山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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デジタル「レグルスにまともな人は残ってません」トレマク「?」

 

 

 

 

 

 街灯の灯りが着き、子供なら夜の暗さに怯える時間。秋の季節も相まり肌寒さがかなり強まるこの時間帯。

 木の影からひょっこり顔を出しつつ伺ってみると、やはり自主練を行っているようだった。

 

 

「はぁ......!はぁ.........!!!」

 

 

桜木(うわマジかー.........)

 

 

 数人程ではあるが、確かに[ファースト]のメンバーがそこに居る。逆に言えばそのメンバーしか居ない。異様な光景だ。

 それぞれ思い思いにトレーニングをこなしているが、先導しているのは[二人]のウマ娘。あれは確か.........

 

 

 .........そうだ。[留学生]だ。

 

 

 フランスから来ている[リトルココン]。

 

 

 ドバイから来ている[ビターグラッセ]。

 

 

 うん。間違いない。多分。きっと、恐らくは。

 

 

 話し掛けるべきはあの二人に対してだろう。彼女らが引けば自ずと周りも引いてくれる。そう思い俺は一歩踏み出した。

 

 

 その時、俺は自分の事を失念していた。

 

 

桜木(.........あれ?初対面の女の子ってどう話掛けるんだっけ.........?)

 

 

桜木(.........ん!!!??)

 

 

 そう。[分からない]のである。女の子への接し方。特に関係性も持っていない女性とのファーストコンタクトの仕方を知らない。

 

 

 傍から見れば「おいおい。君トレーナー何年目w?今更初心(エロが)んなよw」と、(いやそもそもエロがるって何?キモ.........)冷笑されるかもしれないがそもそも今まで成り行きで関係性を構築してきたので、自主的かつ明確な目的を持って女性と会話した事が殆ど無い。

 

 

 しかも相手は子供だ。通報される可能性だってある。

 

 

 苦しい程に考えられない頭で考え抜き始める。思考のネジは外れて行き、それにすら気付かないまま導き出した[答え]は―――

 

 

『サクラさーん!サクラさーーん!ハッハッハッハッ!』

 

 

桜木([これ]だ.........(?))

 

 

 [せがた三四郎]である。[これじゃない]のである。そんな事をしたら変質者確定で通報案件なのである。

 

 

 だがそんな事にすら気付かずに手を振りながらTPOを弁えない爽やかな駆け寄り方で俺は彼女達に近付いて行った。

 

 

桜木「君達ー!君達ーー!ハッハッハッハッ!」

 

 

ココン「―――は?」

 

 

グラッセ「なんだ.........?」

 

 

桜木「君達、こんな時間に何をしてんの―――」

 

 

 怪訝な表情をしながらも話を聞く体勢になってくれたウマ娘達。ここまでは良かった。最悪嫌われても良いから、監督者の居ないこの自主練で怪我人が出る前に気持ち悪がられて帰られても構わなかった。

 しかし、話を聞いてくれるのなら俺としても聞いておきたい事がある。[完全管理プログラム]を是とする理事長のチームメンバーである彼女達が何故、こんな夜遅くまでトレーニングを行っているのか。それを聞いておきたかった。

 

 

 だが、それは俺の視界に入った[三人]の姿によって遮られた。

 

 

神威「えっ(白装束に頭にロウソク巻いて藁人形持参)」

 

 

黒津木「あっ(ケツに何かをぶっ刺されたハムスターぬいぐるみと謎のリモコンを持っている)」

 

 

白銀「ん?(フランス料理人の格好で屋台引いてる)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――何を四天王っっ!!!??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 純粋な疑問が口から飛び出した。最早目の前のウマ娘なんかより友人の錯乱ぶりの方が心配である。いやマジで何してんのコイツら。

 

 

神威「いや違うよ?別にカフェがお前のチームに入ってからあんま絡み無くなったなぁとかでお前を殺そうとした訳じゃ無いよ?」

 

 

桜木「いやお前の机に置いたプリント見た?暫く各々の担当とトレーニングさせるって連絡もスマホにしたけど?」

 

