山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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男は四人も寄れば暴れ散らかす

 

 

 

 

 

 薄暗くなった街の中を、一つの鉄の塊が走る。街灯に照らされては、その煌びやかな色合いを大衆に見せ付けている。

 オレはようやく見つけたそれの中を覗き込む。ハンドルを握ってるのは白衣を着た奴。助手席には無傷の白いスーツを着たサングラス男。後ろにはボコボコになった男と少女。それに挟まれて居心地の悪そうな軽傷の男が居た。

 

 

『おい。おいっ!』

 

 

ビール「.........っ、ぁ.........?」

 

 

『ったく。暴れ回って疲れたのか?ガキ臭ェ事すんじゃねぇよ』

 

 

ビール(.........悪くないもん)

 

 

 項垂れたまま目を開けてオレの存在を確認するウエスタンビール。基、桜木 玲皇。傍から見りゃ年頃のガキが我儘をした代償を払わされたって風にも見える。

 .........コイツらの影響なのか。[身体]が[女]になっちまった影響なのか。或いはその両方か。

 だが今はそんな事はどうでも良かった。

 

 

 オレは部屋に居た筈の[もう一人の男]の行方を聞くと、コイツは指を後方に指した。

 

 

『.........マジか』

 

 

ビール(ははっ.........滅茶苦茶だろ?これ、検問されたら一発アウトだぜ?車の中身がこれだ。覗き込まれたらガサ入れされるに決まってらァ)

 

 

 確かに止められて中の奴らを見られりゃ嫌でも調べるだろう。暇な時カフェの奴と見てたドラマでも例外は殆ど無い。

 

 

ビール(.........けどな。それは絶対に無いんだ)

 

 

『?何で言い切れるんだよ?』

 

 

ビール([命賭けてる]から)

 

 

『.........アホか』

 

 

 自信満々に心の中でそう言い切る。こんなズタボロにされてんのに、嘘も付けない心の筈だ。だったらきっとコイツはそうなると思ってるし、実際そうして来たんだろう。

 

 

ビール(.........?)

 

 

『?どうし―――』

 

 

 オレを見ていた桜木は、何か疑う様な物を見た様に目を何度も強く閉じてオレの背後を見た。

 幽霊でも見たのか?そんな時間にはまだなってねぇし、確かにその[縛り]を超えてくるくらい強い奴らもいるが、そんな気配はしなかった。

 

 

 気になったオレも、背後を振り返ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『合格』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『な、おま―――』

 

 

 オレの背後に居た。いや、[居やがった]のは.........[名も無き女神(クソ女)]だった―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビール「.........んぁ?アレ、俺寝たのか.........いや、でも声が.........」

 

 

「クソガ!コンナジョウタイデウンテンサセンナ!!!」

 

 

「デモオレメンキョモッテナイシ。ハジメノメガネナイシ」

 

 

「グォォォォォォォッッッ!!!!!(初号機)」

 

 

「.........カツドウゲンカイイツ?」

 

 

 意識がハッキリしてる。さっきよりも鮮明に、だ。まさか眠ったのかと思ったが、アイツらの声が聞こえてくる.........

 けれど目の前の景色は草原だ.........あ、頭がこんがらがりそうだ.........!!!

 

 

「ごめんなさいね。こんなタイミングで」

 

 

ビール「う、う〜ん.........許してあげる.........」

 

 

 後ろから声を掛けられ、振り返る。そこに居たのは[始祖]。時には[名も無き女神]と呼ばれ、三女神様や白バの王子様には[シロ]って呼ばれている。

 最初こそ偉そうで傲慢な態度だったが、ここまで軟化しているのであれば俺も対抗する必要は無い。素直に許してあげる事にした。

 

 

 .........あれ、サンちゃんは.........?

 

 

シロ「私の後ろよ」

 

 

『むぐぐぅむ!!?むぐぐぐぐぅ!!!』

 

 

ビール(何やってんのこの人達.........)

