山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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トレーナー「俺とマックイーンと夏祭り」 (前編)

 

 

 

 

 

 

 夏の暑さが真っ盛りになってきた時期。世間では祭りだ海だと騒ぎ立てているが、中央の暑さにはもうほとほと愛想が尽きてきた。本当に北海道に帰ろうかななんて思ってしまう。

 いつもの休日ならば新しい家の中でクーラーを効かせ、冷たいジュースでも飲んでるはずだが、今日はそうも行かない。話は数日前に遡る。

 

 

桜木「あぢ〜.........」

 

 

マック「最近、開口一番にそれですわね.........」

 

 

桜木「だって仕方ないだろ〜.........?中央の暑さは身体を壊すって死んだばっちゃも言ってたし.........マックイーンは平気なの〜?」

 

 

 グダるような暑さで、チームルームの机に突っ伏していた。最近はおはようとか、こんにちはとかより挨拶に使ってる気がする。

 アイツらとの挨拶もこれ、特に神威は俺と同じで就職するまで北海道暮しだった為に、俺と同じ挨拶だ。生徒にしないだけ俺よりマシだがな。

 

 

マック「私は中央で育ちましたから.........暑さには強いつもりですわ」

 

 

タキオン「ト゛レ゛ーナ゛ーく゛ーん゛」

 

 

桜木「うおびっくりした!?」

 

 

 扉を開けて入ってきたのはアグネスタキオン。正確にはアグネスタキオン夏の姿だ。うだるような暑さの中で萌え袖白衣とか自殺行為じゃないか?そんな全身に保冷剤とか言う救済措置をしてまで着たいか?

 

 

タキオン「なんだこのうだるような暑さは!!?」

 

 

桜木「白衣脱げばいいんじゃないですかね」

 

 

タキオン「くっ、研究者としてこれだけは譲れない.........!!!」

 

 

 なんだその無駄なプライドは、鳳凰院凶真か貴様は。しかし、タキオンには相当世話になってしまっている。今日はそのストレスを俺にぶつけてこないだけマシって奴だろう。

 仕方ないので手にあるミニ扇風機を渡した。仕方ないので。

 

 

タキオン「おや、気が利くねぇ。この暑さの腹いせに君から不快な成分が排出されて生理的に拒絶される薬を試そうと思ったけど止めておこう」

 

 

桜木「なんちゅう薬作っとんじゃ」

 

 

マック「そんなものも作れるのですね.........」

 

 

 最近では俺が飲む薬のグレードがアップし、それを使ってストレス発散を目論んでいる。まあ俺も悪い事をしたと思っているので、罪滅ぼしの為に飲んでる事が多い。けど皆から嫌われるのは嫌なのでそれだけは飲みたくない。

 

 

タキオン「.........そうだ、いい事を思い付いたぞ!」

 

 

 それは本当にいい事か?そんな疑問を抱いてしまったが、それは全くの間違いではなかった.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「何が感情の揺れ動きを計測したいだ?暑さに苦しむ俺を見たいだけなんじゃないのか.........?」

 

 

 タキオンの提案してきたいい事。それはマックイーンと夏祭りに行くことだった。本人曰く、成人男性とウマ娘との感情の揺れ幅の違いを計測し、それが身体能力にどのような影響をもたらすのかという実験データを取りたいらしい。

 マックイーンもすごく乗り気だった。こんな男と一緒に行くより、同世代との祭りの方が楽しいだろうに.........

 待ち合わせ場所はお祭り開催場所近くの銅像。近くで待ち合わせしているのはカップルだろう。既に2、3人は異性と祭りへと向かって行った。自分もそういう風に見られてしまうのかと思うと、誰にでもなく言い訳したくなってしまう。

 

 

マック「トレーナーさーん!」

 

 

桜木「おー、マック.........イーン.........」

 

 

 成程なー。アグネスタキオン、君の憶測はあながち間違いじゃないぞ。なんせ心臓の音がうるさい。やかましいから止めたいくらいだ。

 彼女は俺の姿を見つけると、手を振りながらこちらへ歩いて来た。いつもの私服姿ではなく、夏祭り仕様だ。

 浴衣姿なんて、ベタだし予想もしたじゃないか。けれど、実際のマックイーンが見せる浴衣姿は、とても美しい姿だった。

 

 

桜木(俺、どっちかってーと可愛い系の方が好きだったはずなんだがなぁ.........)

