山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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トレーナー「マックイーンにデートに誘われた」

 

 

 

 

 

 

実況「メジロマックイーン!!抜け出した!!」

 

 

実況「後続も後に続く!!その差およそ2バ身!!」

 

 

実況「メジロマックイーン!!今一着でゴールインッ!!」

 

 

実況「スランプを感じさせない走りッ!!今ここに!!メジロ家の名を背負うに相応しいウマ娘が再起を果たしましたッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「〜〜〜♪」

 

 

タキオン「おや、ご機嫌だねぇ、マックイーン君」

 

 

マック「ええ、お陰様で」

 

 

 先日行われたレース。私はそこでようやく、スランプを脱却することが出来ました。あの最後の末脚は正に、以前の私のものです。

 テレビから流れるニュースの映像を見ながら、私とタキオンさんは紅茶と洋菓子に舌鼓を打ちました。

 

 

マック「それにしても、時間というのは早いものですわね」

 

 

タキオン「そうだね、気がつけば、もう太陽の暑さが強くなってきている。トレーナー君がうるさくなる時期が来るって訳だ」

 

 

 それは貴女も同じ事ですわ.........なんて、口が裂けても言えません。この前トレーナーさんが変な薬を飲まされていました。たしか、今日のお前はカワイクナイタキオンだな と口を滑らせたのが原因です。私はそんな失敗しません。

 

 

マック「仕方ありませんわ.........北海道というのは、それほどまで過ごしやすい場所なのでしょうね.........」

 

 

 確か、幼い頃に一度だけ行ったことがあります。とても素敵な場所を巡りました。もう一度.........そう、今度はチームのメンバーと一緒にトレーナーさんが案内して欲しいです。

 そんな事を思っていると、番組は終わり、通販の様子が映し出されました。

 

 

「ぽっこりお腹、気になっていませんか?」

 

 

タキオン「おや、ダイエット用品のCMか」

 

 

マック「ダイエット.........?」

 

 

 ダイエット。その言葉に何故か引っ掛かりを感じます。何故でしょう?今の私の体重は適正になっている筈です。これもトレーナーさんとの.........

 トレーナーさんとの?待ってください.........すぐそこまで出て.........!!!

 

 

マック「あーーー!!!!!?????」

 

 

タキオン「うわぁ!?なんだい!?新手の音響兵器か!?」

 

 

マック「私.........あの時の罰ゲームの事をすっかり忘れてましたわ.........!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「.........」

 

 

マック『トレーナーさん!!罰ゲームの事をすっかり忘れていました!!ですから次の休日!!私に付き合ってください!!』

 

 

 罰ゲーム(※マックイーン「ダイエット作戦!決行ですわ!!」参照)の存在をすっかり忘れていた彼女のお申し付けは、休日にデートをする事だった。俺は忘れていた訳では無い。罰ゲームを受ける方が催促するってなんか可笑しくない?

 因みにデートというのは本当だ。家に帰った後、交換した連絡先を使い、彼女から「これはデートですのでエスコートをお願いします!(*´∇`)ノ」という可愛らしいメッセージを受け取った。つまり俺先導のデートだ。

 

 

桜木(童貞にゃきびいって.........)

 

 

 彼女いない歴=年齢という訳ではないが、俺は立派な恋愛初心者だ。どれくらい初心者かと言うと、ひのきのぼうを装備しただけの勇者がいない歴=年齢ならば、俺は装備を買えるだけの資金を集めたものの、ゲームソフトをなくしたせいで進行不可能になっている。もうなんかのバグだろ。

 そんな悶々と自分の経験の無さと不器用さに苛立ちを感じていると、行き交う人混みの中から、一人の綺麗な毛並みをしたウマ娘。そう、メジロマックイーンが現れた。

 

 

マック「おはようございます、トレーナーさん」

 

 

桜木「おう.........それじゃあ「待ってください」.........?」

 

 

マック「まず、私に言う事があるのでは無いですか?」

 

 

桜木「えー、この度は本当に僕の無責任な発言で」

 

 

マック「違います!!その事についてはもう許したではありませんか!!」

 

 

