山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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大変お待たせいたしました。
現実社会に揉まれて書ききるのに時間を要しました。
あとアレクとエンドフィールドが悪いと思います。


奇跡の炎よ、燃え上がれ

 

 

 

 

 

 歓声が湧き上がる場内。人々の目の前に居るのはレースに勝ち続けたウマ娘達。各種コースを制したウマ娘の連続ライブが終わりを迎え、レース参加者は袖へと帰って行った。

 

 

桐生院「ライブお疲れ様です」

 

 

ポッケ「ほんっとだぜ、ったくよぉ〜.........」

 

 

 帰ってきた皆さんはやはり疲労困憊の状態。それもそう。白熱したレースをした後に出走コース事のウイニングライブを行うというのは大変な事。

 いくら各々の出番まで待機時間があると言っても、全員が出て終わる頃にはナイターレースが終わる時間とほぼ同じ。学生の若さがあるとはいえ、無茶な話だとは思う。

 

 

タキオン「.........だが、幸運にも本戦。つまり[アオハル杯決勝]までに時間はある」

 

 

桐生院「っ、そうですね。本戦は12月末.........約三ヶ月程。長くも無く、短くも無い」

 

 

 .........アオハル杯が盛んに行われていた頃と今とでは環境が違う。学生を取り巻く環境だけでは無い。事レースに置いても、コースの改善により最近ではスピードが出る様な整備も当時より進んでいる。

 それが返って、彼女達の脚の負担となっている.........

 

 

桐生院(.........[彼]なら、何を考え、どう行動するんでしょうかね)

 

 

 現状に抱く不満。胸の内に溜まるそれを押し殺し、ただ前に進む。それが[桐生院 葵]という人間。トレセン学園のトレーナーとして、その在り方を受け入れる。

 でもそれが、果たして生徒の為になるのだろうか.........?彼女達の自由の為に行動を起こした東トレーナーや、彼女達の身体の為に、制度を改革しようとする樫本理事長代理の方が、大人としては立派な在り方だと正直考える。

 

 

 先の見えないこの道筋。いつの間にか隣に立ち、私の心情を図り損ねたミークが首を傾げたのを見て正気を取り戻す。

 .........やり方を知らない物が行動を起こせば、それは必ず道を踏み外した物になる。桐生院家に伝わる、戒めの様な家訓。

 

 

 今はそれを胸に、私は疲れた皆さんを休ませる事を優先した.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ボウッ

 

 

 ―――ドゴォ

 

 

 ―――バァン

 

 

 混ざり合った炎が飛び散り、辺りを明るくする。殴り殴り返され、されど致命的な物は無い。空気に触発され、肉体から離れた炎が酸素を取り込む。本物では無い炎が、[命]を吹き込まれている。

 

 

アニマ(何故だっ.........!!!あの[炎]は一体何なのだ.........!!!)

 

 

 相手の攻撃を受け止めたつもりだが、何故か身体が強く押された。足の裏を地面に擦りながらも体勢を崩さなかったのは不幸中の幸いだろう。

 だが真に理解不能なのはあの[炎]だ。人の本質にある物。そこに必要な[足りない部分]を感じさせる[日色の炎]。それが何故.........

 

 

アニマ(.........っ!そうか![願望器].........!!!)

 

 

アニマ(人の側面.........本質の[外側]だけを[取り込んだ]と言うのか.........!!!)

 

 

 何とも器用な事を.........!!!だがこれで辻褄が合う.........!!!奴は人を[外面]で判断している.........雰囲気や場の流れで、意思には介さない行動を見て心を揺れ動かす者だ。

 人の願いなぞ.........そんなものでは無いというのに.........っ!!!

 

 

桜木「おいどうしたァ!!!待ちゲーして勝てるほど名人様なのかよ神様ってのはよォ!!!テメェ様はプロゲーマーなのかァ!!?」

 

 

アニマ「っ、ほざくなァ!!!」

 

 

 奴は明らさまな嘲笑の笑みを浮かべ、そして人差し指を振って挑発をしてきた。神を愚弄し見下す者には容赦はしない。

 少し離れた距離だが、この程度なら人が反応する速度以上の速さで攻撃する事が出来る。

 

 

 その推測通り、奴はたじろぎながら半歩後ろに下がる様子を見せた。その隙を逃す事はしない。

 その勢いのまま爪を立てて奴を切り刻む.........!!!

 

 

桜木「ぐっ.........!!!」

 

 

アニマ「.........っ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――バァレてンだよォッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アニマ「なっ―――」

 

 

 姿勢を低くし、避けられない腹部へ攻撃した。例え避けられたとしても体勢を崩させ、そのまま攻め入る事が出来た選択をした。そのつもりだ。

 しかし奴は、僕のその姿勢と同等の低さにまで腰を落とし、半身から腕を交差した。

 その逆手で僕の爪の攻撃を、指の間に指を入れこみながら握り締めることで攻撃を無力化してきた。

 

 

 それだけじゃない。僕と融合を果たした[願望器]から流れ込んできた情報。[→↓↘+C]という文字列を認識したと同時に、奴に強く引き寄せられる。

 

 

桜木「うおりゃッッ!!!」

 

 

アニマ「ぐっ!!!はぁ.........!!?」

 

 

 奴に手を引かれ宙に浮き、がら空きになった腹部。そこに肘を強く突き立てられる。そのまま回転を加えながら飛び上がり、その手で炎を纏った裏拳を喰らわされる。

 

 

 

 

 

能面「っ!間違い無い.........アレは、[草薙流古武術].........!!!」

 

 

『な!!?古武術っ!!?』

 

 

 ―――先程の動きを見て一瞬で理解した。奴の動きは正にそれだった。一子相伝と言われる[祓いし者]の炎。そして代々受け継がれた型。それを今、目の前で見る事が出来ている.........!!!その感動に思わず俺は目頭を熱くさせてしまった。

 

 

能面「先程の技は[百式・鬼焼き]。技の出始めの隙を逆手でフォローしつつ、相手の鳩尾に肘を突き立て、がら空きとなった顔面に跳躍と回転の勢いを乗せた裏拳を―――」

 

 

『.........つまり、[ゲーム]の技って事ですわね?』

 

 

能面「!う、うむ.........」

 

 

 止まらなくなった解説に彼女は呆れた結論を叩き付けた。俺は肯定する事しか出来なかった結果、彼女は呆れを深めた溜息を吐いた。

 

 

 だがしかし、本当に素晴らしい事なのだ。今彼は[メジロ武術]の[勢殺]を取り入れながらも、そちらに引っ張られる事無く、見事な調和を果たしている。

 次に彼がどう動くのか.........ただそれだけを俺は凝視し続けていた。

 

 

 

 

 

 [↓↘→+A]

 

 

桜木「喰らえェッ!!!」

 

 

アニマ「っ、!!?くっ.........!!!」

 

 