 

 

マック「トレーナーさん?どうかしましたか?」

 

 

桜木「いや、なんでもないよ。早速行こうか」

 

 

 黒をベースとした柄入りの浴衣。髪はいつもと違い後ろで束ねられている。トレーナーになってから俺の趣味趣向がどんどん変えられて行っている気がするのは気の所為ではあるまい。

 

 

桜木「大丈夫?」

 

 

マック「え、ええ.........少々歩き辛いですが何とか.........」

 

 

 確かに、普段がっつり走り回るウマ娘がスピードを制限されるのはとてももどかしいだろう。困った様に笑う彼女の隣をゆっくりと歩く。

 

 

桜木「その、似合ってるよ。浴衣」

 

 

マック「本当ですか?」

 

 

 嬉しそうに、そして自慢するようにその場で回って見せてくれる。女の子ってこういう所が様になるよな。心に来るものがある。

 行き交う人々は皆、彼女に一度は視線を送る。それがなんだか嬉しいような嬉しくないような、複雑な感情を呼び起こす。

 

 

マック「ふふっ、家の者に頼んで着付けた甲斐がありましたわ」

 

 

 口元に手を当てて笑う彼女は可愛らしい。釘付けになっていたいが、今日の目的はマックイーンと夏祭りを巡り、タキオンにデータを送る事だ。いつまでもここにいる訳には行かない。

 

 

桜木「はぐれないようにしような、マックイーン」

 

 

マック「ええ、先導の方、お願いしてもよろしくて?」

 

 

桜木「もちろん、今日くらいはいい格好させてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「はい、マックイーン」

 

 

マック「あ、ありがとうございます.........」

 

 

 トレーナーさんは両手に持ったチョコとスプレーでデコレーションされたバナナを片方、私に下さいました。

 

 

マック「あの、本当によろしいのですか?お金なら私.........」

 

 

桜木「いいのいいの。格好付けさせてくれって言ったろ?」

 

 

 もう、この人はそう言って、ニカッと笑うんですから何も言えませんわ.........本当にこの人は.........全くもう!

 先程もそうです!開口一番に言ってくれないから少し面食らってしまいましたわ!ふ、普段なら落ち着いて対応するはずですが、似合ってると言われて舞い上がってしまうなんて.........うぅ、まるで子供です.........

 

 

マック「.........美味しいですわ」

 

 

桜木「え?なんか怒ってる?」

 

 

マック「なんでもありません!」

 

 

 覗き込むように見てくるトレーナーさん。乙女にそんなことをしてはいけません。思わずドキッとしてしまいました。

 ですが、このバナナに免じて許してあげます。初めて食べましたが、とても美味しいです。確か、屋台の前面にはチョコバナナと記載されていました。安直な名前ですが、良いものですね。チョコバナナ。

 

 

桜木「美味しい?」

 

 

マック「はい!初めて口にしましたが、チョコとバナナの味が絶妙にマッチしてて、とても美味しいですわ!」

 

 

桜木「え?初めてなの?」

 

 

マック「あ、ええ.........恥ずかしながら、こういう所に来るのは幼少期以来でして.........」

 

 

 あの時はご飯を何品か食べてお腹いっぱいになってしまったので、スイーツは食べれなかったのでした.........思い出してみれば、食べたかった物の中にはこのチョコバナナも含まれていたと思います。

 

 

マック「.........ふふふ、トレーナーさんは私の知らないことを教えてくれる人ですわ」

 

 

桜木「お、おう.........なんか恥ずかしいな.........」

 

 

 はははと照れ笑いを浮かべながら、彼もチョコバナナを口にしました。食べ歩き.........というのは、少々お行儀の良くないものですが、お祭りでは許されるとトレーナーさんが仰ってくれたこともあり、私もチョコバナナを食べながら彼の隣を着いていきました。

 

 

桜木「お!見ろマックイーン!!わたあめもあるぞ!!」

 

 

マック「まぁ!わたあめですか!?」

 

 

 夏のお祭りといえばわたあめです!!私自身は食べたことがありませんが、やはり、小さい頃の記憶にはあの白いふわふわが印象に残っています。一体どんな味がするのでしょう?

