山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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マックイーン「あと少しで菊花賞.........!!」

 

 

 

 

 

 

 夏の照りつけるような暑さも終わりを告げ、秋の涼しさが暑さに晒された肌を労わるように優しく包んでくれる。

 現在、トレセン学園のトレーニングコース上で、俺はメジロマックイーンのタイムを測っていた。

 

 

マック「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ.........!」

 

 

桜木「3.09.8.........仕上がりは上々か。マックイーン!!少し休憩だ!!」

 

 

マック「!はい、分かりましたわ!!」

 

 

 乾いたタオルを手渡しながら、彼女に指示を出す。様子を見るに、調子は良さそうだ。ゴールを設定したラインの付近にベンチがあり、マックイーンはそこに座った。

 今走ってもらったのは3000m。神戸新聞杯を快走で走破し、少しの休日を挟んだマックイーンの次の目標が菊花賞だ。ジュニア級クラシックの三冠の一つとして数えられる。強敵は多い。

 そして特筆すべきなのは、彼女にとってこれが初めてのGIということだ。けれど、不思議と悪い緊張はしてないように見える。どうやら、以前俺の言った緊張との付き合い方をマスターしたのかもしれない。

 そんなことを思っていると、背後から視界の端にぬっと現れた白衣に袖を通したウマ娘。アグネスタキオンが俺の横に立つ。

 

 

タキオン「調子は良さそうだね、これなら菊花賞も順当だろう」

 

 

桜木「俺もそう言いたいな。マックイーンのトレーナーという責務がなければ、手放しにそう褒められるんだが.........」

 

 

タキオン「そうも言ってられないか、なんせ、クラシック三冠の一つの要だ。三冠自体は狙っていなかろうと、その冠を欲するものは必ずいるだろうからねぇ」

 

 

マック「ふふふ、確かに。以前までの私なら、不安で不安で仕方なかったかと思います.........」

 

 

タキオン「ん?まるで今は違うと言っているふうに聞こえるが.........」

 

 

 そうか.........あの何かあれば、不安そうに困ったように眉を下げていたマックイーンも、成長してるのか.........なんだか、そう思うと目頭が熱くなってくるな.........

 そんな歳の都合で脆くなった涙腺を必死に抑えていると、なにやら置いてあったバッグから自らのスマートフォン(これをウマ娘に言う度に訂正されるが、実の所ウマホンというらしい。違いが全くわからん)を操作し、その画面を自信満々に見せつけてきた。

 

 

タキオン「これは.........?」

 

 

桜木「.........あー、そういう事ね.........」

 

 

マック「ええ!!これは先日行われたビクトリーズの試合です!!三得点無失点の大勝利ですわ!!!」

 

 

マック「この前の試合も!!その前も!!全て勝ってきているのです!!これは私も乗るしかありません.........!!このビッグウェーブに!!!Vの余波に!!!」ブイデスワ!

 

 

 通りでね、調子が良いわけですよ。野球ファンは推し球団が活躍するとすぐ調子が良くなるんだから.........扱いやすいんだか面倒なんだか.........

 そんな呆れにも似た感情を抱いていると、自分の乱れぶりを今更認識したのか、はっ、と気付いたマックイーンは咳払いをひとつした。

 

 

マック「コホン、も、もちろん!それだけではありませんわ。GIレースでは、ウマ娘は特別な衣装を着ることになっているんです」

 

 

タキオン「勝負服、何の因果関係が存在しているのか不明だが、勝負服を着ることで、ウマ娘はその身体能力を飛躍的に増幅させる。まぁ衣装と言うより、着用者の筋力、知力、精神力を上げる.........」

 

 

桜木「餌なのよ」

 

 

「「餌じゃない(ですわ)!!!」」

 

 

 うお、怖い怖い。マックイーンはともかく、タキオンまで怒ってくるとは思わなかったな.........下手なモノマネも気をつけよう。うん。

 

 

桜木「しかし、なるほどなぁ、マックイーンの勝負服かぁ.........」

 