 ―――予想外のダメージを受け取り、立ち上がるのに時間が掛かった。その間に奴は掌に炎を灯し、それを[薙ぎ払う]。

 地面に着火した炎は物理法則を無視した様に地面を走りながら僕の方へと向かってくる。立ち上がるのを見計らったかのように出された炎。

 しかし幸い、ガードする事が出来た。

 

 

アニマ「―――っ!!?居ない!!?」

 

 

桜木「[こっち]だぜェッッ!!!」

 

 

 [大ハイジャンプ中↓+C]

 

 

アニマ「なっ―――がっ.........!!?」

 

 

 炎が晴れた先に奴は居なかった。その直後、高く跳躍した奴が僕の頭上目掛け両手を組んだ振り下ろしを放った。

 咄嗟の事の上、そんな行動を予想出来なかった僕はそれを避ける事もガードする事も出来ずにそれを喰らう。

 

 

 そして後ろにたたらを踏む僕の背後に降り立った彼はそのまま猛攻を仕掛けてきた。

 

 

 内回し蹴り。カカト落とし。そして頭に流れてきた[↓↘→+D・D]という文字列と共に繰り出される飛び上がりながらの交互二連蹴り。それによって僕の身体は地面を離れる。

 

 

 

 

 

 [←↓↙+B]

 

 

桜木「ィィやッッッ!!!!!」

 

 

 ―――着地と同時に腰を落としながら身体を強く捻じる彼。打ち上がったあの男性が落ちて行くのが遅く感じるのに対して、彼のその後の動きは明らかにスピードが乗っていました。

 完璧なタイミングを見計らい強く圧縮された身体を解放して行く。捻れからの解放、その勢いによって軸となった足を使って前へと小さく飛び上がる。

 軸足となっていた脚は勢いの終着点となり、身体の回転の勢いをそのまま乗せたそれは鞭のようにしなり、重力に従うままのあの人へと叩き付けられます。

 

 

能面「[七拾五式・改]ッ!!!そして空中で身を翻し回し蹴りを打ち落とす[七百七式・独楽屠り(こまほふり)]。通称[R.E.D.KicK]ッッ!!!」

 

 

『違います!!!あんなアクロバティックな古武術は存在しません!!!少なくとも日本には!!!』

 

 

能面「ええい構わないではないか!!!ロマン全振りの設定とモーション!!!どこに文句の付け所がある!!!」

 

 

 大有り。大有りです。あんな大振りな攻めをお母様に見せた日にはあのニコニコ顔でずっと問い詰められるに決まっていますもの。

 

 

 .........ですが。

 

 

桜木「ボディがッッ!!!がら空きッッ!!!」

 

 

アニマ「ごはッ―――」

 

 

桜木「燃えろォッッ!!!」

 

 

 大きく踏み込む形で勢いを付け、拳を腹側部に叩き込む。それによって下がった頭上を捉えるようにまた一歩進み、前進した運動の力を使った肘の打ち下ろし。

 地面へ倒れ伏した男性の首を肘で攻撃した方とは逆の手で掴み上げ[日色の炎]が大きな爆発を見せました。

 

 

 あんなに生き生きとしている彼を見るのは、もしかしたら初めてかもしれません。自分の理想を体現し、好きな様に進んでいく彼の背中は、そう思わせるほどとても頼もしい物でした。

 

 

 

 

 

アニマ「―――図に乗るなァァァ―――ッッッ!!!!!」

 

 

桜木「うっ、く.........!!!」

 

 

 ―――怒りに任せた気流が吹き荒れる。彼を含めたこの場に居る全員が両腕で顔を守る様にする。

 グツグツと煮え滾る怒り。それを表すかの様にアニマの周囲には[紫炎]がまるで[シャボン玉]の様に球体として複数浮かび上がる。

 

 

桜木「.........へっ。やるじゃねェか神様よォ。こっちもようやく身体が温まって来た所だぜ」

 

 

レックス「.........っ!気を付けて!!!さっきまでと雰囲気が違うッッ!!!」

 

 

桜木「な―――っ!!!」

 

 

 浮かんでいた無数の球体が彼目掛けて飛んでくる。彼は足を器用に動かして位置を変えることで何とか避けている物の、その癖や傾向を完全にアニマに見られ続けている。

 それは彼にも分かっているのだろう。このまま避け続けるだけでは情報を渡しているだけ。いずれ来る不可避の攻撃によってさっきまでの優勢さは無くなってしまうだろう。と。

 

 

 意を決した彼は炎を灯した掌を掲げ始めた。

 

 

 [↓↙←↙↓↘→+AC]

 

 

桜木「―――ぁぁぁああああああッッッ!!!!!」

 

 

 彼の全身が炎に包まれ、[日色]に染まる。その熱に触れた紫炎の球体はこれまた[シャボン玉]の様に弾けて消えて行く。

 

 

能面「あれはッッ!!![裏百八式・大蛇薙(おろちなぎ)].........ッッッ!!!??」

 

 

能面「しかもただのそれではない!!!全身に炎を滾らせ、それを全て薙ぎ払う超高火力必殺技.........!!![MAX大蛇薙]だッッ!!!」

 

 

『こ、古武術なのに英単語が着くんですの.........?』

 

 

桜木「―――喰らいやがれェェェッッッ!!!!!」

 

 

 消えて行く自らの紫炎に焦ったのか、アニマは上半身を前へと大きく倒しながら素早く接近していく。

 それを視認した彼は天に掲げた手を一度引き、身体全体を覆っている炎を一点に集め始める。

 

 

 そしてその全てを放出するように、腕を右から左へ薙ぎ払った。

 

 

 アニマが生み出した精錬された球体とは違い、荒々しくありながらも凄まじい圧を感じるそれを、彼は放ったのだ。

 

 

桜木「へ.........―――っ!!?」

 

 

アニマ「ガァッッ!!!」

 

 

全員「なっ.........!!!??」

 

 

 とてつもない威力があったであろうそれに、アニマはガードをするどころか突っ込んで行った。

 密度の高い炎の中を無理やり駆け抜けて行き、彼の腹部に強烈な一撃。飛び膝蹴りを深々と入れていく。

 

 

桜木「っ、ぁ...ぐっ.........!!!!!野郎ォ―――」

 

 

アニマ「遊びは終わりだッッッ!!!!!」

 

 

桜木「っ!チィッッ!!!」

 

 

 一瞬意識を失い掛けながらも、地面に倒れたまま転がって行く衝撃で何とかそうならずに済んだ。それでも彼はアニマの状態を確認するのに立つことが出来ず、身を捩らせる事で視線を合わせていた。

 しかし、その手を休める事はしない。アニマはその選択肢を取った。その瞬間に彼は何とかして気力を振り絞って即座に立ち上がって見せるものの、力の入れ方のバランスが歪となっており、膝を着きそうになる。

 

 

 迫り来るアニマの攻撃。初撃の時点で彼のガードは崩された。突進の勢いを乗せた掌底突きがそうさせたのだ。

 

 

 その後は惨たらしい物だった。腹部。脇腹。大腿。鳩尾。首筋。上腕部。そして顔面。順番に殴り、そして蹴りつけて行く。最早立っている事も奇跡に等しい程の猛攻だった。

 

 

桜木「か―――はッ―――」

 

 

 彼の瞳が虚ろとなり、身体は意識が抜けて行くように脱力していく。そしてそれを逃すアニマじゃない。その喉元に両手を伸ばし、掴みあげる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――バァァァンッッッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一瞬の静寂の後、アニマが掴んだ両手から紫炎の爆発が起こる。先程の飛び膝蹴りとは比べ物にならない威力により、彼は宙に舞い、今度は抵抗する様子もなく地面へ転がって行った.........

