山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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逆転、そして追撃。

 

 

 

 

 

 ―――宙に浮かぶ衛星。この星の弟星である[月]。その裏側に隠れるように、しかしそれは確かに存在する大きさで浮かんでいた。

 

 

 [願望器]。地球の意志を反映させる物。故にそれは内側には無く、外側にある。まるで他者に、自分の欠陥を補ってもらうような形で存在している.........

 

 

 そこから一筋の光が、地上に放たれていく―――

 

 

 

 

 

「―――ハァッ!ハァッ!」

 

 

 ―――形成されて行く空間。僕のいた場所と変わらない。無機質でおどろおどろしい部屋。座り心地最高の居心地の悪い椅子。最高に最低な照明。何もかもが僕の空間だ。

 身体のアチコチを触って確かめる。良かった.........どうやら影響は無いようだ.........

 

 

アニマ「くっ.........ダウングレードがあそこまで響くだなんて.........もうIMUNIは使えない.........!!!」

 

 

 [依代]としていた存在は瓦解した。もし仮にあの中に戻れて主導権を確保出来ると言われても無理だ。生理的に受け付けない。

 なんなんだアレは。なんであんな事を思い付く?最悪だ。この世にあんな禍々しい物があったのか.........そしてそれを嬉嬉として作り出すあの存在は.........!!!

 

 

アニマ(っ、ダメだ.........思い出すな.........!!!)

 

 

 頭を振るって思考を追い出す。願望器が反応して[記憶を消す]。ただ、ここまで追い込まれたという事実だけを残して―――

 

 

アニマ「―――[桜木 玲皇].........!!!」

 

 

 身体から滲み出る[怒り]が[蒼炎のオーラ]として身体から溢れて行く。それが原動力。それが答え。人が人足り得る所以。人の身に余るこの感情が人を歩かせてきた。本来であるならば辿り着いては行けない領域にまで。

 そう。[発展]だ。他者よりも強く他者よりも上へ。高みへ。それに至る事の出来る唯一の根源的感情が[怒り]。

 

 

アニマ「.........ククク、でも良いね。[面白い]」

 

 

アニマ「僕を[引きずり降ろした]のは素直に賞賛するよ。とても凄い。ノーベル平和賞とは正反対だけど、賞をあげたいね」

 

 

アニマ「.........だから―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――今度こそ、[決着]だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それすらも受け入れる。意固地は行けない。頭の硬い[AI]の中に入っていた影響もあるのかもしれない。

 あれもまた人の可能性.........[命]すら厭わない[感情]。僕の知らない[何か]。

 

 

 それを知る事はそう遠くないだろう。

 

 

 だって彼、彼等は必ず.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 .........ここに[来る]のだから―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チーム[レグルス]、堂々の復活。ねぇ

 

 

 足を組んで新聞を広げる。気分は良好。天気も良い。最高だ。素晴らしい事この上ない。正しく昼下がりのランチタイムにちょっと豪華な外食をしている気分だ。それくらい俺にとって[文字]というのは安らぎを与えてくれる。

 俺の名前は[神威 創]。27歳。独身。トレセン学園の図書室の司書とマンハッタンカフェのトレーナーを担当している。傍から見りゃなんだそのハイスペックは?と言われるかもしれないが、中身は案外ポンコツだし、肝心な時に運が無い。神様にすら見放されるレベルでだ。

 そんな俺が今何をしているかと言うと」

 

 

「オメェうるせェよ!!!こっちは久しぶりの運転なんだぞ!!!」

 

 

 怒られちゃった。てへ♪」

 

 

「だからそれをやめろっつってんだろ.........!!!」

 

 

 .........まぁふざけるのも大概にしておく。ここからマジのシリアス状態。俺も気持ちを切り替えて新聞を隣に座ってる奴と俺との間に畳んで埋めておく。

 それをした矢先に隣に座っている奴。[黒津木 宗也]がその新聞を手に取った。

 

 

黒津木「俺にも見せろっつったろ」

 

 

神威「これ5日前の朝刊だけど?」

 

 

黒津木「良いんだよ。えぇと?.........大手ゲーム企業[SEG〇]。新たな[AI開発]の先頭に立つ.........」

 

 

「.........[AIRI]か」

 

 

二人「AIRI?」

 

 

 ハンドルを握る男。[桜木 玲皇]がそう呟く。

 

 

