山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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ウララとチャンバラごっこしていたら、いつの間にかガチで身の危険を感じた話

 

 

 

 

 

 秋の風がようやく吹き始め、年の暮れも感じてきた時期。菊花賞も制し、晴れて重賞を勝ち取ったトレーナーとして一躍名を挙げた俺であったが.........

 

 

桜木「.........っ」ゴクリ...

 

 

 ゆっくりと息を飲む音が、静かな教室。アグネスタキオンの根城。理科実験室に木霊する。体全身に感じる気配は正に殺気そのものであり、身を縮み上がらせながら机の下に隠れていた。

 

 

桜木(クソっ、コイツが本当にタキオンの言う超即効性筋力ウマ娘化薬かどうか判別が効かねェッ!けどここでたたら踏んでたらそれこそ.........)

 

 

「桜木さーん♪居るのは分かってるんですよ?」

 

 

 迷ってる暇は無い。噂によれば、この声を発している栗毛の怪物であるグラスワンダーはみみぴとによる盗み聞きが得意らしい。

 あぁ、今更ながら、なんでこんな事になってしまったのだろう.........?そう。あれは確か、数日前の昼休みの出来事であった.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウララ「頼もー!!!」

 

 

 ガララッ!もうそんな音が染み付いたうちのチームルームの扉。バンッとその身を大きく見せるのはうちのチームの癒し役。ハルウララが仁王立ちしていた。

 

 

桜木「おー。どうしたウララ。外に遊びに行ったんじゃないのか?」

 

 

ウララ「うん!!!実はね!!面白そうな遊びを教えて貰ったの!!ねぇトレーナー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チャンバラごっこって知ってる!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その言葉を聞いた時。俺は心がワクワクした。久々に聞いたその単語はどうやら、俺を大人としてではなく、かつて子供の頃だった時と同じ様に扱われる言葉遣いだった。つまり、誘われている。

 

 

桜木「.........丁度いいぞ。玩具なら、沢山あるからな」

 

 

ウララ「ほんと!!?」

 

 

桜木「ああ!明日持ってくるから遊ぼうな!!ウララ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウララ「くっ!父上の仇ー!!!」ワー!

 

 

桜木「ククク.........どうしたハルウララ丸ッッ!!!貴様のニッポー流忍術はその程度かァ!!!」カキンカキン!

 

 

 逆手に持った玩具の刀で、忙しなく振り回されるウララの刀を軽くあしらう。その様子を呆れたように見るマックイーン。羨ましそうに見るライスとブルボン。

 この遊びを始めた当初はまるで我が子を見る優しい目をしていたマックイーンも、三回目となればもう呆れてくる。ここで仮眠を取っていたタキオンももれなくそんなことは出来なくなり、体調を崩して授業を休んでいる。

 

 

桜木(.........あ、やっべ〜.........今日会議あるのすっかり忘れてたぞ)

 

 

 いっけねぇ。これじゃ魔封波の時に札忘れちまうどこぞのサイヤ人じゃねえか。けど、ウララはこういう熱中してる時に中断されると、ちょっと調子崩しちゃうからなぁ.........

 そんな事を考えていると、ウララの猛攻に押し切られてしまい、窓際まで追い詰められてしまう。しめた。これはチャンスだ。そう思い、以前イタズラ用に買っていた煙幕を机から取り出した。

 

 

桜木「くぅっ!中々やるな.........だが、俺はここで死ぬ訳には行かんのだ.........どろんッッ!!!」ボフン!

