押します』

 

 

『.........え(は)?』

 

 

『先程よりも、強く行きます』

 

 

『ま、マックイーン。何を―――』

 

 

 それを言い切る事は無かった。直線に入って行く直前。彼女は少しサンちゃんと俺から距離を置き、[息吹の呼吸]をする。

 身体は半身。両手の平を縦に揃えて構えをする。重心は深く置き、そして呼吸はやがて静かに、しかし存在感を増していく。

 

 

 それを見た瞬間。俺は思い出した。

 

 

(っ!これ、[クソみたいな丸太の試練]で俺が使った―――)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ドンッッッッッ!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『えっ―――』

 

 

『なっ―――』

 

 

サニー「か.........はァ―――」

 

 

 強い衝撃が突き抜けた後、遅れて前へと押される。

 だがしかし、それは決して[推進力]にはならなかった。物理的肉体を持っていなかったのが原因か、そしてこれが俺の身体なのが原因なのか.........そんな事は分からなかった。

 

 

 ただ一つ、起こった出来事を言葉にするのならば―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――俺とマックイーンは、身体の[殻]を破るが如く突き抜け、その[中]へと入って行った.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『このドアを開けろッッッ!!!!!』

 

 

『どうせコイツもドーピングしてんだろッッッ!!!!!』

 

 

『お前さえ居なければッッッ!!!!!』

 

 

 .........酷い罵声が聞こえてくる。これは.........そうか。オレはずっと、ここに居たんだな.........

 

 

 何がダメなんだ。何でオレを認めねぇんだ。オレはただ生きたかっただけなのに。だったら何でオレは.........生まれたんだ.........

 

 

 頭を抱える。耳を塞ぐ。身体を曲げて、縮こまる。昔だったら耐えられた。オレが強いと思っていたからだ。自分が強いと思い込んだら何だって耐えられた。

 でも.........ここに来て気付いた.........オレは、強くも何ともない。ただ[生かされた存在]なんだ.........

 

 

『扉を開けろッッッ!!!!!』

 

 

『アイツを引き摺り出せッッッ!!!!!』

 

 

サンデー(やめろ.........)

 

 

『お前なんか運が良いだけだッッッ!!!!!』

 

 

『次やったら負けるに決まってるッッッ!!!!!』

 

 

『負けろッ!負けろッ!負けろッ!負けろッ!』

 

 

サンデー(やめて.........くれ.........!!!)

 

 

 縮こめた身体を更に窮屈にさせて行く。目を閉じて頭を抱える。そうすると音が遠のいて行くように感じた。もう良いんだ。

 周りの音が消えていく。身体が強く強ばって動かなくなる。それでも、あの罵詈雑言と壁を叩く音が聞こえなくなるならそれでいい。

 

 

 頼む.........もう、放っておいてくれ.........

 

 

 言う通りにするから.........もう、逆らわないから.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう、許してくれ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドガァァァァンッッッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンデー「!!?な、なんだ.........っ、[鎖].........?」

 

 

 とてつもない轟音が鳴り響く。顔を上げて目を開けると、自分の周りに[鎖]が現れてオレを囲んでいた。

 鎖の隙間から見える土煙。立ち上る先には扉とは反対側の壁。まだ壊れていないが、既に大きなひびが入っている。

 

 

 足音が聞こえる。その方向から走って来ている。[四本の足].........?いや、揃っても聞こえてくる.........[二人].........?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――しゃらァァァァッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 勢い良く飛び出る[二人]の存在。男と少女。それが背中合わせでドロップキックをする形でこの中へと入って来た。

 やがてその身体は地面へと向かって行き、少女は華麗に着地を決めるが、男の方は呻き声をあげて敢え無く地面に突っ伏す形になる。

 

 

 目を見開いて何も言葉も出ない。そんなオレを額の痛みを感じながらも顔を上げた男はオレを見つけて、満面の笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「サンちゃん見ぃつけたっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンデー「おま、えら.........どうやって.........」

 

 

マック「私はただトレーナーさんに着いてきただけですわ。どうやって見つけたんですの?」

 

 

桜木「そりゃ、[一度やってる]からね。物探しも人探しも人一倍苦手だけど―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――[困ってる人]はすぐ見つけられんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その笑顔は、まるで[太陽のよう]だった。とても暖かくて、なんとでもしてくれそうな表情.........