 

マック「な、なんですの.........?」

 

 

 あ、まずい声に出てたのか.........うーん、独り言が激しいとこういう時に痛い目に見るのか.........独り言も直していこう。

 しかし、言ったからには続けなければならない。ここで黙ってしまえばあらぬ誤解を産む可能性がある。もう言うしかないぞ、桜木。

 

 

桜木「えっと.........どうせ俺は似合ってるとしか言えないんだろうなってな.........」

 

 

マック「.........そういうところですわ」

 

 

桜木「あだだだだだッ!?久々の関節攻め.........!!!」

 

 

タキオン「久々だねぇ、この夫婦喧嘩を見るのも」

 

 

「「夫婦じゃない(ではありませんわ)!!!」」

 

 

 うっ、そ、そんなに強く否定されると若干傷付くな.........いや、俺も強く否定しちゃったし、おあいこか.........

 

 

「「はぁ.........」」

 

 

タキオン「君たちは本当、見ていて飽きがこないよ」

 

 

 溜息を重ねながら、マックイーンの勝負服姿を今一度夢想する。うーん、やっぱりいつも着ているような緑を基調としたものだろうか.........?さぞ可愛いんだろうなぁ.........

 

 

桜木「.........」ボーッ...

 

 

マック「.........コホン、そこで妄想しているトレーナーさんは置いておいて、私の調子がいい理由は主にこの二つですが、もう一つ。レースに向けて思う事がありますわ」

 

 

タキオン「ほう?それは一体なんだい?」

 

 

マック「菊花賞。ジュニア級クラシック三冠の一つを担うレースです。そしてそこには必ず、私と同じメジロである、ライアンも出走する筈ですわ」

 

 

タキオン「なるほど.........同門のライバルと言った訳だ。去年の芦毛対決と言い、トレーナーくんと一緒に居ると、データ収集には事欠かなくて助かるよ」

 

 

桜木「いやーそれほどでも」

 

 

 何か知らんが褒められたぞ。中々こんな機会ないからな、大人になると。

 それにしても、ライアン.........メジロライアンが相手になるのか.........

 

 

ライアン『マックイーンの事、お願いしますっ!』

 

 

桜木(.........彼女のお眼鏡に適うかどうかは分からないけど)

 

 

 約束は守っているつもりだ。あの真剣な表情とその目を思い出しながら、今までの行いを振り返ってみる。

 

 

マック『かっとばせーーっ!!!ユ・タ・カッ!』

 

 

マック『トレーナーさん?お米というのは洗剤で洗えば良いのでしょうか?』

 

 

マック『見てください!!新作スイーツですわ!!あの、次の週に頑張りますので、き、許可を頂きたいのですが.........』

 

 

 ごめん、ライアン。俺はマックイーンを大切に育てるどころか、どうやらいつの間にか、パンドラの箱をこじ開けてしまっていたらしい。

 急に頭を抱え始めた俺を、二人は覗き込むように心配してくれたが、ライアンにもしかしたら怒られるかもしれないと思うと、気が気ではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「うーん.........」

 

 

 トレーニングを終えた自宅で一人、唸り声を上げてベッドの上で自分のスマホと睨めっこを続けている。

 

 

白銀「.........なぁ玲皇。行けると思うか?」

 

 

桜木「厳しいだろ。映像で見る限り、まだあのスマッシュに追いつけないと思う。やっぱり展開で勝負した方がいいんじゃないか?」

 

 

白銀「それこそ無理だろ。あっちは同い年でも人生をテニスに捧げてるような頭のイカれた奴だぞ?経験則が物を言う展開力で戦ったら俺泣いちゃう」

 

 

 知るか、勝手にしろ。と思いながら、俺は練習試合の録画を見ている白銀から、もう一度自分のスマホに視線を移す。

 何があったか知らないが、夏合宿から帰ってきていきなりトレーニングを真面目にやりだしたのだ。気でも狂ったのか知らないが、真面目に練習するコイツを見たことなんて無い。