 そんな考えに耽っているうちに、トレーナーさんがわたあめを私の前に突き出してきました。

 

 

マック「え?ト、トレーナーさん?」

 

 

桜木「あ、行儀悪いとか言うなよー?お祭りでは食べ切る前に食べ物買っても良いんだからなー?」

 

 

 まるでイタズラをする様な顔でわたあめに口をつけるトレーナーさん。まるで子供みたいです。

 なので、私もそれに習い、わたあめに口をつけました。大人のトレーナーさんがやっているのです。まだチョコバナナが残っていますが、関係ありませんわ!

 

 

マック「〜〜〜!とっても甘いですわ.........!」

 

 

桜木「ははは!マックイーンにとってはお宝がいっぱいだな!」

 

 

マック「ええ!こんなに素敵なものだったのですね.........!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タキオン「順調みたいだねぇ.........」

 

 

黒津木「おー、アイツもいい感じにエスコートしてんじゃん」

 

 

 手に持った双眼鏡でモルモット君とマックイーン君の姿を追う。二人の会話の様子に笑顔は絶えていない。私の隣には同じように双眼鏡で二人の後を見る黒津木君が居た。

 

 

タキオン「おっと、見えなくなってきた。そろそろ移動するよ、黒津木君」

 

 

黒津木「えー?まだ後を追うのかぁ.........?」

 

 

タキオン「君が最初に言ったんじゃないか!!すれ違いながらも両者を思い合う姿を見るのが一番感情を揺さぶられると!!」

 

 

黒津木「いや、言ったっちゃ言ったが、あれは少女漫画を見てた俺の言い逃れでしか.........」

 

 

タキオン「君のせいでトレーナー君とマックイーン君の絡みを見てないとオチオチ薬も満足に作れない!!!」

 

 

黒津木「悪かったよー!!!許してくれよー!!!」

 

 

タキオン「ダメだ!行くぞ!黒津木君!!」

 

 

 嫌がる黒津木君の首根っこを捕まえた私は、モルモット君達の後を追うべく、人混みの中を掻き分けて行こうとした。

 

 

黒津木「おいおい、せっかくタキオンも俺も、オシャレしてきたんだから自然体で追わない?下手なことすると職質されて元も子も無いぜ?」

 

 

タキオン「むぅ.........確かにそれは面倒だが.........」

 

 

黒津木「頼むよー大人は一回職質されると顔を覚えられてブラックリストにぶち込まれるんだよー.........」

 

 

 それは本当かい?けれど彼の顔からは嘘をついている感じはないしな.........むぅ、ここは双眼鏡を断念するか.........

 

 

黒津木「代わりと言っちゃなんだが、超高性能盗撮カメラで撮ろう」

 

 

タキオン「なんでそれを早く言わないんだ!!心配して損した!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「〜〜〜♪クレープも格別ですわ♪」

 

 

桜木「だなー。お祭りで食べると美味しさが変わる気がするー」

 

 

 二人でクレープに舌鼓しながら、前へ前へと歩いて行く。結構歩いている気がするが、屋台の並びは途切れる事が無い。

 次は何を食べようかと思っていると、マックイーンの顔が少し曇っているように見えた。

 

 

桜木「なんだ?心配事か?」

 

 

マック「えぇっと、こんなに食べて大丈夫かと思いまして.........」

 

 

桜木「ああ、そのことなら心配ないぞ!!」

 

 

マック「?」

 

 

 肩から下げたバッグに手を入れ、そこから一冊のノートを取り出し、マックイーンに見せ付ける。

 

 

桜木「じゃーん!マックイーンスペシャル献立表パート3!!」

 

 

マック「まぁ!」

 

 