 

 

『っ!!?トレーナーさんっっ!!!!!』

 

 

レックス「ッ!ダメだッッ!!!君が行った所で何にもならないッッ!!!」

 

 

『いやっ!!!離して.........!!!離してくださいっ!!!トレーナーさんが.........!!!』

 

 

 向かっていこうとする彼女を[鎖]で繋ぎ止め、何とか制止する。涙を流しながら乱れる彼女を見て、僕自身の無力さを痛感する。

 

 

「そう。君は手出し出来ない」

 

 

レックス「.........っ」

 

 

アニマ「一度僕の依代となったその魂は、どんなに頑張っても刃を向ける事は出来ない」

 

 

アニマ「今回のトンチ地味た顕現は驚いたけど、所詮はその程度だ」

 

 

 先程までの荒れ狂った調子を忘れた様に、アニマは元の掴みどころの無い様子に戻っていた。

 それでもその歩みは止まらない。紫炎を纏いながら横たわる彼の背中へと向かって着実に、確かな[殺意]を持って近付いて行っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――く」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アニマ「.........ん?」

 

 

全員「ッッ!!!」

 

 

桜木「―――ンフフフフ」

 

 

 彼へと進んでいたアニマの足が止まる。その理由はただ一つ。彼が意識を取り戻したからだ。

 いや、まだそれがどうかは分からない。声こそ出している物の、それは今まで彼から聞いた事の無い程に含みのある、不気味な笑い声だった。

 

 

アニマ「.........ククク、遂に壊れたかい?無理もない。人々の[願い]。その集積を味わってまともで居られるなんて、有り得ない話だからね」

 

 

『っ!!トレーナーさん!!!』

 

 

能面「待て.........!!!様子が変だ.........!!!」

 

 

 横たわる彼に掌を向けるアニマ。それを見て今度こそトドメを刺される。そう思った僕達は思わず前に出ようとした。

 それを制止したのは他でも無い。未来の彼自身である能面だ。その額に汗を滲み出させながらも、それが嫌な物では無さそうなのが何故かわかった。

 

 

 そして、彼の言う通り。[桜木 玲皇]はゆっくりと身体を座らせ始めながら口を開いた。

 

 

桜木「―――ああ、おかしいって思ったんだよ.........腹痛くなっちまう.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら俺ぁ、テメェをちゃんと[コケ]に出来そうだって事になぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アニマ「っ、ッッッ!!!!!」

 

 

 ―――ガシッ

 

 

アニマ「な、ぁ.........ッッッ!!!!!」

 

 

桜木「.........もっと分かりやすく言ってやろうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テメェのパンチが、くすぐってェんだよ.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――奴は跪きながらも、振り抜いた僕の拳を受け止めて不敵な笑みを浮かべた。身体には未だ紫炎が鎮火せずに燃え続けていると言うのに、それを意に介して居ない。僕はその姿に思わず半歩後ろに後ずさった。

 

 

桜木「はぁ......はぁ.........さぁ、そろそろお互い本気を出して.........」

 

 

桜木「決戦も決戦.........[超最終決戦]と行こうじゃねェか.........!!!」

 

 

アニマ「.........ククク」

 

 

アニマ「クハハハハハッッッ!!!!!」

 

 

アニマ「そんな様相でまだ本気じゃないというのかい?面白い冗談を言うねっ!」

 

 

アニマ「呼吸もまともに出来ない今の君がッッ!!!笑わせてくれるよッッッ!!!!!」

 

 

 目の前に居る男の瞳はまだ折れない。その強い意志を感じる反面、身体は既にボロボロでいう事も効かない。

 そんな男に臆する事は何も無い。僕はもう一度手を天に掲げ、手刀を勢い良く奴の首へ向けて叩き付ける。

 

 

 空気の摩擦により火が付き、紫炎がこの手を覆う。防御する事など出来ない。したとしてもそのまま燃え広がり、奴は今度こそ火だるまとなって床にのたうち回り、やがて絶命する。そう確信していた。

 

 

 .........だが。

 

 

 ―――ガシッッ!!!

 

 

アニマ「っ!!?な、ぁ.........」

 

 

桜木「おいおい.........そりゃさっき防がれたろ.........ワンパターンマンかよ.........」

 

 

アニマ「―――ッッッ!!!!!」

 

 

 僕の予想に反して、奴はこの手を受け止めた。それだけじゃない。この手から先に炎が全く[燃え広がらない]。理解が出来ない現象が目の前で起こっている。

 浅はかなのは理解している。だがそれでも、それが有り得ないと感じでしまった僕は最大火力で逆の手の手刀で、彼の胸を貫こうとした。

 

 

 しかし、それもまた同じ様に防がれてしまう.........

 

 

アニマ「っ.........!!!」

 

 

桜木「.........ククク」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――テメェの[誤算]を教えてやろうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アニマ「何ィ.........!!!」

 

 

 不敵な笑みを浮かべ、僕の両手を掴みながらゆっくりと立ち上がろうとしてくる。どんなに押し戻そうとしても決してその膝は折れようとはしない。

 そして、奴の身体に消えずに残っていた紫炎は徐々に[変貌]を遂げて行く。赤くありながら、淡さを持つ透き通った[炎]へと.........

 

 

桜木「さっきの話だ.........テメェの言う下らないお遊戯。つまり[ウマ娘のレース]の後、ある一人のウマ娘が歌を歌った」

 

 

桜木「それを聞いた奴らは例外なくこう思った」

 

 

桜木「[いつまでも、誰もが幸せであるように].........てな?」

 

 

桜木「少なくともこの[日本]に今。[時間]に縛られてる奴は人っ子一人居ねぇ」

 

 

桜木「テメェの言ってた[争って発展]する気なんざ、さらさらねェっつってんだ」

 

 

 ―――まさか。そんな事は無い。そう驚愕しながらも目を凝らして彼を見る。

 

 

 彼の[底なしの願望器]。器としての役割を最早真っ当する事が出来ないその中に、延々と注ぎ込まれている[人の願い]。その流れが確かに見えた。

 それが今、奴の[原動力]となって力を与えているというのか.........!!!

