山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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お久しぶりです。季節の変わり目でかなり弱ってました。
恐らくこれが今年最後になると思います。皆様良いお年を。


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 ざわつき止まぬ観衆を他所に各バ、ゲートインを済ませて居る。対象的な空間。区切りはレース場と観客席。明らかに異質。明らかな[例外]。

 

 

桜木(何が.........始まるってんだ.........)

 

 

 息が詰まる。あそこに立って、準備をしている段階で、ここに居る俺が息が出来なくなっている。あそこにいる彼女達は.........[あの子]は今、何を思っているんだろうか。

 ゲートの中で体を解していく彼女を見る。もう既に目は前を向き、逸れる事は無い。その様子を見て先程までの緊張がまるで無かったかのように身体が軽くなっていく。

 

 

桜木(.........いや。何にも考えてないか)

 

 

 そう。[始まる]。対戦が決まり、あそこに行った時点で自分の中で[決まる物]。それは[勝つという意志]。それ以外は全て置いて前だけ見据える。アスリートというのはそういう物だ。

 

 

桜木(行けないな。あまりにも前のめり過ぎてる)

 

 

 どうやらあの場所に立つ時間が長過ぎたみたいだ。それとこれは別。俺達は結果は享受するが、それからもたらされる感情をそのままにして良い存在じゃない。それは、[トレーナー]とは言えない。

 動じる事無く受け止め、前を見る。彼女達が天を仰ぎ、地に目を伏せる時は必ず、俺達が代わりに前を見ていなければならない。

 

 

 そうじゃなければ、[俺達]の存在意義は無い。

 

 

「各バゲートイン完了。果たしてどちらが[青春]の頂きに手を掛ける事となるのか」

 

 

「[アオハル杯予選決勝]。最終レース中距離戦―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ガコンッッッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――今スタートッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゲートが開くと同時に前へと駆け出す少女達。最初こそ横並びの展開となったが、直ぐに全体は縦長の展開へと変わって行く。

 逃げを打つ選手が二人。一方はオブザーバーであり、一人はリギルが抱える中距離選手。

 先行では序盤の時点で既に、サンデーサイレンスとイージーゴアがお互いに対して強い思いを抱いていた。

 

 

(コイツ.........何一つ変わっちゃいねェ.........!!!)

 

 

(ククク.........この威圧感。久しいね本当)

 

 

 両者譲らず、付かず離れずの距離。しかし確かに前はイージーゴアが僅かに陣取っている。サンデーは空いた隙間が潰されぬよう鼻先を入れて場所を確保している。

 それを見守る一人の先行を走るウマ娘が居た。

 

 

 

 

 

フジ(.........なるほど。身体の動きからして[直線型]。しかもかなりの力強さだ)

 

 

 ―――盤面の固め方からして、私はそう判断した。第一コーナーの時点で大体の身体の使い方が分かる。曲がる時の身体の強ばりが尋常じゃない。

 あれは恐らく、[速度抑制トレーニング]を受けた証だろう。レースを行うウマ娘がコーナリングで上手く曲がれない者が受ける講習トレーニングだ。

 それを受ける者は共通点がある。前述した通り[スピード]だ。曲がり切れずに自身の身体を壊す場合もある程の強さ。そして何より、サニーが彼女を恐れている.........

 

 

フジ(そうなると、ポッケにも頑張って貰わないとね.........)

 

 

 先行巧者の崩し方は、どうしても後方頼りになる。相手の意識を後ろに引かせるんだ。そして緩んだ場所を見つけてそこに突っ込む。

 本来ならそれは一人でやる作戦。だから出来ることも少ない。勝ちは自分だけしか得られないから、そのために温存する事になる。

 

 

 だけど、その[勝ち]への力を全て、[盤面破壊]に使ってしまえば.........

 

 

フジ(本当、良いイベントだね。[アオハル杯]と言うのは.........!!!)

 

 

 [最後方強襲]。その文字が脳裏に浮かぶ。敢えて序盤の他選手達の戦術的レースから外れてスタミナを溜め続け、最後の一直線に勝負を決める。難しい追い込み戦術だけど、決まれば大きなアドバンテージになる。

 勿論、ポッケにその選択肢は用意していない。けれど.........どうやら彼女達を見て、自分のやるべき事を理解したみたいだ。

 

 

フジ(ふふ、そっちが[ライバル対決]をしたいなら、こっちはこっちでやらせてもらうからね.........!!!)