マック「そうではなく!!こうやってレディがおめかしして居るのに、何も仰らないのは紳士としてあるまじき行為ですわ!!」

 

 

 ああ、そっちか.........てっきり俺はまた、以前の移籍問題に付いての謝罪を求められてんのかと思った。テンパリすぎだぞ。玲皇。

 

 

桜木「けどさ、その.........いっちゃ悪いけど。俺はもう今までマックイーンに言ってきた言葉しか言えないよ?」

 

 

マック「それでも、伝える事が大切なんです。トレーナーさん、早くお願いしますわ」

 

 

 ツン、と目を閉じながら不機嫌そうに顔を背けるマックイーン。こういうやっぱりお嬢様なんだなと思い出させる言動と仕草が、俺の心を男の子にする。カッコつけるのは慣れてないが、俺をカッコつけたくさせる彼女は唯一の存在だろう。

 

 

桜木「.........似合ってるよ。マックイーン」

 

 

マック「.........ふふ、ようやく、スタートラインに立てましたわね」

 

 

 いつものように上品に笑う彼女の姿が、心を撫でる。からかわれてるだけだ。最近の中学生は生意気だからな。きっとマックイーンも例に漏れないだろう。

 そうだ。きっとそうに決まってる。そう思わなきゃやってられないし犯罪者になるぞ。俺は絶対になりたくない。

 

 

マック「.........トレーナーさん?」

 

 

桜木「ああ、悪い悪い。じゃあ行こうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック(やりましたわ!!ようやく彼を意識付けさせることができました!!)※既にしています

 

 

 ふふふ、先日は寮ではなく実家の方に帰って正解でした。まさか、家の書物に恋愛指南書があるとは思いませんでしたわ!!

 これで彼のハートをゲットできます!!そして、あわよくばあんな事やこんな事を.........///

 

 

マック「.........ふふ」

 

 

桜木「.........なんだ、なんか面白いものでもあったか?」

 

 

マック「い、いえ!!なんでもありませんわ!」

 

 

 隣で運転するトレーナーさん。本当、気配り上手です。片手間で運転しながらも、私が話しかけれるよう、常に緩い雰囲気を出してくださいます。大人の余裕というものでしょうか?ちょっぴり羨ましいです。

 

 

マック「因みに、今はどちらに向かってるのですか?」

 

 

桜木「俺のよく行くご飯屋さん」

 

 

マック「まぁ.........!」

 

 

 トレーナーさんが良く行かれる.........ということはつまり、トレーナーさんの好きな食べ物が分かるという事ですわ!!

 以前、好きな食べ物を質問した際には、身体に悪い物とはぐらかされてしまいましたが、今日は遂に、その身体に悪い物の正体が掴めるというわけです!!燃えてきましたわ!!

 

 

桜木「.........はは」

 

 

マック「.........?トレーナーさん?」

 

 

桜木「いや悪い。初めて会った時から、随分印象が変わったなって思ってさ」

 

 

 彼はそう言いながら、横目でチラリと私を見ました。その仕草に、ドキッとしてしまいます。ちょっぴりだけです。本当です!!

 

 

マック「.........幻滅、しましたか?」

 

 

桜木「んー、確かに、俺の中のお嬢様っていう固定概念は崩されたね」

 

 

桜木「けどその分、マックイーンの事がわかった気がしたよ」

 

 

マック「!」

 

 

 信号待ちをしているので、トレーナーさんはそう言いながら私に顔を向けました。うぅ、本当、そういうところですわ.........

 思わず顔を逸らしました。そんな事を言われてしまえば、誰でも照れてしまうに決まっています!

 ですが.........そうですか、私の事を.........