 そのままゆっくりとオレの方へ寄ってくる。その手が[鎖]に触れる瞬間をただじっと見守るしか無かった。

 

 

 .........けれど。

 

 

 ドガァッ!!!

 

 

サンデー「ひっ.........!!?」

 

 

『見ツケタァ.........!!!』

 

 

 それは[異形]だった。コイツらとは正反対の場所。つまり正規の扉を蹴破って来たのは人の形をした何かだった。

 あまりにも異質すぎる気配。人の皮を被った何かが[蒼い炎]の様なものを纏ってゆっくりと前進してくる。

 そしてそれに追随する形で両横からぬるりと同じ様な存在が現れる.........これじゃまるで[ゾンビ]だ.........

 どいつもこいつも、桜木の一回りも二回りもデカイ奴らだ.........

 

 

桜木「.........あ〜あ。やってらんねぇな〜」

 

 

マック「どうするんですの?」

 

 

桜木「どうするもこうするも.........ここ、[夢]ん中だよ?マックイーン」

 

 

桜木「[夢]だったら.........やりたいようにやるのが[正解]でしょ」

 

 

マック「.........ふふ♪では、今までの鬱憤を晴らすとしましょうか」

 

 

 オレの前で跪いていた桜木がゆっくりと立ち上がって通路に戻った。優雅な立ち姿を見せていたマックイーンも奴に向かって微笑んだ後、真剣な表情で立ち直す。

 

 

 ゆっくりと呼吸を整える音。両手を下にゆっくりと移動させながら空気を切る呼吸.........[レース]とは違う。けれど、それは[戦う為]の呼吸だと感じ取れた。

 息を吐き切り、カッと目を見開く。その瞬間。純白のワンピースから突然、身体を守る為の硬い衣装と足元が大きく開いた黒いズボン。そして額にも防具の様な物が付けられ、髪は縛られていた。

 

 

マック「あ、あら?何故稽古道着に.........?」

 

 

桜木「か、可愛すぎる.........!!!なぁサンちゃん!!?ウチのマックイーン可愛すぎじゃないか!!?」

 

 

サンデー「言ってる場合かっ!!!」

 

 

『潰スゥ.........潰スゥゥゥッッ!!!』

 

 

 マックイーンの姿に見惚れる桜木。そんな事など気にせずに異質な奴らの一人が向かって来る。

 少し照れた様に頬を染め、モジモジとしていたマックイーンだったが足を少し開いて両手を構えた。

 

 

 その存在がマックイーンにぶつかった。だが吹っ飛んだのは奴の方だった。変な防ぎ方をしているとしか分からなかったが、マックイーンが何かをしたのは明白だった。

 

 

サンデー「な、何だよこれ.........!!?」

 

 

マック「[勢殺]。人が生み出した[対ウマ娘用]の武術。相手の力を十全に利用し従わせる為の[武術]ですわ」

 

 

桜木「さっすがマックちゃん!!!頼りになる〜♡」

 

 

マック「!そ、そんなに褒められても.........///」

 

 

サンデー(.........なんなんだ、コイツら)

 

 

 目の前で理解不能な事ばかり起きてやがる。だって言うのにコイツらはいつもと変わらずのスタンスで過ごしている。普通戸惑ったりパニックになるだろ.........

 それでも調子を崩さない所か、ドンドン勢いに任せて行ってやがる.........