 

 

 

 

 

タキオン「.........ふぅン?」

 

 

シリウス「タキオン。どう見る?」

 

 

 ―――隣に立つシリウスくんがそう話し掛ける。その視線はレースに向けられている。私も視線を戻し、先頭が第二コーナーを曲がり始める様子を見ながら受け答える。

 

 

タキオン「[難しい]。その一言に限るね」

 

 

タキオン「[アオハル杯]は[チーム戦]。その意味がここに来て強くなっている」

 

 

 対戦を重ねる度に感じざるを得ない。[チーム戦]の[重み]。個人戦とは違う、息の詰まる様なレース。個人戦が[ドミノ倒し]となるならば、これは[グッドエンディング]が用意されたゲームだ。それぞれがその役割に徹し、そして条件をクリアして行かなければ行けない。

 

 

タキオン「本当、開催封印も頷けるね。直にこの熱を受けていると」

 

 

シャカ「.........そうだな」

 

 

 凄まじい程の闘志。憎愛と言っても良いだろう。それほどまでに強い熱量がレースから発せられている。

 チームとしての連帯感が高まっていくにつれ、それがぶつかり合うことで発生する[感情スパーク]。勝ち抜けば勝ち抜く程にそれは強く、強大になっていく。

 良い事ばかりでは無い。この私ですらそれに充てられてしまうんだ。並大抵のウマ娘だとしたら.........それこそ、[身体を壊す]程に強さを追求するだろう。

 

 

 そんな催し、封印されて当然だ。

 

 

 .........だが、それは。それでは余りにも.........

 

 

タキオン(.........[ナンセンス]だ)

 

 

 それを止める事。それを諦める事。それに従う事。その全てがナンセンスだ。

 私達は前を向き走るのみ。その過程でいくら壊れようと、夢破れようと、否定される筋合いも同情される由もない。

 

 

 私達が欲しいのは[優しい隣人]では無い。

 

 

 [隣を歩く仲間]だ。

 

 

タキオン(.........そう考えると、私達は知らぬ間に[正解]を導いていたようだね)

 

 

桜木「.........っ」

 

 

 要所要所で拳を握り締め、展開のその先を幾つも予想立てしていく。その顔にはさぞ冷たいだろう冷や汗を流しつつも、決して冷めない熱量を顕にしている。

 それを隣で見て、私はそう思った。

 

 

 そして、チーム[レグルス]の在り方は、このメンバーでなければ発揮できない。そう結論付ける事が出来た。

 

 

ブルボン「サニーさんの加速度が上がっています。しかしそれに比例して、[あの方]も.........」

 

 

桜木「分かってる.........この[勝負].........」

 

 

桜木「[どっちかが負ける]。なんて、簡単には結論付けさせてくれなさそうだ」

 

 

 

 

 

 ―――加速していくデッドヒート。盤面は整いつつある。それを誰が崩すのか、見守る者は固唾を呑みその一瞬に意識を向ける。

 重なる重低音の足音。とても少女のか細い脚から出されるそれでは無い。その音の中から一つ、[外れていく音]が出てきた。

 

 

「―――ッッッ!!!!!」

 

 

(ッ、アイツ.........!!!!!)

 

 

 飛び出したのはイージーゴア。最終コーナーより手前の前。スピード勝負が熟成された環境、[アメリカ]で培った仕掛けの勘が導き出したタイミング。

 それを察し、外から刺そうとするサンデー。しかし脚色は悪い。最終コーナーで大幅有利。という展開にはどうにも持って行けそうにない事は本人にも明白に分かっていた。

 

 

 だが、やらない訳には行かない。[最善]を尽くさぬ者に、決して[奇跡]は舞い降りない。

 

 

 ギアを上げる。スタミナ切れを心配する事はしない。後の祭りになったとて、今やり切らなければ後悔だけが残る。それは彼にとって、そして彼等にとっても不本意でしかない。

 前に進む。ただひたすらに前へ、最終コーナーに向かって―――

 

 

(ククク.........分かるよ。それが[運命]を[追う]という感覚だ)

 

 

(泥に顔を突っ込んだとしても、その水全て啜り飲んででも手に入れたい。僕にとっての、君からの勝利はそれだ)

 

 

(あァクソッ!!!テメェは黙ってオレのケツ追っかけとけば良いンだよォッッッ!!!!!)