 

 

アニマ「ッ!そんな上面の[望み]がッッ!!!人類の累積に[敵う]と思うなッッッ!!!!!」

 

 

桜木「思っちゃうねェッッ!!!人間はそういう生き物だからッッ!!!抱いた[希み]は[叶う]って信じちまうんだからなァッッッ!!!!!」

 

 

 足を踏み締め、遂に奴は僕と同じ[舞台]へ再び戻ってきた。不愉快だ。実に不愉快極まりない。

 

 

 そんな僕の不愉快さとは裏腹に、現状はお互いの手を握り締めながら、力比べへと移行して行った。

 

 

 

 

 

ムサシ「.........流れが変わった」

 

 

シロ「?分かるの?」

 

 

ムサシ「幾年[手合わせ]をしてきたと思うておる?妾には相手が誰であり、自分が直接その場に立ってなかろうと分かる」

 

 

 ―――水晶から見る戦い。ここからでも分かる。小僧は[覚悟]を決めた。歯を食いしばった表情からもよく見て取れる。

 そしてその覚悟は[死ぬ為の物]では無い。[生きる為の物]だ。

 

 

ムサシ「小僧。見せてもらうぞ?」

 

 

ムサシ「貴様が、辿り着いた境地を―――」

 

 

 

 

 

アニマ「僕に牙を剥くのかッッ!!![人の子(愚か者)]がァァァァ―――ッッッ!!!!!」

 

 

桜木「エンドロールにゃまだ早いぜェッッ!!?[他力本願野郎(クソガキ)]―――ッッッ!!!!!」

 

 

 ―――お互いの押し出す力の影響でアニマ。桜木共に膠着状態から離れて行く。足裏が着くと同時に前へ詰めるのも同時。最早[鏡合わせ]と言っても過言では無い。

 アニマは腕を引き、その前へ進む力を全て拳に乗せる。桜木はそれを防御すること無く、甘んじて受ける事を選択した。

 

 

アニマ「.........ッッ!!?」

 

 

桜木「.........っ、ッッッ!!!!!」

 

 

能面「っ!!!アレは[仰け反り]じゃないッッ!!!あの[構え]は.........ッッッ!!!!!」

 

 

 脚を大きく開き、倒れまいとする桜木。両腕を大きく開き、傍から見れば繰り出された拳の威力に打ちのめされたと見て取れるだろう。

 だがしかし、見る者が見ればそれは[構え]とも取れる。攻撃に移すための予備動作。

 

 

 能面の目に映るその[虚像]と[構え]が重なった瞬間。桜木ははニヒルな笑みを浮かべて見せた―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 [→↘↓↙←→↘↓↙←+AC]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――遊びは終わりだァッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 開かれた両腕が的確にアニマの喉元に伸びて行き、掴みかかる。そこに力を再び込めた瞬間。[日色]の炎が二人を包む様に爆発を見せる。

 立ち込める煙から先に出てきたのはアニマだった。その衝撃の強さに思わず体勢を崩しながら後ろに足を進めざるを得なかったのだ。

 

 

 そして、それに追撃を掛けるように桜木は勢いよく前へと進む。身体の至る所に煙が纏付きながらも、それを置いていく程の速さで。

 その中でも最も目を引くのは、先程彼が見せた[MAX大蛇薙]の時と同様、その身、全身に炎を滾らせていた。

 

 

 後退したアニマに対して桜木は左足を軸として背中側に身を翻しながら身体を開き大きな一歩を踏んでいく。その一歩で距離を詰め切ると今度は右足を軸として活用し、その回転の勢いのまま力強いフックを捩じ込んで見せた。

 

 

能面「やはりアレは[伍百弐拾四式・神塵(かむくら)]―――」

 

 

能面「―――いや違うッッッ!!!!!」

 

 

 そう。その第一打こそ神塵の動きを踏襲した攻撃だったが、続く連撃はそうではなかった。

 怯んだアニマに対して、桜木は前へと詰めて来た。本来であるならばその後、振り抜いた拳を振り上げる裏拳によるアッパーカットの筈だが、それを[敢えて]しなかった。

 

 

 それは所謂、[足切りライン]の見極め。相手の力量を推し量る為の連携。格上や同格ならばまずそれに対し、何らかの対処法を知っている。

 本来であるならばそれは序盤も序盤に行う物。時が遅れれば遅れる程、それを返された時のリスクは大きく、そして甚大な被害をもたらす。

 

 

 それをこの局面で行うということ。それ即ち単なる足切りでは無い。桜木はこの期に及んでリスクを請け負い、[読み合い]という土俵に相手を引き込もうとしていた。

 当然それはアニマにも伝わっている。彼がどんな人間なのか、既に一度の敗北。[電脳世界]でその本質を捉えているアニマは痛い程に分かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 .........が、[理解っていた]からこそ、手が出ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今、目の前に居る男がどんな人間なのか、アニマは知っている。自らがリスクを負う事に頓着は無く、寧ろそれを求めている節すらある。

 そしてそれに、[人生]を掛けられているのならばそれは加速していく。

 

 

 そして、アニマはその桜木の急加速した思考から導き出される答えを、導き出せない。

 

 

 何故なら、その[本質]とは[無意味]な事だと、桜木自身が答えを下している。

 

 

 [残り物]には意味が無いと、そう切り捨てる男の出してくる物の全てを把握する事は到底できない。

 流れてくる情報は無い。先程まで嫌と言うほどに強調された[コマンド]すら無い。あるのは無。目の前に居る男の心が今、[手なり]で動いて居るのだと悟った。

 それに呑まれ無いようにとガードを固める。それこそが桜木の狙いとも分からずに。

 

 

 前に出る慣性をそのままに、身体を引き真っ直ぐに立つ。それが前へと崩れる力が強くなった瞬間。右肩から左肩に掛けてのラインを縦方向にし、それを最大限の力で当てるように足を運ぶ。

 両手でガードしようと、最早どうにもならない。

 

 

能面「[鳳麟・陽]ッ!発生は遅いが当たれば相手を吹っ飛ばし、ガードさせればその後の[キャンセル技]は殆どが連ガだッッ!!!」

 

 

『キャンセル?連ガ!?訳が分かりませんッッ!!!どういう事ですの!!?』

 

 

能面(っ、だがこの現実でそれをガードさせたからと言って何になる.........!!!身体の構造上、そして世界の法則上、動きの上書きなぞできる訳が―――)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――否。既に桜木にはそれが出来る技術が備わっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かつて独自に突き詰め確立された[身体力学]。[型]を知らずに技の根本を学んだ[勢殺]。この二つが合わさり、初めて生まれる。いや、[生み直される]。

 

 

 広い範囲を強く打ち付けられたアニマは勿論、ガードの上から叩きつけられる[運動エネルギー]によって押し出される。それが世の摂理。物理法則の理。

 しかし、桜木はそれがどの程度のエネルギー。つまり、衝撃とその勢いを与えればそうなるか理解している。

 