 どうやら、本当に本気で世界一位を取るつもりらしい。

 

 

桜木(相手はお前以上のバケモンだ。せいぜい頑張れよ)

 

 

 心の中でエールを送り、スマートフォンの画面をスライドさせる。何を見ているのかと言うと、小さく質素な王冠を象ったアクセサリーを見回っている。

 応援だけでは物足りない。何か、チーム[スピカ:レグルス]の象徴となるアクセサリーでも全員身につけられないだろうか?という、まぁタマモクロスの時と似たような考えだ。

 

 

桜木(.........お?これなら良いんじゃないか?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チームルーム

 

 

ウララ「わくわくするね.........!」

 

 

ブルボン「そうですね、ウララさん」

 

 

ライス「ライス達が着るわけじゃないのに.........ドキドキしちゃうね.........!」

 

 

タキオン「楽しみな気持ちは分かるよ。なんせ、あの超名門メジロ家のご令嬢の勝負服だからねぇ。そんじょそこらのウマ娘とはきっと格が違うだろう」

 

 

マック「あの、そんなにハードルを上げられても困りますわ.........」

 

 

 菊花賞まであと一週間を切り、身体と精神の状態を整える時期がやってきました。トレーナーさんに指示されたスイーツ禁も順調に進んでおりますし、なにより、ここ最近のビクトリーズの調子のいい事.........!

 い、いけませんわ、平常心、平常心です.........相手はあのライアン。気を抜けばすぐに抜かれてしまいます。気を引き締めなければ.........!

 

 

桜木「うーっし!今帰還したぞー!!」

 

 

全員「トレーナー(さん)(くん)!!!」

 

 

 綺麗に包装された箱を持って登場したトレーナーさん。その箱の中身は見るまでもなく、私の勝負服だと分かります。

 それを丁寧にテーブルの上に置くと、トレーナーさんはいつも通り、ニカッと笑ってこちらを見ました。

 

 

桜木「さぁマックイーン!!ご希望の勝負服だ。俺は教室出るから、着たら教えてくれ」

 

 

マック「い、今着るんですの!?」

 

 

桜木「当たり前だろ?本番で心が落ち着かなくなったらどうするんだ?服装って言うのは慣れが大事だ。いつ舞台の上で、普段着と違う影響が出るか分からないからな」

 

 

 そう力説しながら、うんうんと頷くトレーナーさん。あの様子では、過去にそれ関連の何かがあったのでしょう.........た、確かに、経験者からのお言葉なら、説得力は強いと思います.........

 

 

マック「わ、分かりましたわ.........」

 

 

 私がそう言うと、トレーナーさんは満足そうにチームルームから退出してかれました.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いやー、楽しみだなー。それにしても、どんな服なんだろうか?やっぱりお嬢様なんだから、優雅なドレス系か?いや、もしかしたら斜め上のスーツ系?うーん.........夢がひろがりんぐってやつだな。

 そんな事を扉の横の壁に背を持たれながら考えていると、扉の方からコンコンと音が聞こえてくる。どうやら着替えが終わったらしい。

 

 

桜木「入っていいか?」

 

 

「どうぞ」

 

 

 一応、確認はとる。何かの間違いでノックしたかもしれないからな。俺はたまに意味もなく理事長室のドアを叩きたくなる。

 聞こえてきた声はマックイーンの声だ。良し、意を決して入るぞ。どうせ似合ってるとしか言えないんだから、しっかり伝えるんだぞ、俺。

 

 

桜木「失礼しま.........す.........」

 

 

マック「ど、どうでしょうか.........?」

 

 

 目の前には、ウララ達に囲まれながら、困ったように笑う勝負服姿のマックイーンが居た。

 正直、度肝を抜かれた。今まで見てきた姿の中で、ダントツで似合っている。黒いアウターの内側に、裾をはみ出るようなフリフリのレース。中のストライプ柄の涼し気なシャツからチラチラと見えるへそ。反則だぞ、こんなの。

 

 

マック「トレーナーさん.........?」

 

 

桜木「かっこいい.........」

 

 

マック「へ!?」

 

 

 くっ.........!はっきり言おう。マックイーンは今まで俺が練りに練ってきたカッコイイ服装ランキングを一枚も二枚も上手だった.........!

