山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜 作:ギノっち@カマタラル
諸君。俺はトレセン学園でトレーナーを営んでいる者だ。少し前まではウマ娘になって自らレースに臨んだりしてきたが、最近は元通り、彼女達をトレーニングして怪我やハプニングの事前ケアをし、レースのプランを立てる。という事を再開したつもりだ。
.........だが今は
桜木「チィッ!!!おい宗也ァ!!!ちょっと手ェ貸せやァ!!!」
黒津木「あァ!!?無理無理カタツムリなんですけどォ!!!」
今は殴り合いしてます。なんで?俺はただトレーナーをしていただけなのに.........経緯は面倒だから省く。理由は長くなるから。
何度か[アニマ]に似た奴らを倒している内に黒津木と合流。他の奴らはトイレに行ったとか言ってて正直引いた。こんな状況で単独行動するんだ.........死にたいのか?特に神威。アイツ運悪いから最悪忘れ去られて死だぞ。
.........てか数が多すぎる!!!
桜木「なんかあの厨二病爺さんから貰ってねェの!!?丸腰は流石にキツイんだけど!!!」
黒津木「丁度余ってる奴やるよ!!!そらッッ!!!」
桜木「うおっとと.........先これ渡せば良いべやァッッ!!!」
ポケットから漁った物を俺に投げて寄越してくる黒津木。[黒いキューブ]。コイツは確か能面の奴が持ってきた未来技術の結晶。[Sキューブ]だ。
黒津木「それお前用だわ多分!!!俺はコイツで良いし!!!」
長身の剣を振るいながら有象無象を蹴散らしていく黒津木。アレは明らかに[封雷剣]。ギルティ大好きのアイツからしたら使わない訳が無い。
その剣に搭載されたギミック故か、刀身に触れた相手を痺れさせて沈黙させている。
その様子を見て俺も思い切りこの[Sキューブ]を握りしめた。
―――ズシンッッ!!!
桜木「―――うぉ.........!!?」
顕現した瞬間、想像以上の重量で思わず手から離してしまった。
地面に突き刺さる大剣。無骨な物ではない。寧ろ洗練され、丁寧な試行錯誤の元で作り上げられた[機械仕掛けの剣]。
間違いない.........コイツは.........[アウトレイジ.MkII].........!!!
「GAAAA―――ッッ!!!」
[→S]
桜木「―――オラァッッッ!!!!!」
前から迫り来る敵に対し、俺は前身しながら突き刺さっていた大剣を手に取り横へ薙ぎ払った。
中々精巧な見た目だが、血が出ない。それどころか切れてすらくれない。こちらとしても何とも都合が良い事だろうか。トラウマ回避確定で激アツな展開だろう。
「GU、AAA.........!!!」
桜木「やっぱ一人は起き上がってくるか.........!!!宗也そっちは!!!」
黒津木「全員片付けてやったぜ!!!ドラマチックバトルと行くか!!?」
桜木「作品で言うならイスカだろ.........行くぞ!!!」
ガン詰めのダッシュで俺達は敵に寄っていく。相手はガードを固めて様子を見始めた。
これは好機だ。拳が届く距離まで近付いた俺は[勢殺]を使ってその慣性ごと後ろ方向に持っていきバックステップを踏む。そして俺を飛び越える形で黒津木が敵へと飛び掛かった。
黒津木「グリードセバーッッ!!!」
桜木「やるぅ!!!最新作にも返して!!!」
黒津木「ギルティの要望はアークに言え!!!」
上から長剣を叩き付ける黒津木。ガードが完全に下がった所を狙い、俺は前へと一歩進んだ。
[D(長押し)]
桜木「じゃあな」
「―――ッッッ!!!??」
[溜めダストアタック]。力の限り振るったアッパーカットが相手を強く打ち上げる。
本来ならばここで追い討ちを掛ける為に高く飛ぶが.........ここは現実世界で俺は普通の人間なのでタイミングを見計らって―――
[↓↘→+HS]
桜木「喰らいなァッッッ!!!!!」
落ちてきた所を見計らい、ジャンプをしながら左手でブローを叩き込む[サイドワインダー]。命中した箇所は頭。クリーンヒットで相手は壁まで飛んでいき、バウンドして目の前まで戻ってきた。
そのまま俺は着地し、敵は起き上がってこない.........どうやらここの司令塔は倒し切れたようだ。
桜木「はぁ.........おい宗也。もう残心しなくていいだろ」
黒津木「.........ん。つーかやるじゃん玲皇。エクストリーム剣道五段位はあるぜ?」
桜木「前から気になってたけどそのエセ剣道なんなんだよ.........アイツらも居んだろ?翔也はともかく創の墓は建ててやっとかないと」
黒津木「おっそうだな。あっそうだ(唐突)お前さっき戦ってる途中チラチラ見てただろ?」
桜木「ちょっとここWiFi飛んでてウザかった(?)」
黒津木「それマジ?スマホ忘れなきゃ良かったわ.........」
全くの大嘘である。実際はマックイーンの事を気にしていた。黒津木と合流して心配が無くなったのか、それとも愛想を尽かしたのかは分からないが、自分も出来る事を探すと言って離れてしまったのだ。
.........傍に居てくれればそれだけで俺のバフが掛かるのに.........