 

 

マック(.........ふふふ)

 

 

 一人でこっそり、今度はトレーナーさんに気付かれることがないように笑を零しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 車を停めた所は、商店街より少し賑やかな街の、庶民的な食事屋さんでした。

 

 

桜木「.........」

 

 

マック「.........?」

 

 

 降りてお店に向かおうとすると、何やら彼が自身の車に対し何かを呟きながらその車体を撫でていました。

 不思議そうに見ていましたが、トレーナーさんはそれを直ぐに辞め、私の隣へと来られました。

 

 

マック「トレーナーさん?さっきのは.........」

 

 

桜木「え?ああ、運転するの久々だったからな。今日はよろしくって」

 

 

マック「!.........ふふ、トレーナーさん、そういうのを[律儀]というのですよ?」

 

 

 そう言って笑いを零すと、彼は恥ずかしそうに後頭部をかきました。ああやって物に対してもお礼やお願いを言ったりするあたりは、本当に面白い方です。

 そんな彼の背中に着いて行きながら、彼が食事屋さんのドアを開けると、カランカランと音を立てた呼び鈴がなりました。

 

 

「いらっしゃ.........うわ、本当に来た」

 

 

桜木「来ちゃ悪ぃか」

 

 

 カウンターに腰掛けながら、トレーナーさんはお店の女性と親しげに話し始めました。一言二言ほど軽い会話を弾ませると、女性は奥の厨房へと入って行きました。

 

 

桜木「.........どう?ウチの姉貴」

 

 

マック「へ.........?トレーナーさんのお姉さま.........?」

 

 

 そう言われて、厨房で準備をしている女性の顔をもう一度見ました。確かに、どこかトレーナーさんと同じ面影を感じます.........

 

 

桜木「旦那さんがここで店やっててな。姉ちゃんは嫁いで、一緒にここを切り盛りしてるんだ」

 

 

「どうも、姉の美依奈(みいな)です。うちの弟がお世話になってます」

 

 

マック「い、いえ!お世話になってるのは私の方で.........」

 

 

美依奈「全く、珍しく連絡よこしたと思ったらアンタ、昼に行くから用意しとけって何様よ!!」

 

 

桜木「いやー、洒落た店なんて知らないからさ、外食っつっても、ジャンク以外だとここしか来たことないし、一度も行った事ない飯屋に連れてくのも、ほら、エスコートとは言えないだろ?」

 

 

 たはは、と笑いながらトレーナーさんはそう言いました。対するお姉さまは、溜息を吐きながらも、持ってきた料理をカウンターの方へ置きました。これは.........

 

 

マック「カレー.........ですか?」

 

 

桜木「ああ、実家のカレーだ」

 

 

美依奈「実家のって言っても、ただのカレールー突っ込んで作ったカレーだけどね。いつも思うけど、自分家で食えばいいじゃん」

 

 

桜木「そう言うなよ。他人が作って家の味になるカレーなんてそうそう食えないんだからさ」

 

 

 トレーナーさんは自分の前に置かれたカレーを見て、目を輝かせました。本当に好きなのですね.........うぅ、実は私、あまり辛いのは得意では無いのです.........実家や学食で出るカレーは少し、辛いと言いますか.........

 目の前に出されたカレーをパクパク食べ出したトレーナーさんを見て、意を決しました。せっかくトレーナーのお姉さまが作ってくださったのです。口から出る火を押さえ込んででも完食しなければ.........!!

 

 

マック「.........?辛くないですわ.........」

 

 

美依奈「あら、もしかして辛口派?ごめんなさいねぇ、ウチのレオ。辛いカレー好きじゃないのよ」

 

 

桜木「辛いカレーって不味くね?」

 

 

美依奈「アンタぶっ殺されるよ」

 

 

マック「.........美味しいですわ!」

 

 

 いつものあのヒリリとした感覚がありません!!これならいっぱい食べられます!!じゃがいもは噛むことをせずに口の中で崩れて行きますし、ニンジンも辛くないカレーの美味しさとニンジンの甘さ相まって美味です!

 お肉はどうやら鶏肉を使っているらしく、とても食べごたえがあります!そして何より、その全ての具材にこの辛くないカレーの味が染み込んでいてとても美味しいです!!

