山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜 作:ギノっち@カマタラル
「えええ〜〜〜ッッッ!!!??」
秋の寒さが日毎に増していく今日この頃。私達はトレーニング開始前のチーム小屋で雑談をしていました。
メンバーは揃い、トレーナーさんもいらっしゃいますが、忙しい学業の終わり。そこからすぐにトレーニングに切り替えるのは全員出来る事では無い。という事で、チーム[レグルス]ではミーティングまでインターバルを置いています。
そこで先日メジロ家で聞かされた事を私は話しました。
バク「めめ、メジロ家が無くなってしまうとは.........!!!」
オペ「そんな事になっていたなんて.........し、シリウスさんは知っていたのですか!!?」
シリウス「いや、私の方でもそんな話は聞か無かった.........ん?マックイーン。その話ってして良いのか?」
マック「?.........ん〜?特別秘密にしておきなさいとは言われておりませんし.........」
名家組(ダメだコイツ、早く何とかしないと.........)
.........何故か複数の方から呆れたような視線を感じましたが、今はそれどころではありません。私は早急に、トレーナーさんに聞かなければいけない事があります。
マック「トレーナーさん。お話の通り、私の卒業後にメジロ家は[レース業界]から手を引くと話をされました」
桜木「ふ〜ん。大変だね〜」
マック「.........驚かないのですか?」
机に着席しながらも身体の向きを逸らし、チョコクッキーを食べながら雑誌を読んでいる彼。
こういった話に無頓着な傾向を示す事は予測していましたが、驚きも何も無いのはやはり不自然極まりません。
桜木「栄枯盛衰。盛者必衰。時代の移り変わりにトップが代わるなんてのは普通の事さ」
桜木「そりゃ、お祖母様の病気でとか、メジロの投資したどっかが倒産してとかだったら驚いたけど、しっかり話し合った結果なんでしょ?じゃあ何も驚かないよ。人が決めた事なんだから」
マック(.........全く、この人は本当に.........///)
何気なくさらりと言ってのけて居ますが、突然そんな成熟された思考をお出しされると困ってしまいます。
マック「.........チュ♡」ナゲキッス♡
桜木「!!?」ガタッ!ドタッ!
マック「ふふ♪」
桜木「な、なに!!?なんなの急に!!?」
彼の透かした態度が気に入らなかったので崩したくなりました。案の定、彼は驚きのあまり椅子から転げ落ち、胸を押さえて肩で息をしています。いい気味です。
まぁ、お陰で呆れた視線の数が増えた気がしましたが、さしたる問題ではありません。
顔を赤らめ胸を押さえながらぶつくさと椅子に座り直す彼を見ていると、不意にこの小屋の扉がノックされました。
ライス「お、お客さん.........?」
ウララ「!チームに入ってくれる人かも!!!」
桜木「いぃ!!?それだけは不味いっっ!!!??」
タキオン「.........ん?[不味い]だって?」
桜木「ギクッ.........」
ブルボン「マスターから異常な発汗を検出。通常から20%程の増量。[冷や汗]に該当します」
ウララ「入部♪入部♪」ガチャ!
なんともまぁこの短時間で少し混沌としたやり取りを繰り広げられましたが、意外な来訪者がそれを静まらせました。
大きなダンボールを台車に乗せながら小屋へと入ってくる人物。緑の制服に身を包んだ事務員。駿川たづなさんでした。
たづな「お届け物です♪」
桜木「(ホっ)たづなさ〜ん!どうしたんですかそれ?」
たづな「ふふ♪なんだと思いますか?」
桜木「何だろう重っ!!?何入ってるの!!?」
たづな「よいしょっと♪」
台車から地面へ移そうとしてトレーナーさんが下から持ち上げようとした所、箱は少しだけ浮いた物の、下ろすまでには至りませんでした。
しかし、たづなさんはそれを軽々しく持上げて地面へと下ろします。その光景を見て皆さんが驚き、固まっていると、彼女はその天面をトントン。と指で叩きました。
すると次の瞬間。箱がガタガタと音を立てて動き始めます。それを見て一斉に全員で部屋の隅へと移動しました。
全員「ひぃぃぃ〜〜〜!!!??」
マック「トレーナーさんっ!!!こ、怖いです.........!!!」
桜木「っ!マックちゃん.........!!!」ギュ!