 

神威「あごめんお前を殺す準備の為に買い物行ってて気付かなかった」

 

 

桜木「コイツやば」

 

 

黒津木「俺はこんな時間にトレーニングするのは危ないと思って注意喚起しに来た」

 

 

桜木「し、宗也.........!流石天才ドクターだ.........倫理観もしっかりしてる.........」

 

 

黒津木「渡されたハムスターぬいぐるみが爆竹で爆発したら暫く夜は出歩かないかなと思って」

 

 

桜木「サイコパスだ.........」

 

 

白銀「バカ女と焼きそば専門店開く為に武者修行してる。コイツは新装開店メニューだ。暫くコイツだけでやってく」

 

 

禍々しいオーラを放つ若本節なパスタ

「死をォくれてやるゥ」

 

 

桜木「サイコパスタ.........」

 

 

 何を言ってるんだコイツらは。白銀に至ってはそれって貴方の怠慢ですよね?

 

 

 良いじゃん(?)

 

 

 死ねよ(!?)

 

 

 こんなのに付き合っている暇は無い。そう思い振り返ると、もう既にウマ娘達の姿はそこに居なかった。

 

 

桜木(.........まぁ、妥当だわな)

 

 

白銀「玲皇食ってけ。暫くこの時間に店出すから」

 

 

桜木「.........」

 

 

 暫しの逡巡。この何気ない問い。回答を間違えば首が飛びかねない。現に他二人は有無を言わずに屋台の暖簾をくぐって座った。それが唯一残された生き残る道だと言わんばかりに。

 ならば、俺もそれに倣おう。命は投げ捨てる物では無いからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「ただいま.........」

 

 

「あ!先輩っ!」

 

 

 玄関の扉を開き、俺は靴も脱がずに前へと倒れ込む。そんな俺が倒れ込む寸前に滑り込み、床への顔面強打を防いでくれた奴が居た。

 

 

 [花道 泰雅]。少し前まではトレセン学園のトレーナー。そして[URA委員会]から執行してきた若者だが、その正体はゴールドシップ達と同じ[未来]から来た存在。

 今はここでの記録と人々の記憶を改変し、俺の家で暫く居候として暮らす事にしている。

 

 

花道「お疲れ様です。体調はどうです.........?」

 

 

桜木「最悪な奴らに出くわした.........水持ってきてくれ.........」

 

 

「.........随分振り回された様に見える」

 

 

 俺と花道に覆い被さるように現れる影。それの元を辿るとまたもう一人の居候が現れる。

 

 

 通称[能面]。ゴールドシップ達の祖父であり、未来の[桜木 玲皇]。つまり、俺だ。

 呼び方については聞くな。厨二病が70近くになっても健在らしい。

 

 

 そんな爺さんが水の入ったコップを俺に渡してきた。それを受け取り、ポケットにしまっていた[錠剤]を開ける。

 

 

能面「薬の種類は?」

 

 

桜木「.........睡眠導入剤。取り敢えず寝れればなんとかなると思って」

 

 

能面「賢明な判断だ」

 

 

 水を口に含み、薬を放り込んで飲み込む。何とか玄関から起き上がり、靴を脱いで部屋までその足で向かって行く.........

 

 

桜木(身体、持ってくれよ.........)

 

 

 正に[時限爆弾]と言っても差し支えないだろう。これがいつ爆発するのか、今現状その時を定める事が出来ない程に切迫している。

 [仮面]の外し方など知らない。そんな状態で鏡を見た所で自分がどんな表情をしているか気付けない。

 

 

 だが、今度ばかりは[壊せない]。壊しちゃいけない。そう決心をしながら、俺は眠りに着いた.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「.........ほぅ」

 

 

 昼下がりのトレセン学園。チーム小屋の前にダイニングテーブルを立て、私達はそこでお茶会をしておりました。

 [アオハル杯]出場の為にチームを増員させて以来、有難い事に紅茶を嗜む方が増えたお陰で人が代わり代わり参加して下さっています。

 

 

ポッケ「.........んー?なんか、難しいな」

 

 

マック「ふふ、それがまた奥深さになるのです」

 

 

カフェ「そうですね。コーヒーとは違いますが、これはこれで楽しいです」

 

 

タキオン「えー!!?私が誘った時は嫌な顔をして付き合わないじゃないか!!」

 

 

カフェ「タキオンさんのいれたのは甘すぎます。それに何か得体の知れないものを入れてそうですし」

 

 

タキオン「失敬なっ!!ドーピングにならない程度の成分でしっかりと調合している!!」

 

 

三人(そういう所では(じゃね)?)

