山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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ライバル対決。夢に向かって

 

 

 

 

 

 

桜木「.........」

 

 

マック「.........」

 

 

 外の歓声が、控え室であるここにまで響き渡ってきます。あの日から数日が経ち、ついに菊花賞のその日へと来てしまいました。周りには、チームの皆さんが来てくださっています。

 ひしひしと伝わってくる重い空気.........飲み込まれては行けないと思いつつも、その空気が私の体を包み込みます。

 

 

テイオー「マックイーン大丈夫?緊張してるの?」

 

 

マック「ええ.........ですが、いくらか緊張しなくては、張合いがありませんわ」

 

 

 そんな強がりも、明らかにわかってしまうほどに、自分の身体は昂りを感じさせます。冷静にならなければ、そう思えば思うほど、身体はこの人々に熱せられた空気に当てられ、昂りを感じてしまいます.........これが、GIの重さ.........!!

 

 

桜木「.........」

 

 

ゴルシ「なんでおっちゃんがそんな緊張するんだよ」

 

 

桜木「いやー、するでしょ緊張くらい。今格好つけられるほど余裕ないぜ?」

 

 

 壁に背を押し付け、腕を組みながらも、トレーナーさんの纏う雰囲気はピリピリとしています。彼も私と同様に、この空気に当てられた一人なのでしょう.........

 

 

テイオー「えー?そうならない為のこれなんじゃないのー?」

 

 

タキオン「そのはずなんだけどねぇ?」

 

 

二人「うぐっ.........」

 

 

 全員のじとっとした視線が、私達二人に注がれます。うぅ、仕方ありませんわ.........この状況で緊張してしまうのは不可抗力。トレーナーさんの素敵な贈り物を付けていたとしても、決して和らぐものではありません。

 彼が首にかけた王冠も、本来の役割を果たしてはいないようでした。

 

 

ウララ「それにしても、お外すごいねー!!」

 

 

ライス「うん、ずっと声が聞こえてくる.........」

 

 

沖野「まぁ、それだけ大勢の人が、世紀のメジロ対決に目を向けている訳だ」

 

 

マック「.........」

 

 

 そう、このレースにはライアンも居ます。ここで周りの空気を気にしてる場合では無いというのに.........

 そんな事を思い詰めていると、それを察した様に、テイオーがこちらまで歩いてきました。

 

 

テイオー「大丈夫大丈夫!!マックイーンが負けちゃっても!!来年にはきっとボクの三冠で持ち切りだから気にしなくてもいいよ!!」

 

 

マック「な、なんですって〜!!!」

 

 

 にんまりといつもより明るげな笑顔を見せたと思いきや、彼女の口から出てきたのはその言葉でした。こっちは真剣になっているというのに、負ける事を考えるなんてありえませんわ!!

 

 

テイオー「あっはは!!マックイーンが怒った〜!!」

 

 

桜木「お、おい。レース前にあんまはしゃぐなよ?」

 

 

 レースが始まるまで、既に一時間は切りました。いつも通りのチームの騒がしさを取り戻しつつも、私の心はまだ、焦る様な熱を帯びたままでした.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地下バ道

 

 

マック「.........」

 

 

 薄暗い地下バ道の中を、ゆっくりと前を歩くマックイーン。平静を装ってはいるが、明らかに無理をしている。やっぱり、俺のやった事は無駄だったのだろうか.........

 そんな俺の横を元気そうに、勢い良くパッと躍り出たのは、ピンクの髪をしたハルウララだった。

 

 

ウララ「頑張ってね!マックイーンちゃん!!」

 

 

ライス「ら、ライスもいっぱい応援するからね.........!」

 

 

ブルボン「ぜひ、マックイーンさんの走りを参考にさせてください」

 

 

 いつもの三人組の応援が聞こえてくる。それに背中で反応を示してみるも、やはりマックイーンの調子は良くならない。

 どうしたものか.........そんな事を考えていると、次々とチームメンバーが言葉をかけ始める。

 

 