ポッケ「な、なんだよアレ!!?」
桜木「分かんねぇよ!!!カフェなんか分かる!!?霊障界隈のカフェさん!!?」
カフェ「わわわ分かりません!!!あ、アレは完全に生き物です!!!ん?今私冷笑界隈って言われました!!?」
桜木「言ってない!!!タキオンなんか箱の中身分かる装置とか無いの!!?」
タキオン「あああ生憎ガジェット作成は専門外だ!!!そんな物を作る程物好きじゃないからねぇ!!!」
カフェ「チッ」
タキオン「えぇ!!?今誰か舌打ちしたかい!!?」
シャカ「こんな事態ロジカルじゃねぇクソなんでこんな事にだから嫌なんだよこのチームふざけやがってイレギュラーばっかじゃねぇかここ」ガタガタブツブツ
ゴルシ「おおおおいゴルシちゃんも入れてくれよそのおしくらまんじゅうの中に!!!グリフィンドールとか贅沢は言わないから!!!外側は嫌だ外側は嫌だ外側は嫌だ!!!」
オル&フェスタ「外側!!!」
ゴルシ「クソァ!!!」
ズバァッッッ!!!!!
「サプライズッッッ!!!!!」
全員「―――ぇ」
―――さっきまでの慌てふためきはどこへやら。箱の中身が出てきた瞬間、小屋は静寂に包まれた。
無理もない。箱の中に人が入っているなんて、そんなものショーでしか見た事がない上に、その中身もまた予想外だったからだ。
その人物とは正に.........
たづな「お久しぶりです♪[秋川理事長]♪」
やよい「Umっ!!あいや、うむっ!!留守の間の事、助かったぞたづな!!」
桜木「り、理事長.........!!?」
そう。[秋川やよい理事長]。本来であるならばアメリカに出張という事で丸3年は帰ってこない筈だった。それが1年。そしてこの登場。普通の人間にとっては頭が追い付く筈が無い。
そんな中、マックイーンが恐る恐る、彼女にそれを聞いた。
マック「あの〜理事長?つかぬ事お伺いしますが、出張は3年だったのでは.........?」
やよい「イグザク.........じゃない!!明瞭!!流石はメジロマックイーン!!!一年前の事を良く覚えていたな!!!」
桜木(なんか褒めるハードルが低くなってる.........)
かっかっかと笑い声を上げながらいつもなら扇子をバサッと広げる所。しかしそこもアメリカナイズされたのか、昔どっかで見たチョコレートのパイプを口に咥えて話し始めた。
ーーー
無論、最初は苦労した。分からぬ言語、分からぬ文化、そして分からぬ理論。にっちもさっちも行かぬ事ばかり。
普通の人間ならばそれでも、と、根気強く私に接してくれたであろう。だが私は見た通り子供だ。
それも相まって、侮られていたのだ。あの調子のままでは本当に3年は掛かったいただろう。
しかし!幸運にも私には知り合いが居た!!以前、この学園に来ていたトレーナーを偶然発見したのだ!!
ん?ニコロ?誰だそれは?私が言ったのはリッティントレーナーだ!!人の名前を間違えて覚えていたのか?
何?あだ名?笑顔が下手くそだから上手くなるように?アメイジング!!やはり君は素晴らしいトレーナーだ!!
彼の助力もあり、私は一年程でアメリカのトレセン学園の運営方法を学ぶ事が出来た!!
友人も沢山出来たぞ!!日本に帰る時は学園の生徒、職員全員が空港に押し掛けてきてパンクした程だった!!
その時私はつい言ってしまった!!
アンビリーバボー!!とな!!
ーーー
やよい「という訳だっ☆」
全員(む、無茶苦茶だ.........!!!)
ざっくばらんに説明を受けたが、あまりにも常軌を逸している。先日の事で帰ってきた事自体は把握していたが、その業務内容を聞いてドン引きた。
俺だってここに来る前は一端の社会人として三年は過ごしている。それと同等の時間が掛かる出張。業務内容なんざ考えたくもない。
それをあろう事か一年。たった一年で終わらせて帰国してきたぁ?この人は何?一体何を目指してるの?総理大臣?