 

 

 変わらない気怠げな表情のまま女神様は背中を向けた。そこにはまるで赤ん坊のおんぶ紐の様な形でぐるぐる巻きにされたサンちゃんが背負われていた。

 ジタバタと暴れて抵抗を見せているが、状況は変わらない。俺に助けを乞う視線を送ってくるが.........女神様も改心したんだ。少し話し合ってくれ。

 

 

シロ「早速で悪いけれど本題に移るわ。[手筈]が整ったの。仕掛けるわよ」

 

 

ビール「え、と.........何の話?」

 

 

シロ「[アニマ]よ。奴の作り出した[人類意思]、いえ。[地球意思]規模の[願望器]を使わせてもらうの」

 

 

 は、話が.........話が見えない.........!!!

 やめてくれ!!!俺が幾ら何でも理解力のあるオタクくんだからと言って、急に裏事情を話されてもはいそうですか、って飲み込める訳じゃないんだッッ!!!順を追って説明を頼む!!!

 

 

シロ「.........はぁ。良い?彼はまず貴方に目を付けた。貴方の[空っぽ]になった[願望器]を」

 

 

シロ「でもそれは不完全。いえ、[永遠に完成される事は無い]、言わば[夢の永久機関]と化してるのよ」

 

 

ビール「?.........???.........w」

 

 

シロ「笑い事じゃない」ボカッ

 

 

ビール「ってェッッ!!!??」

 

 

 は?え、何?叩かれたんですけど杖で。急なそんな設定を開示されても困りますよ?Zのクワトロ大尉が映画で逆襲するシャア・アズナブルに変貌を遂げたの見て誰が納得出来るんです?それくらいの展開ですよ?

 

 

シロ「貴方の持つ[王冠のアクセサリー]。それが貴方の[壊れた願望器]を、まるで[完成品]の様に仕立てあげてるの」

 

 

シロ「中身は幾らでも入る。でも気付けばまた[空っぽ]になる。そんな代物、強い[意思エネルギー]があっても危険極まりないわ」

 

 

シロ「だから彼は計画を変更した。最も安全且つ安定した物を使う事にしたの」

 

 

ビール「.........まぁつまり、俺じゃ力不足だったから、乗り換えたって事でしょ?」

 

 

シロ「そうじゃない。貴方は強い武器を持っていて」

 

 

ビール「だァァァァ面倒臭ェェェェ!!!良いから次ッッ!!!次行って!!!」

 

 

 ったく!この女神様は頑固だなッ!!!そういうのは良いんだって!!!

 

 

シロ「.........[人類意思の願望器]は形成するのに時間が掛かる。けれど既に殆ど完成しているわ」

 

 

ビール「どうするのさ?」

 

 

シロ「奴に[使わせる]の。そう追い込む」

 

 

ビール「.........どうやって」

 

 

シロ「頑張って」

 

 

ビール「は?」

 

 

 え、何その丸投げ。流石にずさんすぎません?計画として、いや破綻してると思うんですけど。

 あ、あの、もうちょっとそこら辺話を俺と詰めて―――

 

 

「レオー!!ツイタゾオキロー!!」

 

 

ビール「あっ!!?なんか身体が重くなってく!!!待って話を―――」

 

 

シロ「何とかしてね。[獅子星心(レグルスハート)を持つ者]」

 

 

ビール「その変な肩書きな―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビール「.........」

 

 

 意味の分からない夢から覚めた俺は目的地に着いた事を知らされ、車から降りた。その場所は間違い無い。[創の家]だ。

 これまた意味が分からない。何故わざわざコイツの家に?経由地点か?そう考えたが、能面の奴が車のトランクから意識を無くしている花道を抱き抱えた姿を見てそんな事は無いと察した。

 

 

 訳も分からず皆に着いていくと、寝室に何やら見た事も無い器具が大量にあった。

 その光景に唖然としながりも、他の三人が座っているテーブルに俺も参加する。

 

 

ビール「は、創.........まさかお前.........」

 

 

神威「違うぞ。何を考えてるかは知らねぇけどコイツはあの爺さんの私物だ」

 

 