大剣を背負い直しながら先へ俺達は進んで行く。目的地は分からないが、まぁ黒津木が知ってるでしょ。先に突入してるんだし。
桜木「さっさとあの厨二病ジジイの所まで案内しろよ?殺さなきゃだからソイツ」
黒津木「知らねぇよ。急に発狂して離脱したんだから。もうSAN値0だしキャラロスしたんだろ。黙祷しとけ」
桜木「いーや俺は生きてる方に賭けるね。理由は俺が殺したいから」
黒津木「戦争がなくならない訳だわ.........ん?」
進んで行く通路の先で何やら強い[衝撃音]が聞こえてくる.........これ、いや、そんなわけ.........でもこの音の感じ.........
桜木「.........[銃]じゃね?」
黒津木「ほげ〜.........やばいだろそれ〜日本社会でよ〜.........玲皇先行して」
桜木「はいよ〜。切り込み隊長してきま〜す」
聞こえてきた音は明らかに銃声。これから入る空間は間違いなく激戦区。漁夫の利を狙うが如くゆっくりと気配を消して忍び寄る。
入口から顔を出してクリアリング.........したのも束の間、俺の額目掛けて銃弾が飛んできた。
桜木「あっぶなッッッ!!!??」
「あ、悪ぃ外した」
桜木「そこは当てに行った事を謝れよ!!!」
俺に誤射したのは白銀だった。そして謝って間髪入れずにスコープを覗き込み、敵に対して銃弾を当てて行く.........のだが、音に対してダメージが余りにも低そうに見える。
こちらに誤射して来た弾をよく見ると、どうやらゴム製の様だ。道理で。
まるでゾンビの様に襲いかかる有象無象に的確にヘッドショットを決めていく白銀。それだけで倒せはしないものの、怯んだ隙を逃す事なく神威がまるで忍者のように俊敏に近付き、二振りの曲刀で敵を動けなくして行っている。怖い。
神威「.........いやちょ!!!見てないで手伝えや!!!」
桜木「え〜俺疲れちゃった〜。宗也行く〜?」
黒津木「行かな〜い」
神威「おっおーい!!!ドタキャンのノリで戦闘イベント回避すなー!!!」
鼻をほじりながら壁にもたれかかっていると、敵がこちらにも押し寄せて来た。
いや。こういう雑魚敵わんさかは俺達じゃなく神威の方が適正高い。理由は無双ゲー得意だから。
だが得意ではないという理由だけで手を貸さないというのは友人としてどうなの?と言われかねないので助太刀する事にした。
桜木「創それ貸して」
神威「お、手伝ってくれるんか!!!」
桜木「フラッシュエッジ!!!」ポイ!!!
神威「ファ!!?」
桜木「あ戻ってこないんだこれ。創取って来いよ」
神威「お前さぁ!!!もう死ねよ!!!」
二振りの曲刀を適当に投げ付ける。未来の技術だしブーメランみたいに戻ってくると思ったが別にそんな事は無かった。
結局それを神威が取りに行き、群がった所を俺達三人で袋叩きにする構図で何とか場を収めることに成功した。
後は.........まぁちょちょいのちょいで何とかしました。はい。
神威「ハァ!ハァ!テメェ!!!俺を囮にしやがったな!!?」
桜木「勿論囮は創が行く」
黒津木「これはレグルストレーナーの卑劣な戦術だ」
白銀「まぁいいじゃん。片付いたんだし」
桜木「いや起き上がってくる奴が居ない。つまり司令塔がまだ他に」
白銀「何体か俺がぶん殴ってんだし混じって死んでんじゃね?」
三人「.........」
―――その時。三人は思った。
「いやそんな簡単に行くか?」と。
事実、白銀が殴った中に司令塔が混ざっており、見事一発で倒し切っていた。
しかし!!!その[かもしれない運転]の様な思考が[仇]となったのだ!!!