桜木「.........ていうか!!来るなら来るってこの前の電話で言ってくださいよ!!俺の近況報告だけさせてぇ!!!ぶつ切りしたあれでぇ!!」
やよい「陳謝っ!!実は明朝に提案をされて実行したのだ!!あまり事を大きくしたくなかったのでな!!」
桜木「誰の提案です!!?」
やよい「メジロラモーヌだ!!」
マック「ラモーヌお姉様!!?」
その人物を聞いて、脳裏に情景を浮かべる。殆どの人は頭を捻って想像付かない様子だったが、夏合宿である程度人柄を知った人間はありありと、その提案を素っ気なくして居る姿が目に浮かんだ。
フジ「でも、どうしてこのチームに、しかもこんな隠れる形で来たのですか?理事長の立場を考えればまず、チーム[ファースト]へ顔を出すべきと思いますが」
やよい「聡明っ!!フジキセキよ!!君の指摘は最もである!!」
やよい「しかし!!今このトレセン学園は新しき風。いや、最早[暴風]と言っても良い程の変化が訪れている!!」
やよい「私が求めているのは!!全てのウマ娘っ!!全てのトレーナーっ!!それぞれが思い思いのやり方で[繋がる]学園なのだ!!」
やよい「故に!!私はどちらかを[排除]するという考えには賛同できない!!君もそうなのだろう?桜木トレーナー!!」
.........そう、なのだろうか。理事長のその言葉に対し、俺は肯定を示せる程に今の自分に自信が持てない。自分が何なのか、ハッキリとしない。
それもきっとあるのだろう。だがそれが果たして純度100%の物なのかまでは分からない。
それほどまでに俺は、[俺]が分からなくなっているんだ.........
桜木「.........」
タキオン「所でトレーナーくん?先程言った[不味い]というのはどういう事かな?」
桜木「君空気読めないねェ〜!!?」
タキオン「まるで、新人が[来て欲しくない]という言い草だったが?」
桜木「それは〜、ね?理事長っ!ね!!」
やよい「?何故だ桜木トレーナー!!この機会に新人ウマ娘をチームに引き入れれば良いだろう!!でなければ[来年]出遅れてしまうぞ!!」
桜木「―――ゑ゛!!?」
俺は思わず驚愕の声を漏らしてしまった。それもセル第二形態の様な表情で、だ。
そこで俺はすかさずたづなさんの方を見る。どうやら伝えていないらしい.........いや、この人の性格を考えるに大事にしそうだ。判断は正しいだろう。
やよい「教示!!聞けば君は今、プリントに印刷したトレーニング内容を各トレーナーに渡し、トレーニングさせているそうだな!!」
桜木「それは〜、その〜.........」
たづな「あの、理事長?桜木トレーナーさんも困っていますし、そろそろ本題に.........」
やよい「拒否ッ!!見ろたづなっ!!今のチーム[レグルス]の表情をっ!!初期から居るメンバー以外、全員彼に疑いの眼差しを向けているッ!!」
桜木「っ.........」
たづなさんの静止を振り払い、追求する理事長。彼女の言葉を聞き、俺は振り返ってチーム全体を見渡す。
その言葉通り、大体のチームメンバーが俺に疑いの目を向けている。
たづな「理事長っ!!」
やよい「のわっ!!?な、なんだたづな!!?なぜそんなに怒っている!!?」
たづな「良いですか理事長っ!桜木さんは「良いんです」―――っ、ですが.........」
桜木「いずれ言わなければいけない事なんです。それを言って解消されるんなら、安いもんですよ」
―――彼は表面上は他人事の様に言いながらも、若干苦しそうな息遣いをしていました。
重さを感じさせる足取りで机へと向かって行き、ノートPCを引き出しから取り出して操作をして行きます。
タイピングの音のみが少しの間響き渡り、操作をし終えた彼が画面をこちらへと向けました。
桜木「どうぞ。ご査収ください」
やよい「.........細部を見るまでもない。桜木トレーナー」
シャカ「どういう.........事だよ.........ッッ!!!」
マック「っ、トレーナーさ―――っ」
皆さんがその向けられた画面を食い入る様に見て行きます。理事長は一目見た瞬間に何が起きているのかを把握し、彼の顔をじっと見つめています。
エアシャカールさんが操作をし、大量にある私達の名前が入った[ファイルフォルダ]を一つ一つ、その中身を確認して行きました。
ただならぬ事態になりかねない。そう思った私は一旦それを止めようとしましたが、タキオンさんが肩を掴んでそれを阻止しました。
ファイン「これ、本番までのトレーニングメニューですよね.........?」
ミーク「全員分.........ちゃんと、ある.........」
シリウス「ああ、ご丁寧に配布予定の日付で名前付けされてやがる」
オペ「それだけじゃない。後で書き加えた事を記す物が何一つ無い。これを全て、たった[一日]で.........」
イクノ「中身も配布されている物と変わりありません。私達の成長曲線を先々週末の時点で割り出しているとしか.........」
バク「つ、つまりどういうことでしょうか!!?これをこなせば、私も長距離を走り切れる様になるということでしょうか!!?」
全員(それは無い.........)