 

 

ウララ「あー!!!逃げたー!!!」

 

 

 そんなウララの声を遠くに聴きながら、上履きのまま外へと脱出を図ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これがそもそもの間違いだった事に気付かずに.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「ふぃー。今日は短縮授業で器具点検の日だからトレーニング無し。久々にアイツらと.........いぃッッ!!!??」

 

 

 廊下を歩いていると、横から一瞬にして現れる一本の棒。それは壁に当たると、上下にその棒の柔らかさを知らしめるビヨヨンと動く。

 しかし、それには見覚えがあった。そう。俺がウララに使いたい武器を聞いた時に見せた玩具のうちの一つ。弓矢のものの一本であった。

 恐る恐る、換気のために開けている廊下の窓の外に視線を送ると、木の上に座りながらこちらの様子を伺う短髪芦毛のウマ娘が居た。

 

 

「あちゃー。外しちゃったかー」

 

 

 その声を聞いた瞬間。俺はすぐさま前方向にステップを踏み、回避行動をとりながら後ろへと振り向いた。あんな遠さで声がこちらまで届ける必要なんて無い。端っからあれは当てるつもりなどなく、ブラフだったのだ。

 そして、その予想は怖いほどに的中した。

 

 

ウララ「あー!!!セイちゃんおっしー!!あともうちょっとだったのにー!!!」

 

 

桜木「う、ウララ!!?な、なんの真似だ.........?」

 

 

ウララ「もう!!違うよ!!ハルウララ丸だよ!!トレーナー.........じゃなくて、悪の使者!邪郎丸!!」

 

 

 後ろを振り向くと、突撃する気マンマンだったウララが居た。どうやら、まだまだお遊びは続いているらしい。だが妙だ。いつもタイマン勝負で、順番にライスとブルボンと交代交代で遊んでいたのに、今更になってなぜ俺一人を.........?

 そう思っていると、ウララの口から出てきた言葉に酷く納得した。

 

 

ウララ「わたし見たんだー!!邪郎丸が仲間を集めて何か言ってたの!!たぶんウララを倒すために、いっぱい人を集めたんだ!!」

 

 

桜木(今日の会議の事ガッツリ勘違いしてらっしゃるーーー!!!!!)

 

 

桜木「あのウララさん?違うんですよ。あれはトレーナー報告会っていう定例のー」ヒュン!

 

 

 今度は背後から頬を掠める様に何かが飛んできた。咄嗟に顔を逸らして避けてみると、少し先の地面で柔らかい玩具ナイフが地面に落ちた。

 

 

「あら、意外と反射神経がよろしいのね」

 

 

ウララ「キングちゃん!!!」

 

 

桜木「次から次へとまぁ.........ご苦労なこって.........」

 

 

 ウララから目を離すことは出来ない。何故なら隙を見て突っ込んでくるからだ。この子。案外ヒートアップすると加減を忘れる。

 このキングちゃんと呼ばれた子にも注目をせざるを得ない。先程の投げナイフ。腕は超一流だ。

 そしていちばん厄介なのが、今もあの木の上で弓を引き続けるセイちゃんと呼ばれた子。その気になれば、俺にあの矢を当てるのも簡単だったろうに.........

 

 

キング「さぁ観念なさい。ウララさんを寄って集ってイジメようとした愚か者に、裁きの千本ナイフを下すわ!!」

 

 

桜木「くっ!!何か誤解してないか!!あれはトレーナー定例会議であって!!悪の秘密結社なんかじゃ.........チィッッ!!!」カキン!

 

 

 注意をしていたセイちゃんと呼ばれた子から早速弓矢が引かれた。間違えて持ってきてしまっていた玩具刀を鞘から息抜き、下から上へと切り上げる事で難を逃れる。

 それを開戦の合図と判断を下したのか、ウララは突撃してきて、キングちゃんと呼ばれた子は更にナイフを取り出した。

 

 

ウララ「邪郎丸覚悟ー!!!」

 

 

キング「逃げ場なんて無くてよ!!!」

 

 

桜木「けっ!だったら作りゃ良い話だろうが.........よぉッッ!!!」

 

 

 上に弾いた矢を落ちてきたタイミングで掴み、キングの方へと投げる。想定していなかったのか、目を丸くしたキングはそれに当たらないようその場からぎこちないステップ避ける。

 突撃してくるウララの玩具刀を、玩具刀で下から受止め、絡めるようにして弾き飛ばし、その隙に横から逃走を図ったのだった.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこから隠れながらもチームルームへと戻り、武器という武器を全て押収した後、狙撃されない様に階段を昇った咲の廊下で充満するプレッシャーに押し負けてしまいここに居るということだ。

 

 

グラス「桜木トレーナーさ〜ん?そろそろ出てきてくれないと、手加減してあげませんよ?」

 

 

桜木(よく言うぜ。俺がスペの名前を呼び間違えるのを良い気してない癖しやがって.........)