今この場は[願望器]の観測下にあり、そしてそれは通常よりも協力な物だ!!!
もし[願望器]が半生命体であったのならこう考えているだろう!!!
願望器(あ、さいですか。じゃあソイツの一撃でやられない司令塔出しますね)
そう!!!この場は願望器の観測下にある!!!正規の世界とやり方が違う!!!
よって!!![かもしれない運転]は[そうなってしまう運転]となってしまうのである!!!
―――ズシン.........ズシン.........
桜木「.........ほらやっぱ来たって何か〜」
白銀「はァ?俺が悪いの?じゃあ謝れよ」
神威「草」
黒津木「ふふw暴君w」
聞こえてくる足音。今までの奴らとは明らかに違う。だがまぁ何とかなるだろうと言う余裕で俺達は気にしなかった。
.........その姿を見るまでは
―――ズシンッズシンッッズシンッッッ!!!!!
ドラゴン「GURRRRRR.........」
桜木「」
黒津木「」
白銀「」
神威「」
.........それは、あまりにもドラゴンだった。鳥山ワールドで見るような愛くるしい物ではなく、寧ろダークファンタジーで見るような硬い鱗が光を反射し、目は紅一色、ギラギラとしている。
鋭い爪。口から溢れる炎の吐息と牙が見え、俺達はその場に硬直した。
「GYAOOOOOOOOOO―――ッッッ!!!!!」
「「「「う、うわァァァァァ―――ッッッ!!!??」」」」
ーーー
アニマ「う〜ん。これは想定外」
能面「な、ぁ.........」
モニターに映し出される光景に俺は思わず口を開けてしまった。何せ正体不明のドラゴンが現れた後、咆哮をしたと同時にその炎のブレスによって四人を包み込んでしまったのだ。
有り得ない。だが、[信じる]しかない.........この場ではそれこそが[鍵]なのだ。信じる強さが、[力]に直結する。そういう場なのだ。
レックス「凄い生き物だな.........僕の居た時代にも居なかった」
アニマ「創作上の空想生物だからね。星創りの根本から変えないとアレは誕生しない」
能面「.........くっ」
冷や汗を垂らしながらその映像を見守る王子。そして、相も変わらず薄ら寒い笑みを浮かべる[人の子]。顔はモニターに向いたままだが、その視線は俺に注がれている。
能面(.........コイツは一体、何を考えているのだ.........?)
ここに来て、一気に不明瞭となってきた。
俺の背後にある[屍]を見てより一層、目的不明という[未知への恐怖]がここに来て一気に爆増したのだ。
[それ]は、[アイツ]がここに突入した後暫くして現れた。標的は間違いなく俺に向かっていたが、それを無力化したのは他でも無い。[人の子]だ。
奴の言い分では、「ラスボス戦で邪魔が入ったらムカつくだろ?」という物だ。ゲーマーとしては丁寧な作品作りに感謝する所だが、これは[リアル]なのだ。そう分けられる事も出来ない。
俺は視線をモニターに戻し、彼らの状況把握に務め直した。
能面「.........!!!」
桜木「ぐっ、ぎぎぎ.........!!!」
アニマ「おお、生きてる生きてる」
そこに映っていたのは、俺のコレクションの大剣を盾として使い、何とかブレスに耐えている彼の姿があった。
他の皆も、彼の後ろに隠れて何とか凌いでいる様子だ。
助かった.........これを凌ぎ切れれば、打開の策は幾らでも練られる。
.........そう、思っていたのだが
桜木「おいっ!!!なんで俺の後ろに隠れんだよ!!!」
神威「だって死んだら危ないだろ!!?」
黒津木「玲皇!!!死んだらごめん!!!」
白銀「俺が玲皇にトドメ刺すから!!!死にそうになったら言って!!!」
桜木「クソカス共がァッッッ!!!!!」
能面「」
レックス「.........喧嘩してるね」
アニマ「.........うん。こんな状況で」
お、終わっている.........!!!こんな所で喧嘩なんて.........!!!命が惜しくないのか!!?
龍の長いブレスに耐えながらも、その激情は鎮火していくどころか、過去の因縁がどんどんと掘り起こされていく.........