 

 

桜木「うおっと!!?大っきいねぇお兄さんっ!!!流石はアメリカンドリームの国ィっ!!!」

 

 

『退けェ.........退けェェェェ!!!』

 

 

桜木「あァ!!?クソッ!!!イギリスの英語と違ってよく分かんねッッ!!!ニコロと同じくらいはっきし喋れ!!?なァッッ!!!」

 

 

『お―――ごっ.........』

 

 

 大柄な奴らだ。ソイツらの攻撃を左腕の前腕で受け止め、桜木は奴の脇腹に身体を捻りながら右腕で重い拳を突き立てた。

 下がる顎。まるでお決まりとでも言わねぇ位に流れる様な動作で今度は全身を捻り戻しながら左拳で顎をかちあげた。

 

 

サンデー「な、なんでこんな事出来るんだよ.........?」

 

 

桜木「ふふん。知りたい?これはKOFに出てくる草薙京って人の技で正確にはKOF99だけの」

 

 

マック「長くなります?それ」

 

 

桜木「.........まっ、色々頑張ってきたのさ。[俺達]は」

 

 

桜木「マックイーンだけじゃない。タキオンもウララも、ライスやブルボン。デジタルだって.........色んな苦難を乗越えて今があるんだ」

 

 

桜木「だったら今度も、[乗り越えるだけ]。だろ?」

 

 

マック「もちろん。[トレーナーさんも]。ですわ」

 

 

「「.........ふふ(へへ)」」

 

 

 なんなんだ.........コイツらは一体.........?

 

 

 呆けている間にも争いは激しくなって行く。マックイーンは奴らをいなし、桜木は対照的に奴らに飛び込んで行く。

 

 

 飛び蹴り落とし。ショートアッパー。踵落とし。身体を一回転させて前進しながらのフック。その手で裏拳。身体の動きを殺さぬ内に飛び上がりながら背中で押し上げその勢いのまま回転し手を広げての裏拳。一切迷いを感じさせない。

 

 

 マックイーンの方は相手の攻撃に合わせて防御を続ける。ダメージは無い。それどころか、相手の動きを利用する技術ってのを使ってダメージを蓄積させて行ってやがる。

 

 

 対照的だ。どこまで行っても.........でも、息が合っている.........

 

 

『ゥ、ガァァァ.........!!!』

 

 

桜木「クッ.........時間掛けたくねぇんだけどなぁあんま.........!!!」

 

 

マック「そうですわね.........っ!!?トレーナーさんっ!!!」

 

 

桜木「え?いぃ!!?」

 

 

サンデー「く、[鎖].........!!!」

 

 

 異形の口から飛び出した無数の[鎖]。それが二人に向かって一直線に伸びて行くが、桜木がマックイーンを手で押してそれに一人絡まる。

 それを見ていた異形共は揃いも揃ってケタケタと気味の悪い笑い声をあげている。本当に生きた心地がしない状況だ。

 そして次第に奴らの纏っていた[蒼い炎の様なオーラ]が桜木の奴にも移り始めて居た.........

 

 

サンデー「桜木!!!」

 

 

マック「.........トレーナーさん」

 

 

桜木「.........あ〜。まぁ[こんなもん]か」

 

 

『ウ、ガ.........?』

 

 

桜木「悪ぃなっ!!!これはちょっと[想定外]っ!おいとまいたしますわっ!!!」サラァ…

 

 

『「えっ」』

 

 

 鎖でがんじがらめとなった桜木。しかしその正体に突き止めたであろう次の瞬間、蒼いオーラは[日色]と変わり鎖は[糸]と成り果てた。

 何が起きているのか訳が分からない。それはマックイーンの方も。それどころかあの異形共もそうだったらしく、全員呆気に取られている。

 

 

 そうしている束の間、奴はオレを囲んでいた鎖すらもその手で触れて糸へと変えた挙句、オレを背中に、マックイーンをお姫様抱っこで抱え始めた。

 

 

サンデー「な、なんなんだよお前!!?何がしてぇんだよッッ!!!??」

 

 

桜木「悪ぃサンちゃん!ありゃ俺じゃなくてサンちゃんの[問題]だわっ!!!後で自分で解決してちょ!!!」

 

 

『マ、待ッテ』

 

 

桜木「あっ!一個アドバイスッ!!!お前ら他人の勝負にのめり込み過ぎッ!!!じゃッッ!!!」

 

 

マック「.........何だか久しぶりですわね。この感覚」

 

 

 呆気に取られる異形共を背に、オレ達は桜木に抱えられたまま、この二人が[ぶっ壊した壁]の向こうに連れてかれて行った―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ピカンッッッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジャララララッッッ!!!!!