 

 

 椅子から立ち上がり、まるで子供が抗議をするようにテーブルに手を着いて捲し立てるタキオンさん。その言い訳が通じるのはトレーナーさんだけですわ。

 暖簾に腕押し。それが分かったのでしょう。彼女は不服そうな顔をしながらも席に座り直し、角砂糖を入れている容器の蓋を開け始めました。

 

 

ポッケ「つーかさー、こんなのんびりしてて良いのかよ?」ポトン

 

 

カフェ「普段のレースなら、トレーニングの追い上げをしていく段階ですが.........」ポトン

 

 

マック「.........」ポトン

 

 

 ポトン

 

 

 お二人はそう言って私に遠慮がちな視線を送ってきました。実際本来ならばそう言った仕上げに入っていくのですが、未だその様な雰囲気は無く、指向性も無い身体作りの物のみ。

 

 

 ポトン

 

 

 彼の事です。何も考えていないという訳ではありません。ですが、もし.........何も[考えられない]程の状態だったとしたら.........

 

 

 ポトン

 

 

ポッケ「.........おい流石に入れすぎだろ」

 

 

タキオン「ん?あぁ、適量か」

 

 

タキオン「―――心配せずとも良い」

 

 

二人「え?」

 

 

タキオン「今でこそそうだと断言出来るが、そもそもチーム[レグルス]と言うのは互いが互いの[欠けた部分]に惹かれあって結成された物だ」

 

 

タキオン「私は彼の清濁併せ呑む[狂気]を。ウララくんは勝つまでの過程の[楽しみ方]を」

 

 

タキオン「ライスくんは[変化の捉え方]。ブルボンくんは[夢との向き合い方]」

 

 

タキオン「.........君は、[弱さ]に惹かれた。そうだろう?」

 

 

 角砂糖で底が満たされたティーカップ。それをスプーンで優しくかき混ぜ溶かして行きながら彼女はそう言いました。

 その表情はどこか諦めていて、それでいて優しげな顔でしたから、彼女の隣に座っているジャングルポケットさんは驚いた様子で彼女を見ていました。

 

 

ポッケ「.........なぁカフェ、やっぱコイツ変わったよな?」

 

 

カフェ「そうですね。桜木トレーナーさんのお陰だと思います」

 

 

タキオン「あんな常識の無いトレーナーの元に居たら誰だってまともになるだろう!!?ブレーキ役が誰も居ないんだぞ!!!」

 

 

マック「コホン、話を戻しまして、タキオンさんの言う通り心配ありませんわ。いざと言う時は、チームレグルスの秘策、[プランB]で行きましょう」

 

 

ポッケ「.........おい。それって確か」

 

 

カフェ「[ぶっつけ本番のB]」

 

 

ポッケ「確かそうだったよなァ!!?本当にそれでやってきたのかあんたらっ!!?」

 

 

マック「ふふ、そうですわね。そういう名称こそ付けてなかったものの、二度目と三度目の春の天皇賞もそうでしたし、特に[URAファイナルズ]の決勝では.........」

 

 

ポッケ「あ、そう.........」

 

 

マック「そういえばあの時も、あの時も.........ふふ♡」

 

 

三人「.........ズズズ」

 

 

「うい〜。お疲れちゃん〜」

 

 

四人「!」

 

 

 私が回想に浸っていると、不意に声を掛けられました。その方向を見ると、ビジネスバッグを肩から下げたトレーナーさんでした。

 

 