 

 

 事実、一度その類の忠告を紙で受けた覚えがある。スペと親しくしている友人の一人で俺にあんな殺気を当てられるなら十中八九本人だろう。

 

 

桜木(飲むべきか、飲まないべきか.........)

 

 

グラス「今から3つ.........数えますね?」

 

 

桜木(クッソ!!頼むぞ玲皇ちゃんの引き運!!!ここで危険度最高レベル要保管の嫌われ薬を引いたら本当に滅多刺しにされちまうからなッッ!!!)

 

 

グラス「ひとーつ.........」

 

 

 怪しげなドクロが脅しのように表記されているビンの蓋を、不器用ながらも急いで開ける。今は薬による副作用なんかより、廊下から溢れ出る殺気の方が恐ろしい。

 

 

「ふたーつ.........」

 

 

桜木「.........ゴクンっ!」

 

 

 喉を通った瞬間に接触面から成分が入っていくのか、効果は直ぐに現れ始めた。身体に迸る熱を逃がすように机の下から飛び出し、実験室出口の扉の前までわずかな時間で到達する。

 

 

グラス「みーっ「ドゴォアッッ!!!」.........つ♪」

 

 

桜木「おいッ!!明らかに数え終わる前に姿見せただろ!!」

 

 

 手で空ける時間がもったいないと蹴りつけてまで出てきたのに、これでは全く意味が無い。目の前の栗毛のウマ娘は悪びれる様子も無く、その両手に先端に刀を括り付けた棒。即席の薙刀を手に持ちながら穏やかに笑っている。

 

 

グラス「私も最初はそう思ったんですけど.........その様子なら、手加減して負ける可能性があるので♪」

 

 

桜木「.........けっ、こんな事なら。薬は飲むべきじゃなかったな.........!」

 

 

グラス「どうしたんです?その頭の上に生えた耳とおしりのしっぽ」

 

 

桜木「んなもん、アグネスタキオン特製のお薬の副作用に決まってんだろ。ちなみに聞くけど、俺ご所望の手心は?」

 

 

グラス「真心込めて打ち込むことなら出来るんですけど.........」

 

 

桜木「OK。聞いた俺がバカだった」

 

 

 背中に背負った荷物の中から、一本の玩具刀を引き抜き、鞘を廊下に乱雑に投げ捨てる。

 その様子を見て、彼女もその両手に持っていただけの薙刀を握り締め、その瞳に青白い炎を宿した。

 

 

桜木(ヘル化.........しやがった.........!)

 

 

グラス「桜木さん?一つ、お願いがあります」

 

 

桜木「.........聞くだけ聞くぞ」

 

 

グラス「私が勝ったら.........スペちゃんの名前。もう間違えないでください」

 

 

 勝ってもそうしよう。俺はすぐにそう思った。このプレッシャーは耐えられない。タキオンのまとめたヘル化レポートに記載されていた事。それはどんなくだらない勝負も精神的ダメージが入る程に空間を歪める力を発揮するらしい。

 普通なら鼻で笑うところだが、恐ろしい事に実体験は済ませている。原理を簡単に説明すると、ウマ娘がレース中に一瞬だけ生み出す本気の瞬間を常に引き出している状態らしい。

 それを、アグネスタキオンの薬なしに引き出してくる目の前の存在に対処する方法は一つ。ひとまず真面目に付き合う事だ。

 

 

グラス「では、行かせていただきます」

 

 

桜木「うおっ.........!?」

 

 