 

 ならば、[余分な分]は全て、自分が[利用すれば良い]。

 

 

桜木「俺からは[逃げられねェんだよ]ッッ!!!」

 

 

 相手に気付かれず、傍から見ても分からない。今この瞬間。二人の間に流れる気流は[二方向]。押し出す力と、押し戻される力。その二つ。

 桜木は後者を利用する。その流れを決して殺す事なく、身体をまた回転させ、先程の第一打と全く同じ動き。大振りなフックを飛ばして行く。

 

 

 ガードの上。承知の上。叩き込まれたエネルギーはまた、誰にも気付かれずに二分化。

 

 

 桜木はまたそれを利用し、ガードの隙間を縫うように肘を打ち付ける。

 

 

 ガードが崩れる。アニマの表情もまた、崩れる。

 

 

 止めと言わんばかりに、押し戻される力を下に働かせ、拳を無理やり下に持っていく。

 

 

桜木「響けェェェ―――ッッッ!!!!!」

 

 

アニマ「ぐっ―――」

 

 

 走る衝撃。ガードは崩された。拳が捉えた先は顎。神なるアギトは全てに晒される。地から離れる両足。アニマは今この瞬間。意識を失った。

 

 

能面「[どこでもキャンセル発動].........!!?」

 

 

『どこ.........なんです!!?』

 

 

能面(間違いない.........!!![百拾五式・毒咬み]。[百式・鬼焼き]。そして[四百弐拾七式・轢鉄].........コマンド技からコマンド技へと繋げるシステム.........!!!)

 

 

 

 

 

ムサシ「そうッ!!!そうじゃ小僧ッ!!!」

 

 

ムサシ「相手に気取られず次動に移すッ!!!打撃が次の打撃への直接的な布石となるッ!!!」

 

 

ムサシ「連携などでは無いッ!!!独立した一つ一つの技を[繋げる]ッ!!!それこそがッ!!!」

 

 

ムサシ「[勢殺 零式]じゃッ!!!クハハハハハッッ!!!」

 

 

シロ「ちょ!ちょっと!!水晶持ち上げないで!!!私が見れないでしょ!!!」

 

 

 

 

 

アニマ「―――ガッ.........!」

 

 

 両足が地面を離れ、視線は天へと向けられている。だが次。[次]、地面へと足が着けばその時こそ。アニマの心理は復讐。やり返しで埋め尽くされる。

 煮えたぎる様な怒りを乗せた視線を、桜木へと送る。確かな犯行予告。

 

 

 だが、その[心理エネルギー]は一方的では無い。これもまた、[二方向]。視線はぶつかる事なく、双方に誤解なく伝わる。

 

 

 桜木は既に身体の炎を鎮火させ、それを右手に作った拳に宿らせている。彼もまた視線を外さず、アニマを真っ直ぐ見つめている。腰を落とし、拳を作り、怒りを受け取る。

 

 

 だが最早[理解していた]。そんなものは[無意味]だと。人が創り出すもの。形残る物に、永劫的な物は無い。ただ場所を取り、それに縛られる。

 人が目指す[完全]とは、何物にも成らず、何物にでも成る。形とは結局、人を[執着]という檻に閉じ込める。

 それを嫌うわけでは無い。ただ彼は、それに執着を抱きながら[完全になろうとする存在]が嫌いだった。

 

 

 その[正体]。本当に嫌うべきを見つけた彼の目にやはり、[敵意]は無い。

 

 

 それでも尚、男は救う為、その目を閉じる。目の前の景色に邪魔されず、ただ[時]を見極める。

 

 

 .........そして―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 [↓↘→↓↘→+AC]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――見せてやるッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 握り締めた拳を薙ぎ払う。そこには先程まで全身を纏っていた炎が[大蛇薙]の時とは違い、彼の目の前の地面へ向かって落とされる。

 両足を地に付けたアニマの目の前には、そこから生まれた[火柱]が復讐の行く手を阻んでいた。

 

 

アニマ「―――なん、だ.........これは.........」

 

 

能面「.........[最終決戦奥義・無式]」

 

 

『っ、[最終決戦奥義].........?』

 

 

能面「オロチという[地球意思]の化身とも呼べる神を打ち倒した技だ。ゲームの話とは言え、それをここで持ち出してくるとは.........」

 

 

桜木「これが―――」

 

 

アニマ「ッッッ!!!??」

 

 

 立ち昇る火柱の中へ臆する事なく入って行き、アニマの前へと躍り出る桜木。その身体は先程の様に全身を[日色]に染め上げて全力を叩き付けて来る。

 無論、それを易々と受けるアニマでは無い。ダメージを抑えるべく、その両腕でガードを固める。

 

 

 桜木はそれを目視し薄く笑う。その身体をまた大振りに開きながら回転させ、遠心力とその勢いを乗せたフックをぶつける。

 初撃はこれのみ。アニマには既にこの後の展開を頭の中で描いていた。防ぎ切った後、すぐさま攻守を逆転させ、息つく間も無く必ず息の根を止める。

 その思いをひたすらに己が身に募らせる。

 

 

 だが、それは[想定外]に打ち砕かれる。

 

 

 桜木の背後から同じような動作で動きを合わせてくる存在が[火柱]から出てくる。同じ質量。同じ衝撃を持ってして、アニマのガードの上を強く殴り付ける。

 

 

 まだ終わりでは無い。三回。四回。それを受けて初めて気付く。それは[炎の幻影]だと。全てが本体では無い。そしてそれは、[初撃]にも当てはまる.........

 

 

 つまり、[本体]は未だ[火柱]の中に居るという事。

 

 

 先程の幻影達を導き手とする様に、全く同じ動きで火柱から現れる本体。その動きをなぞり、その衝撃地点に拳を重ねに行く。

 崩されるガード。それを見て能面は驚く。

 

 

能面(あれは98版の無式ッ!!?一ゲージの支払いしか無いが、最終段はガードブレイクさせて硬直差を無くす物.........だが)

 

 

能面(アレは明らかに[MAX版]ッッ!!![次]が来るッッッ!!!!!)