 

 

マック「こんなカレー、生まれて初めて食べましたわ.........!!」

 

 

美依奈「.........マックイーンちゃんて、ちょっと大袈裟じゃない?」

 

 

桜木「そりゃあ、俺達とは違う暮らしをしてきたんだ。カルチャーショック位あるだろ」

 

 

 二人とも、困ったように笑っています。やはり血の繋がった家族。その笑顔はとても似ていました。

 美味しいカレーを食べながら、私達は他愛もない会話をしました。

 

 

美依奈「それにしても、カレーを食べてお酒を飲まないなんて、珍しい日もあるわね」

 

 

桜木「今日は車で来たからな、飲みたいのは山々だけど、連れに迷惑かける訳にも行かん」

 

 

美依奈「車.........ああ、アンタの青チャリンコと同じ名前を付けた.........確か[ブルーエンペラー]!!」

 

 

桜木「バッッッ!!俺の恥ずかしい趣味を暴露すんじゃねぇっ!!」

 

 

美依奈「あっはは!!恥ずかしいの自覚してんじゃん!!」

 

 

マック「あら、素敵な名前でしてよ?」

 

 

桜木「だ、だよなぁ!?」

 

 

マック「それにしても、そこまで言われるほどお酒を飲んでると言うことは、好きなのですか?」

 

 

桜木「まぁ、たしなむ程度には大好きだな」

 

 

美依奈「!」

 

 

マック「ふふ、それではどちらか分かりませんわ」

 

 

 楽しい一時でした。トレーナーさんと出会ってから、食事が楽しい物だと再認識出来た気がします。あの時の私は、この風景を切り捨てようとしていたのですね.........

 そうして素敵な食事の時間を過ごしていると、不意に彼が立ち上がりました。トイレに行ってくると言い、そのまま店の奥の方へと歩いて行かれました。

 

 

美依奈「.........ねぇマックイーンちゃん」

 

 

マック「はい、なんでしょうか?」

 

 

美依奈「アイツの事好きでしょ」

 

 

マック「!!???」

 

 

 ニヤニヤしながら、トレーナーさんのお姉さま。美依奈さんがわかりきった表情でそう聞いてきました。うぅ、トレーナーさんと言い美依奈さんと言い、なぜ普段優しそうなのに.........イジワルです!!

 

 

美依奈「ホント、分かりやすくて助かるわー。アイツと違って」

 

 

マック「.........?トレーナーさんはわかりやすい方だと思うのですが.........」

 

 

美依奈「ありゃりゃ、それはまだまだ付き合いが浅い証拠ですよお嬢様。騙されちゃ行けませんって」

 

 

美依奈「.........アイツが何考えてるかなんて、あたしにもさーっぱり。すごいよねー、十数年間一緒に暮らして来て、何にも分からないんだよ?妹と違ってさ」

 

 

 そう言いながら、お手上げです。と言ったように肩を竦めて見せた美依奈さん。分かりにくい.........でしょうか、たしかに、考えが読めない事もありますが.........

 

 

美依奈「.........昔っから、頭が良くてね。ああやって馬鹿なフリしてんのは、楽しいからだって。賢く生きれば生きるほど、目の前の素敵な現実より来るかも分からない未来を想像する羽目になる。だから、中途半端に頭が良いのは損するだけって、昔あの子に言われたよ」

 

 

美依奈「けどね、アイツが、マックイーンちゃんの事を相当信頼.........?うーん、ちょっと違うけど、うん。信用してるのは分かるよ。たしなむ程度には大好きなんて意味わからん事言うレベルにはね」

 

 

マック「そう、ですか.........」

 

 

美依奈「そう。頭も柔らかそうに見えて、結構頑固だし、クソ親父の一件で決まりを守りたがるから難しいかもだけど、あたしは応援してるよ。よかったらほら、連絡先」

 

 

マック「あ、ありがとうございます!」

 

 

 思わぬ収穫がありました。ここに来たのはどうやら、大大大正解だったみたいです。それにしても、トレーナーさんのお姉さま.........これは、どうしても聞かなければ.........!!