桜木「生憎、無名の知り合いが少なくてね。ここしか無かったんだ」

 

 

神威「喧嘩?買う買う」

 

 

黒津木「運ばされるの手伝わされたんだぜ?[小さくなる]っつってもあの量はやばかった」

 

 

ビール「ち、小さくなる.........?」

 

 

 何ともないように言ったが本来有り得ない言葉を発する黒津木。それに疑問を持って復唱すると、お手本の様に能面の奴がポケットから[黒いキューブ]を取り出した。

 それを強く握り締める。ゴムなのかなんなのか、材質はまるっきり分からない。だがその時、何かが噛み合ったような確かな金属音が鳴り響いた。

 

 

 それを床に投げると、その小さな立方体からは想像も出来ない広がりを見せて行き、やがて人一人乗せれるほどのベッドが出てきた。

 

 

桜木「[Sキューブ]。空間力学の一つの到達点だ」

 

 

ビール「へぇ。人間ってさ、何でも学問すりゃ良いと思っとるわけ?」

 

 

白銀「頭悪いよな」

 

 

ビール「ははっ、バカに言われてる」

 

 

白銀「あ?」

 

 

ビール「ん?」

 

 

桜木「やめろ。始めるぞ」

 

 

 リビングに座っていた俺達一人一人に被せられるヘルメット。なんだこれ、これも未来のアレか?何でもありだな本当。

 

 

桜木「[ウェブダイバー]。一時流行したネットにダイブして楽しむ事のできるゲーム機だ」

 

 

白銀「どうすればいいのこれ」カチカチ

 

 

桜木「それはベッドに身体を預けてから話を聞けィッッ!!!」

 

 

白銀「」バタッ!

 

 

三人「ケハハハハwww!!!」

 

 

 バカがバカみたいな被り物をして頭からぶっ倒れた。話を聞かないからそうなるんだバーカ!!!

 俺達はそんな事はしないっ!!!しっかりと床に寝っ転がってスイッチを起動させて貰う!!!

 

 

桜木「あバカ!!!お前らも話聞かねェじゃねェ―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ん.........?ここ、は?」

 

 

 [ようこそダイバー。アバターを選んで下さい]

 

 

 おお.........凄い。これがインターネットの中.........ロックマンのなんちゃらってシリーズの奴みたいだな。

 んで、これどうするんだ.........?

 

 

桜木「バカ野郎ッッ!!!俺の話を聞けェッッ!!!」

 

 

「うお、びっくりした」

 

 

桜木「良いかッ!今からお前達は花道の頭に埋め込まれた[マザーチップ]に入り込む!!!そこで制御権を[マザーコンピュータ]から奪うんだ!!!」

 

 

「ど、どうやって!!?」

 

 

桜木「お前達のデータに今から細工するッッ!!!良いか気を付けろよ!!!本来案内役のガイド達でも襲ってくるッッ!!!全部ぶっ倒せ!!!」

 

 

「や、野蛮すぎる.........!!!」

 

 

 こ、こうしちゃ居られないっ!!!さっさとアバターを選んで中に入らなきゃ.........!!!

 

 

 [ダイバー。キャラの解説をいたしましょうか?]

 

 

「要らん!!!」

 

 

 [かしこまり、まし、た。では良き、良き、ヨキヨキヨキヨキヨキ―――]

 

 

 ま、不味い.........!!!バグり始めやがった.........!!!クソァッッ!!!せめて細工の合図くらい送ってくれよッッ!!!