 

 

 その能面の読み通り。桜木の猛攻は止まらない。こじ開けられた両腕に[幻影]が一歩踏み込み、振り上げた裏拳が捻りこまれる。先程と同じように何度もそれを打ち付け、本体もそれに追随する。

 

 

 攻撃は止まらない。最後の一振。その為の攻撃に繋げられる。先程の踏み込みによって大きく屈んだのを利用し、前へ、そして上へと回転を加えながら飛び上がる。その過程で幻影と本体背中を押し当て、アニマを更に宙へと上げる。

 

 

 そして終撃。幻影全てが本体へと帰結し、同時に動く。先程の回転の遠心力に身を任せ、その両手を開く事による裏拳。それをアニマの顔面へと捻りこんだ。

 

 

 この全て。これこそが[勢殺]。その本来の技術を使う事で可能となる奥義。その全てを叩きつけ、桜木は叫んだ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「[メジロ]の(けん)だッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――ぜ.........』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『絶対違いますわッッッ!!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後の裏拳を受け宙に舞うアニマ。少女の絶叫を聞きながら地面に足を付けて降り立つ男と、背面を打ち付ける男。

 本来の武術家であるならば残心を取る所だが、桜木は不敵に笑いながら人差し指に炎を灯し、それを吹き消した。

 

 

桜木「.........[歴史]が違うんだよ」

 

 

 [勝負]は決した。表向き。そして精神的にも、桜木の勝利は事実として、今この場を見ている者達には、そう見えた。

 彼は倒れ伏した男に背中を向け、仲間達の元へと足を進める。

 

 

『な、なんなんですかさっきのは!!!メジロの拳ってどういう意味ですか!!?』

 

 

桜木「え?あいやっ!アレは言葉の綾っつうか.........技借りパクしてる奴が草薙の拳っつってもねぇ?」

 

 

能面「別にメジロ武術の後継者でもなかろう」

 

 

桜木「え〜っと.........ゴメンチャイ」

 

 

『.........まぁ、カッコイイトレーナーさんが見れたので別に良いですけど』

 

 

レックス(.........)

 

 

 

 

 

 ―――目の前の二人のやり取りを見て、さっきまでの攻防との温度差に思わず固まる。この展開をまるで慣れ親しんで来た友人の様に迎え入れている彼等にはいつも驚かされてばかりだ。

 僕は隣に居る能面と呼ばれる男性に視線を送ると、その内心を察したのか、苦笑いを送り返して来る。

 

 

 それを受け取り、僕はもう一度彼の方へ視線を送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ゆらりと揺れる人影。それを見て、男は血相を変えて前へと飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レックス「―――ぐっ!!!」

 

 

桜木「っ!!?おいッ!!!」

 

 

 突如発生する気流。紫炎はまだ衰えていない。誰の目から見ても勝敗は決していた。ただ一つ。[願望]だけはそれでは留まらない。

 それが真理。それが真実。負けても尚留まることの知らない欲望。それが人間の[正体]。飽くなき欲望に突き動かされ、それを満たす為に行動する。

 

 

 欺瞞に満ち溢れ、目的と手段を混同し、破滅に追いやられたとしても、閉じられた蓋の縁から湧き上がる蛆虫の様に這い出てくる。

 それは最早[出る杭]等では無い。正に、人の形を食い破り這い出る[蛆]。

 

 

 男の身体が焼かれて行く最中、アニマは一人笑う。

 

 

アニマ「ククク.........僕の負けだ.........そう、負けたんだ」

 

 

アニマ「けど負けたからと言って[終わり]じゃないッッ!!!それが[人生]だッッッ!!!!!」

 

 

アニマ「そうだろうッッ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――[名も無き女神]ッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その叫びと共に、[紫炎]は更に強い広がりを見せる。このままでは全て飲み込まれる。そう 全員が悟ったその時、天から一筋の光が舞い降り、バリアを張る。

 

 

シロ「.........良くやったわね。桜木」

 

 

桜木「っ、テメェ!出てきたって事はこれも想定してたって事か!!?」

 

 

シロ「そうよ。最早[奴]に主導権は無い。ただ[願望器]の願いに突き動かされているだけ。その状態を待っていたの」

 

 

 手を伸ばし、桜木の胸元に指先が触れる。瞬間、彼の中に流されていた願望が元の形へと形成され直されていく。

 ここに来て、[二分化された願望器]がここに存在する事になる。

 

 

 既に猶予は無い。舞い降りた女神はその[願望器]を携え、アニマの前へ出ようとした。

 

 

 その時。意識を失っていた少女。サンデーサイレンスが口を開く。

 

 

サンデー「―――やめ、ろ.........それ、だけ、は.........」

 

 

『っ、サニーさん.........女神様。一体何を.........?』

 

 

 力無い様子で腕を伸ばす彼女を見て、マックイーンは一抹の不安を抱える。

 だが、それをそのままにはしない。彼女はそれを言葉にし、今何か行動を起こそうとする女神に対して問いかけた。

 

 

 それを受け女神はその場に立ち止まり、目を閉じる。これから自分がすべき事。その理由と結末を、もう一度自分に言い聞かす為に.........

 

 

シロ「.........この世界の混乱の元。それを辿れば全てが[私]になる」

 

 

シロ「この世界は[歪]よ。[地球意思の願望器]が二つある。パワーバランスの均衡を今まで保てて来たのが[奇跡]なの」

 

 

シロ「.........今後、こんな事態が起きない為にもそれを、[対消滅]させる」

 

 

 その話の大きさに、着いて来られない人間が多数。その影響で何が起きるのか。どういった事が変わってしまうのか。今この場では判断つかない程の未知数な結果になる事だけは理解した。

 

 

能面「待てッ!!アニマの持っている[願望器]が元来の物ならばそれはなんだ!!!」

 

 

シロ「ウマ娘達の[願い]。そして、ウマ娘達に乗せられた[思い]。その全てよ」

 

 

能面「っ!だったら余計ダメだッッ!!!そんな物を対消滅させたらそれこそ―――」

 

 

シロ「安心しなさい。この[世界]は消えない。ただ今日から.........ちょっと[勝手が変わる]だけよ.........ん?」

 

 

 世界の在り方。それを決めるのは神ではなく、今を生きる者達だ。女神は心の底からそう思っていた。あの[時]から、そう思えるようになっていた。

 自分の内面の変化。変えられてしまったそれに少しむず痒さを感じながらも、彼女はまたアニマの前へと行こうとした。

 

 

 

 

 

 .........が、そこには既に、[桜木 玲皇]という先客が立っていた。

 

 

 

 

 

全員「.........ゑ?」

 

 

 全員。呆気に取られる。無理も無い。先程の何が起こるか、何をしようとしてるのかの説明に彼も入っていると、誰も疑わなかった。

 だが実際には、[対消滅]させる。という単語を聞いた時点で彼は(なんだあるんじゃねえか。そんなカンタンな方法が......!)とひらめきを携え、バリアの外へと立ったのである。

 

 

アニマ「.........まだ、何かあるのかい?」

 

 

桜木「ああ、もうお互い腹ん中探り合った仲だ。こうなんのは想像ついたろ?」

 

 

シロ「っ!アンタ!!!何のつもりで―――」

 

 

 女神はバリアの外へ出る勢いで走り出すが、桜木が見せびらかすようにして出した物を見て立ち止まる。その表情は驚愕一色。考えついたとしても簡単には行動に移せはしない。その意図を導き出した彼女は酷く動揺した。

 

 

シロ「どう、して.........ッ!!!私の不始末にそこまでする道理はッッ!!!」

 

 

桜木「無い。コイツは俺からのラストオーダーだ。有難く受け取れよ」

 

 

