山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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マックイーン「あけましておめでとうございますわ!」

 

 

 

 

 

 

桜木「ふわ〜.........」

 

 

 大きいあくびで空気を吸い込む。外気は既に一桁台。中央の人々にとってはとても寒く、まさに冬と言っても過言ではなかった。

 

 

マック「あけましておめでとうございます。トレーナーさん。大きいあくびですわね」

 

 

 欠伸をしている最中に、どうやら集合場所の神社前に到着したらしい。目の前のマックイーンに指摘されるが、恥ずかしさなんかよりまず、眠気の方が強い。

 

 

桜木「あけましておめでとう。昨日、運悪く当直当番になってな.........大晦日だっつーから、アイツらと夜通しスマブラやっててな.........」

 

 

 そう、俺の発言からわかる通り、今日は正月だ。雪もちらほら降ってはいるが、やはり北海道のようなどっさりとは程遠い。雪化粧という可愛らしい言葉が似合う様に路面に薄ら白が乗っかっている。

 

 

マック「ふふ、騒がしい姿が目に浮かびますわ」

 

 

桜木「はは、そりゃ、アイツらとスマブラやり始めたら毎度ヒートアップするからな。あの時間だけは小学生に戻った気分になる」

 

 

 本当に騒がしい大晦日だった。年に二回、誕生日と大晦日だけは静かに過ごすという格ゲーのトッププレイヤーみたいなルーティンを今年はぶち壊された。悪い気はしない。

 だが、寝不足で本当に良かった。頭の半分を眠いという言葉で侵されているおかげで、目の前のマックイーンの綺麗な振袖姿の前で何とか正気を保っていられる。

 

 

桜木(ほんと、何着ても似合うよな」

 

 

マック「へ?」

 

 

桜木「.........あ?」

 

 

 前言撤回。寝不足はダメだ。こうやってボーっとしているせいでまた要らん事を言う。そのうちセクハラで訴えられても文句言えねえぞ。

 空気が少しだけ、居心地悪く感じる。まぁあの花火の時よりは軽いが、それでもやはり過ごしにくい。

 

 

桜木「そういえば、マックイーンだけか?」

 

 

マック「え、ええ。私以外はまだ.........トレーナーさん方は?」

 

 

桜木「こっちもだ。モーニングコールはして見たんだが、二度寝決め込んでる可能性が高い」

 

 

 仕方が無い。もう一度電話を掛けてみるか.........神威はたしか、風呂に入ってから来るっつってたから、今寝てる可能性が高いのは黒津木の方だな。アイツに電話を掛けよう。

 

 

 エンサン!シメジ!ヒラメ!デメキン!

 

 

「ひゃあ!?な、なんだ一体!?」

 

 

桜木「.........?」

 

 

 アイツの着信音が聞こえてくるが、そこから聞こえてきた驚いた声は、妙に可愛い。泥棒にでも取られたのかと思い、その方向を見てみると、ヤツのジャンパーを着たアグネスタキオンがしっぽをピンと張っていた。

 

 

黒津木「ま、待って!寒い!!寒いから返して!!」

 

 

タキオン「黒津木君!!こんなトラップを仕掛けていたのか!?酷いじゃないか!おかげでびっくりしたぞ!!ほんのちょっとだけだが!!」

 

 

 冬の寒さに身を震わせている黒津木と、そいつのジャンパーを着て暖かそうにしているタキオンが喧嘩を始めている。

 俺とマックイーンの事を夫婦だのなんだの行ってくるが、自分も人のこと言えないんじゃ?なんて言わない。何故なら、最近またテイオーの研究に行き詰ってストレス貯めてるからだ。これ以上俺に投与される薬がヤバくなることだけは避けたい。

 

 

桜木「タキオン、返してやれ。代わりにほら、カイロやるから」

 

 

タキオン「気が利くねぇモルモット君!!それに比べて、君は.........」

 

 

黒津木「おい!ひとつ言い訳させてもらうが、俺は純粋な道民じゃねえ!!どっちかっつーと愛知県出身だから!!寒さによえー種族だから!!」

 

 

 ガタガタと歯を震わせながら叫び声をあげた。流石にタキオンも可哀想だと思ったのか、せっせと来ていたジャンパーを黒津木に返す。

 ていうかちゃんと中に着てるじゃないか自分のジャンパーを。人のを着るんじゃないよ。

 

 