 

 

ウララ「マックイーンちゃんいいなー!!ウララも勝負服欲しいー!!」

 

 

桜木「ウララはまず、選抜レースで結果を残そうな。前回は三着だったけど、まだ満足してないだろ?」

 

 

ウララ「うん!!一着とるまでがんばるぞー!!」

 

 

 そんな片手を振り上げるウララの姿に、チームの全員は笑みを浮かべる。速度は遅いが、確かに成長してきているウララ。このまま頑張って行ければ.........来年?いや、再来年にはデビューできるだろう。うん。

 

 

タキオン「.........ところでトレーナーくん?さっきからその手に持っているものはなんだい?」

 

 

桜木「あ、忘れてた。コイツはな.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「アクセサリー.........ですか?」

 

 

 トレーナーさんから渡された包装を綺麗に取ると、中にはキラキラと光る王冠を象った平たいアクセサリーが、静かに入っていました。

 

 

桜木「ああ、[レグルス(小さき王)]って感じだろ?俺はずっとそばにいられないからさ。なにかチームの証みたいなのが欲しいなって」

 

 

マック「トレーナーさん.........」

 

 

 団結。それは、トレーナーさんが最も大切にしていると言っても過言ではない、チームの一つの要素。一人では出来ないを、二人で出来るにする。それがチームの利点だと、神戸新聞杯の際、疑問を呈した私に教えてくださったのです。

 恥ずかしそうに頭を掻きながらも、私がそれを付ける様子を静かに見守る彼と、チームの皆さん。そう見られると、中々恥ずかしいです.........

 

 

マック「.........如何でしょうか?」

 

 

ライス「すごい.........!綺麗だよ!マックイーンさん!」

 

 

ブルボン「マスターの言語センスは難解ですが、装飾センスは素晴らしく思います」

 

 

 ウマ娘の為にカスタマイズされているのか、リボンを着けた耳に掛けるようにすると、特に違和感もなく、その王冠は私の頭の上で小さく存在を誇示し始めました。

 心がなんだか、暖かく感じてきます。胸にほのかな暖かさが、伝わってくるようです。タマモクロスさんも、こんな気持ちだったのでしょうか.........

 一体、彼にいくつのことを教われば良いのでしょう。そんな自分に呆れにも似た嬉しい感情を感じながら、彼を見ていると、何かを思い出したように、トレーナーさんは慌てました。

 

 

桜木「あ!勿論皆の分もあるぞ!!」

 

 

全員「.........」

 

 

桜木「.........え?どうしたのん?」

 

 

 いえ、この人はそういう人でしたわ.........私、一体何を浮かれていたのでしょう?プレゼントは素敵でしたが、これはチームの証。勿論、皆さんの分もちゃんと用意されていて当然.........ですが、やはりため息が溢れてしまいました。

 

 

全員「そういうところ(です)(だよ)」

 

 

桜木「?、!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「何か知らんが怒られちったぞ.........」

 

 

 アイツらのトレーニングを終え、いつもの通り図書室での収穫の得られない調べ物を終えた俺は、一人反省をしながら帰路につこうとしていた。

 

 

桜木「.........また、真面目なウマ娘が一人」

 

 

 遠くに聞こえる強い足音。もしやと思い視線を移してみると、やはり、ウマ娘が真面目に走り込みを行っていた。

 俺はもうミホノブルボンの一件で身に染み染みしたぞ。こういうのはほっといたら倒れるまでトレーニングするのがウマ娘だ。これは止めなければ.........