 

 

マック「あ、あの.........子供の頃のトレーナーさんはどのような.........」

 

 

美依奈「.........はぁぁぁ.........」

 

 

マック「?」

 

 

美依奈「ああ、ごめんね。何をどうしたらあんなツンツン頭になるんだろうかと思ってさ.........」

 

 

マック「昔は違ったのですか?」

 

 

美依奈「もう別人!!女の子みたいで可愛くってねぇ、赤ちゃんの頃は良く間違えられてたの。髪もサラサラのおかっぱヘアーでさー。ホント、何がどうなって、あーなっちゃったのかねぇ.........」

 

 

 顔を覆って酷く落胆してしまった美依奈さん。そんなに違うのでしょうか.........気になってしまいます。

 見たことも無い彼の幼き姿を妄想していると、視界の端にふと黒い影が動くのが見えました。

 

 

マック「お、おかえりなさい」

 

 

桜木「ああ、仲良さそうで安心したよ。妹と違って」

 

 

美依奈「それどういう意味?」

 

 

桜木「毎日の様に怪獣大戦争起こしてたの俺は知ってるぞ」

 

 

 普通だったら喧嘩している様な口調ですが、トレーナーさんとそのお姉さまの顔は、とても楽しそうに笑っていました。

 気が付けば、お皿に残っていたカレーを全て食べ終え、あとは会計するだけとなりました。

 

 

桜木「よし、ここは俺が」

 

 

マック「割り勘ですわ」

 

 

桜木「いやいや」

 

 

マック「わ・り・か・んっ!」

 

 

 そう強めの口調で言うと、トレーナーさんは困った様な笑いを浮かべ、折れました。全く、ご自身だけが格好をつけたいと思っているなら大間違いですわ。

 

 

美依奈「まいどどうも。次はしーちゃんが居る時に来なよ」

 

 

桜木「無茶言うな。ほとんど外で遊ぶ人間の行動をインドアの俺が図れるわけないだろ」

 

 

 そう言いながら、トレーナーさんは外に出ようと歩きました。私も美依奈さんにごちそうさまの一言と、一つお辞儀をしてトレーナーさんに付いていこうとすると、お店の入口がガチャりと開きました。

 

 

桜木「あ」

 

 

白銀「ん?」

 

 

ゴルシ「あんだよ、入んねえのか?お?どした?」

 

 

 お店から出ようとした時、目の前には白銀さんとゴールドシップさんが現れました。これは.........嫌な予感がします。

 トレーナーさんは白銀さんとゴールドシップさんを交互に、白銀さんは、トレーナーさんと私を交互に見ました。

 

 

「「ふーん、デートかよ」」

 

 

桜木「あ?」

 

 

白銀「は?」

 

 

ゴルシ「あ!?おっちゃんとマックイーンじゃねえか!!」

 

 

マック「行きますわよ、トレーナーさん!!」

 

 

 こんな所でいつもの騒ぎを起こされても困ります!!私はそう思い、彼の手を引っ張っていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「いやー悪い悪い。アイツの顔見るとついな......」

 

 

マック「全く!騒ぎを起こされるこちらの身にもなってくださいまし!」

 

 

 助手席で俺の行動に対して怒るマックイーン。申し訳ないと思いつつも可愛く見えてしまう。なるほど、ドライブデートはこういう醍醐味もあるのか。

 

 

マック「.........やはり、付き合ってるのでしょうか?」

 

 

桜木「んー、アイツもゴールドシップも距離感近いからなー。案外親友だと思ってんじゃないか?」

 

 

 先程から妙に静かだったが、どうやら白銀達を見て思うところがあったらしい。まぁそういう年頃か。

 しかしアイツ、俺と違って女性の扱いを心得ている。俺らと違って陽キャなのだ。女友達も沢山いる。そう思うのはやや早計だ。

 

 

マック「.........そう言えば、ゴールドシップさんから私の連絡先を聞いたと言われましたが、私いつの間にあの人と連絡先を交換したのでしょう.........?」

 

 

桜木「気にするな、頭が痛くなってくる」

 

 

 ゴールドシップの心理を考えるだけ無駄だ。最近は取ってきた虫の写真とかイタズラの共犯の誘いとかしてくる合間に、開く事の出来ないファイルを添付してきやがる。本人曰く俺の自撮りらしい。そんなもの撮った覚えないんだが。

 

 

桜木(本当なんなんだあのファイル)

 

 

 送られてくるのは決まって同じファイル。意味が無いものかもしれないが、やはり無性に気になるのが男子の性だ。破損してるのか分からないが、 スマホでもパソコンでも開かさんない。