 

 

 颯爽と二人分の身体を乗せて走る桜木。その目の前の地面からまた通さないと言わんばかりの鎖が天に昇って道を塞いできた。

 

 

サンデー「おいッッ!!!どうすんだこれっっ!!?」

 

 

マック「そんなの決まってるではありませんか!!!」

 

 

桜木「マックイーンの言う通りッッ!!!突っ切らせて貰うッッ!!!」

 

 

 先程よりも力を脚に込めて前へと進んで行く。けれどどこか軽快な足取りだ。地面から生えて来る鎖を避けて走り抜ける。その姿がとても、力強く思えた。

 

 

桜木「良いかサンちゃんッッ!!!生き物ってのはその気になれば一人だろうと[何でも超えられる]んだッッ!!!」

 

 

桜木「そんなのが三人も集まってんなら―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「[奇跡]だって超えられるんだぜッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――地面を踏み抜いたその瞬間。[世界]が姿を変えて行く。何にも無い白い世界が、目の前に広がって行く.........

 そして、オレ達を追い越していく[影]を見て、オレはずっと[囚われていた]んだと思い知った.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くぜッッ!!![劇場版フォーム]だッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 [最終決戦走技 夢式(むしき)]

 [Lv 6+6+6]

 

 

 [繋いで来た夢の数だけ直線からもの凄く加速して行く。先頭に他のウマ娘がいる場合、速度がもの凄く上がる]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最終直線の先頭をひた走るのはメジロマックイーンッッ!!!強い強いッッ!!!これは常勝パターンに入ったかッッ!!!」

 

 

 コーナーを抜けて彼女が駆け抜ける。試合には負けた。だが勝負はこちらの勝ち。彼等に与えた[試練]はやはり、その全貌すら見果てぬ程の高さだったようだ。

 

 

「残念だったね。君達はこれで、[メジロマックイーン]という[希望]を失う事になる」

 

 

桜木「.........ククク」

 

 

「?気でも触れたのかい?」

 

 

 口元を押さえて笑う彼。諦めていないのか?いや、最早状況は最悪。勝てる兆し等万に一つも無い。

 彼、いや今は[彼女]と言った方が良いかな?特筆すべきは曲がる時に掛かる加速力だが、直線の伸びはメジロマックイーンには届かない。

 その前に引き離せれば勝機はあったかもしれないが、それが出来なかった今、勝てる手段は無い。

 

 

桜木「.........[試練]と言うものは、[超えるもの]だ。[神様]?」

 

 

「.........僕はそんな事は言ってな―――っ」

 

 

桜木「.........クク、随分とリラックスしていたな?お陰で簡単に[繋がれた]」

 

 

「.........おかしいね。君は、[ただの人間]だろう?」

 

 

 彼はこれみよがしに右手を見せびらかしてきた。その手には[鎖]が巻かれていて、伸びるその先には僕の身体。つまり、[中身]が通じてしまっている状態になってしまっている。

 有り得ない。彼は[女神]と接触はしてきたがこれ程の[恩恵]を得られる関係性じゃない。一体いつ、どうやって.........