黒津木「つうかさァ!!!創お前マジ俺のスラもり2のデータ消したの許してねェから!!!」
神威「ごめんって言ってんだろ!!!それ言ったら玲皇なんてお前のゴッドイーター2借りパクしてもう1本買わせられてただろお前!!!」
桜木「言わないで!!!それだけは本当に!!!でも翔也がユンゲラー逃がしてたのは本当だよ!!!」
白銀「だから逃がしてねェよ!!!逃がす前にレポート書いて消してっから!!!玲皇は妹より年下の女に手ェ出したよなァ!!?」
桜木「テメェ俺からマックイーン取ったら戦争だぞ!!!殺すぞテメェマジで.........宗也ァ!!!テメェこそ保健室医の癖してタキオンと付き合ってて良いのか!!?あ!!?」
黒津木「キっショ。童〇くんはなぁ〜臭いやりとりしかしてこないから嫌いなんだよね〜.........創はお母さんで卒業したんだっけ?」
神威「テメェ今俺に言う当てつけ無くて黙ったんだろ!!!それ言うならここで一番厄介なの翔也だろ!!!アイツ実質玲皇の孫と婚約してんだぞ!!!理解出来ねぇよ!!!」
白銀「バカ女を悪く言うんじゃねぇ!!!アイツ良い奴なんだよ本当に!!!つーかなんで悪口大会になってるわけ!!?」
桜木「下ネタ大会よりはマシだろ!!!」
白銀「チ〇チ〇ブラブラソーセージとか!!?」
桜木「はい品性―――ッッッ!!!!!」
神威「よし!!!楽しく話せたな!!!(エレクトリカルコミュニケーション)!!!」
黒津木「イマジネーションは引き裂かれてってんだよなァ!!!」
白銀「意味わかんねぇよ!!!つうかなんでお前が俺達守ってる風なんだよ!!!」
桜木「ッッッ.........だって、だって.........仕方ないだろ.........!!!」
三人「.........?」
「君 達 が 弱 い か ら ! ! !」
レックス「.........ん?」
アニマ「え?」
能面「あっ」
言った。奴はこの土壇場で[禁句]を言ってしまった。男に対して言ってはならない事を言ってしまったのだ。例え事実そうだったとしても言うべきではない事を、言うべきではないタイミングで言ってしまったのだ.........
その反応は当然.........
「「「.........ハァァァッッッ!!!??」」」
当然。[怒り]に呑まれた物となる。その怒りがやがて彼へと向き、ブレスの威力が存分に高くなってしまう。何を考えているんだ.........?
桜木「だから.........だからあの厨二病ジジイを殺さなきゃいけないんだろ!!?」
あ違うこれ完全に錯乱してる.........
最早打つ手はない。悪手を引いた彼等には退場する未来しか見えない。信じる力にも限界はある。信用とは無限ではなく有限であり、いずれは枯渇して行く物。リカバリーが出来なくなれば切り落とされる。その程度の物だ。
現に俺の信用は底を尽きた。信じられる物など何も無い.........この状況。諦めるしか―――
―――ブロロロロロ.........
レックス「この音は.........?」
アニマ「モニターからだね」
能面「.........[バイクのエンジン音]?まさか」
竜のブレスの音に掻き消されているが、確かに聞こえてきている。それはバイクのエンジン音。俺が酔った勢いで[IMUNI]を搭載改造した彼の愛車だ。
ま、まずい!!!アレも破壊されたら今度こそ俺の命どころか彼等が死ぬ!!!
能面「よせやめろ!!!」
ブロロロロロ!!!ブオンッッッ―――
―――通路から現れたその二輪車は、宙に飛び上がりながらも確かに、桜木達とブレスの間に一直線に向かって行った。
その間際にブレスに押し負け、体勢が崩れた桜木は、自らの愛車の姿を目撃する.........
「うわァァァ!!!??エンペラー!!!イデア!!!やめろォォォォォ―――ッッッ!!!!!」
自らを守る様に間に割り込むその姿を見て、桜木は今までの思い出を振り返る。ブルーエンペラーに愛バを乗せ、様々な観光地に行き、クリムゾン・イデアとは自らの孤独を風と共に置き去りにして行った。
そんな記憶がフラッシュバックし、桜木はこの一瞬、廃人と化した。
だが、それは本当に[一瞬]だった―――
―――ガシャンガシャンガシャンッッッ!!!!!
全員「―――ゑ?」
―――その光景に皆が目を疑った。バイクが[変形]し、なんと[人型]となってブレスの前に立ち塞がったのだ。
アニマ「凄いじゃないか。あんな秘密兵器を隠し持っていただなんて「知らない」.........え?」
能面「何あれ知らん.........怖.........」
アニマ「」
俺は確かにあのバイクを改造した。だがあそこまでの変形をこなせる程の手は施しては居ない。
と、いうことは、だ。アレがそうなると誰かが[信じた結果]他ならない。
では誰が?バイクが人型に変形してブレスから守り切れるなどと信じ切れる阿呆は一体、どこに居るというのだ.........?