桜木「栄養について勉強してみたけど、どうやら栄養吸収率は人類みな100%。けれどカロリーを消費してくれる遺伝子が違うせいで、痩せにくいって人も居るらしい」

 

 

桜木「そこで運動前に、脂肪を燃焼させるという効果を持つ成分を摂取できるように調整したんだ」

 

 

マック「何から何まで.........ありがとうございます。トレーナーさん」

 

 

 献立表を見せてみると、驚いた様に目を見開く反応を見せるマックイーン。礼を言ってくれる彼女には申し訳ないが、いつまで経ってもドキッとする。

 

 

桜木「あー、申し訳ないな。休日までトレーニングの話しちゃって.........」

 

 

マック「いえ!それだけトレーナーさんが私のことを思ってくださってるという事です!謝る必要はありませんわ!」

 

 

 そういう彼女の目はキラキラとしていた。そんな真っ直ぐな目で見つめられるとすごくむず痒い。

 そんな彼女の目から逃れるように視線を外すと、見知った後ろ姿の三人がそこには居た。

 

 

ゴルシ「焼きそば〜!焼きそば〜要らんかね〜?」

 

 

ウララ「出来たてホヤホヤだよー!!温かいうちにどーぞー!!!」

 

 

ライス「と、とっても美味しい焼きそば!一緒にい、いかがでしゅ.........噛んじゃった〜」

 

 

桜木「うちの子達じゃん.........」

 

 

 前を焼きそばを売りながら歩く三人。動く出店というのはなかなか斬新なアイデアではないか?少なくとも故郷の北海道では見た事がない。

 

 

桜木「よっ、楽しそうだな」

 

 

ウララ「あ!!トレーナーだー!!マックイーンちゃんも!!」

 

 

マック「こんにちは、ウララさん。ライスさん」

 

 

ライス「う、うん!こんにちは、マックイーンさん!」

 

 

ゴルシ「アタシは!?なぁ!!なぁなぁなぁ!!アタシには!?」

 

 

マック「もう!うるさいですわね!こんにちはゴールドシップさん!!これでよろしいですか?」

 

 

 いつものようにゴールドシップとマックイーンは言い争いを始めた。良かった。普段のマックイーンを見てないと今日は非日常すぎていらん事を言うかもしれない。

 そんな二人をほっといて、俺はウララとライスに気になっていた事を質問した。

 

 

桜木「ゴールドシップは分かる(分からない)けど、お前らは何してんだ?」

 

 

ウララ「えっとねえっとね!!商店街のおじちゃんがね?具合が悪そうだったの!!」

 

 

ライス「前の日の準備は大丈夫だったんだけど、夜に腰を痛めちゃったんだって.........!」

 

 

桜木「え?じゃあ出店の方は?」

 

 

ウララ「司書さんと社長とブルボンちゃんが焼きそば売ってるんだよ!!?凄いよね!!!」

 

 

 そういうウララはパーッと花を咲かせるように笑った。可愛いヤツめ、俺の家の隣に越して来て欲しい。

 

 

ライス「けど.........大丈夫かな?お兄さま達.........」

 

 

桜木「大丈夫だろ、翔也はともかく、創の奴は自炊して長いし」

 

 

 右手に持ったフランクフルトを左手に持ち替え、ライスの頭を撫でた。いい触り心地だ。理事長の子猫も潜り込む理由がよく分かる。

 ついでにウララの頭も撫でた。そこに居たから。二人とも可愛いな。妹とはまた違う妹感がある。なんだろう、メロンソーダのメロン味と似た感じ?