 薙刀の強みであるリーチを生かし、素早く的確な突きを繰り出される。それは正に見事としか言い様がない突き方で、有効打と無効打を散りばめてくる。

 無効打を避けると有効打が避けた先の硬直に重ねられる。それを玩具刀で弾くと次に来る無効打を、先程より大袈裟に避ける羽目になる。

 こんなことをして居たら埒が明かない。そう思った俺は、突き出された薙刀を弾き上げ、薙刀の届かない位置まで下がった。

 

 

桜木「クソッタレが!誰だよ薙刀は女の武器っつった奴ァ!出てこいよォッ!ぶっ〇してやるよ俺がァッッ!!!」

 

 

グラス「凄いです桜木さん♪まだまだ元気ですね♪」

 

 

 この栗毛モンスターめ.........!こちとら生身のヒューマンだぞ!!!まぁ半分人外化してるのは、さっきから敏感に反応する頭の上の何かが物語っているのも事実だが。

 とにかく、この状況を打破するべく、持ち方を逆手に変え、塚の端っこをもう片方の手で添えるように持って前へと突っ込む。

 

 

グラス「あら?」

 

 

桜木「取ったァ!!」

 

 

 突いてきた薙刀を最小限の動きで横に逸らし、最大威力で迎え撃つためにその勢いで飛び上がり、落下と体のひねりによる回転エネルギーを合わせてぶつけようと思ったが.........

 

 

 バキャッ!

 

 

桜木「いぃッッ!!???」

 

 

グラス「ふふ、捕まえましたよ♪」

 

 

 気付けばその刀をパシリと掴まれ、へし折られた。そして体を引き寄せられる。あれ?さっきまであなたの手元にあった薙刀は?と思うと、すぐ側にほっぽり出されてた。

 普通、土壇場で武器を捨てる戦士はそう居ない。この状況でそれをしたという事は、このグラスワンダーという少女。いや、少女の皮を被った戦士は世が世なら戦う者として大成していただろう。

 

 

グラス「投げますね。桜木さん!」

 

 

桜木「ウッソでしょ!!?」

 

 

グラス「アニメじゃないですよ?」

 

 

桜木「それはジュドーーー!!!??」

 

 

 さすがはウマ娘。成人男性+‪αの重さなど軽いと言うようにポイッと投げ捨てやがる。最近ブルボンとやるようなやり取りまでしてくる。アメリカ育ち日本文化好きは伊達では無い。ガンダムなんて履修済みのようなものだろう。知らんけど。

 

 

桜木「あっぶ.........!?」

 

 

グラス「ッッ!!!」

 

 

 何とかギリギリ空中制御に成功し、ふらつきながらも地面に着地するが、グラスの方を向こうとすると荷物から余った玩具刀を引き抜かれ、そのままズバッと.........鮮血の舞うイメージを脳に染み込ませるレベルの睨みを効かせて、プラスチック製の刃が上から下へと切り伏せられた。

 

 

グラス「.........私の勝ち。ですね?」

 

 

桜木「参った。俺のプライドズタズタにされちゃったよ.........」

 

 

 先の迫力のせいで尻もちをつき、そのままの状態で両手を挙げて許しを乞う。グラスワンダーは目に宿るヘル化の炎は鎮火され、超戦士から普通のウマ娘へと雰囲気を戻した。

 乗せる役者が乗せられる。つまり、演技の技量で負けたという事だ。初めての経験だったが、プライドが傷付いた以上に、楽しかった。

 

 

グラス「やっぱり、ヒーローショーの時から凄い人だと思ったんです。手合わせ出来て光栄でした」

 

 

桜木「そりゃどうも.........」

 

 

グラス「つぎの公演も楽しみにしてますね?」

 

 

桜木「もうしないから.........」

 

 

 まぁ理事長の気まぐれにもよるが、もうそんなことも起きないだろう。いや、俺が起きさせない。そんな決意を固めた。

 目の前に立ふさがるグラスワンダーは、その手に何故か長いロープを持っている。その姿に気を取られて、俺は気が付くことが出来なかった。暗躍する二つの影に.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「oh!!グラスデース!!」

 

 

グラス「ほら、きりきり歩いて下さい」

 

 