 

 

マック「トレーナーさん、次の目的地は?」

 

 

桜木「デートの定番!水族館っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「トレーナーさん!お魚さんが泳いでいますわ!」

 

 

 そりゃ水族館だからな、とは言わない。きっと彼女にとっては初めての事だろう。

 以前彼女が言っていた俺が初めてを持ってくるというのは、あながち間違いでは無いようだ。

 

 

桜木「おー、見ろマックイーン。タコだ」

 

 

マック「ええ、こうして見ると、意外と可愛いものですわね.........」

 

 

 ガラスに張り付くように自身の赤を主張するタコ。そんな存在を可愛いと言う彼女とはやはり気が合うようだ。家族で一度見た時は俺以外恐怖の対象にしていた。寿司で食うのに。

 

 

桜木「.........お?」

 

 

マック「如何なされました?」

 

 

桜木「いや、桐生院さんとミークが居たからさ。俺ちょっと声掛けてくるわ」

 

 

マック「あっ.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 行ってしまわれました.........手短に済ませるつもりなのでしょう。彼は小走りで桐生院さんの元へと駆け寄って行きました。

 けれど、その姿はまるで、私より彼女を優先したようで、気持ちよくはありませんでした.........

 

 

マック(.........トレーナーさんのバカ)

 

 

 以前までだったら、そんな事思いもしませんでしたのに、自然と愚痴にも似た吐露を心の中でしてしまいます。その分、彼と親しくなった証だと思うと同時に、今のこの距離がもどかしく感じます。

 目の前で泳ぐ魚も、今ではただの背景。彼と一緒に過ごすはずの景色は全て、色を抜かれてしまいました。

 

 

「おや、奇遇だね」

 

 

マック「っ!た、タキオンさん!?」

 

 

 聞きなれた声が後ろから掛けられました。振り返ってみると、そこには私服姿のタキオンさんが口元に手を添えて、私の方を見ていました。

 

 

マック「な、何故ここに.........?」

 

 

タキオン「え!?あー.........さ、魚が最近マイブームなのだよ!!あ、アハハハハハ.........」

 

 

マック「?」

 

 

 いつもの自信満々な高笑いではなく、何かを取り繕うように身振り手振りを激しくして誤魔化していました。

 どうしたのでしょう、普段の彼女なら一人でこのような場所、来るはずは無いのに.........

 

 

マック(.........あら?)

 

 

 しかし、それはやはり思った通りでした。目の端に写ったサメの水槽を見続けている男性。その後ろ姿が、保健室医の黒津木先生と被りました。

 

 

マック「へー.........」

 

 

タキオン「.........なんだその目は、言っておくがこれも実験に必要なデータの採集であってだね.........」

 

 

マック「人のこと言えないのでは無いですか?」

 

 

タキオン「くっ!中々痛いところを突いてくるなキミは.........」

 

 

 彼女が黒津木先生にどのような感情を抱いているかどうかは別として、彼とこうして行動を共にしている時点で私達の事をどうこう言える立場では無いと思います。

 そう思っていると、やはりわざとらしい咳払いをして、タキオンさんは私に提案してきました。

 

 

タキオン「良いかい?君が思っている以上にトレーナー君は厄介だ。たまには強引に行った方が良いぞ?」

 

 

マック「うぅ、それは少々はしたなくありませんこと.........?」

 

 

タキオン「ああ勝手にしたまえ、私のアドバイスを聞かずに彼が別の女と過ごす運命を指を咥えて見ていたいならね」

 

 

マック「!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タキオン「ふぅ、やっと行ったか.........しかし、感情というのは時に厄介だな。あそこまで強いはずなのに行動に直結しないなんて.........あ!!おい黒津木君!!ダメじゃないか!!あそこで待ってろと言っただろ!!」

 

 

黒津木「いや、だってサメが.........」

 

 

タキオン「君のせいでマックイーン君にデートと勘違いされたんだ!!予定変更を申請する!!私の憂さ晴らしに付き合ってもらうぞ!!」

 

 

黒津木「ま、まって!!せめてサメのぬいぐるみを」

 

 