 [自立思考型AI:AIRI]。事の発端はアーケードゲームに搭載されたAI。普通のCPU操作と違い、カードシステムと連動させる事で個人個人の操作方法に補助的なアシスト補正を付ける事の出来る代物。

 そのデータが膨大となり、気付けば一つの独立したAIとしての運用が出来る物となったが.........今の時代にはまだ早いとコイツは言った。

 

 

桜木「大方、アニマと[同じ事]をしたんじゃないか?」

 

 

神威「同じ事って?」

 

 

桜木「[女神が居る]。そのAIの中に」

 

 

黒津木「.........でもプロジェクトは[三つ]って書いてるぜ?」

 

 

桜木「じゃあ違うな。忘れてくれ」

 

 

 これまた素っ気なくさっきまでの持論を自分で否定してくる。黒津木にその部分を見せてもらうと、[ガイア]。[テミス]。[オケアノス]と命名されている。ギリシャ神話の[女神].........強ち、コイツの言ってる事の的が外れている訳では無いのかもしれない。

 

 

神威「まぁ[アイツ]をどうにかこうにかしないと行けねェってのは分かるけどさぁ?今日じゃなくて良くね?来週で良くね?なぁ翔也」

 

 

白銀「.........」

 

 

 不機嫌さを顕にしている助手席に座っている翔也に話しかける。返答は無し。どうやら相当ご立腹の様だ。

 無理もない。なんせ今日は[アオハル杯予選決勝]。こんなタイミングで動くだなんて奴さんは兎も角、俺達も想定外だ。

 

 

 しかも話を聞かされたのは[今日]だ。俺なんかカフェに見に行くからなって言ったんだぞ。

 

 

桜木「ごめんって謝っただろ」

 

 

白銀「うるせェ」

 

 

桜木「.........雰囲気が重いな。案内役と話でもするか」

 

 

三人「やめろォッッ!!!」

 

 

 俺達の制止も虚しく、コイツはカーナビのボタンを押した。これは玲皇の車だ。リース品で借り物だが、改造されたらしい。法律違反だろこれ。

 そしてボタンを押すとなんとびっくり。この前活躍(MVPは絶対あげられない)した[ロボ爺や]とかいうやべぇ奴が起動するのだ。

 

 

『呼ンダカ?ダメゴ主人』

 

 

桜木「ああ。目的地はどうだ?」

 

 

『時間ノ揺レガアル所ハマダ遠イゾ。新シイテーマパークッテ聞イテ楽シミダ』

 

 

黒津木「嘘ですッッッ!!!!!」

 

 

『ダニィ!!?』

 

 

黒津木「全て嘘ですッッ!!!今から向かっているのはッッ!!!死地なんですッッ!!!」

 

 

『.........騙シタナ?』

 

 

桜木「腐☆腐。やっっと脳天気なお前でも飲み込めた様だなァ?全ては、黒津木の言う通りだ」

 

 

桜木「貴様の大元になったIMUNIのメインコンピュータを破壊し、ついでにアニマを倒すというのが、俺の本来の計画なのだからな〜?ファ〜ハハハハ!」

 

 

神威「あ、悪魔たん.........」

 

 

『消エ失セロッッ!!!二度トソノ面見セルナァッッッ!!!!!』

 

 

 プツッと途切れる音と共にカーナビが機能停止する。その後何度もコイツは起動ボタンを押すが、反応が無い。

 

 

桜木「.........なんか嫌われたんだが」

 

 

二人「当たり前なんだよなぁ」

 

 

白銀「あーあっ!!!本当ならバカ女と結婚式の会場探す予定だったのになー!!!」

 

 

桜木「アオハル杯当日にやるな!!!それとそれも織り込み済みで拉致ったんだボケナスッッ!!!」

 

 

 隣で車内全体が騒がしい雰囲気に包まれる。誰も望んでいないだの、車に乗った時点で契約履行済みだの、契約書は存在してないだの、そんなの古臭いだのとああでもないこうでもないと騒ぎ散らかしていた。

 

 

 車体がグワングワンと揺れ動く。そんな中、車が交差点に差しかかろうとしていた。

 

 

神威「ん?おい玲皇。スピード落とせよ」

 

 

桜木「言われなくてもわぁっとるわ!!!.........?」

 

 

白銀「.........バカ?速度落ちて無いけど」

 

 

桜木「?.........???.........?????w」

 

 

 .........ブレーキを踏み込む音は聞こえる。しかし、車体は一向にスピードを落とさない。

 まさか.........いやそんなはずは無い。カーナビ改造の時にコイツはエンジンがあーだのとかモーターがこーだのとか仕切りにイキリ散らかしてやがった。そんな男がブレーキの状態を確認しない訳が無い。