タキオン「おいおい、そんな調子ではライアンくんには勝てないだろう?もう少しリラックスしたまえよ」

 

 

テイオー「そうだよー!!いつものマックイーンらしく、堂々とすればいいじゃん!!」

 

 

スペ「そうだ!!勝ったら何か食べに行きましょうよ!!」

 

 

スズカ「それはスペちゃんが食べたいだけのような.........?」

 

 

ダスカ「頑張りなさいよ!!なんてったって!初めてのGIなんだから!!」

 

 

ウオッカ「そうだぞ!!気合い入れてけよ!!」

 

 

沖野「おいおい、余計緊張しそうなこと言ってどうする.........自然体で行けよ。自然体でな」

 

 

 そうやって沖野さんが声を掛ける頃には、マックイーンもだいぶ落ち着いたようで、深呼吸が少し、この薄暗い中を反響する。

 そんなマックイーンの様子を見守っていると、右腕を少し強く小突かれた。そちらを見ると、沖野さんが肘で俺を押していた。

 

 

沖野(おい、こういう時に何か言うのがいい男のポイントだぞ?)

 

 

桜木(い、いや。別に好かれたい訳じゃ.........)

 

 

沖野「いいから行けって!」バシン!

 

 

桜木「どァら!?」

 

 

マック「!」

 

 

 破裂音にも似た音が辺りに響き渡る。背中を強く叩かれた俺は、日々鍛え上げてきた肉体など頼りにならず、前にたたらを踏むようにマックイーンに対して躍り出た。

 何を言えばいいのだろう?詰まった空気は言葉にならず、ただただ出口へと出ていくだけで、音も鳴らさない。

 

 

桜木「え、えっと。お、終わったらスイーツでも食いに行こうか!!」

 

 

マック「.........」

 

 

桜木「野球!!マックイーンビクトリーズ好きだろ!!?見に行くのもいいかもな!!」

 

 

マック「.........」

 

 

桜木「あはは.........映画とか、息抜きとか.........さ?」

 

 

 反応は、無い。むしろ、どこか寂しさを感じるような佇まいで、俺をじっと見てくる。俺は一体、何をやってるんだ.........

 

 

桜木「.........なぁ、マックイーン」

 

 

マック「はい.........?」

 

 

 ゆっくりと、今度はしっかりとした足取りで、彼女の目の前へと立つ。目線を合わせるように膝をおり、両手をその綺麗な衣装を着た肩の上へと置く。

 もう、着飾る必要なんてない。緊張も、するだけしていい。勝っても負けてもマックイーンだ。負けたら一緒に泣いて、勝てば一緒に笑えばいい。

 最初から、無理に相手を変える事なんかしなくて良かったんだ。俺の思いを、伝えるだけで良い。

 

 

桜木「俺は、ライアンの事は少ししか分からない。頑張り屋な事くらいしかな」

 

 

桜木「けど、マックイーンの事は沢山分かる。君は超超超頑張り屋だ。俺が.........俺達が保証する」

 

 

マック「.........ふふっ、買い被りすぎですわ」

 

 

 ようやく、彼女がいつも通りの笑顔を取り戻した。やれば出来るもんだな、俺も。

 けれど、伝えたい事はそういう事じゃない。マックイーンが全力で、いつも通りのパワーで戦えるようにするのが、トレーナーとしての.........俺としての仕事だ。

 

 

桜木「.........マックイーンなら勝てる」

 

 

マック「!」

 

 

桜木「絶対にな。だから.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝ってこい。マックイーン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一着で.........待ってる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どこかで言ったであろう同じ台詞。俺はボキャブラリーが少ないから、同じ事しか言えない。

 けれど、どこかのいつかとは違い、彼女はあの日から少し、大人びていた。顔を伏せながら背を向ける彼女。どうしたのだろうと重い、手を伸ばしてみると、そのしっぽではたかれてしまった。

 

 

桜木「マックイーン.........?」

 

 

マック「もう.........ずっとその言葉が欲しかったのに、遅いですわ!!」

 

 