タキオン「却下する!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「ごめんなマックイーン.........」

 

 

マック「知りません!デートの最中に他の女性の方に行くなんて、マナー以前に常識がなっていませんわ!!」

 

 

 今日は失敗続きだ。車の助手席でまたぷりぷりと怒ったマックイーンを見て苦笑いを浮べる。

 特にマナー以前にという所は、俺が前に若いからマナーを知らないと言った事に対する返しだろう。マックイーン相手にそんな事を言うつもりは毛頭ないが、これは一本取られてしまった。

 

 

マック「.........ですが、このぬいぐるみに免じて許してあげます」

 

 

桜木(.........そりゃ反則ですぜ、お嬢様よう)

 

 

 水族館で買ってあげたサメのぬいぐるみを、愛おしそうに抱き締めるマックイーン。破壊力ばつ牛ン。

 少し傾いてきた日の中で車を走らせていると、恥ずかしい事に車のオーディオから洋楽が流れ出してしまった。

 

 

桜木「げっ」

 

 

マック「あら、QUEEN.........お好きなのですか?」

 

 

桜木「分かるのか?」

 

 

マック「有名ですもの、存じ上げております。ですが意外ですわ。トレーナーさんは邦楽しか聞かないと思っていましたのに.........」

 

 

 まぁ、普段はアニソンしか聞かないし、今の俺が洋楽聞いてるなんて、中学生より前の俺が聞いたらびっくりするだろう。

 だが、不思議と心が落ち着く。遺伝子に組み込まれたかの様に、この音楽の音が全身に染み渡る。たまに聴くと元気になるんだ。それは間違いない。

 

 

桜木「洋楽聞いてるなんて、意識高いと思われても恥ずかしいだろ?俺が好きな食べ物を母ちゃんのカレーじゃなくて、体に悪いもんって答えるのと一緒だよ」

 

 

マック「あら、そうなんですの?では、二人だけの秘密ですわね.........」

 

 

桜木「!」

 

 

 ぬいぐるみに半分顔を埋めながら、彼女は目を細めて微笑んだ。魔性の女の子だな。サングラスがなければ即死だった(致命傷)

 オーディオから流され続ける音楽は[Show must go on]。意味は[それでもショーは続く]だ。今から行くところにはピッタリな歌である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブーーーーー。

 

 

マック「.........!」

 

 

 幕がゆっくりと上がっていきます。真ん中にはスポットライトが照らされ、そこには円型の高いテーブルと、封がなされている封筒が置かれておりました。

 

 

 トゥルルルルル

 

 

 トゥルルルルル

 

 

 ガチャリ

 

 

「はい。こちら、遺言管理局です」

 

 

「ええ、はい。登録番号1774-DEZのお客様ですね。はい、今すぐデータをそちらに転送しますので、はい」

 

 

「この度はお悔やみ申し上げます。では、失礼致します」

 

 

 ガチャ.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「マックイーン、ほら。涙吹きな」

 

 

マック「うぅ、ありがとうございますわ.........」

 

 

 侮っていました.........高校演劇と言うのはこれほどまでに心を揺さぶってくるものなのですね.........完全に虚をつかれました。

 最初はなぜここなのだろうと思いましたが、役者のキャストを見ると、合点があいました。

 昨年、トレーナーさんを付けていた時に見た学生の方が役者として出ていたのです。それにしても.........うぅ、思い出すだけでまた泣けてしまいますわ.........!

 

 

マック「家族の前で泣けない電話の主が、管理局の新人さんと電話をし、最後は遺書を読みながら泣くシーン.........思わず釣られてしまいました.........」

 

 

桜木「ははは、あのシーンは特に気を付けたからなぁ。中々リアルにできたと思う」

 

 

マック「.........まさかその口ぶりは」

 

 

桜木「そう、脚本家は俺。ネットの海に流した張本人」

 

 

 まるでイタズラが成功したような笑顔でこちらを覗き込んでくるトレーナーさん。してやられましたわ.........!!