 

 

 ニヒルな笑みを浮かべて後方に視線を送る彼。片やその表情に怒りを爆発させ、更にギアを上げようとする彼。最早そこに隔たりは無く、二人は[繋がっている]。そう思わせる程の感情の交差。

 

 

 ―――しかし、練り上げられた[肉体]は時に、[精神]すら超えるという。

 

 

 無意識下の想いを、勝手に拾い上げてしまう程。身体を反射運動の要素で埋め尽くすとはそういう事なのだ。

 

 

 彼に対する思い。願い。切望。その全てが入り交じり、決して自分では開けられない扉の奥。

 誰にも知られない扉の奥を、その[扉自身]は知っている。

 

 

 そしてその[扉自身]が、[身体]だとしたら―――

 

 

 

 

 

 ―――ピト.........

 

 

「―――?」

 

 

 ―――オレの頬に、何かが跳ねた。じんわり広がって、空気に触れて冷たくなっていく。

 それが何なのか、気にも止めなかった。気にも止めずに走ろうとした.........でも、だけどオレの身体はそれに反応して、この一瞬の感覚を.........まるで[永遠]の様に感じさせてきた。

 

 

 それは、[メッセージ]だ。この[身体]が、この感覚は何なのかをハッキリ示せと言ってきている。スローモーションで世界が動く中、視界を揺らしながら頬に跳ねた物の正体を探って行く。

 

 

 そして、見つけた―――

 

 

(―――そういう、事かよ)

 

 

 それを見た瞬間。全てが分かった。コイツの思惑も、コイツの想いも、全部が明かされた。

 

 

 雫の軌跡が、奴の方から流れている。それを このスローな時間の流れの中で見つける事が出来た。

 

 

 きっとコイツは、何ともないんだろう。今この場で走っているこの今は.........無我夢中でただ前に行こうとしているだけだ。

 

 

 コイツが欲しいのは、明日に繋がる過去でも、昨日を語り合う未来でも無い。[今]なんだ。それをずっとずっと、待ち続けて.........

 

 

(.........ンだよ。結構可愛い所あンじゃねぇか)

 

 

 早くに逝っちまったコイツが何でここに居ないのか。わざわざただの[ウマソウル]などと言う不安定なままの状態で、残っていたのか。

 コイツはずっと.........[オレ]を待っていたんだ.........

 

 

 だったら、それに応えなきゃ行けない。求める者に救いは与えられる。光を求める者に、太陽は静かに、そして万物に、不平等無く与える。

 だが.........

 

 

(オレ様ちゃんはへそ曲がりだからよォ.........!!!テメェの求めるモンそのまま出すってのはしないぜ!!!)

 

 

 身体を巡る[想い]。繋がる様な感覚。いや違う、オレが[繋いでいる]んだ。このレースの[勝ち]を、確実に.........!!!

 

 

 なぁ[優等生(戦友)]?もう終わりにしようぜ。オレ達には本来、明日に繋がる過去も、心が踊る今も、持っていちゃいけない[存在]だ。

 

 

 だからよ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ピカン♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――どこかも分からない場所を走り抜けている。誰の姿も見えない。息も切らしてしまっている。

 そんなオレを逃さない様に、数え切れない程の[鎖]が地面から生まれて行く。

 

 

「チッ.........!!!」

 

 

 柄にもねェ。こうして見りゃ、何本か何とかしちまえば通れる位の隙間じゃねェか。

 

 

 オレは一体.........どうしてこんな[諦め癖]が着いちまったンだろうなァ.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ガリッッッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 飛び出した鎖を一つ残らず[噛み砕く]。今までそうしてきた様に、オレは.........オレを良い様に操ろうとする物を全部[ブッ壊す]。

 

 

 それが―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――[運命]だか何だか知らねェが」

 

 

「オレの邪魔ァする奴ァ.........!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブッ潰してやるァァァッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――歯を立てた鎖が飛び散り、視界が開けて行く。その破片が眼前へと迫り、[八の字]がやがて[赤と青の螺旋]として浮かび上がる。

 少女は、彼は知らない。それが.........脈々とこの地球上の生物を繋げて行く、[メビウスの輪(DNA)]である事を.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 [Another One Bites The Fate]

 [Lv 6]

 

 

 [運命を切り開こうとする者達に贈られる福音。己の意志に呼応し、その意志を持つ者は前へと躍り出る]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 [共醒]が発動している―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(―――[勝った].........ッッッ!!!!!)