 酷く格好付けながら桜木はそれを元の位置に戻す。そしてそのまま、視線をアニマの方へと向ける。

 

 

 彼を前へと進ませる物。それは[火種]だった。消しても消え切るまでは再び燃え上がる。全てを潰さないと消して安心できない代物。

 それは[勇気]だった。初めは小さな炎だが、やがて目も眩む程の灯りになる。希望であり、人の[外側]にしかない物。

 

 

桜木「なぁ[神様]?前にアンタに言ったよな」

 

 

桜木「俺は[正義の味方]でも、[悪の使者]でも何でもねぇって」

 

 

桜木「けど今の俺は.........[アンタの世界を壊す者(悪の使者)]であり、[アンタを助ける者(正義の味方)]であろうとしている」

 

 

アニマ「.........」

 

 

桜木「選択権は譲るぜ?プレイヤーばかりに委ねてちゃマンネリだろ?」

 

 

 男は問う。神に対しての進退の行く末を。何を結末とし、何を失うかを敵自身に選ばせる。そんな道理は存在しないというのに。

 だが、それこそが[違い]であった。勝利して得て、敗北して失う。[競走]とはそういう物であり、人間の[発展]には常にそれが付きまとっていた。

 

 

 結局の所、[蛆]だろうと[火種]だろうと、本質は変わらない。有るものを食い尽くすだけの存在。生きる為に、絶やさない為にそう出来ている。

 行き着く先は変わらない。最終的にはそこに何も残らない。食い尽くされ、燃やし尽くされた廃棄物が転がるのみの死地となる。

 

 

 しかし桜木はそんな物を望まない。有限である物を悪戯にただ消費するだけの事はしたくない。

 それが[競走]という枠組みから外れる思想。だがそこに驕りは無い。自分の出来る限りで良いと悟っている。

 

 

 それは、いつの頃か、彼自身が自覚出来ない程に小さな[種]として撒かれ、芽吹いた[力]。

 

 

 [弱さ]が時として、あらゆる[強さ]を[繋げる]物を産む。

 

 

 それこそが正しく―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――[共生]である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう。桜木は既に、自身の夢が破れ、夢に敗れたその時から.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 [夢繋ぎ人]となっていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

能面「.........何をする気だ、彼は」

 

 

シロ「.........アイツの[首飾り]には、今まで歩んで来た[夢]を一緒に見てきた。その内側に[願望器]を作り上げる程に、[奇跡に等しい夢]を」

 

 

シロ「それがアイツの、[底抜けた願望器]を.........[完全な願望器]に見せ掛けていた。アニマを出し抜く程に、精巧にね」

 

 

 それを聞き、その場に居た全ての者が声を失う。先程の女神のやろうとしている事を聞き、彼が何をしようとしているのかが自ずと理解出来たからだ。

 その答え合わせをするかの如く、桜木は首から下げた[王冠のアクセサリー]を握り締め、思い切り腕を引く。チェーンが結びを解き、その手の中に[日炎]を発生させて行く。

 

 

アニマ(.........そうか。あの[炎]は.........)

 

 

 そこに来て神はようやく気付く。あの炎は[地球意思の願望器]の影響によるものでは無いことを。

 桜木が背負った[夢]。それらの[繋がり]が力を産んでいる。それこそが彼の原動力であり、[弱さ]の象徴でもある。

 

 

 手を伸ばし続けた先で繋がった[強さ]。[弱さ]が無ければ到達出来ない場所。それを中心とした[日炎]が、あの手の中にある。

 

 

能面「.........[最終決戦秘奥義・十拳(とつか)]」

 

 

 ぽつりと呟く男。それに反応する者は無く、ただ虚しく静寂に飲み込まれて行く。

 

 

 しかし、それに反応する[物]があった。その言葉に触発され、握り締めた手の中の光が強くなり、やがてそこから離れる。

 そしてその小さくも確かな光は桜木の背中に着いて[円]を描く。炎が迸り、無地の背には燃え盛る[日輪]が刻み込まれた。

 

 

桜木「―――ぁぁぁああああああッッッ!!!!!」

 

 

 燃え上がる日に包まれ、熱量は完全に最大に達した。

 

 

 それを止められる者は最早誰も居ない。桜木は心の赴くままにその拳に力を溜める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「―――ッッッ!!!!!」

 

 

 力が最大に達した瞬間に一足で飛び出す。向かう先はアニマ。一直線の線を炎が描く。

 

 

 誰の目から見てもそれは刹那の瞬間。だが、それを受ける者と繰り出す者の間には、確かな[時]が流れていた。

 

 

アニマ(っ、そう簡単に行かせるか―――)

 

 

 目前に迫る危機。それに対しての防御行動。なんら不思議な事は無い。自然的行為であり、生存本能に由来する物。

 両腕を交差させてその衝撃に備えようとする。

 

 

 しかし―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(―――ぁ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 視界が狭まり、桜木の顔が良く見える。その表情からは強かな物を感じたが、決して険しい物ではなかった。

 ここまで来てやはり、[敵意]は無い。それが見て取れるほどに、桜木はまるで友人と[喧嘩]をする様な表情で向かってきていた。

 

 

 しかし、真にアニマを動揺させたのはそこでは無い。

 

 

 分離し、離れた[地球意思の願望器]。それにも関わらず、桜木と繋がった[糸]は未だその身に繋がれたままだった。

 

 

 そこから、彼の[思い]が溢れ出している―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――なぁ、見てろよ?神様.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――今の俺は.........いや、[人類(俺達)]は―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――[かつての理想(奇跡)]だって、越えられるんだぜ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭に響いてくるその言葉と共に想起する記憶。今まで自分の前にいた者はすべからく、何かに[絶望]し、そしてアニマに[切望]していた。

 

 

『どうか.........主よ.........我が願いの為に.........』

 

 

『王よッッ!!!貴様の玉座を砕かせて貰おうッッ!!!』

 

 

『お願いです神様っ!!!うちの子をっ!!!うちの子をどうか.........っ!!!』

 

 

 あまりにも陳腐。あまりにも凡庸。そう片付けられてしまうほどに見飽きてきた顔。誰もが[願い]という物に振り回され、ある者はそれに跪き、そしてある者はそれの前に崩れて行った。

 それぞれに物語があり、宿願を背負い、目の前に現れてきた。その全ての者の手を取り、叶えてきた願いは全て同じ。

 

 

 [繁栄]。つまり、[競走の勝者]。それを願っていた。

 

 

 だが、目の前の男はどうだ?

 

 

 確かに今、勝敗を決する行いをしている。

 

 

 しかし、[勝利]は[果てではない]事を知っている。

 

 

 何を得て、何を失うか。そういった[勝負師]としての矜持を持ち合わせておきながら、その[心]には―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――何も捨てない[強さ]が、そこにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アニマ(―――愚かだ。実に、[人の子(愚か者)])

 

 

アニマ(自分の[夢]を賭けておきながら、手放そうともしていないじゃないか.........)