タキオン「随分呑気な出勤じゃないか?ん?」

 

 

桜木「病院に行ってたのよ〜。許してちょ〜よ〜」

 

 

ポッケ「は.........?な、なんかどこか悪いのか.........?」

 

 

桜木「そうなの.........人相悪いのいい加減治したくて.........二重にしようかなって」

 

 

ポッケ「美容整形かよッッ!!!少しは心配した俺の気持ち返せッッ!!!つうかなんだその星型サングラスッッ!!!」

 

 

桜木「これ付けてたら遅刻も許してくれるかな?って」

 

 

ポッケ「余計許される道理ねぇだろ.........」

 

 

 怒りの感情からか、目元をひくつかせながら彼女はそう言いました。その話が実際の事ならばおっしゃる通りだとは思いますが、その全てが事実。とは言い切れません。

 本当に病院に行ったのか、それとも行っていないのか。それをここで確認出来るほど私は無粋ではありませんし、今のタキオンさんも遠慮が無い訳ではありません。

 

 

桜木「まぁ遅れたのは素直にごめんなさいだよね?」

 

 

ポッケ「.........やっぱなんか調子狂うな、アンタの相手してると」

 

 

マック「そういう人ですから」

 

 

桜木「ウ-キライニナラナイデー.........」ナキナキ

 

 

マック「!ウーナルワケアリマセンー!」ヨシヨシ

 

 

三人「.........ズズズ」

 

 

 急に小さい子供のように泣き真似を始めた彼に乗っかる形で、私は彼の頭を抱き締めながら頭を撫でました。この様子だと暫くはまだ大丈夫そうですが.........いつ、どうなるかは分かりません。

 今後も彼の一挙手一投足に気を配らなければ.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デジ「はぁ.........」

 

 

 ゆっくりとした時間の流れを感じさせる雲の流れ。それとは裏腹に焦りを感じている自分。トレーニングをしつつもそのギャップに頭を悩ませながら、あたしは[レグルス]の今後について考えていました。

 無論、先日聞かされた事に関しては納得が行っています。それに、デジたんを含めたメンバーも既に高等部。来年の3月には卒業を控えています。

 

 

 トレセン学園の制度を考えれば残る事も可能です。大学部もありますし、取得単位を計算すれば高等部のまま継続。という事も出来ます。

 

 

 しかし、皆さんにそんな考えなど無いのか、勉学に励み、全員がこの[アオハル杯]の終了と共に[卒業]を迎えようとしています。

 

 

デジ(.........できないです。そんな切り替え)

 

 

デジ(だって、あたし、まだ―――)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――走りますッッ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの日の言葉が脳裏に過ぎる。あたしが言った言葉。あの人を再起させる為にした[約束(誓い)]。

 ダートだって芝だって、地方だって海外だってオープンだってGlだって.........どんな所でも走ると言った。あたしはそれをまだ果たしきれて居ない。

 

 

「大変そうね〜、ストレス?」

 

 

デジ「!いえいえ!チームの方針に困惑してて!いやーいけないですよね〜一応[チームリーダー]やらせて貰っ、て.........」

 

 

桜木「そうなの〜!!?まだこんなに若いのに〜!!!上は何をしてるのかしら!!!ねぇ!!!」

 

 

ゴルシ「本当ですわ奥様っ!![レグルス]って鬼畜様てるひこなのですね!!!」

 

 

デジ「この人この人(てるひこ?)」

 

 

 言い訳に使った諸悪の根源が目の前に現れました。いえ、本音の方で困ってる諸悪でもあるんですけど、まぁ良いです。でもなんですかそのサングラスは。

 隣に居るゴールドシップさんと、やや遠くに頑張って隠れて様子を見ているマックイーンさん。

 うーん、なんかこう、嫌な予感がすると言いますか、良い事は考えて無いだろうなーって感じがこの二人からはします。

 

 

デジ「あの、何用で?」

 

 

桜木「え?聞く?聞いちゃう?聞きたい?拝聴します?高評価?チャンネル登録?ハイプ?コメント?「多い多い多い」ふふ、肯定意見以外はBANします」

 

 

デジ「あっ話にならないんでゴールドシップさんに聞きます」

 

 

ゴルシ「えーなんかー?アタシもおっちゃんに誘われただけでー?何するか聞いてないしー?」

 

 

桜木「っ!!!すま゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛―゛―゛―゛ん゛ッッッ!!!!!」

 

 

ゴルシ「うるさっ!!?」ビクッ!