 あああああ!!!もうわからんッッ!!!適当に見た事あるっぽい奴で―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桐生院「では本日の振り返りは後日。皆さん気を付けて帰って下さいね」

 

 

全員「は〜い」

 

 

 以前は夕暮れの時間だった筈の時間。時期は既に秋へと入っており、その日が空に渡る長さは刻一刻と短くなって行っています。

 無事トレセン学園へと帰ってきた私達は今日の反省を明日へと残し、寮へと戻る事になりました。

 

 

ゴルシ「んにしてもよー!!爺ちゃんはともかくっ!!おっちゃん達までアタシら置いてくとかどーなってんだ!!?大神秘のアマゾン宇宙に小宇宙探しに行ったのか!!?」

 

 

テイオー「お、落ち着いてよーゴルシ〜!!!」

 

 

 今までずっと白銀さんが姿を見せなかったのが気掛かりだったのか、今では以前の通り、訳も分からない言葉を並べ立てて暴れ回る様子を見せています。

 彼女は元気な方がやはり似合っているとは思いますが.........限度は考えて欲しい所です。

 

 

 しかし、捕まったと聞いていた白銀さんが出てくるだなんて.........一体何があったのでしょう.........?

 

 

スペ「そういえば今日の朝テレビでやってましたよね!!白銀さんのニュース!!」

 

 

スズカ「確か、調べる度に冤罪であることが発覚して行って.........警察の偉い人がテレビで頭を下げてたわ」

 

 

マック「へぇ!!?そ、そうだったのですか!!?」

 

 

ゴルシ「.........なんだよマックちゃん。白銀が本当にやべー事したと思ってたのか?」

 

 

マック「.........お、おほほ」

 

 

タキオン「.........そういう分かりやすい所、彼の悪い所が伝染っているよ」

 

 

マック「な!!?わ、分かりやすさは美徳でしょう!!?」

 

 

 意地の悪い笑みを浮かべて私をからかうタキオンさん。この感じ。受けるのは本当に久々です。

 かつてどう受け流していたのかも忘れてしまう程に、彼以外との繋がりが一方的に途絶えてしまっていた私の時間は今、また進み始めるのでした.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「浸食データのインストールを確認。敵性プログラムの排除を開始し―――」

 

 

「[鉄山靠]ッッッ!!!!!」

 

 

 無防備な背中を向けていた存在がゆらりと力無く振り返りご丁寧に敵意を見せてくる。

 ゲームだったらここまでムービー。向かい合ってのバトルに突入するだろうが残念。俺は人間。不意打ち、卑劣な手は常套句だ。

 

 

「この[キャラ]には悪いがッッ!!!身の危険は本当に感じてるんでね!!!パッパカやられてくれよッッ!!!」

 

 

 無作為に探していたアバター。しかしどれもこれも、どこかで見た事のある姿形をしていた。

 それもそのはず.........この空間に入る時、俺は間違いなく[アレ]を聞き、そして[あのロゴ]をこの目で見たのだ。そう、[アレ]とは.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――[〇〜ガ〜]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 流石世界のSE〇Aッッ!!!やはり透かした企業コールはいけ好かないッッ!!!クールさを感じさせつつも子供を楽しませる気概を感じさせる企業コールッッ!!!未来の世界ではきっと、多くの子供達にそれを感じさせてくれているッッ!!!

 

 

 .........と、力無く倒れたそれを息を切らしながら見ていたが、相手を倒したのならやる事がある。このキャラを象徴するあの言葉を言わなければ.........!!!

 

 

「十年早いんだよォッッッ!!!!!」

 

 

 一飛びの間に左右の足を蹴り上げる。[連環腿]。それがこの技の名前だ。やはりこれを言わなければ締まらない。

 残心とも言える勝ちポーズとセリフの余韻に浸っていると、ふと地響きの様な揺れが起こる。慌ててその方向に目をやった瞬間。一人の男がこちらにぶっ飛ばされてきていた。

 

 

「うおっと!!?」

 

 

「っ.........」

 

 

 反射的に抱き抱えてしまったが、見た所敵では無い。だとしたら俺達の仲間の内の一人だろう。

 見た目は近未来的なパワードスーツみたいな物を着込み、手にはエネルギーが展開されている巨大な剣.........うん。コイツ黒津木だな。間違いない。

 

 

「クソッッ!!!PSEバースト実装されてねェのかッッッ!!!!!50は倒したんだぞ!!!」

 

 

「見事に初期装備だもんな〜。ファントム専にゃキツイでしょ」

 

 

「格ゲーキャラよりは複雑じゃ無いっての.........!!!」

 

 

 迫り来る有象無象に対して、黒津木は剣に力を込めて投げ付ける。回転しながら敵を一掃し戻ってくるが、その後ろからまだまだ流れてくる。

 その様子を見て「レアドロップしろよ」と嘆く黒津木。残念。鑑定出来ないのでドロップしてもその場で使えません。

 .........使えなかったよな?確か。

 

 

 過去の記憶をまさぐる思考を一旦止め、目の前の状況にもう一度集中する。すると、その軍勢の背後から何か大きい物が来ているのが分かる。

 耳に聞こえてくる音.........これは、[エンジン音].........?