ターボ「なんか皆難しい事しか言ってない!!ターボにも分かるように言って!!」
ネイチャ「え、えぇ!?アタシ!!?ち、ちょ〜っと荷が重いかな〜.........?」チラ
マチタン「えぇ〜!!?私も分からないよ〜!!分からない事は〜.........」
ターボ「あっ!!トレーナーに聞きに行けば良いんだ!!」
マチタン「!それだぁ〜!!」
全員「.........」
そんな様子で和気あいあいとしながらお二人は小屋から出ていきました。恐らく所属元のチーム[カノープス]を管理している南阪トレーナーの元まで向かったのでしょう。
ナイスネイチャさんが申し訳なさそうに何度も頭を下げていますが、正直重苦しいだけの空気を和ませて頂いて有難い限りです。
やよい「桜木トレーナー。聞かせてくれないか?君の口から、真意を聞きたい」
桜木「.........何故、俺が今更こんな手法の育成に切り替えたのか。それは―――」
.........一呼吸置いた後、彼は淡々と。これまた他人に起きた出来事を語る形で自身の現状を説明し始めました。
アオハル杯の予選決勝の後、重度の[適応障害]と診断された事。
それに伴い、通常業務であるトレーニングの構築が非常に難しい物になってしまった事。
現状、治療薬の副作用を考え、強さを抑えて処方して貰っている事。
そして、このデータ制作は後に、自身が学園を離れた時にも役立つ事.........
混乱を避ける為、何故そうなったのかは上手く誤魔化しておりました。実際、[願望器]とか[神様]とかの話が出てきても困るでしょうし、私もフォローしきれません。
やがて、彼は一つの[結論]を口に出そうとします。先程の冷淡な他人事から打って変わり、苦しそうに拳を握りしめ、歯を食いしばりながら俯きました。
桜木「だから俺は.........」
全員「.........」
桜木「俺、は.........!!!」
「みなまで言うな。桜木トレーナー」
桜木「っ!理事長.........」
やよい「君の現状は理解した。さぞ辛い毎日だったろう」
やよい「皆に心配かけさせまいと、何も言わずに抱え込んでいたのだな.........」
全員「.........」
咥えていたチョコパイプをティッシュに包み、ゴミ箱へと捨てる理事長。その腰から大切そうに包装された物を取り出します。
やよい「.........うむ。やはり私にはこちらがしっくりと来るな」
やよい「要請ッッ!!!桜木トレーナーよッッ!!!君に一つ、確認したい事があるっ!!!」
やよい「君はっ!最後までその身体を持たせられるかッッ!!!」
桜木「っ、それ、は.........」
たづな「っ!理事長っ!!それ以上はコンプライアンスが「君はッッ!!!」―――!」
「―――まだ[戦える]かッッッ!!!!!」
桜木「―――.........」
―――理事長は、この人は強く、そして真っ直ぐな目で俺を見つめた。その視線を中心に、心のモヤが霧散していく感覚があった。
ピントが、距離が、輪郭が、光が、全て収束してハッキリとした実像を捉え始めていく。
.........俺は、まだ、[戦える]。
でも、それをやり遂げるには―――
「―――話は聞かせて貰った」
不意に玄関から声が聞こえてきて、その方向へ目線を向ける。そこに立っていたのは[沖野]さん。そして[桐生院]だった。
桜木「沖野さん.........!!?それに桐生院さんも、どうして.........」
沖野「どうしたもこうしたもあるかッ!!お前なぁ?いつまで経ってもウチの担当が来ねぇから様子見に来てやったんだっての」
桐生院「そうですよっ!!沖野トレーナーはともかくっ!!私はチーム[レグルス]に所属しているサブトレーナーなんです!!そう言った事は連絡してくれないと!!」
面倒臭そうな表情で嫌味をぶつけてくる沖野さんと、至極真っ当な正論で怒りをぶつけてくる桐生院さん。その言葉に申し訳なく頭を下げている俺に対し、沖野さんはため息を吐いて親指で外を指し示した。