タキオン「なんだその目は。言っておくが、私は彼のジャンパーを見て私のより暖かそうだと思ったから来ただけだ。他意はないよ」

 

 

桜木「いや、それはいいんだが.........あんまり人の、特に男が着ている物を着るんじゃない」

 

 

 返されたジャンパーを恥ずかしそうに着る友人。可哀想に、今日は一日中悶々とする羽目になるんだろう。

 

 

白銀「おっすー雑魚二人」

 

 

二人「あ?」

 

 

神威「よう強者共」

 

 

 対象的な二人が挟み撃ちの形で合流する。片方は前日のスマブラで1位回数の多い白銀。もう片方は不慮の事故等(アイテム運とかコントローラーの接続悪いとか)で1位回数の少ない神威だ。

 

 

マック「何だか、機嫌が良さそうですわね.........」

 

 

桜木「そらあんだけ暴れて、あんだけ勝ち荒らしたらなぁ。気分も良くなるだろ」

 

 

 隣に居るマックイーンは珍しそうに言うが、逆にあんだけ滅茶苦茶やって不機嫌になられたら困る。

 そんなことを思っていると、背後から強烈な衝撃が飛んできて、俺の身体を押し倒した。何とか反応して地面に手を付け、大事は避けたが、危ないところだった。

 

 

マック「トレーナーさん!?」

 

 

桜木「お、俺は大丈夫だ.........ウララ?」

 

 

ウララ「トレーナー!!」

 

 

 腰に当たった弾丸はやはり、予想通りのハルウララだった。最近なんか、懐かれ方が異常なんだよな。特に何かしてるわけでもないし、皆と同じようにトレーニング見てるだけだしな.........

 

 

ライス「ウララちゃん!後ろからは危ないよ?」

 

 

ブルボン「マスターが怪我をする確率は低いものでしたが、それでもしないとは言えません。今後は差し控える事を推奨します。ウララさん」

 

 

ウララ「うぅ〜.........ごめんなさい.........」

 

 

桜木「そうだな、せめて俺にウララの姿が見えてる時にしてくれ。その時だったらちゃんと受け止めてやれるから」

 

 

ウララ「ほんと!?やったー!!」

 

 

 立ち上がった所に更に抱き着かれる。この子は本当に周りを明るくすることが得意な子だな.........優しく頭を撫でた後、集合するメンバーが全員無事揃った事を確認する。

 

 

マック「全員揃った事ですし、初詣に参りましょうか」

 

 

桜木「おう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴルシ「お!!おっちゃん達にマックイーン達じゃねえか!!」

 

 

マック「なぜ貴女がここに.........?」

 

 

 目の前に巫女服姿のゴールドシップさんを見た時、目を疑いましたわ。後ろ姿だけではどこのどなたか全く、皆目見当もつきませんでしたが、喋ってみればそれはもうゴールドシップさんでした。

 

 

ゴルシ「ああ!スピカの連中誘ってバイトしてんだ!!トレーナーケチだからお年玉くれなくてな!!」

 

 

桜木「普通はやらんぞ」

 

 

ゴルシ「あ!後でおみくじ引いてけよ全員!!アタシらの時給も上がるから!!」

 

 

 現金な方ですわ。でも、それがゴールドシップさんです。普段は何を言ってるか分からないし、頭に脳以外になにか詰め込んでる可能性も否定できませんが、彼女。意外とリアリストなんです。

 そのお言葉に甘えてゴールドシップさんの隣を通ると、白銀さんが挑発するように舌を出しました。トレーナーさんは「また要らん事を.........」と頭を抱えて無視しましたが、次の瞬間にはやはり、ドロップキックが炸裂しました。

 

 

マック「彼は学習しないのでしょうか.........?」

 

 

神威「アイツとあの子のコミュニケーションなんだ。案外楽しそうだぞ」

 

 

 司書さんが指さす先には、お互い笑い合いながらじゃれ合っている姿が見えました。なるほど。ああいう形で仲を深める事もあるのですね.........

 

 

桜木「行くぞバカ。いくら金持ちだからってゴールドシップと絡む度にシャツをビリビリにすんなよ」

 

 

白銀「あぁ!?今日はしてねぇだろカスッ!」

 

 

黒津木「チクチク言葉禁止。悪影響だぞ」

 

 

ウララ「むむ!社長!!トレーナーはカスじゃ無いもん!!」プンプン!