 

 

桜木「それにしてもブルボンか.........後で出店の方にも顔出してくか」

 

 

マック「トレーナーさん」

 

 

桜木「ん?どうした?マックイーン.........」

 

 

 つんつんと背中をつっつかれ、その方向に振り返る。あまり脇腹ら辺をつっつくのは止めて欲しいが、俺が反応しなければいいだけの話だ。

 声の主からしてマックイーン。しかし彼女は何故か狐のお面を付けていた。

 

 

桜木「それは?」

 

 

マック「ゴールドシップさんがくれました。いつも付き合ってくれる礼だと.........」

 

 

 狐のお面を右方向にずらし、その顔を見せてくれるマックイーン。その顔はどこか困惑気味だ。突っついた方とは違う手にはりんご飴も持っている。お祭りの定番といえば定番だ。

 

 

ゴルシ「本当は二週間目くらいのテンションのセミをやろうと思ったんだけどよー?見つかんねえからお面と飴にしたんだよー。つまんなくて悪いなーマックイーン」

 

 

マック「結構です。こちらの方が貰って嬉しかったので、見つからなくて良かったですわ」

 

 

 若干身の毛をよだたせたマックイーン。にじみ出る怒りをぐっと堪えている様子だ。空いている方の手で拳を作っている。

 そこでふと人の量の多さに気が付く。昼前はそこまで多くは無かったのに.........

 

 

桜木「休日なのは分かるけど、人がだいぶ増えてきたなー.........」

 

 

ゴルシ「あー、そりゃ花火があるからだろ?去年も見たけどめっちゃ綺麗だぜ?川の方で毎年上げてるんだ」

 

 

マック「花火.........ここで挙げていたのですね.........」

 

 

 ゴールドシップが指さす方向には確か、結構大きめな橋が掛かっていたはずだ。花火の時間帯になれば、その大きい橋も端から端まで人が埋め尽くされるのは容易に想像できる。

 人混みは好きではない.........けれど、今のマックイーンの様子を見れば、それを断れるほど俺は空気が読めない男では無い。

 

 

ゴルシ「.........花火なら大体7時くらいに始まるけど、オマエらどうすんだ?」

 

 

桜木「ああ、それまで祭りを楽しむよ。マックイーンはどうする?」

 

 

マック「!わ、私も見たいですわ!」

 

 

 はち切れんばかりにしっぽをブンブンとさせている。浴衣姿と非日常が相まって、いつも以上に可愛く見える。観念しろ桜木。お前の死に場所はここだ。

 

 

桜木「それじゃあまた、探索の続きと行きましょうかね。隊長?」

 

 

マック「な!?だ、誰が隊長ですか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「〜〜〜♪チュロスも美味しいですわ♪」

 

 

桜木「〜〜〜♪鶏肉さえあれば他の肉はいらないなぁ.........」

 

 

 私はチュロスを、トレーナーさんは紙コップに入った焼き鳥を食べ、幸せに浸っていました。それにしても、結構歩いてきましたが、まだまだお祭りの道が途切れる事はありません。

 

 

桜木「お、東京ケーキが売られてるぞ」

 

 

マック「あら、聞いた事ありませんわね.........?」

 

 

 前を行くトレーナーさんから離れないように屋台へと近付こうとした時、ふと子供のすすり泣く声が聞こえてきました。

 

 

マック「トレーナーさん、ちょっと.........」

 

 

桜木「ん?トイレか?」

 

 

 トレーナーさんはこういう所でデリカシーがないです。少しムカッとしたので、肘で脇腹を強く小突きました。ここが弱いのはメイクデビューのインタビューで把握済みですわ。

 少し小突いただけですが、トレーナーさんは身体を大きく反応させました。面白いとも感じましたが、今はどこかで泣いている子供の方が先決です。私はトレーナーさんの袖を引っ張り、人混みの中を無理やり連れて行きました。

 

 

桜木「マ、マックイーン!?」

 

 

マック「いいから来てください!!」

 

 

 私のスピードに転けないよう何とか着いてきてくれるトレーナーさん。これも日々の鍛錬の賜物ですわね.........