―――ん。―――ナーさん
トレーナーさん!!!』
桜木「―――ぁ、ぇ?」
―――思考が停止し、目の前すら認識出来なかった状況から現実へと引き戻される。彼女の 声が聞こえて来た。マックイーンの声だ。
その声は、明らかにこの人型に変形した物から聞こえてきている。
どうして?どうやって?そんな事も聞けぬ間に彼女はブレスを跳ね除け、その全貌が見えて来た。
全体的に白を基調としたフレーム色だが、背部には元の紅色をした大きなウイングパーツが付けられている。
フェイス部分は完全に強化ウィンドウ。その奥から紫色のアイライトが光る。
.........間違いない。この元は[IЯIA]だ。
『私に出来る事は無いかと考え、ここに至りました。きっとあのバイクにはとてつもない改造が施されていると.........!!!』
『何度呼び掛けても反応しなかったので直接中に入って動くよう念じたら、こんな形に変形してくれたのです』
桜木(おお.........!!!)
ガシッ!!!
桜木「おお!!?」
白銀「おい今お前俺の事弱いっつったか?」
黒津木「訂正しろ。でなければ殺す」
神威「死ぬ間際まで殺す。死んでも殺す」
コイツら.........!!!俺がマックちゃんとの感動の再会(十数分ぶり)を果たしている最中に過ぎた事をグチグチグチグチと.........ッッッ!!!!!
―――ブチッ
桜木「ああぁぁぁぁぁ!!!!!うるさい!!!!!そのうるささがもう弱さ!!!!!弱さに直結してる!!!!!」
桜木「よぉぉぉぉぉわよわよわよわよわよわよわよわよわよわ!!!!!弱ァァァ―――ッッッ!!!!!」
―――ブチブチブチッッッ!!!!!
「「「上等だテメェェェ―――ッッッ!!!!!」」」
レックス「ま、また喧嘩が始まった.........」
アニマ「.........争いは確かに[発展]に貢献するけど、あのクオリティだと生産性を見出だせないね」
能面「.........全くだ」
―――画面を見ながらお互いに額に汗を浮かばせている。敵でありながらも、この一瞬だけは同じ心境に至ってしまうのは喜ぶべきか、悲しむべきか。
一つ言える事は呆れるべきなのだろう。彼等は安全圏であったあのロボットの背後から横へと飛び出て揉みくちゃの肉団子状態となり四人まとめて地面を転がり回っている。
見ろ。あのロボットとドラゴンを。困惑しているぞ。
黒津木「テメェをぶっ殺して財布からゴッドイーター2の定価格分の金抜いてくからなァ!!!覚悟しろよゲーム乞〇野郎ッッ!!!」
桜木「借りパクしてごめ―――んッッッ!!!!!」
黒津木「反省したかァ!!?」
桜木「.........Chu♡積んじゃっててゴ・メ・ン♪」
黒津木「羽賀ァァァァァ―――ッッッ!!!!!」ガバッ!!!!!
神威「オラァ正中線ッッ!!!」ドゴォ!!!!!
桜木「う、ぐ.........!!!!!」
画面では最早ドラゴンそっちのけで戦いが繰り広げられている。戦いという名の蹂躙となっているが、彼の撒いた種だ。仕方ない。
今しがた彼は黒津木羽交い締めにされ、神威のサンドバックに成り果てている。フォームは素晴らしいがやはり鍛錬をして居ないのだろう。まだ気絶出来ない程度の痛みだ。
神威「お前さぁ?俺と遊ぶ時大体格ゲーやるけど毎回俺をボコボコにしてるよな?」
桜木「.........?何がいけないの?」
神威「はァ!!?いけないだろ友達辞めるぞ普通!!!」
桜木「だって仕方ないだろ!!?君らが弱いから!!!!!」
神威「ふざけるなッッッ!!!!!」ドゴォ!!!!!
桜木「おごぉ.........!!!」
鳩尾と胸骨に両腕の縦拳を捩じ込まれる。流石の俺も胃液を逆流させてしまうが、まだまだ地獄は終わらない。
意識が痛みで朦朧としている中、不意に髪の毛を鷲掴みにされる。白銀だ。奴に頭を捕まれ視線の向きを変えられる。その先にはドラゴンと戦っているロボット。つまり、マックイーンの姿があった。
白銀「お前はそうやっていつもいつも一人で完結させようとして失敗してんだろ!!!いい加減気付けよバカ!!!」
白銀「俺らは別に弱いって言われた事にキレてんじゃねぇの!!!自分の弱さを棚に上げてるテメェにキレてんの!!!お分かり!!?」
桜木「っ、お前にそんな分かったような事を言われる筋合いは無いッッッ!!!!!」ブンッ!!!!!