 そう言いながら、怒っている様子を見せつけてからターフへ向かうマックイーン。それでも、その後ろ姿は中々に嬉しそうではあった。

 

 

桜木(.........申し訳ないな。遅くなっちまって)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.........ヒュ〜♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「.........は?」

 

 

 一人寂しさを感じながら、マックイーンの背中を見送っていると、後ろから突然聞こえて来る口笛を真似たような声。それに振り返ると、チーム[スピカ]+アグネスタキオンが声を上げていた。

 

 

沖野「やるじゃねえか桜木!これでお前も三流から卒業だな!」

 

 

タキオン「全く!そんなことが出来るんだったらなんでさっさとやらないんだ!痺れを切らして私は君に格好をつけないと死ぬ薬を打つところだったぞ!!」

 

 

桜木「な.........」

 

 

 ニンマリとした笑みを浮かべる沖野さんと、なんだか少しキレ気味のタキオン。その二人を見てたじろいでいても、猛攻はまだ続く。

 

 

テイオー「サブトレーナーも良いこと言うよね♪」

 

 

ダスカ「そうよねー♪一着で待ってる.........ですってー♪」

 

 

ウオッカ「お、俺はまだ顔が熱いぜ.........」

 

 

桜木「お、お前ら.........」

 

 

 上機嫌に話し始める二人と、暑そうに顔を扇ぐウオッカ。俺は今、危惧している。視線を送る先はウラライスブルボンの三姉妹だ。この三人にバレたら終わる気がする.........

 

 

ゴルシ「つか、おっちゃんマックイーンのこと好き過ぎだろ」

 

 

桜木「おぉぉうぅいいぃぃぃッッ!!!」

 

 

 何を言ってるんだこの面白ぇ(マジモン)女は!!???わざとらしく口を抑えやがってやってる事は白銀と同じなんだよこのっバカ女がァッ!

 ギコギコギコギコ、そんな音が首から聞こえてくる錯覚に陥りながら、視線を危惧していた三人に送ってみる。

 

 

ライス「お、おおお、お兄さま、マックイーンさんのこと.........」シュー...

 

 

ブルボン「なんでしょうか、不思議と胸の辺りが暖かい感触が.........」ポカポカ

 

 

ウララ「トレーナーマックイーンちゃんのこと好きなの!!???」キラキラ

 

 

桜木「こんの野次ウマ娘共がァァァ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員「...」ニヤニヤ

 

 

桜木「クソ.........酷い目にあったぜ.........」

 

 

 それもまぁ、現在進行形な訳だが。所変わって、現在は菊花賞が行われる京都レース場の観客席。ゴール付近で彼女の姿が見られる特等席だ。

 しかし、今なおほかのメンバーはニヤニヤとした笑いや、暖かい視線、そしてキラキラとした目を俺に向けてくる。色恋沙汰ある所にウマ娘ありと言うのは、一体どこのベテラントレーナーが言ったところだろうか。

 

 

ゴルシ「なぁ知ってるか?リポDって昔タコから作られてたらしいぜ」

 

 

桜木「今要るかそれ!?」

 

 

 観客席の熱など気にしないかと言うように今必要なさそうな雑学を教えてくるゴールドシップ。お前は絶対に許さないぞ。お前の大好きな爺ちゃんをあの世から引きずり出してやるからな。

 ギリギリと歯を軋ませてそのバカを睨んでみるが、効果は一切無い。それどころか、にらめっこと勘違いし始めて舌をベロベロと出てきやがった。

 

 

桜木「上等だテメェッッッ!!!!!」ガッ!

 

 

ゴルシ「なんだァ!!?やる気かァ!!!オラァ!!来いよッ!テメェら全員ッ!みじん切りにしてやるぜェ!!!」グルルッ!