 

 

黒津木「.........あの、交差点超えたんですけど。[赤]で」

 

 

二人「.........」

 

 

 結局、スピードなんて一切弛める事も無く交差点を踏み切ってしまった。どうしてくれるんだ。警察に見られたら一発アウトのスピードだぞ。

 それに何もブレーキを踏まなくたってアクセルから足離せば最悪自然減速出来るはずだ。

 

 

 そんな疑惑を吹っ飛ばすほどに、振り返ったコイツの表情は衝撃的だった―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ブレーキ効かないの.........(震え声)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員「」

 

 

 振り返って見せてきたのは涙と鼻水に塗れた男の顔だった。みったくない表情をしてる。

 絶句した。オリチャー発動厨のコイツがこんなに取り乱しているということはそれ程までにやばい事態なのだ。

 

 

 どうするべきか?その思考にいち早く正解を導き出したのは以外にも翔也だった。

 

 

白銀「ちょ!!!電話するわ!!!なんだっけJAF!!?とにかく連絡する!!!」

 

 

二人「おお」

 

 

桜木「ダメだ!!!」

 

 

三人「何が!!?」

 

 

桜木「俺免許無いッッッ!!!!!」

 

 

三人「.........はァァァァァ!!!??」

 

 

 な、何、え、コイツ何!!?え!!?今まで無免許で運転してたの!!?有り得ないんですけど!!?

 

 

桜木「だって目は霞むし手は覚束無いから返納するしか無いじゃん!!!」

 

 

黒津木「ヲ!ヲ!ヲ!ヲ!(哀叫)」

 

 

神威「あー早く帰ってトレーニングしなきゃ(現実逃避)」

 

 

白銀「うわぁぁぁぁ!!!!!死にたくなぁぁぁぁぁい!!!!!」

 

 

『ハッハッハッ!!!地獄ニ行ッテモコンナニ面白イショウハ見ラレンナ!!!』

 

 

 先程まで沈黙していたカーナビが突然起動し、俺達を嘲笑う。

 その瞬間に運転しているコイツは状況を把握したのか、憤怒を顕にして声を荒らげる。

 

 

桜木「謀ったなッッ!!!謀ったなロボ爺やッッ!!!」

 

 

『ゴ主人ガ悪イノダヨ。態々コノロボ爺ヤヲ作リ、ソシテコノ車ニ搭載シタダメゴ主人ガナ』

 

 

桜木「誰が貴様を造ったと思ってるッッ!!!ええッッ!!?」

 

 

『誰ガ産メト頼ンダ?誰ガ造ッテクレト願ッタ?』

 

 

神威「つかなんで車に付けたのォ!!?」

 

 

桜木「覚えてないッッ!!!気付いたら二日酔いでガレージの車の下に居たッッ!!!」

 

 

白銀「お前もう酒飲むの禁止ッッ!!!」

 

 

『サァ、死ノ恐怖ヲ味ワイナガラ車ニ八ツ裂キニサレルガ良イ。腐☆腐』

 

 

桜木「消え失せろッッ!!!二度とその面見せるなァッッッ!!!!!」ガッシャーン!!!

 

 

白銀「.........どうすんのこれ」

 

 

桜木「.........ブレーキに細工された。ノンストップで突き進むしか無い」

 

 

黒津木「ンアーッ!計画が行き当たりばったり過ぎます!!!」

 

 

神威「止めろ宗也!!!車内で〇夢ごっこは恥ずかしい事なんだぞ!!!」

 

 

桜木「うるせェ!!!行くぜ[唯我独尊状態(オリチャーモード発動)]ッッッ!!!!!舌噛むなよォッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――薄暗い闇の中、微かに感じる気配。[願望器]によって作り替えられた身体は全ての[人の子]を感じ取れる。[地球意思]の名の元、この星に生まれた存在を認知する力。

 

 

アニマ「.........ちょっとはゆっくりしなよ」

 

 

 が、あまりにも早すぎる。今日は確か彼等にとっても大事な日だろう。そんな日にわざわざ向かってくるだなんて、余程僕が気に食わないらしい。

 進行速度とその方向性から既に場所は割れている。ここは[神魔石]が大量に眠る地下深く。[宿主を失った願望器]が神聖さを失い、ただの[物]と降った状態がそれ。名付けたのは[彼]だが、中々良いセンスをしていると思うよ。

 

 

アニマ「.........じゃあ僕も、ゲームらしくやってあげようかな」

 

 

アニマ「[ラストダンジョン]。RPGにはお決まりでしょ?」

 

 

 闇に沈められた世界。それが光を照らされ顕現していく。僕の手元にあるのは[願望器]だ。これくらいは造作もない。

 直ぐにこの空間は具現化し、現実世界に現れるだろう。

 

 

 そんな事になれば大惨事。人の営みの邪魔になってしまう。でも大丈夫.........これは[IMUNI]以上に使い勝手が良いんだ.........