 

 

 それを確信するのと同時に、奴らは一気に跳ね飛ばされる様に宙を舞った。その正体はやはり[自動車]。そして間違いない。アレは[クレイジータクシー]だ.........!!!

 

 

 黄色い残光。その線を残すほどのスピードでありながら、その車は俺達の目の前で見事なドリフトブレーキを決める。

 車体が慣性に引っ張られて大きく傾くが、地面にタイヤが全て着いた瞬間に自動的にドアが開いた。

 

 

「乗れッッッ!!!!!」

 

 

「サンキュー創!!!」

 

 

「よく分かったな!!?」

 

 

「だってアイツは車運転しねェだろッッ!!!」

 

 

 急いで中へと詰めてドカッと座る。この先は危ない。普段はしない後部座席のシートベルトをしっかりと装着する。

 創の奴はそんな事も確認せず、俺達が座った瞬間に車を急発進させる。だから二人とも慌てたって感じだ。

 

 

「っぶねェなァッッ!!!降りろテメェ免許持ってんのかッッ!!!」

 

 

「持ってる持ってる!!!(脊髄反射)」

 

 

「創止めてッッ!!!レアドロップの音聞こえたッッ!!!(幻聴)」

 

 

「え!!?止める止めるッッ!!!(バカ)」

 

 

 キキーッ!!!バタンッ!!!タッタッタッタッ!!!

 

 

「アホかテメェッッ!!!早く出せッッ!!!もうアイツ死んでも良いからッッ!!!(本心)」

 

 

「宗也は友達だろ!!?俺には出来ないッッ!!!(体裁)」

 

 

「どけッッッ!!!!!(右ジャブ)」

 

 

「ンだテメェッッ!!!あん時の決着付けてやろうかッッッ!!!!!(左ストレート)」

 

 

 急ブレーキを掛けられた車体が着地する前に既に黒津木は外へと出ていた。俺は茶色い革ジャンを着たこれまた八極拳を使いそうなアバターの神威と今日付けるべきだった格付けをする為にここで殴り合う事にした。

 車体がこれでもかと言わんばかりにグワングワンと音を立てて揺れまくる。なんか昔あったよな、車のダンスゲームみたいな奴。

 

 

 暫く殴り合っていると、不意にまた地響きが鳴り響いてくる。その方に顔を向けると、黒津木が先頭で息を切らしながら有象無象を引き連れてこちらにやって来ている。

 

 

「バカ野郎ッッッ!!!!!俺を騙したな創ッッッ!!!!!レアドロップなんか一つも無ェじゃねェかッッッ!!!!!」

 

 

「テメェ死ねッッッ!!!!!(アクセルベタ踏み)」

 

 

「させるかッッッ!!!!!テメェも囮になれッッッ!!!!!(首絞め)」

 

 

「ざっけ.........!!!バーチャファイターやってもねェのにそのキャラなんだよ!!!電撃FCのアバターもあっただろ!!!」

 

 

「ラブリーマイエンジェルカラーが無かったんだよッッッ!!!!!テメェこそキ〇トにすりゃ良かっただろ!!!〇リトかなァ〜やっぱwwwってよォッッ!!!」

 

 

「テメェこそ八極拳使うキャラなんて有〇都古しか使ってこなかっただろッッッ!!!!!」

 

 

「だったら今この場でやってやろうかッッッ!!!!!なんちゃて八極拳究極奥義ッッッ!!!!!」

 

 