 

 

沖野「おい!!こんなとこで騒ぐな!!出禁になるぞ!!」

 

 

桜木「ぐぬぬ.........!」

 

 

 二人とも怒られたと言うのに、アイツは気にせずに俺に挑発をしてくる。無敵か?コイツ。

 そんなゴールドシップを睨んでいると、その後ろ側の人混みの中にふと、目に止まる人影が見えた。

 

 

桜木「.........」

 

 

 綺麗な黒髪。整った顔立ち。手すりに頬杖をつきながら、しっぽを優雅に揺らしている。ゴールドシップも口を開かなければ、あんな大人のウマ娘の様に綺麗に見えるのだろうなと思っていると、そのウマ娘と視線が合った。

 まずい、なんていえば言い逃れできる?いや、しかし時既に遅いかもしれん。沖野さんは俺の視線に気付いてその方向を見たし、そのウマ娘は一瞬驚いたように目を見開いた後にこちらへとゆっくりと近付いてくる。

 

 

沖野(お前の知り合いか?)

 

 

桜木(いや、ただ目に止まったからじっと見てたら視線が合っちゃって.........)

 

 

沖野(おい!お前はどうしてそうトラブルを起こすんだ!!?)

 

 

桜木(沖野さんに言われたくないっすよ!!さっきもセクハラしかけて俺が慌てて止めたんじゃないっすか!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その声に戦慄が走る。他の子達は誰だろうと首を傾げるが、俺と沖野さんは冷や汗ダラダラだ。イナバウアーの形で真顔でダラダラと汗だけが地面に落ちていく姿はそんじょそこらのギャグ漫画より面白いだろ。

 どう謝る?どう言い訳する?そんなことをグルグルと頭で考えていると、我関せずのままルービックキューブを組み立てていたゴールドシップが騒ぎに気が付いた。

 

 

ゴルシ「げっ.........母ちゃん.........」

 

 

桜木「.........マジ?」

 

 

ゴル母「マジもマジ。おおマジよ。それにしても.........ほーん.........」ガシッ!

 

 

 ポカーンという言葉が合うように、俺以外の皆は口をあんぐりと開けてゴールドシップの母を見て居る。

 俺はと言うと、沖野さんに襟を掴まれていた所を引き離され、そのゴルシの母にマジマジと見られている。

 

 

ゴルシ「何やってんだよ」

 

 

ゴル母「いや、若ぇなと思って」

 

 

桜木(弱ったぞ。こんな美人にマジマジと見られるなんて思わなかった.........!!)

 

 

 先程とは違う汗がダラダラと地面に垂れて行ってしまう。仕方ないだろう。社会人経験豊富と言っても、こんな美人と接近する機会なんて一度もないぞ。チェリーボーイを舐めるな。

 そんな俺への観察が終わったのか、ジロジロと見ていたのを止めて、ゴールドシップの母はその姿を誇示するように仁王立ちで見せつけた。

 

 

ゴル母「アンタ、名前は?」

 

 

桜木「さ、桜木玲皇と申します.........」

 

 

ゴル母「おーっし、改めて.........アタシはそこの優秀ウマ娘、ゴールドシップの母。超優秀ウマ娘!!キンイ.........」

 

 

ゴルシ「トマトハイッテナイパスタだ」

 

 

トマ?「そうそう、トマトハイッテナイパスタ.........っておい!!違うだろ!!!」

 

 

ゴルシ「ああ!!?違わねえだろ!!?母ちゃんが古墳にスプレーラクガキして近所のクソガキに擦り付けたの反省してねえから、爺ちゃんからの罰で改名したんじゃねえか!!!」

 

 

 とんでもねえ母親じゃねえか。見た目のルックスに騙されちゃいけねえって目の前にお手本が居たのに、なんでそれに気が付かなかった?