何かと思い玄関へ向かうと、そこにはウチのチームに所属してくれていたそれぞれの外部選手。その担当トレーナー達が集まっていた。
桜木「な、なんで.........?」
南坂「その、ツインターボさん達が先程あった事を教えてくれまして」
黒沼「廊下で、聞き逃すのが難しいくらい大きな声でな」
二人「えへへ〜」
東「褒めては無いと思うぞ.........?」
東条「ここに居るトレーナーに新人は居ないから、その話を聞いて皆察したわ。貴方がどういう決断を下したのか」
バク「ちょわ!!?とと、ということはつまり、トレーナーさんはこの一連の事に関して既に答えを得ていると!!!私っ、学級委員長でありながらちんぷんかんぷんで!!!」
バクT「.........バクシンオー。これは、つまり。桜木トレーナーは[新たなステージ]に行こうとしているんだ!!」
何を言ってるんだこの人は。と口に出しかけたが、それを遮るようにバクシンオーはその言葉に感銘を受け、自分の世界へ浸り始めた。
それを見て何故か安心した様子の彼女のトレーナー。嘘はついてない。と自分に言い聞かせているのが怖い。
その光景に呆気に取られていると、背中に指をトントンと当てられる。振り返るとそこには、優しい表情をしたマックイーン達が立っていた。
マック「貴方は秘密主義が過ぎます。いつもいつも、こうして汲み取らなければいけないんですのよ?」
桜木「.........ごめん」
マック「よろしい。では♪」
桜木「.........ん?ど、どこへ?」
彼女は優しい表情から一変。嬉しそうで楽しそうな笑みを浮かべながら俺の手を引いて玄関の方へと向かおうとしていた。
マック「決まってるではありませんか♪デートですっ♪」
全員「ハァッッッ!!!??」
二人「きゃーーーっっ♪♪♪」
思わず声を上げた。殆どが驚愕の声。黄色い声二人はファインモーションとカレンチャンというお茶会組。平常運転なのは良いが流石に取り繕った方が良い。理事長の前だぞ。
そしてマックイーン。君も首を傾げるな。天然なのも可愛いけど流石に擁護できないぞ。
フェスタ「ち、ちょっと待てよ!!?今の話でデートに行く正当性あったか!!?」
マック「ありませんけど?」
オルフェ「無いの!!?逆の逆に!!?」
テイオー「マックイーンおかしいよー!!ゴルシからもなんか言ってよー!!」
ゴルシ「こ、この積極性なのか.........?アタシに足りないのは.........」
タキオン「.........普段なら陥らずにツッコミを入れる筈のゴールドシップくんがここまで.........腕を上げたね」ゴクゴク
ライス「タキオンさん.........それカフェさんのコーヒー.........」
やよい「せ、静止ッ!!メジロマックイーンっ!!今は大事な話があるんだ!!この際その行動は許すが少し時間を―――」
マック「嫌ですっ!!私はもう普通の女の子ですっ!!よってデートに行きます!!それではっ!!」
桜木「どわっ!!?ちょちょちょっと待って!!?PCの中身勝手に見ていいですからッッ!!!使えるもんあったら勝手に引き抜いてって下さぁぁぁい.........」
ウララ「トレーナー!!ゆっくり休んでねー!!」
―――メジロマックイーンに手を引かれて出て行った桜木トレーナー。それを見送るようにハルウララは外まで出て手を振った。
その光景に呆気に取られていると、そんな事も気にせずに東トレーナーは彼のノートPCを操作し、口を開いた。
東「よし。一旦俺らはこのデータの中身を確認していく。よって今日のトレーニングは.........休みだっ!!」
ウマ娘「おお〜〜〜!!!」
湧き上がる歓声。久々の平日の休みという事で盛り上がるウマ娘達。それに目もくれず彼の残したデータに関して議論をするトレーナー達。
やよい「.........」
この光景。私はずっと望んでいた。トレーナーとウマ娘。お互いがありのまま、自分らしく居るこの[トレセン学園]を.........