 

 

桜木「おーい!!あまり無理して根詰めると.........?」

 

 

「あ、すいませーん!!もうやめ.........あ」

 

 

 近くまで近寄って声を掛けてみると、そのウマ娘は見た事のある顔.........いや、そんなレベルの知り合いじゃない。彼女こそ、次の菊花賞でマックイーンと激しいぶつかり合いを見せるであろう、メジロライアンその人であった。

 

 

ライアン「桜木さん!お久しぶりです!」

 

 

桜木「いやいや!こっちこそ!頑張ってるみたいだな、ライアン」

 

 

ライアン「それを言うなら、マックイーンもですよ。私もうかうかしてられませんから!」

 

 

 気持ちよさそうに汗をタオルで拭いながら、ベンチへと座るライアン。これから戦うであろう彼女と過ごすのは、一種の裏切り行為と受け取られかねないが、俺はどうしても、彼女と話をしてみたかった。

 

 

桜木「隣、失礼してもいいか?」

 

 

ライアン「構いませんよ!あ、ちょっと汗臭いかもしれませんけど.........」

 

 

桜木「大丈夫だ。一年もここで過ごせば嫌でも慣れる」

 

 

ライアン「それ、マックイーンに言ったら嫌われますよ?」

 

 

桜木「うぐっ.........またやってしまったか.........」

 

 

 そんな少しダメージを受けた俺を見て、ライアンは笑った。ため息と苦笑いをしながら、彼女が寄せて空けてくれたベンチのスペースに腰を下ろす。

 水分補給をし始めたライアンは、何かに気がついたのか、俺の首元に視線を注いでいた。

 

 

ライアン「.........オシャレですね、それ」

 

 

桜木「お、やっぱり気が付いたか?ウチのチームのシンボルマークだ。今日皆に同じのを渡してきた」

 

 

 そう言いながら、首にネックレスのように着けた王冠のアクセサリーを見せる。派手すぎず、かと言って地味でも無い。普段のファッションにも使える様に見つけてきたアクセサリーだ。

 

 

ライアン「.........ありがとうございます。桜木さん」

 

 

桜木「え?」

 

 

ライアン「私のお願い、聞いてくれて」

 

 

桜木「お願いって.........」

 

 

 そこまで口から出てきて、その内容を察した。どこまで行っても、本当に真っ直ぐな子達だ。見ているこっちも、清々しくなるほどに.........

 果たして、自分にこれだけ真っ直ぐだった時期が今まであっただろうか?仮にあったとして、それはいつまで真っ直ぐだっただろう.........

 

 

桜木「.........君も大概、責任感が強いよな」

 

 

ライアン「あ、あはは.........」

 

 

桜木「.........あと、さっきの最後の踏ん張り、もう少し体の姿勢を上げた方がいい」

 

 

ライアン「!」

 

 

 いつまでもこんな真っ直ぐな目に、この身を晒していたら惨めになる。そうそうに退散するのが精神衛生上の為だろう。そう思って、アドバイスを一言送り、ベンチを立ち上がった。

 

 

ライアン「あの!」

 

 

桜木「.........?」

 

 

ライアン「.........勝ちますから、絶対」

 

 

桜木「.........走んのは俺じゃないから、あんまり言いたくはないんだが.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「負けないぞ、うちのマックイーンは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライアン「.........」

 

 

桜木「.........はは」

 

 

 キッと睨みを効かせて威圧をかけるライアン。馴れ合いタイムはもう終わりを告げた。ここからは一人のアスリートとして、全力を尽くしてレースに望むのだろう.........

 それで良い。競技者の心情はなったことがないから分からないが、勝負の世界というのは、そういうものだ。身内だからと言って、いや、身内だからこそ、より厳しくなるのかもしれない。

 俺に.........トレーナーに出来る事はただ一つ。練習を手伝う事だけだ。それだけに全力を注ぎ、あとはもう、見守るしか無いのだ。

 

 

桜木(.........もっとも、それが嫌でこんなのものを思いつくんだがな)

 

 

 自分でも女々しいと思いながらも、少しでも力になりたい。そう思っての行動が、この王冠のアクセサリーに現れた。この王冠が少しでも、彼女達の心を楽に出来れば幸いだ。

 