 

 

アニマ「あー、あー、マイクテストマイクテスト?うん」

 

 

 

 

 

『現在、[ラストダンジョン]は調整中です。材料が無い上に運営の使用上、モンスターは居ません』

 

 

『代わりに[僕]が大量に配置されてます。常に思考共有していますので、タイマンの場合は直ぐに倒して下さい』

 

 

『叶わなかった場合は即刻[処刑シーン]へ移り変わります。ムービースキップは出来ません』

 

 

『参加資格の無い者はクエストの存在すら気付きません。ここまで追い続けた皆様のみフィールド上のステージ入口が視認できます』

 

 

『オススメのロールはありません。攻略情報もありません。全身全霊を持って[楽しみましょう].........♪』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「翔也ァッッ!!!次どっち曲がる!!?」

 

 

白銀「なんでさっきから俺なんだよッッ!!!右ィッ!!!んでもって右で右の右ッッッ!!!!!」

 

 

神威「つうかなんでこの速度で誰も通報しねェんだよッッ!!?高速でも出しちゃ行けないスピードだろッッ!!!」

 

 

 右、右、そして右。傍から見ればUターンしている様にも見えるだろう。だがこれが[確実]。そして[堅実]なのだ。

 今白銀の意識は完全に[IMUNI]を乗っ取ったロボ爺やに向いている。何とかしなければ行けないという方向に。

 故に、その意識に沿った行動を取れば確実に到達する。しかも正規ルートよりも[早く確定的]な道筋で.........!!!

 

 

 奇想天外、しかし事実は小説よりも奇なり。周りに道に回り道。そんなルートの筈が気付けば視界はどんどん移り変わり、目的地へ近付いている[感覚]が手に取るように分かる。

 

 

桜木(っ、アニマの感覚が近い.........!!!やはりコイツ.........)

 

 

白銀「あ、酒飲みたくなってきた。コンビニ寄って」

 

 

神威「あぁ!!?何言ってんのお前!!!.........あっ!!!俺もスマホ忘れた!!!家戻ってくれない!!?」

 

 

黒津木「バカかぁ?スマホ中毒者はこれだから.........あ、財布忘れた」

 

 

桜木「バカ共ォ!!![降りる]ぞォッッッ!!!!!」

 

 

三人「ゑ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ドカッシャァァァンッッッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目前に迫る壁。それを視認して距離感覚でどうにも出来ない事を悟る。シートベルトを外し限速度真っ只中の車体から身を投げ出す。

 それに遅れるも、他の奴らも同じようにそうした後、逡巡する間もなくその手も付けられなくなった速度の鉄の塊は壁に激突し、炎上の中心へと様変わりした。

 

 

三人「.........あーあ」

 

 

 その様子を呆然と見る三人。そしてやはりこうなるかと言わんばかりに呆れと同情を混ぜたような様子で炎の立ち昇るそれをただ見る。

 .........若い頃は運転に自信があったはずだが、傍から見ればやはり荒かったのだろうか?

 

 

神威「カーリース品だってのに、やらかしたなぁ〜」

 

 

桜木「さっきからカーリースだなんだと言っているが、俺はそんなもの頼んだ記憶は無いぞ」

 

 

白銀「もうアンタの知ってる世界じゃないけど?」

 

 

黒津木「アイツの言葉を借りるんだったら、[歴史が違うんだよ]って訳」

 

 

桜木「.........その言葉も借り物だし、何より言うべき場所が違う」

 

 

 服に着いた土を払いながら立ち上がる。目の前にそびえ立つのは無機質な黒い壁。外から見れば大騒ぎになるような物。

 しかし、そのようなニュースは一切流れていない。やはり奴は何らかの策を使ってここの認識を歪めている.........

 

 

桜木([願望器]。か、有り得ない事を何度も経験はしたが、やはり信じきれんな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ダガ、データハ残ッテイタ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭に響く声。それに同意する。

 

 

 [IMUNI]のログには確かに残っていた。奴がこのAIに話していた内容とその全貌.........