白銀「いいやあるね!!!」
俺は何とか拘束を振りほどき、白銀に殴り掛かる。前のめりになって何とも不格好になってしまったそれをコイツは難なく避け、それどころか背中を蹴り付けて俺を転けさせる。
白銀「俺らがここに居んのはなァ!!!テメェの頭ん中で考えてる事を知る為に来てんだよ!!!全部終わった直後じゃねぇと言わねぇし、時間たったら忘れたの一言で済ませっからな!!!」
桜木「っ、そ、れは.........」
白銀「その点で言やぁあのジジイも一緒!!!要点だけ言って内容言わないのマジで!!!カスだよ!!?人の事見下してんだろ!!!」
白銀「それがお前の言う[大人]って奴なのかよッッ!!!」
桜木「っ!!!」
俺の攻撃は全て受け流し避けられ、白銀の攻撃は全てヒットしている。その事実だけでも頭が沸騰するほどの怒りが増していく。それはつまり、俺が気絶していないという事実他ならない。
コイツがその気なら一撃で俺の意識を刈り取ることすら出来る。それをしないという事は手加減されているという事だ。
しかし、それ以上にコイツの言葉が真実だった。心の奥底で俺は人を信用せず、そして表面上だけを見てその裏側を考察するだけして見ようともしていない。その事を気付かされるには充分だった。
白銀「周りを見ろよ!!!もっと深く!!!人に興味を持てないんだったら俺らが教えてやる!!!流し聞きでも聞かないよりマシだろ!!!」
桜木「っ、翔也.........!!!」
俺はバカだ。何度言われても人を信用しきれずに一人で何とかしようとしちまう。周りを巻き込んでいる様に見えて、その実一人で抱え込んじまっている。前と比べりゃ、今の方が人として最低な人間だ。
.........でもまって?流石に神様がどうとか未来の世界がうんたらとか、挙句の果てに世界の危機の話をされても困らない?俺、トレーナーだよ?周りもそうだし、そうじゃない人は大抵ティーンのウマ娘達よ?
俺悪くなくない?話せないの俺これ悪くないよね!!?
黒津木「言えよほらッッ!!!従順になるまでやるからなァ〜?」
桜木「あ分かったも分かったよ!!!」
絞め落とす勢いで俺の首を極める黒津木。必死にタップをしながら目を開けると、いつの間にかドラゴンとロボット側の戦いが形勢不利に傾いていた。
口から炎の弾を吐き出しながら縦横無尽にあの巨体が巡っている。何とかそれを避けている状態だ。
『くっ!こんなに飛び回られては.........!!!』
桜木「っ、マック―――(いや待て、ここでマックイーンの名前を出したら[戦場で女の名前を出す奴はなァ!!!]って絶対難癖付けられる.........ここは―――)
「中居さァァァん!!!中居さァァァ―――んッッッ!!!!!」
全員「誰っっっ!!!??」
―――桜木の発言に全員が困惑した。この場に居る三馬鹿も、マックイーンも、果てにはドラゴン。そしてモニター越しの三人もだ。
その隙を突き、彼はロボットに向かって飛び込んだ。この[叡智の結晶]には必ず、まだ隠されている物がある。
そしてそれを作り込んだのがあの男ならば、それを用意しているだろうと言う信頼。いや[願い]と言って良いだろう。
その手がそのロボットに触れた瞬間。その[願い]は現実味を帯び始め、そして桜木をそのまま取り込む事となった―――
『と、トレーナーさん.........!!?』
桜木「へへ、やっぱりな.........ロボットはやっぱ人が乗らなきゃロマンじゃないもんな」
「GURRRRR.........!!!」
桜木「さァ来いドラゴン!!!さっきは生身だったから負けたんだ!!!これだったらお前なんかにィィィ―――ッッッ!!!!!」
ドゴ!!!!!