 そう思いながら子供の泣く声に近付いていくと、ざわめきの中で聞き取れなかった聞きなれた声も同時に聞こえてきました。

 

 

「ぐす.........ひぐ.........」

 

 

テイオー「あわわわわ!ど、どうしよー!!?」

 

 

 祭りの交差点の角で、一人の幼いウマ娘が泣いていました。その前ではワタワタと慌てる私のライバル。トウカイテイオーが居ました。

 

 

マック「テイオー.........貴方まさか.........」

 

 

テイオー「マックイーン!?ち、違う違う!!誤解だよー!!」

 

 

 そう言って必死に弁解するテイオーは少し面白かったです。彼女の言い分では、マヤノトップガンさんとお祭りに来ていて、その道中で親御さんとはぐれたこの子を見つけたそうです。

 

 

マック「.........それで、貴女はこの子と一緒に親御さんを探しているのですね?」

 

 

桜木「偉いなーテイオー」

 

 

テイオー「へへん!まあねー!」

 

 

桜木「さてと、話を聞いちまったらほっとく訳にも行かないし、俺らも手伝うってことでいいよな?マックイーン」

 

 

マック「ええ!もちろんですわ!」

 

 

「あ、あの!」

 

 

 先程まですすり泣いていた幼いウマ娘が声を上げました。そして、その視線は何故か私へと向かっています。

 

 

「マックイーンさんって、あのメジロマックイーンさんですか!?」

 

 

桜木「お、小さいのによく知ってるなー!」

 

 

マック「ええ、私がそのメジロマックイーンですわ」

 

 

「友達がね!!メイクデビューで好きになったの!!ダイヤちゃんに自慢しちゃおー!!」

 

 

 先程までの悲しい空気が嘘みたいに飛んでしまいました。どうやら、デビューを果たすとこういう場面でも役に立つようです。

 そんな時、いつもであれば騒がしいテイオーが静かになったのに気が付きました。振り向くと、ほっぺをぷくーっと膨らませており、私が視線を送るとぷいっと顔を背けました。

 

 

テイオー「ふん!!なにさマックイーンばっかり!!言っとくけど、僕だってちゃんと走れるんだからね!!マックイーンよりびゅーんって走れるんだから!!」

 

 

桜木「ははは、テイオーの走りにも期待してるさ。けど、デビューは来年からって言われただろ?」

 

 

テイオー「そうなんだよー.........トレーナーがさー?もう少し基礎をちゃんとしてからデビューだってー.........この前はデビュー戦も心配ないなーって言ってくれたのにさ?」

 

 

桜木「愚痴はまた今度聞いてやるよ。それより今はほら、えーっと.........」

 

 

「キ、キタサンブラックです.........!」

 

 

テイオー「キタちゃんって呼ばれてるんだって!」

 

 

桜木「よーっし、キタちゃん。親を探したいなら肩車がうってつけだ。どうする?」

 

 

 優しくそう提案するトレーナーさん。彼の凄いところは、見た目は少し怖いのに、それを払拭するように声と雰囲気が優しくなる所です。そのおかげもあり、キタサンブラックさんも最初より、表情が柔らかくなりました。

 

 

キタ「いいんですか?」

 

 

桜木「ああもちろん!あ、言っとくが変なことはしないぞ?何かあればそこの浴衣のお姉ちゃんに絞られるからな」

 

 

マック「今絞ってもいいんですのよ?」

 

 

桜木「え、遠慮しときます.........」

 

 

 私は少女に目線を合わせ、しゃがみ込む彼の隣にしゃがみ、その片腕を両手で掴みました。全く、子供の前でそういう発言は良くないというのが分からないのでしょうか?

 そんなこんなで、キタサンブラックさんを肩車をする形で持ち上げたトレーナーさん。その顔は心做しか、少し楽しそうです。

 

 

桜木「うーっし!!旅は道連れ世は情けってな!目標変更するぞー隊長!!」

 

 

マック「だから!!隊長ではありませんわ!!」

 

 

テイオー「えー!!?マックイーンばっかりずるいよー!!ボクが隊長だーい!!!」

 

 

桜木「喧嘩する子には隊長はさせてあげられませーん!!てなわけでキタちゃん!なんなりとご命令を」

 

 

キタ「え!?え、えっと.........し、出発進行ー!!」

 

 

 トレーナーさんの肩に乗ったキタサンブラックさんの号令に合わせ、片手と声を上げるトレーナーさん。それに負けないよう、私もテイオーも一緒になって、声と手を掲げ上げました。

 

 

 

 

 

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ......To be continued

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