 

 

 ―――最終コーナーの終わり際。僕は隣に視線を送った。[彼]は居ない。それがどういう事を意味するのか。直ぐに理解が出来た。

 ここに居なければ.........もう僕を追い越すことは出来ない.........!!!誰にも不可能だッッッ!!!!!

 

 

「イージーゴアァァァァッッッ!!!!!」

 

 

(クク.........今更焦った所でもう勝負は―――)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その声に反応して、僕は振り返った。

 

 

 彼が後ろから来ている。左後ろからだ。でも、距離はある。前で加速を付ければなんとでも出来る。

 だが.........その彼の小さい影からどう隠していたのか、まるで[マジシャン]の様に、彼から飛び出てきた存在が居た。

 

 

「―――なっ」

 

 

 鮮やかなコーナリングだった。でも彼ほどじゃない。彼ほどじゃないにしろ.........その終わり際の爆発力は、彼以上の物を感じさせて僕の前へときた。

 [追いつかなければ].........その思考が戻って速度を上げる。加速力はある。トップスピードになりさえすれば抜かせられ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(.........馬鹿なっ)

 

 

(こんな.........こんな事が.........!!!)

 

 

 一人のウマ娘が、後方から全てを抜き去るように走って行く。ただひたすらに前へ前へ、やがて彼女と並んで、ゴールへ一直線に伸びていく。

 こんな事が.........あっていいはずが無い。僕は強いんだ。そして、僕を二度も破った彼はそれ以上に.........!!!

 

 

 こんな結果に、満足してる訳が―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――へへ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(―――ぁ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――歓声が響き渡った。勝者が決まってしまったのだ。目と鼻の先でそれを掴み取ったのは.........名前も知らない、二人のウマ娘だった.........

 

 

(.........負けた)

 

 

(最後の.........チャンスだったのに)

 

 

「っっっ.........僕は.........!!!!!」

 

 

 ゴールを切って、掲示板に目をやって、僕は膝を折った。地面に顔を近づけ、握り拳を作って見せた。それでも、気持ちは晴れない。彼らはこうして居たというのに、全くなんの影響も無い.........

 

 

 

 

 

「.........」

 

 

 ―――祝福を受ける勝者の傍で、苦渋を舐める敗者が居る。それが世の理で、どうしようもない実態だと、オレはずっと思っていた。

 .........やっぱり、コイツはまだ分かってなかったみたいだ。オレの言葉の意味が。

 

 

「オラ、起きろ」

 

 

「っ、何を.........?」

 

 

 無理やり手を引っ張って、肩に手を添えてコイツを支える。困惑している顔を見せるが、観客達からの声を聞いて、その顔をそっちの方に向ける。

 

 

「フ゛ジ キ゛セ゛キ゛お゛か゛え゛り゛ーーー!!!!!」

 

 

「ポッケもナイスファイトだったぞー!!!先輩超えも近いな!!!」

 

 

「サンちゃんのセンターライブ聞きたかった〜!!!」

 

 

「んなことよりあのウマ娘の名前教えてくれよ!!!海外のレース見せてくれッッッ!!!!!」

 

 

「.........な?言った通りだろ?」

 

 

「.........」

 

 

 呆けた様子で観客を見渡しているイージーゴア。そりゃそうだ。あっちじゃもっと罵詈雑言が混じった物が聞こえて来てたんだ。そうなるのも無理は無い。

 けれど、ここは違う。ここは本当に、オレ達が走ってくれりゃァ.........それだけで喜んでくれる奴らの集まりなんだ。

 

 

 でも、コイツはそれでもその曇った表情を変えはしない。また地面に顔を向けて、辛気臭い雰囲気をまとい始めている。

 

 

「.........僕は、君との[決着]を付けに来たんだ.........」

 

 

「あの日有耶無耶にしてしまったそれを.........なのに.........!!!」

 

 

「!.........お前」

 

 

「君はっっ!!!これで良かったのかッッッ!!!??」

 

 

 オレを突き放し、そう言葉を荒らげる。それを間近で見ていた奴らもどうしたって形で恐る恐るオレ達に目を向けて居る。

 .........ったく。下らねェ事すんなよ。こっちは優秀な長男坊の晴れ舞台を見てやってるってのに.........