 

 

 何がしたいんですかこの人。今すぐ休んだ方が良いんじゃないでしょうか?たづなさんに連絡しようかな.........

 

 

桜木「悪かったゴールドシップ。俺はてっきりこの作戦を遂行する為の信念に感化されて自主参加したのかと思ったんだ.........」

 

 

ゴルシ「っ!ああそうだ.........!アタシは確かに感じたっ!おっちゃんの中に眠る確かな力、[CO☆SU☆MO]を.........!!!聞かせてくれ、その作戦内容を!!!」

 

 

桜木「チーム[ファースト]の練習を見学しようと思うんだ」

 

 

ゴルシ「あアタシトレーニングサボってたんだ。じゃ」

 

 

桜木「何故.........!!?」

 

 

デジ「トレーナー何年目です?」

 

 

 関わりたくないと言った表情でゴールドシップさんは背中を向け、手を振りながら元来た道を戻って行きました。それに対してトレーナーさんは疑問をぶつけます。

 わざとらしくそう振る舞っているのか、もしくは本当におかしくなってしまったのか.........そんな事に頭を悩ませていると急に両足が地面から離れました。

 

 

桜木「よーし。団員確保。これでいざと言う時の説教エネルギーは分散されるな」

 

 

デジ「ヘェ!!?デジたんトレーニング中なんですよぉ!!?」

 

 

桜木「心配すんな。今更一日サボった所でガタガタになるほどやわに育てた覚えは無いっての」

 

 

デジ(そ、そうじゃない!!!ま、マックイーンさん助けて.........)

 

 

マック(キュ〜ン♡♡♡)キラキラ

 

 

デジ「」ピクピク

 

 

 物陰から羨ましそうに見つめてくるマックイーンさんを見て、デジたんは諦めました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

樫本「集まりましたね。では改めて本日のトレーニングの内容とその効果の説明を「トレーナー」?何か?」

 

 

ココン「隣に居る人は誰ですか?」

 

 

樫本「隣?」

 

 

桜木「あ、ども。お構いなく」

 

 

樫本「」

 

 

 あたしを米俵の様に担ぎ、何の躊躇いも無く他チームのトレーナーの隣に立つトレーナーさん。やはりおかしい。気狂いの人です。あたしの感性がおかしいのかと疑いましたが、皮肉にも今絶句している樫本理事長のお陰で自分が正常だと認識出来ました。

 

 

樫本「.........何か、要件が?」

 

 

桜木「っ!ええ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵情視察っっ!!!」ニカッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

樫本「」

 

 

ウマ娘「ヒソヒソ.........うん」

 

 

桜木「?」

 

 

 材料

 ロープ 二人分

 

 

 手順

 巻く

 

 

 完成っ!

 

 

ココン「行きましょう。トレーナー」

 

 

樫本「―――はっ!え、ええ.........」

 

 

グラッセ「ウチの国でも勝つ為に何でもするトレーナーは沢山いたけど、正面突破は流石になかったなー!」

 

 

 見事に縛られました。ええ、まるで泥棒を捕まえるが如く.........何故かデジたんまで同じようにぐるぐる巻きにされて.........皆さんは場所を移すために移動をし始めています。

 いえ、ですがトレーナーさんは説教込みでこの作戦を考えたんです。こんな事態もそりゃ想定済みで―――

 

 

桜木「あちゃ〜。放置プレイは想定外だったわ〜」

 

 

 は?