かつて、純粋に走りたいウマ娘達とそれを支えたい、いずれトレーナーと呼ばれる者達が居た。彼等彼女等が集まり、トレセン学園は生まれた。
しかし、いつしかこの場所は肥大化し、それだけではなくなってしまった。過酷なトレーニング。過密なスケジュール。それを強いる外部の存在が強く、そして大きくなってしまった。
私は、かつてのトレセン学園を取り戻したい。[古き良き]を追い求めるでも無く、[最先端]を追い求めるでも無い。
私はただ―――
―――[夢追い人]を支える[トレセン学園]を.........
やよい(.........ふふ、桜木トレーナーよ。そう言った意味では、君に一歩先に行かれてしまったな)
目前の光景に若干の嫉妬にも似た感情を抱きつつも、この場でやる事を終えたと考えた私は皆に対して激励を伝える為、扇子を勢い良く開いた。
やよい「退散っ!!諸君っ!!アオハル杯決勝を楽しみにしている!!」
全員「!はいっ!!」
たづな「.........あぁーっ!!!」
やよい「わわっ!!?」
突然、何かを思い出したかのように大きく声を上げるたづな。その声に全員驚いて居ると、焦った様な表情で彼女は私にその内容を告げた。
たづな「どうしましょう!!?桜木トレーナーに樫本理事長の事を伝えてません!!!」
やよい「.........あ」
その言葉で、今日ここに来た本来の理由を思い出す。
樫本理子。彼女の事。それを伝える事を完全に失念した事を今になって気付いたのだった.........
ーーー
トレセン学園から二人で飛び出した俺達。いつかどこかで見たラブコメ作品なら普通にこの状況を楽しみ、更に仲を深める事が出来ただろう。
だがそこはトラブルメーカー桜木。意図もしない出会いによって、彼女の気遣いの全てを無に帰す事になってしまった。
「どうしたんだい?そんなに項垂れて」
二人(どうしたもこうしたもない(わよ).........!!!)
その原因は目の前に居る存在。カジュアルな服装と帽子を被り、あたかも一般人ですと言った顔で立っているが正真正銘の[神]。[アニマ]が何故か俺達の行った先に居たのだ。
普通ならば、だ。そう言った、その。正しい表現かは分からないが、知り合いの[逢引シーン]を目撃したのなら、自分が見つからないようにそそくさとその場を離れるのが筋。常識だろう。
だがコイツは違った。寧ろ近付いてきて図々しくも俺達二人に着いていきたいとのたまいやがった。殺してやろうか今ここで。
そんなイライラでストレスが爆発しそうになっていると、不意にマックイーンが俺の裾を掴み、耳元に口を近付けて来た。
マック(そもそもっ、なんであの人が居るんですの!?)
桜木(知らないよ!!この前家に来たけどっ、もう悪さはしないっつってたしっ!!それにこうなるなんて思いもしなかったんだ!!)
アニマ「おおっ!あの一際光を放つ建造物は何かな!とても気になるよ!!」
桜木「テメェッ!!!団体行動取れねぇのかッッ!!!」
俺達の気持ちなど無視するようにルンルン気分で目に付いたその建物へ入っていく。神様にはとても新鮮な物に見えたのだろう。
この、[ゲームセンター]は.........
......To be continued