 

 

「.........今更、テメェとの[因縁]を持ち出す程、オレァガキじゃねェンだよ」

 

 

「っ.........!!!ふざけ「悔しかったらッッ!!!」―――!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうにかこうにかして[ガキ]沢山こさえて、こっちに全員連れて来いッッッ!!!!!以上ッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――.........彼はそう、僕に一喝し、[フジキセキ]と呼ばれている少女の元へと駆け寄って行った。

 抱き着いて彼女の頭を乱暴に撫でるその姿は、人間の[親子]の様に見えた。

 

 

 .........そうか。今ようやく分かった。彼女は彼の.........

 

 

 やがて、その彼女達を中心にウマ娘達が集まって行く。あの一直線に後方から駆け抜けた少女も涙で顔を歪ませながら加わり、僕が経験した事も無い、勝利後の雰囲気になった。

 

 

(.........悔しかったら、[子供]を作ってこい。か.........)

 

 

(.........ククク、確かにその点で言えば、君は僕より[優秀]だったね)

 

 

(結局は.........[過ぎた夢]だった様だ)

 

 

 ここに来てようやく、胸のつかえが取れた。今まで[決着]を付けれなかった思いがようやく。だ。そしてこれは.........単なる[勝ち負け]では到底導き出せなかった[答え]だ。

 

 

 僕達はもう。[時代遅れの産物]だ。その技術や思い出は残ったとしても、[次]になる事は無い。

 それが分かっただけでも.........良かった。

 

 

「.........おい。優等生」

 

 

「.........?」

 

 

「まさか、ここで終わったまま帰るつもりか?」

 

 

「ああ.........レースは終わった。僕らにはもうこの場に残る必要は―――「おいおい」.........なんだいさっきから。勿体ぶらずに言えよ!!」

 

 

 彼は人を小馬鹿にした表情で僕を煽ってきた。気分はすっかり世間知らずに常識を説く年長者だ。反発したくもなる。

 だが.........彼はそんな僕を見て、今まで向けた事も無い優しい顔で、僕にこう言った。

 

 

「この世界じゃ、勝った奴らはそれを記憶付ける為に催しをやるんだとさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見てけよイージーゴア。このオレ様ちゃんの、[最初で最後のライブ]だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レースの興奮冷めやらぬ中、人々がライブステージへと足を運ぶ。そんな中俺は一人、いつもと違う雰囲気に違和感を覚えていた。

 

 

桜木「.........なんか、静かじゃないっすか?」

 

 

 俺のその言葉に疑問を感じながらも、辺りを見渡して同意を得る沖野さんと東条さん。対照的にチームメンバーのウマ娘達は全員、何が始まるのかを楽しみにしている様子だった。

 

 

「ではこれより、[アオハル杯予選決勝]のウイニングライブを行います」

 

 

「その前に、ウエスタンビール選手から大事なお知らせがあるとの事ですので、ご登壇頂きましょう」

 

 

 アナウンスの言葉に、会場がザワついた。チームメイトのウマ娘や他のトレーナー陣は一斉に俺の方を見るが、俺も何も聞いちゃいない。

 一体何が行われるのか.........それを確かめる為に、ステージの方へ視線を移した。

 

 

 まだ冷めきっていない騒がしさの中、一人の少女がスタンドマイクと[ギター]を持って舞台へと上がってきた。

 

 

 

 

 

サニー「―――あー」

 

 

 ―――響き渡るオレの声。それに反応して、少しうるさかった世界が静寂に包まれた。

 .........こういうの、苦手なんだよな。ホントは。

 

 

 .........でもこれは、オレが始めた[物語]だ。例えその始まり方は不本意だったとしても、しっかりと終わらせなきゃオレの気が済まねぇ。

 

 

サニー「.........その、なんつーか。別に今更言うべき事じゃねぇんだけど。さ」

 

 

サニ?「オレ.........サニーっとかっつう名前じゃねぇんだよ。本当は」

 

 

サ??「.........恥ずかしいから。絶対教えねぇけど」

 

 

???「.........代わりと言っちゃ何だけどさ。[歌]。歌ってやるよ」

 

 

 

 

 

 ―――彼女の.........彼の言っている言葉が、何となく分かった。遠い異国の地の類稀なる言語の筈なのに、それが心に届いて.........それと同時に、その不器用な[愛し方]に、[昔の彼]を思い出していた。

 

 

(―――ああ、そうか.........君は.........最初から.........)

 

 

([俺達]を.........恨んでは無かったんだな.........!!!)