 

 

桜木「[刻]を見れば、誰にだってこれくらいは出来る」

 

 

「無理だよ。たった一度や二度の[時空間移動]が人にもたらす影響は[微細]だ」

 

 

桜木「[微細]を重ねれば[大差]にもなろう?」

 

 

 .........まさかこの男、未だに[刻]を目に―――

 

 

「ッッ!!!おおっとッッ!!!メジロマックイーンに追い付いたウマ娘が一人居るッッッ!!!!!」

 

 

「な.........ッッ!!!??」

 

 

「[ウエスタンビール]ッッ!!!コーナーで追い抜かれたがここに来て根性を見せてきたァッッ!!!」

 

 

 

 

 

 ―――勝ちを確信した。なんせ、この状況で捲られた事なんて一度もないのだから。そう、ただの[一度]も。

 それに気付いたのは背中から[風]を感じた時だった。始まりを予感させる、熱くも涼しさを纏った.........[春風]の様な物を。

 

 

マック(まさかッッ!!?そんな―――ぁ)

 

 

 残り200m。もうどんでん返しは起きない。そんな諦めを抱いた私を打ち砕くように、彼女は前へと躍り出た。

 その瞳は[金色]に輝きを放ち、その目はようやく、[私]を見つめていた.........

 

 

マック(.........そう。やっとなのね)

 

 

マック(.........遅いのよ。本当に)

 

 

 生きている間に、私達はどれほどの[夢]を[諦める]事が出来るだろう?人が言うには、それは[呪い]だと言う人も居るけれど、それはちゃんと背負った物を置いてけていないから。

 背中に背負った重荷を誰かに預ける事が出来た時。[夢]は例え道半ばだろうと終わる。けれどそれが出来るのならば.........誰であろうと抗わず、納得して渡せる。

 

 

 .........貴方はずっと、[彼]を見ていたのよ。サンデー.........

 

 

 

 

 

 ―――ああ。今。ようやく分かったよ。オレはずっと。お前を見ていたんじゃない。[アイツ]を見ていたんだ.........

 

 

 最後の直線で、オレを抜き去って、勝ち逃げして行きやがったアイツを.........

 

 

 瞬きすればすぐにでも蘇る。あの日の光景。[栗毛の馬]が、遠ざかって行く光景。その背中を.........

 

 

 でももう分かった。分かったんだよ。もうオレが.........お前を追い越す事なんて二度と無いんだって.........

 

 

 .........だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――サンデーーーッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンデー「―――ッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 ―――それは、[夢]を超えた瞬間だった。幾つもの[影]を生み出した存在は今ようやく、自らの[因縁]に対して、[諦め]という形で終止符を打つ事が出来た。

 

 

 それを不幸だと言う者も居るだろう。

 

 

 だが何故そう言い切れる?

 

 

 この世界が[夢]を叶えられる世界だから?

 

 

 叶えられるのならば足掻くべきだろうと?

 

 

 [運命]にすら噛み付いた[馬]だから?

 

 

 [奇跡]すら[超えるべき]だろうと?

 

 

 確かにそうかも知れない。だが、[現実]に生きた者はそうそう、その生き方から外れる事は出来はしない。

 

 

 しかし、彼は[おためごかし]の為にこのレースを利用した。

 

 

 最終直線で、自分より前を走る、[メジロマックイーン]という強大な存在に戦いを挑むという方法で。

 抱えた[夢]に[決着]を着けた事も無い存在が[奇跡を超える]等出来る筈が無い。

 

 

 彼はただただ空を見上げる。人々の祝福も、場を盛り上げんとする実況も、彼の勝利に舞い上がり飛び付くチームメイトも、その目には無い。

 ひたすらに汗を流し、見つめる先は空より先の場所。淡い後悔も耐え難い屈辱も胸から消えて行く。

 

 

 しかし、それが最早終わってしまった事に対して、彼はその目を歪ませ、必死に堪えるのであった.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 落日寸前のレース場。メインイベントは終わったと言うのに、観客席には未だに人々がひしめきあっている。その理由は[ウイニングライブ]を見る為。というただ一つの物だ。

 そんな彼等彼女等を見下ろしながら、隣に頭を垂れてソファーに座る奴を見る。少々荒々しいが、[引き剥がし]には成功しただろう。

 

 

桜木(全く。彼の尊厳回復はどうしたものか)

 

 

 いくら俺と同じく未来世界の存在だとしても、それだけはしなくてはならない。人が人足り得るには、繋がりが必要なのだ。例え歪であろうと、好感の持てる繋がりが.........