桜木「くぅ.........!ここまでされるとは.........!」

 

 

スペ「えー!?サブトレーナーさん捕まっちゃったんですかー!?私もこの玩具使いたかったのにー!」

 

 

桜木「悪いなサラm「桜木さん?」.........スペ」

 

 

スペ「?はい、スペシャルウィークです.........?」

 

 

 体をロープで縛られながら、階段を降りていくと、ウララの友達が全員集まっていた。何故か鎖鎌をチョイスしたスペの名前をいつも通りわざと間違えかけると、背中で手綱を持つようにロープを手に握るグラスワンダーにヘル化の殺気を当てられた。その技術を頼むから会長に教えてやってくれ。

 

 

「うぅ、エルも桜木さんとヒーローごっこ。したかったデース.........」

 

 

 仮面をつけたエルというウマ娘は残念そうに嘆いた。その手には何も持っていないが、まさか徒手空拳で戦う気だったのだろうか?

 そんな二人の様子を見ていると、何故かしょんぼりとしたハルウララが目の前までやってきた。

 

 

ウララ「トレーナー.........」

 

 

桜木「ウララ.........?」

 

 

ウララ「もう、チャンバラごっこ終わりなの.........???」

 

 

 ああ、そうか。今まで数日間。ストーリー仕立てでチャンバラごっこをしていたのだ。何かと理由をつけて、次の日に遊ぶ口実を作っていた。

 けれど、捕まってしまえばそれも終わりだ。ウララが本当にしたかったのは仇討ちなんかじゃなく、チャンバラごっこだったのだから.........

 

 

桜木「.........」

 

 

グラス「.........」コクリ

 

 

 後ろで手綱を引くグラスに視線を送ると、頷いて、その握る力を少し緩めた。それを確認出来ただけでも充分だ。

 

 

桜木「.........ハルウララ丸」

 

 

ウララ「!!」

 

 

桜木「.........まだまだ甘いわァッッ!!!」

 

 

ウララ「わぁ!!!」

 

 

 ウマ娘の筋力とは本当に素晴らしいもので、多少縛られていてもいとも簡単にロープを引きちぎることが出来てしまった。

 離れる最中、グラスの方へ視線を向けると、グッとサムズアップを小さく見せる。どうやらお互い、ウララのしょんぼり顔は見たくないらしい。

 

 

桜木「決着を付けたくばグラウンドへ来るが良い!!そこで相手をしてやろうッッ!!!」

 

 

エル「ワオ!!宣戦布告デース!!」

 

 

スペ「ど、どうするのウララちゃん!!?」

 

 

ウララ「.........ウララ行くよ!!父上の仇!!絶対とるもん!!」フンス!

 

 

グラス「その意気ですよ。ウララちゃん」

 

 

桜木「ではサラバだッッ!!!」

 

 

 キラキラとした笑顔を取り戻したウララを後目に、俺は一足先に猛スピードでグラウンドへと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「.........来たか」

 

 

 土埃が舞うグラウンド。ウララを先頭に、先程俺に対峙してきた面々がゾロゾロと集まってきている。

 

 

ウララ「みんな!!手は出さないでね!!これはウララがやんなきゃ行けないことだから!!」

 

 

キング「.........そう言われては、仕方ないわね」

 

 

スペ「キチッとやっつけてね!!ウララちゃん!!」

 

 

セイ「ねぇねぇ。なんでウマ耳生えてるんだろうねー?」

 

 

エル「Why!?今の流れで聞きマスか!?」

 

 

グラス「なんでも、アグネスタキオンさんの薬の効果だとか.........」

 

 

 おー。すごいな。後ろでヒソヒソと話している子達の声も聞こえてくるぞ。聴力もウマ娘化するのか。

 それにしてもこの距離であれが聞こえるんだ。道理でタキオンに対する文句が尽くアイツに通ってる訳だよ。これからは心の中で呟こう。

 

 

ウララ「今度こそ!!父上の仇ー!!!」

 

 

桜木「来い!!!その手で決着をつけて見せよ!!!」

 

 

 先程グラスワンダーと交わしたような激しさはないチャンバラごっこ。しかし、凄く幸せに感じる。ああ、殺気を当てられてないだけでこんなに幸せなんだな.........