 

 

 まだ覚束無い運指。けれどその音色は直ぐに分かった。俺が君の為に.........君を知ろうとする人達が、君がどんな存在なのかを教える為に作り上げた.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――もしも、本当に神様が居て、それが目の前に現れたのなら.........

 

 

カフェ「.........?」

 

 

シャカ「.........涙.........?オレが.........?」

 

 

タキオン「.........っ」

 

 

スペ(.........何だか、お母ちゃんに会いたくなってきちゃったな)

 

 

スズカ(でも.........あの人を見てると、凄く落ち着いてくる.........)

 

 

フジ(.........サニー、君は一体.........)

 

 

 きっと、一筋の軌跡を見せてしまうだろう―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山あり谷ありウマ娘

 

 

第二百二十三話 Sunday-Silence

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――静かな歌だった。ウマ娘達のレースの勝ちを祝う為の様な物ではなく、そしてそこに至るまでの努力の過程を歌う物でもなかった。

 ただ毎日を、平穏な日々を祈る歌が、静かに奏でられていた。

 

 

桜木(.........サンちゃん)

 

 

 その歌い方から、この曲がどれほど大事な物なのかが分かる。観客達は先程までのレースの熱狂を忘れ、ただひたすらに聞き浸っている。耳を澄ませばそこかしろに鼻をすする声が聞こえてくる程に.........

 

 

 .........だがそれ以上に、気になる事があった。

 

 

 人々の胸の辺りから仄かな光が浮かんで、空へと向かって行った。まだ分からないがあれは恐らく.........あの[巨大な砂時計]に向かって行ったのだと思う。

 そして、それは明らかにあの[歌]がトリガーだった.........

 

 

桜木(.........胸騒ぎがする)

 

 

 サンちゃんのライブが終わって直ぐに俺は人混みを掻き分け、彼女が戻るであろう控え室に向かった。

 あの子が何を考え、何をしようとしているのか.........それを聞き出さなければ行けなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待て。レグルスのトレーナー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「っ.........君は、アメリカの留学生」

 

 

 廊下で俺を背後から呼び止めたのは、最後のレースで熾烈な争いを繰り広げた彼女だった。その目はまだ[戦い]は終わっていないとでも言うように険しいままだった。

 彼女が俺を呼び止めた理由が分からない。だが、その疑問すら考える前に、彼女は片手で持ったある物を俺に見せてきた。

 

 

桜木「.........その[ギター]って「トレーナーさん!!!」―――マックイーン?」

 

 

マック「サニーさんが戻ってきて居ないんです!!!」

 

 

 背中から、控え室のある方からマックイーンの声が聞こえて振り返る。その目や焦りから、ただ事じゃないという事は目に見えて分かった。

 

 

マック「スタッフの方にも聞いたのですが、ライブを終えてから誰も姿を確認して.........貴女、それ.........」

 

 

 彼女の存在にマックイーンが気付き、酷く動揺する。留学生はマックイーンを見て、そしてゆっくりと視線を自分が持つギターの方へと移して行った。

 

 

「これは彼から貰った物だよ」

 

 

「.........良いかい?彼は[預かってくれ]。ではなく、[くれてやる]と言ったんだ」

 

 

「.........何故止めなかった。[名優]」

 

 

 [名優]。そう呼んだ彼女の表情は強く、そして激しい感情に揺らされていた。そしてその目はマックイーン.........いや、違う。どこか[彼女の奥底]を見つめている様だった。

 少しの沈黙。それを破ったのは留学生でも、俺達でも無かった。

 

 

『.........サンデーは、覚悟を決めていた。それを止める資格は無いわ』

 

 

桜木「え!!?Mさん!!?」

 

 

マック「ま、まさか貴女見えて.........!!?」

 

 

「それを言うなら、僕はここに居る[権利]すらない」

 

 

 もう全く、訳が分からない。ずっと置いてけぼりにされて話が進んで行っている。留学生の口ぶりからなんかサンちゃんと昔からの知り合いっぽいし、Mさんは完全に見えててこの事態を予測してたっぽいし.........

 だァァァクソァッッ!!!責めて俺達を土俵に上げる説明してから話を展開しやがれってんだ!!!