桜木「ぐわぁぁぁぁ!!!??」
白銀「は?」
黒津木「くたばれ」
神威「歩いて帰れ」
―――ドラゴンがその前足でロボットと一体化した彼を殴り飛ばした。それを見て全員が冷ややかな目で彼を見ている。
しかし、すぐさま空中で体勢を整えて向かっていくのは驚いた。
能面「これが、[願望器]の力なのか.........?」
アニマ「そう。[信じる者は救われる]。その言葉通り、アレはその思いに応え、呼応する物だよ」
桜木「ブンデスごめんなさい!!!(被弾2)」
桜木「野郎見てろ.........シンボラーッッッ!!!??(被弾3)」
レックス「.........その割には攻撃当ててないんだけど」
ロボットの外骨格を手に入れ、ウィング部分からのブースターによって強い推進力を持った突撃を何度もしているが、避けられ、迎撃され、挙句の果てには思考が無いように思えるドラゴンから強烈なカウンターを受けている。
おかしい.........[当たる]と思えば100%その通りになるのがここの常識。そうならないという事は.........まさか!!?
能面「コイツ何も考えていないのか!!?」
桜木「くっそォォォォ!!!!!ぎゃ!!!何する!!!やめろォォォォ!!!!!(拘束)」
白銀「どうする?助ける?」
黒津木「いや俺達[弱い]っぽいよ?」
神威「悲しいけどこれ、戦争なのよね」
―――両前足を使って器用に俺を掴むドラゴン。目の前には大口を開け、今にも火を吹きかけてトドメを刺そうとする姿が浮かぶ。
や、やばい.........誰か.........誰か援護を!!!
そんな思いも虚しく、ドラゴンの口から火球が放たれてしまい、俺の外骨格となった部分が爆発した
―――ガシャンッッッ!!!!!
『止めなさいッッッ!!!!!』
「GAAA!!!??」
その爆発を目眩しにし、間一髪で[ウィングパーツ]の部分が分離し、ドラゴンに突撃して行く。
もう一発放たれる前にその顎に直撃し、俺は拘束から放り出される形で開放された。
クソ.........情けねェ.........!!!マックイーンに良い所見せれるチャンスなのに.........っ!!?
「GURRRR.........!!!」
『っ、離して.........!!!』
桜木「っ!!!テメェェェェ―――ッッッ!!!!!」
分離したウィングパーツがドラゴンに捕らえられている。つまり、いまあの手の中にマックイーンが居る。その事実が今、俺の情けなさを全て原動力に変える事となった。
大剣を持ち、そのまま突進する。ドラゴンの肉に突き刺さり、その痛みによって拘束を解いた。
だが、それでは終われない。そのまま地面に足を着き、飛び上がる勢いでドラゴンを切り上げ空中に舞い上げた。
「GUAAAA―――ッッッ!!!!!」
―――けたたましい咆哮を呻き上げながら翼をはためかせ宙に陣取る竜。掴まれたウィングパーツは背部に戻って行った。そして、竜の標的は間違いなく彼になった。
息を呑む中、また口に炎の渦が発生し、火球が彼目掛けて飛んで行く。それに対し、何の抵抗もすること無くその火に飲み込まれ爆発してしまう。
アニマ「.........まだの様だね」
能面「なに.........?」
レックス「.........!!!」
煙が晴れ、そこにあるはずの残骸が残って居ない。その事に竜すらも驚きを隠せずに居る。
視線を動かし彼を探すと、その背後に姿があった。だが、動きはしない。
これ好機と言わんばかりにまた火球を放とうと口を開ける竜。しかし、その視界の端に映った者に驚愕する。
[彼]だ。同じような見上げる構図でただドラゴンを見る彼が居る。右側面。そして左側面にも存在している。遂には、先程火球を打ち放った場所にもいつの間にか復活を果たしている。
アニマ「[分身]とはね。どう願ったのかは分からないけれどいい戦略だ」
能面「.........いや違う。アレは」
分かる。分かってしまう。アレは[分身]なんかではない。そんな高等的な物では無い。もっと簡潔的でありながら、相手に圧を掛ける事に特化している物.........それを視覚的に、相手に知らしめている.........
そう。アレこそ基本でありながら徹底するのが難しい技術。[
今、何を当てればゴールになるのか。その選択肢を竜に対して提示している.........!!!
「GUUUU.........GU!!?」
白銀「あ悪い!!!目に当てちまった!!!」
「GUAAAA!!!.........GA.........!!?」
白銀の援護射撃により、片方の目が負傷してしまう。その結果、地面だけでなく死角となった方向の宙に分身。いや、[残像]が発生する事となった。
最早己の死を待つのみ。そんな状態になったが竜は足掻く。縦横無尽に空を駆け、残像達に火球を放って行く。
しかし、無差別的では無い。どこか確信を持ってその火球を放ち続けている.........