 

 

アニマ(.........君はそうやって、何も捨てずに来たんだね.........)

 

 

 実に強欲。実に傲慢。アニマは目の前に迫り来る男の存在にそう結論付けた。

 

 

 捨てるつもりなど毛頭もない[捨て身]。その手に握り締め、[決着]と引替えに失う[夢]すらも捨てる気はない。

 それすらも、目の前の男は[拾い直す]気で居る。そんな事が出来るとは神でさえ思えない。

 

 

 だからこそ。目の前の男は[奇跡を超えられる]と思える。

 

 

 硬い殻にヒビが入り込む様に、アニマは上げていたガードをそっと広げた―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「燃えろォォォォ―――ッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 捻り込まれた拳は胸部を突き、それと同時にこの空間全てを焼き付くす程に二人を中心とした炎が広がって行った。

 

 

 だが、それは人を[傷付ける]炎では無い。

 

 

 人が持つ[暖かさ]による物。

 

 

 ドーム状に広がって行くそれに、全てが光に包まれて行った.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「―――っ、ここは.........」

 

 

 ふと気が付くと、俺は大きな荷物を背負ったまま道を歩いていた。

 

 

 どこまでも続くその道。途切れることのない道の上で意識を取り戻す。

 その瞬間、やけに背負った荷物が重い事に気が付いた。

 

 

桜木「.........参ったなぁ」

 

 

 重い。いくらなんでも重すぎる。こんなのを背負って歩いてたなんて、いくらなんでもバカバカしい。そう思える程にコイツは重かった。

 でもどうにも、手放したいとは思えない。捨ててしまえばすぐに前へ進めるのに、なんでかそれをしたくない。

 

 

 コイツはきっと、それほど俺にとって大事なものなんだろう。

 

 

桜木「.........ま、いっか」

 

 

 だけどそれで立ち止まるのはそれこそバカらしい。どこに行きたいかなんて分からないけど、どこにも行けない状態にはなりたくない。

 

 

 と、なれば。だ。

 

 

桜木「荷物はまた[取りに戻れば良い]からな」

 

 

桜木「ここに、置いていくよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

能面「―――くっ.........」

 

 

 全てが炎に包まれた。それは俺達も例外ではなかったが、物理的な炎では無いのだろう。外傷などは無く、気分も悪くは無かった。

 身を守る為に上げていた腕を下げ、炎の中心地だった場所を見る。そこには二人の男が倒れ伏していた。

 

 

 俺は抱えていた少女を白バの王子に預け、彼の元へと向かった。

 

 

能面「.........成程。本当に[鏡を見ている]様だ」

 

 

桜木「.........ぅ、ぁ」

 

 

 うつ伏せで倒れていた彼の身体を仰向けにし、その表情を見る。そこには先程までの満ち溢れた物は無く、本当に昔に鏡の前に立った時に見ていた姿がそこにあった。

 目は虚ろで何処に視線をやっているのかすら分からない状態。自他共に、今そこに居るのかすらどうか分からない症状。それが今、彼に現れている。

 

 

『トレーナーさん.........』

 

 

能面(.........違う点をあげるとするならば、[彼女]とこの[首飾り]か)

 

 

 最早こんな状態になってしまった者を元に戻す手立ては無い。あるとするならば[時間]。途方も無くそれを充て続けるしかない。

 .........だが、こうして[奇跡]を[超えた]のを見ると、まだ希望を見出してしまう。自分があの時、どうにも出来なかったこの状態ですら、何とか出来てしまうのでは、と.........

 

 

能面「.........さて、そろそろ引き上げるとするか」

 

 

シロ「っ!ちょっと!!コイツはどうするのよ!!」

 

 

能面「放っておけ。[倒せたはず]の奴を[倒さなかった]。それでも諦めないのならこちら側が折れるしかあるまい」

 

 

能面「[切り札]は、切り尽くした」

 

 

シロ「.........」

 

 

レックス「.........そうだね。ここは、[彼]の選択を尊重しよう。シロ」

 

 

 抗議してきた女神に対し、俺は通信端末の操作をしながら片手間で答えた。白バの王子のフォローがあったが、彼女も今の桜木の状態を見て顔を俯かせてしまった。

 

 

 .........そういう顔をさせたくて、コイツもここまでした訳じゃなかろうに。

 

 

シロ「.........これから、[世界]は変わるわ」

 

 

シロ「人の原動力。[願い]を消滅させた。大きな混乱を招くでしょうね」

 

 

能面「人間そんなやわじゃない。[願い]なんぞなくとも生きるさ」

 

 

能面「それに、[彼女達]が[変わらない]のであるならば、[触発]されるだろう?」

 

 

シロ「!.........そう、ね。そうだと、良いわね.........」

 

 

 かつては人に[変わる]事を強い、[変わらない]事に憤りを感じていた女神。だが今は、彼女の同胞達。つまり[ウマ娘達]が変わらず、[夢]を追い駆けてくれる事が俺達人間の助けになってくれる。

 ここでもこの男は、物語のちゃぶ台をひっくり返してくれた訳だ。

 

 

能面「.........よし。まずは外に出るぞ。あのバカ共にも連絡を入れて置いた」

 

 

『っ!早く行きましょう!トレーナーさんを病院にっ!!!』

 

 

桜木「.........ぅ、嫌、だ.........こんなのに.........担がれたくない.........マックイーン助けて.........」

 

 

三人(.........案外元気だな(ね))

 

 

 力無く愛しの彼女に手を伸ばす桜木。それを見て呆れる俺達と、まだ自分を認識出来る事に喜ぶマックイーン。

 

 

 

 

 

 こうして、在り来りな物語では大事件として扱われ、全勢力を賭けてぶつかり合うであろう[神]との最終決戦を、実質たったの[四人]で潰した。

 

 

 これから、この事を話題に出す人間は居ないだろう。真の意味で全てを知っている者など、この世界ではたったの[二人]なのだから。

 

 

 そして、世界は少なからず変わるであろう。

 

 

 少なくとも、[願い]を。[繁栄]をただ求め、貪る様な行いは今日、この日から無くなる。

 

 

 世界はそれを気にも留めず、誰がそうしたのかも知らずに回って行く。

 

 

 [英雄]は確かに居た。

 

 

 だが、彼はそれを望まない。そう在りたくは無い。

 

 

 彼が[成りたかった者]。それは―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――おっと、モノローグが喋りすぎたな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

能面(それは、これから先。[彼自身]がまた見つけるか.........)

 

 

 今は力無く、ただ担がれているだけの存在。彼がまたその足で力強く、大地を踏む時が来たのなら.........

 

 

 きっと、その口から聞く日が来るだろう。

 

 

 それまでは.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山あり谷ありウマ娘 ―――次回―――

 

 

第七部 夢繋ぎ人編 最終話

 

 

[静かな日曜日に悪友は眠る]

 

 

......To be continued

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