 

 

桜木「ちょっと待って。今からキモキモ設定オタク特有の飛躍考察で話に追い付くから」

 

 

二人「.........え?」

 

 

マック「わ、私にも聞かせてくださいまし!!!」

 

 

桜木「よ〜しじゃあ口に出して行こうか。添削よろしくお二人」

 

 

 

 

 

 ―――まず、サンちゃんとそこの留学生は元々の知り合い。んで、サンちゃんはマックイーンのウマソウルであるMさんとも知り合い。

 サンちゃんは俺の身体っつうか、そもそも[人の身体]にそもそも不慣れな部分があったし、普通の人間が食べる様な物を食べた事が無い。よって、この世界ではずっと幽霊として存在していた。

 

 

 つまり、サンちゃんとお互い顔見知り=ウマソウルって事。

 

 

 そしてサンちゃんの目的は良く分からないけど、空に浮かんだ大きな砂時計が関係している.........

 

 

 

 

 

桜木「.........てことでOK?」

 

 

「.........凄いな。人間の頭は高性能だ」

 

 

『ここまで来ると、傲慢な生き物なのも納得出来るわね』

 

 

マック「空に浮かんでるのはバルーンではありませんの?」

 

 

桜木「え、見えてたの?」

 

 

マック「え、ええ.........私てっきり、学園が盛り上げる為に設置した物だと.........」

 

 

全員「.........」

 

 

マック「.........お、オホホ///」

 

 

 最近ではめっきり顔を見せなくなった彼女の世間知らずさが表に出てきた。彼女は恥ずかしそうに笑いながら俺の背中に隠れて行った。正直凄く可愛い。

 こういう天然な所がまたギャップがあって「んっんん」.........ごめん。また脱線してたっぽい。

 

 

「.........彼の推察した通り、彼は空に浮かぶ[アレ]を利用して姿を消した」

 

 

桜木「.........目的は?」

 

 

「さぁね。僕の知った事じゃない。だがあの表情は.........[運命に噛み付く覚悟]を決めていた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.........だからなんだと言うんだ?僕は彼の[好敵手]だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼の思い通りになる事は、運命に身を任せる以上に見過ごせない」

 

 

「僕は、これを彼に[返す]。その為だけに今、ここに居る」

 

 

 そう言って、彼女は俺達の方を見る。俺とマックイーンはその言葉に覚悟を貰ったが、Mさんは罪悪感からか、少し顔を俯かせていた。

 

 

 .........しかし、目標は出来たものの、何をどうすればそれが達成出来るのかが全く分からない.........

 

 

桜木(また考察が飛躍しちまうが、あの空の奴。明らかに[アイツら]が何とかしようとしてる物.........つまり、[地球意志の願望器]だろう)

 

 

桜木「.........なぁMさん。サンちゃんが何をしようとしてるのか、分かる?」

 

 

『.........隠すつもりは無いわ。サンデーは―――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――己を世界の[核]にして、世界の[強度]を確保しようとしている』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 顎に手を当て思考を巡らせていた。それを、その言葉で止められる。彼女の言った言葉が余りにも常軌を逸している。

 え?これなにアニメ?アニメの話?ああ分かった分かったアレだ。とある系ね?分かるようん。新約前までは読んだ事あるからねうん。そういう事もあるよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 てなる訳ねェだろアホかッッッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どういう事だよつまり!!?世界の強度とか世界の核だとか訳分かんねェよ!!!そこまで行くともうSFファンタジーなんよ!!!こっちは地に足付けたリアルドキュメンタリーやってんの!!!それが人生ってもんなの!!!分かる!!?

 

 

 .........と、口に出したくなる気持ちを抑えてどうにか納得した。この間約二秒。ギャバンだったら変身と解除を交互に100回位出来るしRXだったらもう死んでるレベルの時間を使って納得した。

 

 

 つまり.........つまり。だ。サンちゃんはアニマの言う[人類繁栄]って言うのを止める為にあの願望器を利用して尚且つ、今後手を出せない様にこの世界の在り方を固定化させる.........って事で良いんだろう。多分。きっと。

 

 

桜木(.........クソ。でもそれがわかった所で俺にはどうしようも―――)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――レッツゴーフライ♪カケヌケテー♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――その時。俺のスマホに一本の電話連絡が入って来た。

 

 

 それがこの先、この展開を打開する物だと、何故か俺達には理解出来た。

 

 

マック「.........どなたからですの?」

 

 

桜木「非通知だ。普段なら出ずに放置だけど.........」

 

 

 周りの表情を見て決心を固める。もう今はこれしか、糸口が無い。

 俺は訳の分からないイタズラ電話では無い事だけを祈りながら、震える指で通話のボタンを押したのであった.........

 

 

 

 

 

……To be continued

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