 

 

 可愛らしく怒るウララさんにたじろぎながら、白銀さんはトレーナーさんに謝りました。こんな光景は珍しいので驚きましたが、トレーナーさんは「気持ち悪ッ!」とハッキリと拒絶したせいで、鋭いパンチがお腹に突き刺さりました。

 

 

白銀「インパクト頂きッッ!!!」

 

 

桜木「ベポラップッッ!!!」

 

 

マック「トレーナーさん!?」

 

 

黒津木「ははは‪w‪wブチ切れじゃねえか‪w‪w」

 

 

タキオン「いや、笑う場面じゃないと思うんだが.........」

 

 

ライス「と、止めなくていいの!?」

 

 

神威「大丈夫だ。偶に良くある」

 

 

ブルボン「偶に良くある.........?どちらですか?神威先生?」

 

 

 結局、正月もこう騒がしくなってしまうのですね.........私はそう思いながら、胸に溜まる空気をハーっと吐き出しました。

 そんな騒がしい空気のままに、お賽銭箱の前までやってきました。

 

 

桜木「.........思ったけど、なんか静かじゃないか?正月なのに.........」

 

 

神威「ああ、こことは別にもっと大きな神社があるんだよ。あっちの方は健康祈願とかそんな所」

 

 

マック「まぁ、三女神に初詣する人なんて、ウマ娘かその関係者だけですもの。自然と人数は減りますわ」

 

 

 夏祭り以来の神社。トレーナーさんと一緒に投げ入れた五円の思い出が蘇ります。トレーナーさんは少し渋い顔をしましたが、恐らくあの涙を思い出したのでしょう。

 気にはなりますが、今はそれ以上に新年を祝う大事な瞬間です。流石に大っぴらにそれを指摘するのはトレーナーさんも恥ずかしいでしょうから、私は彼の袖を静かに引っ張りました。

 

 

桜木「.........?」

 

 

マック(大丈夫ですわトレーナーさん。私が付いてます)

 

 

桜木(.........はは、そいつは心強いな)

 

 

 誰にも気付かれないよう小声で話し合う私とトレーナーさん。秘密を共有しているようで、周りの人に少し悪く、ドキドキ感じてしまいます。

 用意してきた五円玉を賽銭箱に奉納し、両手を合わせます。誓いは同じ。春の天皇賞を必ず勝ち取る事です。他の皆様もそれぞれ、自分の思い思いの願いを心で唱えているはずです。

 

 

タキオン(テイオー君の実験が上手くいくように.........まぁ、私が神という存在に願うなんて、柄にもないがね)

 

 

黒津木(テイオーがこの試練を乗り越えられますように)

 

 

ウララ(一着たくさんとれますよーに!!)

 

 

ライス(ら、ライスも皆みたいにカッコよく変われますように.........!)

 

 

ブルボン(マスターに提示された長距離克服メニュー。必ず成し遂げます.........?いえ、成し遂げますように.........)

 

 

神威(図書室の本にもっと医学系の本が増えますように)

 

 

白銀(今年こそ世界一位になる)

 

 

桜木「.........」

 

 

 皆様がそれぞれ真剣に願い事をしている中で、一番最初にその場を離れたのはトレーナーさんでした。ここにはやはり苦手意識があるのでしょう。

 

 

マック「お願い事は済みましたか?」

 

 

桜木「ああ、俺はたくさん願わなきゃ行けない立場だからな。手短にさせてもらったよ」

 

 

 流れ星にお願いするわけではありませんのに、心の中で律儀に早口でお願い事をするトレーナーさんを想像するのは、難しくありませんでした。

 そんな彼に続くように、タキオンさん達やトレーナーさんのご友人方。もちろんこの私も、列を成してもう一度来た道を戻っていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふんにゃかふんにゃか.........」

 

 

桜木「.........大丈夫かあの子.........」

 

 

 おみくじ売り場でスピカのメンバーに囲まれながら変な呪文を唱えている巫女服で栗毛のウマ娘。なにか危ない宗教でもやっているのか.........?