 

 

デジ「ちょちょちょ!!!待ってください!!!あたしはただ巻き込まれただけで―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待ちなさいッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員「!!」

 

 

デジ「!マックイーンさんっ!」

 

 

マック「.........」

 

 

 ああ!やはり頼りになるのはチームのエースであるマックイーンさん!トレーナーさんなんか宛になりません!こんな人を信じたあたしがバカでした!!!

 お願いしますっ!どうにか上手い言い訳でデジたん達をお救い―――

 

 

マック「ん!」(何故か手に持ってるロープ)

 

 

ファースト「.........(汗)」

 

 

 材料

 ロープ 一人分

 

 

 手順

 巻く

 

 

 完成っ!

 

 

「ねぇ、あの子自分で縛られに来たよ.........?」ヒソヒソ

 

 

「お嬢様の流行りなのかな.........?」ヒソヒソ

 

 

樫本(ゆ、歪んでいるのかしら.........道を踏み外さない内に、私が何とかしなければ.........ま、まずはめ、メジロ家に連絡を.........)ブツブツ

 

 

マック「ふん」フンス!

 

 

 は?

 

 

 

 

 

 は?

 

 

桜木「な〜んで縛られに来ちゃったの〜?」

 

 

マック「こういう経験も必要かと思いまして」

 

 

デジ「い、いらないっ!絶対にいらない.........!レグルスにまともな人はもう残っていないんですか.........!!?」

 

 

桜木「ああ、そして誰もいなくなったってやつ?」

 

 

マック「あら、アガサ・クリスティですか?博識ですわね」

 

 

桜木「読んだ事無いな〜」

 

 

マック「結構面白いですわよ?ネタバレになってしまいますから言えませんけど」

 

 

 なんでグラウンドの隅っこで縛られて座らされてるのに平然と会話をしてるんですか。優雅な午後のティータイムじゃ無いんですよ。完全な見世物として放置されちゃってるんですよ。

 

 

二人「.........」ジー

 

 

デジ「!な、なんですか.........?」

 

 

桜木「いや凄い焦ってるなって」

 

 

デジ「焦るでしょうよ普通!!?この状況で何を平然としてられんです!!?」

 

 

マック「こうなってしまった以上どうにも出来ません。別に怪我して動けない訳では無いんですから」

 

 

デジ「おかしいの.........?これデジたんがおかしいの.........!!?」

 

 

 先程得られた筈の正常性。それが物の見事に揺らぎ、崩れて行く。奇妙な物を見る視線を浴びせられてもお二人は平然とそれを流し、楽しそうに会話を続けています。

 あ、頭が.........!頭がおかしくなるぅ.........!!!

 

 

 そんなデジたんを横に置き、お二人はこんな状況のまま雑談を続けていました。

 

 

 げんなりとした気持ちのまま早く開放されたいと考えていると、チーム[ファースト]が練習を始めたのか、遠くで音が聞こえてきました。

 

 

デジ「っ!何やってるんですか!!これじゃあただ変な事しにやってきただけ―――」

 

 

桜木「.........」

 

 

 流石のデジたんもそろそろ本気で怒ろうと思い、トレーナーさんの方を見ました。しかしそこには先程のおふざけトレーナーの表情は無く、どこか苦しそうにその音の方向を見つめている彼が居ました。

 さっきまでのこの状態にそぐわない和やかな雰囲気から一転、そぐわない陰鬱とした空気が漂い、沈黙が続きました。

 

 

マック「.........何を、お考えになっているのですか?」

 

 

桜木「.........これからの事」

 

 

デジ「っ!」

 

 

 核心を突く問い。それを察して出てきた答えの頭。目を見開きましたよ。流石に、悩み始めてこんなあっさり見つかりそうになると、人って凄く驚くんですね。

 

 

桜木「なんつうかさ、どうすれば良いのか。どうやれば良いのかが分からないんだ」

 

 

桜木「頭にもや掛かっちまっててまとまらないんだよ。特に、[トレーニング]の事とか」

 

 

デジ「え?だって、毎日あたし達にプリント渡して.........」

 

 

桜木「.........あー、そうだった。忘れて今の話」

 

 

デジ「.........いや無理ですよ。どういう事ですか」

 