 車内で足を振り上げた瞬間。一際大きい揺れが車体に襲い掛かる。尋常じゃない揺れだ。何かと思い外を見たが、アイツらはまだここに辿り着いて居ない。

 まさかと思い、急いで窓を開けて車の天井を見上げた―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ポーン、ポーン

 

 

 ポーン、ポーン

 

 

 ポーン、ポーン、キュイン

 

 

 ポーン、ポーン

 

 

 ロイン、ザーインスフォァー…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、ァ...ガ.........」

 

 

 車の上に立つ男。白かったであろうそれは年季が入り、全体的にくすんでいる。そのスーツの下にはこれまた年数が経ったと思わせる赤いシャツを着ている。

 男は、いや[漢]は俺の事を見ることも無く、その手に持つでかい物を肩に担ぎ上げて見せた。

 

 

 [ロケットランチャー]だ.........

 

 

 それを認識したと同時に、奴は俺達が止める隙もなくその引き金を引きやがった.........

 

 

 悲鳴をあげる間も無く、大きな爆発がした。黒津木の奴を巻き込んで。

 

 

「.........」

 

 

「.........なんか言えよッッ!!!本家本元は割と喋るぞッッッ!!!!!」

 

 

「誓って殺しはやってませんッッッ!!!!!」

 

 

「は?コイツやば.........」

 

 

 黙っていたかと思えばすごい形相でこっちにセリフを叩き付けてくる。情緒不安定に見えるが、これがコイツの平常だ。でも姿が変わると本当に怖い。正直近づきたかないくらいに。

 

 

 黒津木の安全を確認する為に一旦視線を爆発した方に向ける。四方八方飛び散ってる奴に紛れて「コスモアトマイザー!!!コスモアトマイザー!!!」と叫んでいるが、よく分からん。

 だがまだ元気そうな様子に一安心していると、不意に目の前の視界にノイズが走る。

 

 

「っ.........」

 

 

「?どうした?」

 

 

「どう、って.........バグってないか?」

 

 

「病院行った方が良いよ」

 

 

「.........」

 

 

 優しげな表情で肩に手を置いて失礼な事を言ってくるヤクザ。いや白銀。それは良い。今のこのノイズが俺にしか見えていないという事が確定した。

 一体何が.........

 

 

桜木「吹っ飛んでる奴の中に[制御権]を持つ奴が混ざっているッッ!!!」

 

 

「はァァァッッッ!!!??お前、そういうのってバカデカコンピューターが持ってるのが主流だろ!!!??」

 

 

桜木「脆弱性の問題だなッッ!!![マザーチップ]と言えど所詮は子機ッ!!![制御権]さえ無事ならば[マザーブレイン]が遠隔で奪取が可能だッッ!!!」

 

 

 す、凄い技術進化だな.........しかし、それを見分ける方法なんて.........

 

 

 0と1のノイズに苛立ちながらも必死に目で飛び散る奴らを見てみる。すると、この目にその姿を映した瞬間、一際ノイズが酷くなる存在が居た。

 アイツだ。間違いない.........!!!

 

 

「宗也ッッ!!!隣に居るソイツ!!!ぶっ飛ばしてッッ!!!」

 

 

「っ!分かったァッッッ!!!!!」

 

 

 俺の声が届いた瞬間。刹那の間に力の抜けた身体が翻る。その手に持つ剣で思い切りソイツを地面に向けて叩き付けてきた。

 こっちに向かって落ちてくる存在。だが落ちた所で.........という気すら起きてくる。奴は恐らく直ぐに立ち上がり、俺達を襲ってくるだろう。

 

 

 つまり、好機は今―――!!!

 

 

「玲皇!!?どうするつもりだ!!?」

 

 

桜木「あの手は掴み構え.........っ!!?まさかッッ!!?」

 

 

「その[まさか]よッッ!!!」

 

 

 手を車の天井に掛けて車窓から乗り上がり、その上に着地する。その際に衝撃を吸収する為に曲げた膝を利用し、そのまま奴に向かって飛び上がる。

 この[技]はメジロ家に伝わる由緒正しき[護身術]。48あるその技達の到達点.........!!!