 

 

ゴルシ「お?なんだ?フクキタルが気になるのか?」

 

 

桜木「いや、そりゃ気になるでしょ。あんな呪文唱えてりゃ.........」

 

 

フク「はんにゃからっき!ふんにゃかはっぴ!」

 

 

 水晶玉に何かを見出すように覗き込みながら呪文を唱え続けるフクキタルというウマ娘。次の瞬間には、バッと勢いよく顔をあげた。

 

 

フク「見えました!!テイオーさんの来年の姿!!まさに破竹の勢い!!無敗でレースを制していきます!!」

 

 

テイオー「ホントー!?やったー!!」

 

 

 両手を上げてぴょんぴょん跳ねて喜ぶテイオー。あの子の占いが当てになるのか分からないが、相当喜んでいる。目標に一歩近付けるとお墨付きを貰えれば、誰だってそうなるだろう。

 

 

桜木「楽しそうだな」

 

 

テイオー「あ!サブトレーナー!!」

 

 

スペ「いらっしゃいませ!サブトレーナーさん!!」

 

 

 先程まで占いに熱狂していたテイオーとスペがようやくこちらの存在に気が付く。スペもどうやら占いの結果が良かったようで嬉しそうだ。

 

 

桜木「スズカとかはどうしたんだ?」

 

 

テイオー「えっと、スズカとスカーレット達は占いの結果が良くなくて、神社の掃除をすれば多少は良くなるって.........」

 

 

 要は使いっ走りじゃないか.........可哀想に、まぁしかし、あの三人の事だ。慌てふためく様子が目に浮かんでくる。

 

 

フク「初めまして!マチカネフクキタルです!!」

 

 

桜木「桜木玲皇だ。さっきの呪文みたいなのはなんだ?新手の宗教か?」

 

 

フク「シラオキ様に祈りを捧げていたのです!!シラオキ様はいつも私達を見ていてくれています!!」

 

 

四人「お、おう.........」

 

 

 悪い子.........では無いんだが、得体の知れない存在を崇拝しているせいで、結構引いてしまった。だが、この子の口ぶりからして、そう悪い存在では無さそうだ。

 しかしまぁ、三女神にシラオキ様。不思議な神社もあるものだと思いながら、俺達はそれぞれおみくじを引いて行った。

 

 

神威「.........」

 

 

桜木(アイツは大凶か。いつも通りの無反応から最速柱縛り。俺でなきゃ見逃しちゃうね)

 

 

桜木「さてと.........お、小吉か.........」

 

 

 開いた紙に書かれた運勢は小さな物だが、良しとされる物だ。喜んでも良いだろう。仕事運も上場。健康運は気をつけなきゃ行けないらしいが.........恋愛運はと言うと.........

 

 

桜木(近くにいる.........ねぇ?)

 

 

 誰だろうか?桐生院さん?いやいや、彼女はどちらかと言えば後輩に近い存在だ。可愛いと思う場面もあるがやはり、それは世話焼きの対象に過ぎない。

 じゃあたづなさん?うーん、ありっちゃありだが、そうなると俺の学園での立ち位置が危ぶまれる。結構ファンが多いからな、あの人.........

 まさか理事長!?ありえん!!あの見た目ロリっ子権力ヤクザの暴走乙女に付き合える程俺は強くねぇ!!

 

 

桜木(ま、所詮はランダムセレクト。的外れな指摘もあるだろう)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック(吉ですか.........)

 

 

 悪くはありません。ですが、大吉には一歩及びませんわ。むぅ.........なんだか少し歯がゆい感じがします。

 ですが、書いている内容はとても良いものです。仕事運に関しては、闇を抜けると書いています。恐らくではありますが、今陥っているスランプから脱却できるという解釈であっていると思います。

 そして同時に、気になる部分もあります.........

 

 

マック(しっかり繋ぎ止めること.........?)

 

 

 恋愛運.........なのですが、書いている意味が少し分からないのです。初詣やおみくじ等は引いてきましたが、今までこのような事が書かれていた事はありませんでした。

 

 

マック「.........」

 

 

桜木「.........?どうした?」

 

 

マック「いえ.........なんでもありませんわ」

 

 

 思わず彼の顔をじっと見てしまいました。彼とは良き信頼関係を築けていると思っております。そう.........例えば、私や皆様の前から消えるなど、決して無いと思います。

 でも、先程の賽銭箱の光景が脳裏に過ります。何故か分かりませんが、一人先に離れていくトレーナーさんの姿に、不安を覚えてしまったのです。

 

 

マック(そんな事、ありませんよね?トレーナーさん.........)

 

 

 胸に残る不安を押さえ込みながら、今年はトレーナーさんに注意していこうと思いました.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、それは新学期早々に起きてしまう事になりました.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ......To be continued

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