 そのお手本の母親がまともなはずが無い。俺は今日抱いた幻想を打ち壊された。割と好みに近いルックスだったのに。

 

 

トマト「.........チッ、可愛くねえガキだぜ」

 

 

ゴルシ「母ちゃんに似たんだぜ。それにしても珍しいじゃん。レースなんて見に来る柄じゃ無いだろ」

 

 

トマト「いやー。なんかさぁ?菊花賞位は見に来た方がいいかと思ってよぉ。なんてったって三冠だろ?アタシ結構ドラマ好きなんだよ」

 

 

 目の前の残念美人は先程遠目で見た時と同じように手すりに肘を乗せ、頬杖を付く。ゴールドシップと同じく、不思議な雰囲気のあるウマ娘だ。

 

 

トマト「アンタらはチームメイトの応援かぁ?ご苦労なこったな〜」

 

 

桜木「え、ええ。うちのチームのエースの晴れ舞台なんでね」

 

 

トマト「ほぉーん、どこのどいつか知らないけど、応援くらいはしてやろっかなぁ?」

 

 

桜木「ええ、ぜひうちのマックイーンをお願いします」

 

 

トマト「.........お、始まるみたいだぜ?」

 

 

 心無しか、少し不機嫌そうな顔をするトマトさん(でいいのかな?)。ファンファーレの音が会場に鳴り響き始めた。タマモクロスの時もそうだったが、この重さに慣れる事は無さそうだ。

 

 

桜木「っ.........」

 

 

 走るのはマックイーンだ。俺が緊張してどうする?観客はただただ行く末を見守るだけ。ここに立ったなら、俺はもうレースに何も干渉する事は出来ない。

 それでも、と。そう思いながらも俺は首に掛けた王冠のアクセサリーに手を伸ばし、それを手の内に握り締めた。

 

 

桜木(大丈夫。あの子はもう、心配しなくていいくらいに強くなった。あとはもう、祈るだけだ.........)

 

 

 祈るだけ。何に祈るかすらも分からないまま、会場に響き渡る歓声と、聞こえてくる実況の声を背後にし、俺はただただ、彼女の全力を見守ろうと決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック(.........どうしたことでしょう)

 

 

 困りました。ええ、本当に困ってしまいましたわ.........トレーナーさんに、あの言葉を掛けられてから、ずっと体の調子が良いみたいです.........

 行けませんわ。浮かれていては、ライアンに勝てません。ですが、この身体の落ち着きに反して高まる気分の高揚は.........

 

 

マック(いつの間にか、手綱を握られていたのですね、私は.........)

 

 

 嫌な気分はしません。彼になら、それをされても、特段不満はありませんわ。そう思いながらもやはり、彼に対しての信用がありすぎると言いますか、心を開きすぎている気もしてきます。

 大事なレースの前。しかも、GIであり、三冠の一つとしても数えられる菊花賞です。心を引き締めなければなりません.........

 

 

マック「.........ふふ」

 

 

隣(この子、笑ってる.........?)

 

 

 ゆっくりと手を合わせ、こぼれてしまった笑みにすら気を回すこと無く、私はただ、明確になった祈る対象。今まではただレースに集中する為の行為が、この右耳に掛けられた王冠に注がれます。

 いつの間にか、信じる物がこの王冠になってしまいました。チームの証というのは、あるだけで役に立つものなのですね.........!

 

 

マック(さぁ、勝負です.........!ライアン!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実況「各バ一斉にスタートを切りました!!」

 

 

桜木「よし!スタートは完璧だ!!」

 

 

テイオー「コースも内側を付いてるよ!!」

 

 

 ゲートが開き、入り乱れる様に走り行くウマ娘達。その中を我関せずと言ったように一人、内側を着いて走るメジロマックイーン。

 彼女の王道を作り出す先行策だが、現在7番手と、少しバ群に飲まれそうな展開も予想されるが、それも想定済みで訓練を積んである。隙間と自身の体格差を瞬時に見極めて走り抜ける練習を、この日の為に仕上げてきたのだ。

 

 

桜木(けど.........)

 

 

沖野「ライアンは、その二つ後ろか.........!」

 

 

ウオッカ「あっちも中々いい位置付けてんじゃねえか.........!!」

 

 

 一人のウマ娘を挟み、ライアンは9番手でこのレースの行く末を見守っている。データで見る限り、彼女は差しを得意としているウマ娘だ。あの位置は絶好のポイントだと言っても過言ではない.........!