 

 

「喰らえAI野郎ッッ!!!」

 

 

「愛と誇りと伝統の―――ッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「7000万パワーッッ!!![桜木謹製:メジロスパーク]ッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「ま、まさか.........!俺ですら体得出来なかった最難度のメジロスパークを.........我流とはいえ、これが若さなのか.........!!!」

 

 

「右足で相手の首。左足で相手の脚部。空いた手で両腕。その全てをホールドし、強く逸らす事で相手の呼吸器系統にスリップ的なダメージを起こす。それだけじゃない。あの形は血流に強く影響する。酸素と血の流れ。それを同時に攻撃する拘束技.........」

 

 

「でも相手人間じゃないでしょ」

 

 

「ゆでたまご作品では効くんだよ」

 

 

「メジロ教訓その6ッッ!!!」

 

 

桜木「物事は全て、完結を持って良しとする.........!!!」

 

 

「ホールドからまた別のホールド!!?あ、アレで地面に叩き付けられればさっきのダメージを引き金に、確実に意識を飛ばされる.........!!!アレがメジロの護身術か.........!!!」

 

 

 ホールドを空中で組み替えながら夢想する。肉体の持たない俺に、ムサシの婆さんから言われた特訓をマックイーンと繰り返した。

 と言っても、俺がただひたすらに受け流し、彼女が護身術の技を無理やり掛けにきていただけだ。教えられた訳じゃない。

 

 

 .........だが、身体の動かし方さえ分かれば、[見様見真似]はすぐに成立させる事が出来る。

 

 

「これが俺のッッ!!![メジロ護身術]だァァァ―――ッッッ!!!!!」

 

 

 ズドォォォ―――ンッッ!!!

 

 

 っと、大きな音を立てて相手を空中から地面へと叩き付けて組み伏せる。次第に目に映るノイズは薄れて行き、やがて元の視界へと戻って行く.........

 

 

「エラー発生。制御権行使。不可能を確認。マザーブレインへ通信.........エラー。通信不可」

 

 

「侵入妨害、不可能を判断。強制シャットダウンを開始しま―――」

 

 

桜木「悪いが、そのプログラムは上書きさせてもらう」

 

 

 一瞬、世界が黒く何度も点滅を繰り返すが、直ぐにまた元に戻る。何かと思ってじっとしていると、俺に組み伏せられた奴が無言で起き上がろうとしてきた。

 

 

「なっ、コイツ.........!!!」

 

 

桜木「離してやれ。もう敵対はしない」

 

 

「え?どわっ!!?ぐえっ」

 

 

 緩んだホールドから奴は何も言わずすくっと起き上がり、倒れた俺を踏み付けてどこかへ歩いて行く。

 その不気味な様子を見ていると、突然目に強い光が射し込んで来たのだった.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「良くやったな」

 

 

ビール「ぐっ.........目が痛ぇ.........」

 

 

 どうやら頭に着けてた奴を強引に取り外されたらしい。脳に作用してるんだから一応手順とか守った方が良いんじゃないの?ナーヴギアみたいにちゃんと取り扱った方が良いと思うんだけど.........

 そんな俺の事も気にせず、奴は黒津木。そして神威と同じ方法でヘッドギアを取る。二人ともびっくりした様子でこの口数少ないバカを呆然と見ていた。

 

 

桜木「これからが[大仕事]だ。宗也。花道くんに埋め込まれたマザーチップを経由してハッキングをする」

 

 

桜木「創はこのUSBを使って内部データを複製し続けろ」

 

 

二人「人使い荒ァ!!?」

 

 

桜木「でないと[世界]は[終わる]ぞ?」

 

 

三人「.........」

 

 

 .........大きく出たな。[世界が終わる]なんて。今どきの子供じゃ心躍らないだろ。誰がどう聞いたって嘘だとバカにされて終わりだ。

 だが、奴の真剣さからは感じられない。そのような嘘が。それほどまでにこの[IMUNI]。そして[アニマ]の存在が強大なんだろう。

 