 

 

 だが.........それもやはり、[万能]では無い。

 

 

桜木「.........さっさと行くぞ。アレを回収せんと取り返しのつかない事になる」

 

 

黒津木「例えば?」

 

 

桜木「ドローンの禁止。住宅の窓は今後マジックミラー化。温泉や銭湯等の露天風呂の廃止。ポルノサイトの全規制だな」

 

 

神威「えぇ.........ヤバ」

 

 

白銀「.........はァ!!?なんで俺の方見るの!!?」

 

 

桜木「.........はぁぁぁ」

 

 

 いくら優秀と言えども、集まったらこうなってしまうのならば首を傾げざるを得ないな。コイツらならばとも思うが、やはり根っからの友人。気の締まり方が仕事のそれとは違う。

 .........だが、意識はいい方向に向いているようだ。何せ全員、[奴]ではなく[IMUNI]の残骸の方に向いているからな.........

 

 

桜木「さぁ、始めるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「[ラストダンジョン]。突入だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゆっくりと過ぎていく時間。それを感じながら僕は人を待つ。風通しもない部屋の中、玉座に座りながら目を閉じてその時を待つ。

 外に感じる[気配]。分かる。彼等が近付いて来ているのが.........

 

 

 それ以上に、今[目の前に居る]。

 

 

アニマ「.........ククク、久しぶりだね?[王子様]」

 

 

 ゆっくりと目を開けて[答え合わせ]をする。予想通り目の前には、西洋的軽装防具を身に付けた若い青年が立っていた。

 彼の名は[レックス=サンズロット]。この世界で初めて[獅子王心を持つ者]として覚醒した人間だ。

 

 

アニマ「随分時間が経ったけど、それでも変わらない[恨み]があるんだね」

 

 

レックス「.........違う。貴方に会いに来たのは別の理由だ」

 

 

アニマ「何の為に?」

 

 

レックス「念の為に」

 

 

 鋭い目が睨み付ける。だが確かに、彼の言う通り必要以上の敵意は感じない。なるほど。どうやら本当に彼自身は[決着]を付けるつもりは無いらしい。

 

 

アニマ「だったら何故来たんだい?君自身の[人生]の意味を知る為に来たんだろう?僕がどういう存在か忘れた?」

 

 

レックス「忘れてないさ。でも、今僕と貴方は[同じ存在]だ。[これ]以外にも降す方法はある」

 

 

 [これ]。そう言って彼は自身の腰に携えた剣に手を置いた。そして[同じ存在]。ふむ.........どうやら[願望器]を使ったのは彼女にバレてしまっているようだ。それを利用されたのならば仕方ない。

 リスクを承知で使ったんだ。これぐらいのイレギュラーは目を瞑るさ。

 

 

 しかし、彼がこの場に顕現しているという事は[願望器]を使ったという事だ。それは即ち、かなりの[意思]が無ければ扱いきれない物。

 こんな事が目的じゃないはずだ。

 

 

レックス「.........フフ」

 

 

アニマ「.........何がおかしい?」

 

 

レックス「いや、君のその真剣な表情を見ると、彼が頑張って下ろしてくれたんだなってさ」

 

 

レックス「.........[同じ土俵]に」

 

 

 薄らと笑みを浮かべて僕の方を見る。どんな気分だ?と問われる様に。

 なるほど。彼は僕が降りてきたと思っている。同じ立場に。そしてそれは間違いじゃない。僕と彼は今や[同類]だ。

 

 

 ありもしない[肉体]を[願い]によって作り出す。そう、何千年も前から予見されていた[神の再臨]。それをした存在が今、二人。確かに同じ存在。[同じ土俵]に立たされている。

 

 

アニマ「.........それで?君は結局何をしに来たんだ」

 

 

レックス「大した事じゃない。ただ、[話]がしたいんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「[彼]が君と[決着]を付ける前に、ね.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 騒がしい声が聞こえてくる中で秋風が頬を撫でる。時間はやはり進んでいく物なのだと季節を巡る事に実感する。

 強ばった身体を伸ばしながら外の空気を吸い込み、大きく欠伸をする。天気は晴れ。バ場も良好。

 

 

「.........そろそろだな」

 

 

 ゆっくりと腕を回してストレッチをする。別に自分が走る訳じゃないのに、何だか気分が落ち着かない。

 

 