 

 

実況「さぁ一周目のホームストレッチに入って行きます!!」

 

 

ウララ「頑張れーーー!!!マックイーンちゃーーーん!!!」

 

 

ライス「頑張ってーーー!マックイーンさーーーん!」

 

 

桜木(5から6番手に付けてる.........!!それにフォームも自然体でスタミナ消費状況も良いはずだ.........ラストスパート。ライアン次第だが何とかなりそうだぞ.........!!)

 

 

 最初のコーナーをカーブし、ウマ娘全員の走る姿が一番近くに見えてくる。マックイーンが絶好調なのは巨大スクリーンに映し出される姿でも分かったが、肉眼で見れば恐ろしいほどにその好調が伝わってくる。

 

 

トマト「気張ってけー」

 

 

ゴルシ「母ちゃんもっと応援に腰を入れろよっっ!!!」

 

 

トマト「気合い入れろー」

 

 

スズカ「さっきと何も変わってないような.........」

 

 

 やる気のなさそうな応援が隣から聞こえてくる。トマトさんは頬杖を止め、その顎を手すりに乗せ、やる気なくマックイーンの応援していた。

 

 

実況「2番メジロマックイーン!!絶好の手応え!!」

 

 

実況「おおっと外からメジロライアンがいい感じで上がって来て参っています!!」

 

 

スペ「ああ!!あの位置はマズイです!!」

 

 

沖野「ああ、絶好の差し込みポイントだ.........!!」

 

 

桜木「ぐっ.........!」

 

 

 やはり、彼女も勝ちに来ているという事だ。未だ先頭集団に属しているマックイーンと、後方集団の先頭を走るライアン。順位は今見れば優勢だが、位置はどうだろう?

 マックイーンは先行で内側を通る展開でスタミナ消費を抑え、最後の直線で引き抜こうとしている。打って変わってライアンは、外めに着く差し走行でストレス無く集団を追い抜こうとしている。

 

 

ブルボン「現状、マックイーンさんの勝率は高いとは言い難いです.........」

 

 

ダスカ「そ、そんな.........!!???」

 

 

タキオン「さて、この内弁慶が吉と出るか凶と出るか.........」

 

 

桜木「マックイーン.........!!!」

 

 

実況「いよいよ菊花賞の正念場!!菊花賞の第3コーナーの坂でありますが!!メジロライアン!!ちょっとずつ差を詰めていきます!!」

 

 

 首に掛けた王冠に、自然と手が伸びる。頼む。俺達に、マックイーンに力を貸してほしい。そんな縋るような思いで、王冠の質素に輝く美しい光に手を伸ばし、握り締める。

 第3コーナーを曲がり終え、その姿を見せようとした瞬間。その王冠の輝きが、大きく煌めいたのを感じたのと同時に.........時間がまた、止まり、現実を俺に知らしめようとゆっくりと加速付けさせてきた。

 

 

桜木「ッッ!!!先頭だっ!!!マックイーンの前にもう誰も居ないッッ!!!」

 

 

実況「メジロマックイーンが先頭に立ちました!!!ホワイトオーシャンも真ん中から抜けて参りました!!!」

 

 

全員「行けェェェェッッッ!!!!!」

 

 

 風を感じる。どこまでも広がる様なターフに吹くような心地の良い風を、心は風通しを良くするように窓を開けた。彼女の強く走る姿に、優雅さを映し出すようなビジョンを思い浮かべながらも、その走る様子を。俺はただ、この王冠と共に見守り続けた。

 

 

実況「メジロ両バの争いか!!?その一角を崩したかホワイトオーシャン!!!」

 

 

実況「ホワイトオーシャン崩した二番手に上がって参りました!!!マックイーン先頭だ!!!!!」

 

 

 この日。あの日彼女に見た何かを、俺は改めて認識した。間違いでは無かった。あの選抜レースで7着に沈んだ彼女に、何かを感じた俺は、正しかったのだと。

 同時に、彼女の隣で、彼女が夢を叶えるであろう舞台の隣で、同じ様に呼吸をしていたいと、この、いつかの日に捨てかけた特等席に座りながら、そう強く願った.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マックイーンだマックイーンだ!!!メジロでも、マックイーンの方だーーー!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テイオー「.........凄い」