 

 

 これから先。頭を悩ませていると扉が叩かれる。振り向いて入室を許可する前にそれが蹴り開かれた。

 

 

ビール「オッスオッスっ!!!オラァガキィャァッッッ!!!!!テメェの約束通り全勝じゃボケェッッ!!!.........んぁ?」

 

 

桜木「.........ふ、もう居らんよ。既に繋がりは絶った」

 

 

ビール「.........はぁ?何言っちゃってんの?お前」

 

 

桜木「良い態度だ。ジュースを奢ってやろう」

 

 

 入って来たのはウエスタンビール。つまりこの時代の[桜木 玲皇]だ。隣には彼女が浮いている。

 そして身体にはどこにも[鎖]が無い。俺には見えはしないが、どうやら[因縁]を断ち切れた様だ。

 

 

 その後ろからぞろぞろと人が入ってくる。チーム[レグルス]。そのメンバー達と、[メジロマックイーン]だ。

 

 

タキオン「おや。うたた寝とは良い身分だねぇ。私達の文句すら受け取らないと見た」

 

 

カフェ「.........」

 

 

ポッケ「タキオンっ!!手ェ離すんじゃねェよ!!!カフェの奴このままだとマジでぶん殴っちまうぞ!!!」

 

 

フジ「あはは.........聞けば、彼のせいでカフェの[お友達]は巻き込まれた様な物だからね」

 

 

 見た事も無い無表情顔で拳を振り上げるマンハッタンカフェ。それを何とか押さえているジャングルポケット。事の顛末を聞けば彼女がそうなるのも無理は無いのかもしれない。

 しかし、他のメンバーからはあまり怒りと言った物を感じられない。

 

 

カレン「すごいお部屋〜♪起きたら写真撮っていいか聞こうっと♪」

 

 

SP「殿下。部屋には何も仕掛けられておりません」

 

 

ファイン「ありがとうございます。この観戦室、本国を思い出しますね」

 

 

バク「レース場にこんな部屋があったとは!!!私のトレーナーさんに頼めば、ここから観戦出来たりするのでしょうか???」

 

 

ネイチャ「委員長は.........人が密集してる場所の方が良いかも」

 

 

 緊張感の無い会話を繰り広げる面々。部屋の内装であったり、レース場の観戦についてであったり、正に奴のチームらしいとっちらかった話題が展開される。

 それでも、シリアスな空気を保つ存在が一定数居たのも事実だ。

 

 

 メジロマックイーン。今は[ウマソウル]が表となっている彼女が、意識を失っている[彼]に近づく。

 

 

シリウス「.........連れ帰っても良いんだよな?」

 

 

シャカ「アッチから取り付けた話だろォ?わざわざ挨拶してやる義理もねェ」

 

 

オペラ「ふむ。ボクとしては先生を困らせた事について謝って欲しいが、それはまたの機会にして置こうっ!!マックイーンくんっ!!!」

 

 

マック「.........そうね。起きる気配も無いでしょうし、今日はこのまま帰らせて貰います」

 

 

ライス「マックイーンさん!!返してもらうからねっ!!」

 

 

デジ「ふおおおお!!!復活ッッ。レグルスのエースの復活ですぞぉーーー!!!」

 

 

 メジロマックイーンがウエスタンビールの隣を見つめて頷く。そこには彼女の精神体が浮かんで居た。

 その意図を汲み取り、彼女は自らの身体へと近付き、やがて重なり合う.........

 長かった。来て間もない俺がそう思うのだ。チームメイトにとってはもっとだろう。だがそれが今ようやく、報われたのだ.........