 

 

ウララ「うぅぅ.........!」

 

 

桜木「ぐぬぬ.........!!」

 

 

 いつもは一方的に押し負ける為、敢えてやらない鍔迫り合いも、今は筋力ウマ娘化のおかげで軽々とやってのけることが出来る。それを見守るギャラリーからは関心の声が挙げられる。

 

 

ウララ「っ!とりゃあ!!!」

 

 

桜木「なっ!?しま.........」

 

 

 ここで決めにかかろうと思ったのだろう。ウララが一層の力を込め、俺の刀を上へと押し上げた。俺はそれに対して大袈裟に、体を後方へと下げる。

 タッタッタッと、それを追いかけるようにやってくるウララ。もう、物語に決着を付けるのだろう。その走りに、迷いはない.........

 そして、ウララの姿が近づいた瞬間。身体の隙間を何かが通る感触を感じた.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 背中側から。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウララ「え.........!?」

 

 

全員「な!?」

 

 

桜木「っ、き、貴様.........!!?」

 

 

「あァ〜〜〜.........やっと出てこれたぜェ.........これはそこのガキに礼を言わねェとなァ?キヒヒッ!」

 

 

 ゆっくりとそのまま後ろを振り返ると、そこには妙に気合を入れて、肌を白くメイクした白銀が、俺の背中から光るソードで脇の隙間から貫いた。

 

 

「くっ、遅かったか.........!!!」

 

 

桜木「っ!ゴールドシップ.........!!」

 

 

 息切れをしながら、グラス達の後ろに現れたゴールドシップ。その姿はいつもの学生服とは違い、白いローブを纏って現れた。

 どうやら、ウララを含め、他の子達は展開についていけてないらしい。かく言う俺もついていけてない。

 

 

白銀「おうおう、ゴルスマスターがおいでなさるたァ......随分大事だなァ?」

 

 

ゴルシ「気をつけろ!!アイツは地球に封印されていた死の来訪者だッ!」

 

 

ウマ娘「死の来訪者!?」

 

 

ゴルシ「ああ!!アタシのかつての友、ハルウララ丸の父親が封印してたんだが.........どうやら、さっきの戦いで寿命が.........もう.........」

 

 

 ゴールドシップは俺を一瞬、寂しく見つめた後。悲しそうに目を逸らした。それを見たウララは、ゆっくりと。何かを察するように俺の方へと視線を動かした。

 

 

ウララ「.........ウソだ、父上は.........お父さんは邪郎丸にやられちゃったんだ!!!ウララ見たもん!!!」

 

 

ゴルシ「バカヤローッッ!!!」

 

 

ウララ「!!?」

 

 

ゴルシ「ソイツに生えてる.........ウマ耳としっぽが.........何よりの証拠じゃねえか.........!!!!!」

 

 

ウララ「.........!」

 

 

 悔しそうにそう言い切った後、握りこぶしを作り、彼女は目を伏せた。演技力あるな、お前。

 一方、ウララは悲しそうに座り込み、倒れ伏した俺の頭と背中を抱えた。その目にはもう物語に入り込んでいるせいか、目に涙が溜まっている。

 

 

ウララ「本当にお父さんなの.........???」

 

 

桜木「.........ごめんな、ウララ」

 

 

ウララ「.........なんで.........???どうして言ってくれなかったの!?言ってくれたら!!ウララお父さんにあんなことしなかったのに!!!」

 

 

 言葉を紡ぎながら頬を撫でると、目に溜めた涙がゆっくりとその頬を伝って行った。そのまま頭にゆっくりと手を回し、俺の顔まで近付け、ほっぺ同士をこすり合わせた。

 

 

桜木「お前に殺されるつもりなんて.........毛頭なかった。嬉しかったぞウララ.........あんなに強くなってるなんて、思ってもみなかった.........お前はもう、立派なニッポー流忍術伝承者だ.........」