 

 

 自然と、ボクの口から溢れ出たのはそんなありふれた言葉だった。けれど、この気持ちはそんな簡単に現れる程単純じゃない事は、ボク自身が分かってた。

 マックイーンが.........菊花賞を勝った。初めて挑むGIで、ボクより先に、この大舞台で一着を取っちゃったんだ。それが何よりも誇らしいし、羨ましかった。

 

 

テイオー「来年はボクも.........この舞台で.........!!」

 

 

沖野「.........ああ!!お前も、ここで走るんだ!!テイオー!!」

 

 

 そう、隣でキラキラとした目をしたトレーナーが、ボクにその目を向けて言ってくれた。

 なんだか嬉しく思っちゃったけど、それがなんか恥ずかしくなって、走り終えたマックイーンの居るターフに目を向けたんだ。

 観客に手を振って、その声に答える姿を見せた後、ライバルとして戦ったライアンに握手をしたマックイーン。

 

 

桜木「.........来年にはもう、世紀の対決は過去の事にされちまうんだろうな」

 

 

テイオー「そうだよ!!来年にはボクが無敗の三冠バとして君臨しちゃうんだからね♪」

 

 

 ボクの目標。それは、シンボリルドルフ会長と同じ様に、無敗の三冠バになる事。そうなる事だけを願って、ボクはトレセン学園に来たんだ。

 けど.........今はそれと同じ位に、ううん。それ以上に、やりたい事を見つけてしまったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (ボクは、マックイーンとも戦いたい.........!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 奥の方に居る、サブトレーナー。桜木トレーナーの方を見つめる。トレーナーだけど、トレーナーっぽくない人と言えば良いのかな?そんな人が、あの走り方を作り上げたと思ったら、凄く興味が湧いてきた。

 一体、今のマックイーンと一緒に走ったら、どうなっちゃうんだろう?って.........

 

 

桜木「それにしても、来年は大忙しっすね」

 

 

タキオン「そうだねぇ。マックイーン君は天皇賞春。テイオー君は三冠。ライス君とブルボン君はデビュー。暇じゃなさそうだ」

 

 

ダスカ「えー!?ちょっと!!タキオンさんはー!?」

 

 

桜木「い、いや。ちょろ〜っとまだ様子見が良いかな〜.........?なーんて.........」

 

 

ダスカ「もーー!!!アタシはタキオンさんの走りが見たいのにーーー!!!!」ブンブン!!!

 

 

桜木「分かった分かった!!!絶対再来年にはデビューさせるから首引っ掴みジェットコースターは止めてくれ!!!!!苦しい〜〜〜!!!!?????」

 

 

ゴルシ「母ちゃんライブは見てくのか?」

 

 

トマト「見ねぇ。大体昔から思ったけどなんで走ったら踊るんだ?観客が踊るべきだろ。競走バを讃えろ」

 

 

沖野「いやいや、走った後の踊りもウマ娘達が楽しむ為に始めた事ですから.........」

 

 

桜木「これが恋.........?」

 

 

ダスカ「はっ倒すわよ」

 

 

トマト「お、皇輝着いたらしいから帰るわ。頑張れよ我が娘」

 

 

ゴルシ「父ちゃんによろしくなトマトハイッテナイパスタ」

 

 

トマト「ファッキン」

 

 

ゴルシ「ファッキンガード」

 

 

ブルボン「うっ、流れ弾が」

 

 

全員「ブルボン(さん)!!?」

 

 

ブルボン「.........サイボーグジョークです」

 

 

 普段、あまり騒ぎに入って来ないようなブルボンが混ざってきてびっくりしちゃったけど、みんな面白くてすんごく笑ってたん。

 こんなに楽しく過ぎてく日常を感じながら、もう一度、みんなが走り終えたレース場を見ていると、メラメラとボクの闘志が燃えたぎる様に勢いをまして、三冠バになる決意を、また新たに胸に刻み込んだ。

 

 

 

 

 

  ......To be continued

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