 

 

ウララ「.........?」

 

 

ブルボン「.........ウララさん?何か気になる事が?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サブトレーナー。[起きてる]よ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員「な―――」

 

 

「―――ッッッ!!!!!」

 

 

二人「させないッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガチャ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒津木「やぁ」

 

 

神威「こんな所に居たの?つかここ何?」

 

 

白銀「おっおーいっ!!!テメェ俺のLINE未読してんじゃねぇよッッ!!!」

 

 

全員「―――ゑ?」

 

 

 ―――ピカッ

 

 

桜木「!!!全員今すぐ目を閉じて耳を塞ぐんだッッ!!!」

 

 

 .........誤算だった。ずさんな作戦を立てる存在と言えど[神]。侮るべきでは無かった。

 

 

 脱力していた身体が起き上がり、素早く目の前に居る彼女に手を伸ばす。彼女の身体が奴の方向へ向いた瞬間に、ポケットから取り出した携帯の画面を見せる。

 

 

 [IMUNI]のシステムが稼働している.........最大レベルの[催眠]。記憶障害を持つ脳ですら正常に機能させる程の強い[強制力]を持つそれが今、発動されている.........!!!

 

 

黒津木「何の光ィ!!?」

 

 

神威「バッッッカ野郎こっちは眼鏡掛けてんだぞッッッ!!!!!」

 

 

白銀「俺のサングラスいる?」

 

 

桜木(殺そう。あのバカ共は)

 

 

 折角の忠告を無視して光をガン見するバカ。というより何故白銀が居る?ニュースを見れば捕まっているとしか記載されていなかったが.........

 いや今はそんな事どうでも良い!!!今は彼女の方が大切だッッ!!!

 

 

 

 

 

「ククク.........君が切ったのは僕と[彼]との[繋がり]だ」

 

 

「けれど、本来繋がっていたのは[IMUNI]の方なんだよ?行けないね。傲慢さが滲み出ているよ.........」

 

 

ゴルシ「何言ってんだよコイツッッ!!!」

 

 

フェスタ「クソッ!良いタイミングで邪魔しやがってッッ!!!」

 

 

オル「ね、ねぇ!!?これいつまで閉じてれば良いの!!?」

 

 

 ―――正に阿鼻叫喚の状態。突然の光に混乱しつつも、何とか目を押さえて皆がその[強制力]から逃れる事に成功する事は出来ていた。

 

 

『っ、ヤバイぞおい.........どうすんだマックイーン!!!』

 

 

『くっ、迂闊だったわ.........!あの子が[肉体]ではなく、[本質]に気付いて居なければ.........チェックメイトよ.........!!!』

 

 

 身体の主導権を戻した[ウマソウル]は外側へと出て来ている。桜木。いやウエスタンビールにもその姿は見えている。彼女が何度身体に戻ろうとしても、それを拒絶するように弾き返されて行く姿を目撃する。

 [悪霊]足り得る存在ならば。そう思っても最早その力すら無い。[因縁]に自分なりに決着を着けたと実感してしまった手前、既に大半の[憑き物]は落ちてしまっている.........

 

 

ビール(―――なぁ、サンちゃん)

 

 

『!.........なんだ』

 

 

 光の中で不意に呼び掛ける心。それに応える様に、悪霊だった者は思わず笑みを浮かべる。

 

 

 この男なら.........この男なら、何とかしてくれる.........そう、思ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(今ならマックイーンのスカート捲っても怒られないかな?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――は?』

 

 

 .........既に、彼は疲弊していた。連日のハードトレーニング。全てを出し切った長距離レースによる肉体疲労。終わったと思い込んだ精神的疲労。その全てが重なってしまっていた。

 この瞬間だけを言えば。彼の思考は崩壊してしまっていた。しかし例え思考したとして解決策など出る訳もない。それを悟ってしまった彼は.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今この瞬間だけ、考えるのを、[止めた]―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

......To be continued

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