アニマ「.........ふむ。[熱源探知]だね」
レックス「熱源.........?」
能面「爬虫類種の一部。蛇等に見られる器官を使う。種族的に目が悪い為に、獲物を索敵する為の器官だ」
アニマ「と言っても、あの竜は目を使っている。器官としての役割は[子守]の為だろうね」
能面「.........それでも、攻撃は当たっていない」
どうやらあの残像に本体が紛れているらしいが、竜の様子を見るに被弾はしていない。先程とは偉い違いだ。お母さんにコントローラー渡したのか?
爆発による煙によって下が見えなくなっている。熱源探知によって捉えては居るのだろう。竜はただじっと一方を見つめその時を待っている。
.........そして、その時は来た。
―――ボウッ
スラスターの音。それに反応した竜は背後へ振り向いた。ようやくしっぽを掴んだと言わんばかりに、その表情からは嬉々とした物を感じた。
口いっぱいに火を溜め込み、今か今かとその時を待ち侘びている。
煙が空に向かって膨らみを帯びて行き、やがて下からその姿を現した。
全員「―――!!!」
だがそれは、分離した[ウィングパーツ]だった。
またか。竜はまるで怒りのままに翼をはためかせ、その飛行を阻害する。それに負けじと旋回上昇で無理やりにでも竜よりも高低差有利を付けて行く。
痺れを切らしたか、はたまた怒りが限界を超えたのか。竜はその口に溜め込んだ火球を放とうと大きく首を後ろにしならせた。
それが、[決定打]となった。
その瞬間。下からまた煙が膨れ上がる。先程よりも大きく、そして速かった。
「GUR!!?」
桜木「テメェを倒す!!!今!!!ここでェッッッ!!!!!」
飛び上がった人型は大剣ではなく、左手を突き出して居る。その中心には強いエネルギーが光を発している。
[ブーストバンカー]。あの外装のモデル元となった機体の数あるカスタムパーツの一つ。その兵装が装備されている左手で竜の顎を掴み取り、無理やり口を閉じさせた。
「落ちろォォォォ―――ッッッ!!!!!」
叫び声と共に、竜がその掌から発生した高濃度エネルギーによって爆発する。跡形も無くなるというのは非現実的ではあるが、彼がそう願ったのだろう。
辺りを確認する事はせず、そのままウィングパーツと連結し、まだ煙の立ち込める地面へと彼は戻って行った.........
ーーー
桜木「ふぅ.........わっとと!!」
地面に降りた俺は一息つく様に息を吐き出した。それに合わせロボットも俺を体外に出ろと言わんばかりに前面の部分が大きく開く。
俺よりも一回り大きいから飛び降りる形でそこから降り、頑張ってくれたコイツを撫でてやる。
桜木(.........サンキュー)
『はぁ〜.........何とかなりましたわね』
中に入っていたマックイーンも一足遅れて外に出てきてくれた。最後のあれは肝が冷えたが、結果無事に戻ってきたのでよしとしよう。
さてと.........これが中ボスだとするなら、この後は大ボスだ。この人数なら何とか出来そう「おーい」.........?
神威「そっち終わった?俺達[IMUNI]探しに行きたいからさ、そのロボット貸してくんね?」
桜木「.........は?お前、これから一緒にボス倒しに行くんじゃ.........」
黒津木「?そんなこと一言も言ってないけど?」
白銀「俺達ジジイにAIの奴探せって言われてっから。行くぞロボット」
「了解シヤガリマシタ」
桜木「え!!?あの!!!ちょっとぉ!!?」
俺の制止も虚しく、アイツらはロボットを引き連れて離反していきやがった。あのすんません。ラストダンジョンでキーファ化はルールで禁止スよね?
『仕方ありませんわね』
桜木「君はなんでそんな受け入れ早いの!!?」
『もうトレーナーさんとそのご友人の方々のせいで慣れましたから。恨むのならご自分の友達作りを恨んでくださいまし』
桜木「ぐぎぎ.........」
何一つ反論できる余地が無い。あんなのでも一応親友だ。友達の作り方に関しては後悔はしていない。
.........仕方が無い。そう割り切った俺は溜息を一つ吐き、先程のドラゴンが現れた最奥に目を向ける。暗い通路だが、その先に階段があることに気が付く。
桜木(.........これじゃマジで、ラスボス前の中ボスって感じだな)
あのドラゴンは前座。本命が奥に居る。そう予感せざるを得ない程の雰囲気が漂ってきている。
臆するな、自分をしっかり持て.........もう、[アイツ]とどう向き合うかはしっかり決めただろ?
だったら、それをぶつけるだけだ。
そう、俺は胸に強く誓いを立て、その廊下を突き進み、階段を登っていくのであった.........
……To be continued