 

桜木「翔也は残す。これからは[オンライン状態]になる。あちらからの軍勢が押し寄せて来る。その防衛隊だな」

 

 

黒津木「ぷっ、仲間外れじゃん」

 

 

神威「たくさん暴れてくれよな〜」

 

 

ビール「ちょちょちょ!!!三人は分かったけど俺は!!?俺の役割は!!?」

 

 

桜木「案ずるな。貴様に[打って付けの策]がある」

 

 

 打って付け.........奴は怪しげな笑みを浮かべてそう言った。その内容は分からないが、一人、リビングから寝室へと向かって行く。

 着いてこい。という意味だろうか。何も分からず仕舞だ。他二人も今は手持ち無沙汰の様で、お互い顔を見合い、神威は肩をわざとらしく竦める。

 

 

 一先ず、俺達は奴の後を追うことにした.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗がりの寝室。奴が居たのはそこだった。以前遊びに来た時は一人暮らしの高給取りだと言うのに、簡素なベッドとしこたま敷き詰められた本棚しか無かった部屋が、今では何か大きな機械を中心にして構成されている。

 

 

神威「おっおーい!!!何だよこれェ!!?」

 

 

桜木「[最終秘密兵器]。とでも言っておこうか?」

 

 

黒津木「な、なぁ玲皇.........この[筐体]って.........」

 

 

ビール「.........ああ」

 

 

 見間違いでは無い。間違える筈も無い。暗がりの中で鎮座する機械。近くに寄れば自ずとその輪郭と形状から、一つの存在へと帰結する。

 それに驚き、言葉も出ないでいる。そんな事など露知らず、奴は淡々とした口調で説明を始めた。

 

 

桜木「これはかつて栄光を馳せた[人気作]。カルト的ファンが生まれた[アーケードゲーム]だ」

 

 

桜木「何作か続編が作られ、俺も思わず触ってしまう程に完成度は高かった」

 

 

桜木「それを[改造]し、奴のデータベースを乗っ取る[ウイルス輸送船]として活用するに至った」

 

 

桜木「本来なら俺の手でやる筈だったが、相手があまりにも[強大]過ぎたな」

 

 

 

 

 

 ―――俺はただ見上げる。その存在を。自分であれば扱いこなせるだろうと高を括って居たが、それは相手が[IMUNI単体]の話だ。

 だがしかし、実相は[神]の手によって縛られた悲しき人形にしか過ぎん。開発の一端を担っているとはいえ、裏に居る人間にまで手を届かせる事ができるかと言われれば、正直危うい。

 

 

 それほどまでに、俺は見誤っていたのだ。奴と、[IMUNI]の繋がりを.........

 

 

桜木「選べるのは[一機]だけだ。操作は分かるな?」

 

 

ビール「.........へっ、誰に口聞いてやがんだ?」

 

 

 

 

 

 ―――俺は見上げていた。遥かに大きいその存在を。それに触れればひんやりとした感触が伝わってくる。だが、感じる物はいつもと同じ。[高揚感]だ。

 一息吐いて側面のボタンを押し、[ハッチ]を開ける。中には心地良い座席が備え付けられており、またもやあのヘッドギアが置かれている。

 

 

 だが、それは先程の様な無線ではなく、多くの太い線が繋げられている状態。明らかに先程の容量で起こされでもしたら大事故に発展しそうな代物だ。

 

 

桜木「起動のさせ方はさっきと同じだ。その後の手順は.........問題無いな」

 

 

ビール「ああ。任せてくれ」

 

 

桜木「.........よし」

 

 

 ここから始まる徹底抗戦。ふんぞり返った自称神様に俺達の意思をぶつける戦い。

 座席に飛び乗りヘッドギアを付ける。身体をリラックスさせ、脱力させて行く。

 意識が電子空間に落ちて行く間際、奴は雰囲気を作る為に、重々しい声で言った。

 

 

桜木「始めるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オペレーション[Cosmic.Down:Fall]を開始する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

......To be continued

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