 

 バツが悪そうに顔を歪ませて目を背けるこの人に、私は体重傾けて問い質します。

 だって意味が分からない。トレーニングが分からないって言っておきながらプリントを用意してきて、それでいてそのトレーニングの方法は明らかにトレーナーさんが作った物に間違いは無い。

 なんです?あたしそういう考察系アニメあんまり得意じゃないんです。人の考察見て聞いて見直すのが好きなんです。

 

 

 はっきり言ってくれないと、あたしは―――

 

 

マック「―――クスクス」

 

 

デジ「ぇ.........?マック、イーン.........さん?」

 

 

マック「ふふ、ごめんなさい。まさかそんな先の事を言い出すとは思わなくって」

 

 

桜木「え〜?鎌掛けたって事〜?」

 

 

マック「あら?鎌なんて持ってませんわよ?勝手に人に物騒な物持たせないで下さいます?」

 

 

デジ(こ、怖い.........)

 

 

 な、なんでしょう。以前のマックイーンさんからは感じられない、剛をも歪ませる柔和さと言いますか.........とても言い表せない物を感じてしまいます.........

 

 

マック「.........大丈夫ですわ」

 

 

桜木「?」

 

 

マック「だって、一度[見つけられた]のでしょう?でしたら、それをもう一度。やるだけです」

 

 

桜木「おいおい、探し物は苦手なの知ってるでしょ?」

 

 

マック「それでも、[見つけてくれた]。でしょ?」

 

 

桜木「!参ったな.........」

 

 

 柔らかい笑顔を向けてマックイーンさんはそう言いました。それを受けてトレーナーさんは恥ずかしそうにしながらも、笑顔を浮かべてそれに応えました。

 え、なんですかこの尊い空間。溶けそう。

 

 

桜木「は〜〜〜、ほんっと、いつまでこの状態なのかね〜。マックちゃんの方が芯あって、頼りになるよ」

 

 

マック「私は見つけたばかりですから。でも、今の貴方と同じ年齢になったら、迷ってしまうかもしれません。だから―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――その時は、[見つけ直した物]。教えて下さいね♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デジ(え、エモーーーーーー!!!!!!!!!!)

 

 

 な、なんですかこの掛け合い!!!激エモすぎやしませんか!!?苦楽を共にしたトレーナーとウマ娘が互いを支え合って.........

 し、しかもちゃっかりこれから十年近いお付き合いをさりげなく約束して.........?は〜〜〜〜〜〜〜〜〜?殺す気ですか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜???

 

 

 で、デジたんは今、とんでもない瞬間に立ち会ってしまっている.........!!!

 

 

桜木「.........分かったよ。約束する」

 

 

マック「ふふ♪やった♪」

 

 

デジ「ゴハァッ!」ズサァ!

 

 

 え、出ちゃった。口から砂糖。こここ、こんな事今まであったっけ?どうしよう、錬金術?おおおおちおちおち.........

 

 

桜木「.........さてと、敵情視察も終わったし、ぱっぱかトンズラこきますかねぇ〜」ゴキゴキ

 

 

デジ「?ひぃ!!?な、何の音ですか!!?」

 

 

桜木「?関節外してんの。縄抜け術。あ因みにこれ[メジロ護身術]の一つね。と」スルスルスル

 

 

マック「流石ですトレーナーさん♪」

 

 

桜木「音を聞いた感じ、そんなぬるくないトレーニングはしてない。やっぱり睨んだ通りだったな」

 

 

二人「?」

 

 

 

 

 

 ―――二人の縄を解きながら昨日の出来事を思い出す。夜の自主練に励むチーム[ファースト]のメンバー達。

 間違いない。トレーニング不足は有り得ない。つまりこれは.........

 

 

桜木(ったく、今の流行りは冷笑系じゃねぇの〜?根性論なのか、はたまた自分を追い込みたいドMなのか.........後者はまぁ、気持ちは分からんでもないけども)

 

 

桜木(前者だったら、ちゃんと正してやらないとな.........)

 

 

 

 

 

......To be continued

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