 

 

マック「もう!!貴方は何が出来ないのか教えて欲しいくらいですわ!!」

 

 

桜木「デートかな」

 

 

マック「そこはちゃんとしてくださいまし!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「.........それにしても、あのレベルの表現が出来るということは、トレーナーさんもあのような思いを.........?」

 

 

桜木「.........ああ、婆ちゃんが死んじまった時にな」

 

 

 車の中へ戻っても、話題はやはり、あの高校演劇の事だった。映画を語り合うという経験はしてないから、良くある恋愛模様に意見交換を出されても、俺はピンとは来なかった。そんなの、ただ楽しいだけじゃないかと思っていた。

 だが、演劇で置き換えると俺にとってはまた違う。そこに、真剣さが加わるからだ。楽しいからやっていただけとばかり思い込んでいたが、多少の情熱はやはりあったらしい。

 

 

桜木「死んだ時には泣けなかったよ。母ちゃん達の方が辛いからさ。俺が姉ちゃんに連絡して、妹の学校に連絡して、父さんにも連絡してさ.........」

 

 

桜木「そのおかげで心は晴れなくてさ、この脚本を書いたんだ。学生時代に完成させる事は出来なかったけど、コツコツ描き続けてさ」

 

 

マック「.........」

 

 

桜木「トレーナーになる前に完成させて、俺もあのシーンで勝手に泣いて。勝手に吹っ切れた」

 

 

 .........これはデートなのだろうか、独りよがりの独善なんじゃないのか?そうは思ったが、動き出した口は止まらない。アイツらにも言ったことの無い事を言うなんて、らしくない。

 

 

マック「.........本当に、律儀な人ですわね、トレーナーさん」

 

 

桜木「.........むぅ」

 

 

マック「ですが、貴方の感情は貴方のものです。時としては譲る必要がある場合もありますが、基本的には優先した方がよろしいですわ」

 

 

桜木「そうは言ってもな.........難しいだろ?」

 

 

マック「簡単です。私に先程してくれたではありませんか。思いの吐露ほど、自分を優先する事はありませんわ」

 

 

 うわちゅうがくせいじょしつよい。どうしよう、マックイーンが説法を唱える仏様に見えてくる。一体どこで培ってくるんだその発想は.........

 

 

桜木「あー、なんか腹減ってきたなー」

 

 

マック「まぁ!では夕食は私にお任せ下さい!」

 

 

桜木「えぇ.........あまり高い所は止めてよね?」

 

 

マック「大丈夫です!!トレーナーさんならただですから!!」

 

 

桜木「.........?」

 

 

 一抹の不安が残り続ける中、マックイーンの先導に従って俺はハンドルを切り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「.........」

 

 

マック「トレーナーさん、失礼しますわ」

 

 

桜木「いやいやいやいや」

 

 

マック「まぁまぁまぁまぁ♪」

 

 

桜木「ちょいちょいちょいちょい!」

 

 

マック「さぁさぁさぁさぁ!」

 

 

 うわウマ娘つおい!!?先程から何をやってるのか分からないかもしれないが、車を止めた瞬間、マックイーンが光の如き勢いで降り、そのまま運転席のドアを開け、俺を引っ張ってくるのだ。

 

 

桜木「ちょっと!!きびぃ!!流石に厳しいって!!」

 

 

マック「観念してください!!皆さんお待ちになられてますわ!!」

 

 

桜木「まさかの計画的犯行!?見損ない.........はしてないが、少し君の認識を改めることにしたぞマックイーン!!」

 

 

マック「.........うぅ」

 

 

桜木「!?わ、分かった。降りる。降りるからその顔はやめてくれ.........」

 

 

 そう言うと、彼女は泣きそうだった表情をぱっと明るめた。所詮は嘘泣き、されど泣き。女の子を泣かせる男は誰だろうと最低だ。

 諦めてシートベルトを外し、エンジンを切って、ドアに鍵を掛けた。

 

 

桜木「.........一応聞くけど、ここは何を置いてるんだ?」

 

 

マック「えーっと、強いて言うなれば、色々な賞のトロフィーや盾を置いていますわね」

 

 

 キレの悪い皮肉に、彼女はしっかりと返してきた。そりゃそうだ。なんせここは.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メジロマックイーンの実家なんだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ......To be continued

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