「会場にお集まりの皆様。現在、[アオハル杯予選決勝]、第一レース[マイル]の準備時間となっております」

 

 

「カメラでの撮影はフラッシュをお切りの上、参加選手の妨害にならぬ様ガードから身を乗り出さないようにお願いします」

 

 

「ったく。まだ準備アナウンスをしたってだけなのに偉い盛り上がりだなぁ。相変わらず」

 

 

 会場を背にしてそこから聞こえる声を聞く。いつも通りの熱狂。その渦の外に身を置きながら苦笑する。

 何年経っても持っていかれそうになる。心ごと、その渦の中心に巻き込まれそうになる。

 

 

 でもそれだけはいけない。[トレーナー]として、そこに入り込んでしまえば後戻りは出来ない。

 そうなってしまえば.........[彼女達]の勝利を自分の物として扱うようになってしまう。どこまで行っても他人の勝負。熱を入れ過ぎれば、自分は拠り所ではなくなる。

 

 

 暫しの準備時間。他のトレーナーなら作戦の再確認に充てる時間。けれど、そんな事はしない。事前に伝えた物をどう扱うかは彼女達次第。

 だとするならば.........俺のやることは、自分を落ち着かせるだけ。どんな勝負の結果だろうと、それを受け止めるだけの自分である為の時間だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――トレーナーさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 渦の熱からは遠い涼しい声が聞こえる。それに振り返ると、[懐かしい勝負服]を着た彼女がそこに立っていた。

 

 

「今日は白いんだね。マックイーン」

 

 

「ええ。チームの[再出発]。それを表すのに相応しいと思いませんか?」

 

 

 そう言って見せ付ける様にクルッと回って見せてくれる。URAの表彰で頂いた[勝負服]に身を包んだ彼女が、久しぶりに目の前に立っている。

 Mさんもその勝負服を着て走っていたけれど、あの人と違って柔らかさを感じる。そんな彼女らしさに、目を奪われてしまう。

 

 

「.........あの」

 

 

「?」

 

 

「か、感想は.........?」

 

 

「.........はは、可愛いよ。大好き」

 

 

「!もう.........///」

 

 

 恥ずかしそうに頬を染めてたじろぐ彼女。でも、こんな言葉をさりげなく言える程俺が軟派な奴じゃないってのは彼女も分かってると思う。

 こう、自然と出てしまうんだ。感情に押し出されて、だから、うん。仕方ないんだ。

 

 

 視線を揺らしながら、でも時折目を合わせてくる。普段の凛々しさを感じさせない程に不安定に揺れる彼女を見ていると、彼女はどこか諦めたように溜息を吐き、そして困った様な顔で俺の方を見た。

 

 

「.........私も、大好きです」

 

 

「.........ぅ」

 

 

「ふふ♪やっぱり、生身の方が良いですわね♪」

 

 

「.........んげっ、そ、そろそろ戻ろうか。マックイーン.........」

 

 

「え?.........ぁ」

 

 

 熱をあげるばかりで吐き出す事が出来ない。生身特有の感覚を感じていると、ジッとこちらを見つめる視線に気付く。

 

 

 青鹿毛の細い身体。前髪に太い流星が流れた金色の瞳。ロックな勝負服を身にまとったウマ娘がげんなりした様子で立っていた。

 

 

「おいコラァ。テメェが出てった時点でタキオン達にオレ様ちゃんが言い訳してやったのによォ。マックイーンまで出てったらどうもできねェぞ」

 

 

「あ、はは.........因みになんて言われてる.........?」

 

 

「お嬢様連中はテメェらが[逢引き]しに行ったってキャーキャー言ってる」

 

 

「お、オホホ.........嫌ですわそんな逢引きだなんて.........」

 

 

(.........妄想を口に出す癖。結局直してあげられなかったからなぁ)

 

 

 彼女が言ったお嬢様達はカレンチャンとファインモーションの事だろう。ここ最近はお茶会と称してマックイーンと恋愛談義に花を咲かせている。

 それは良い。だが、チームの部室で、俺の居るそばで、あることないこと判別付かない話をするのは困った物ではある。

 

 

 戻ったらこれはまた、デジタルにどやされそうだと思い、俺は肩を落とした.........

 

 

 

 

 

 ―――[IMUNI]を破壊したあの日から2週間。環境は劇的に変化した。あの日から一体、何が起こったのか。

 

 

 それは、ある[女神]の[策略]から始まる.........

 

 

 

 

 

......To be continued

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