 

桜木「またなライアン。菊花賞で会おう」

 

 

ライアン「はい!さっきアドバイスしたこと!後悔させてあげますから!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「ということがあってだな」

 

 

マック「.........はぁ、もう何も言いませんわ.........」

 

 

 いつものようにチームルームにて、食後のティータイムを楽しんでいましたが、彼の話を聞いて呆れてしまいました。全く.........本当に敵に塩を送る方が居るとは思いませんでした。

 

 

マック「なぜアドバイスを?ことと次第によっては.........首が360度回りますわよ?」

 

 

桜木「あ、あはは.........いやぁ、ああやって困ってる若者を見ると、おじさん放って置けないんだよね.........」

 

 

マック「.........」

 

 

桜木「ゴメンチャイ」

 

 

 手を合わせて、本当に申し訳なさそうにするトレーナーさん。謝るのなら、最初からしなければ良い話なのです。

 .........ですが、そういうところが彼の良いところです。私も万全を期したライアンとレースがしたかったので、丁度良かったですわ。

 

 

マック(.........もしかして、私は俗に言う、『チョロい』ウマ娘なのでしょうか?)

 

 

 最近また、テイオーにからかわれるのですが、度々そう言われるのです。それは最初こそ心外だと思っていましたが、彼の事を考えると、一概に的を外しているとも思いません.........

 うぅ、これも全部貴方のせいですわ.........!!

 

 

マック「.........」プイ

 

 

桜木「どうした?マックイーン?」

 

 

マック「なんでもありません!!」

 

 

 少々キツく当たってしまいましたが、仕方ありませんわ。トレーナーさんは自分が悪くないと思っているのです。でなければあんな風に顔をのぞきこんできたりするはずありませんわ!!

 そんなこんなで、いつも通りの日常を満喫?していると、不意に扉がガラリと開け放たれました。

 

 

ゴルシ「おいっ!!!おっちゃん居るか!!!」

 

 

桜木「うわぁびっくりした!!?」

 

 

マック「ゴールドシップさん!?も、もう少し静かに入ってこられませんの.........?」

 

 

ゴルシ「無理!!!」

 

 

二人「そう.........」

 

 

ゴルシ「そんなことより見てくれよ!!!ほら!!!アタシのスマブラが鉄拳になっちまった!!!」

 

 

マック「?????」

 

 

 そういいながら、ゴールドシップさんが突き出した手の内にある液晶には、沢山の人が写っていました。確か、合宿でやった覚えがありますが.........それとは違う機械ですわ 。

 

 

桜木「おー。ついに買ったのかDLC。今まで逆になんで買わなかったのか不思議だったが」

 

 

ゴルシ「だってカズヤが居るっておっちゃん言ってたけど絶対嘘だと思ったし」

 

 

桜木「俺も当時はそう思ってたぞ」

 

 

ゴルシ「あとこの6体目のキャラも」

 

 

桜木「ゴールドシップ。それ以上は触れるな。タイムパラドックスが起きるぞ」

 

 

マック「?????」

 

 

 よく分からない事を彼は言いましたが、ゴールドシップさんは何かを理解したように口を塞ぎました。なんですか?私だけ仲間外れにして!!

 

 

マック「私はお邪魔みたいですので、これで失礼しますわ」

 

 

桜木「まぁまぁ!もうちょい見てけよマックイーン!!ゴールドシップがCPUにボコボコにされる姿をさ!」

 

 

ゴルシ「あぁ!?アタシは生まれた時からプロゲーマーになる定めを背負ったウマ娘だぞ!!!こんな奴に負けるなんて有り得ねぇし!!!」

 

 

 そんな事を叫びながら、ゴールドシップさんはいつの間にかセットされた特殊な台座にその機械を入れ、コントローラーを接続しました。

 その後、普段とはまた違う叫び声が、昼休みのチームルーム付近の廊下に木霊しました.........

 

 

 

 

 

  ......To be continued

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