 

 

ウララ「やだやだやだ!!!ウララもっと教えてもらいたいこと沢山あるもん!!人参ケーキの作り方!!教えてよ!!!」

 

 

桜木「ハハハ.........食い意地は、昔のまんまか.........ウララ、これをお前に.........」

 

 

 会議で使った大事な書類を、丸めてウララに手渡した。良いんだ。美しいドラマには多少の犠牲は付き物だ。

 

 

桜木「これは.........この地球から約三万光年離れた惑星.........ゴルゴル星に行く時空間移動忍術が記された巻物だ.........」

 

 

ウララ「な、なんで.........???」

 

 

桜木「良いか.........地球は.........はるか昔から、悪に狙われる宿命にある星だ.........兄弟星である月は.........それ故に.........地上から水を失った.........」

 

 

桜木「私は.........そんな干からびた地球は見たくない.........若かりし頃の私と同じように.........ゴルゴル星で、友と共に.........強くなれ.........」

 

 

 いつの間にか、腹部に乗せられたウララの手を取り、それをギュッと握りしめた。小さく、暖かい手だ。この子の優しさと明るさを象徴していると言ってもいい。それを、ウララの目の前までゆっくりと持ってくる。

 

 

桜木「私はこれからも.........お前の事を.........ずっと見守っている.........ぞ.........」ガクッ

 

 

ウララ「お父......さん.........?お父さん、お父さん!!」

 

 

 力なく、腕と首をゆっくりと脱力させ、相手に死を悟らせる。死んだフリも演技をする上で必要な練習法だ。基礎として訓練する時もある。

 ウララは俺の身体を何度も揺さぶった。それが気が付くと止まったので、薄目で様子を確認すると、ゴールドシップが悲しそうにウララの肩に手を置いた。

 

 

ゴルシ「.........お前の父親を殺したのは、今この宇宙を混沌に沈めようとしている邪龍[デス・ゴルシ].........その手先、蛇窯 総牙(じゃがま そうが)だ」

 

 

白銀「お?ようやくオレ様ちゃんに注目が集まったって訳だァ.........けどよォいいのかァ?テメェらが呑気にお涙頂戴している間に、オレ様ちゃんはお情けで倒してる所を倒してないんだぜェ?」

 

 

ゴルシ「知らねぇよんなもん。こっちはな、おっちゃんをお前に殺されて、テンションは子犬が産まれたばかりの野良犬なんだよ.........ブォン!!」

 

 

桜木(ンフ.........‪w)

 

 

 何事かと思いきや、白銀と同じ形状をした玩具をローブの内側から取りだし、口で効果音を言いながら光を着けた。

 

 

ゴルシ「良いかオマエらッ!体内に流れる、ウマエネルギーの循環ッ!それを感じとり、さらに一段階上の領域に達させる事でッ!この世の法則に対して常にマウントを取る事が出来るッッ!!!」

 

 

ゴルシ「その力の名は.........ッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「[ゴルス]ッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「素晴らしいですわ.........」ツー...

 

 

桜木「.........」

 

 

 ハンカチで溢れ出る涙を上品に拭いながら、マックイーンはその言葉を零した。いつの間にか取られていたチャンバラのやり取りの一部始終。それを黒津木が編集を掛けて映画風に仕立て上げやがった。

 

 

マック「これ!!ライアン達にも見せましょう!!」

 

 

桜木「待て待て待て待て!!?」

 

 

マック「止めないでくださいまし!!これは世紀の作品になりますわ!!メジロの力を使い映画化してシリーズを作りましょう!!私早く続きが見たくて仕方ありませんわ!!!」

 

 

 チームルームの外に走り出そうとするマックイーンを止める為に肩を掴んだ。この子、本当に俺達のノリで麻痺ってきた気がするぞ。

 

 

桜木「マジで待てマックイーン!!創作物には続編はともかく、三作目は駄作になるってジンクスが.........」

 

 

マック「それは3と名前がついてるからですわ!!事実上の続編であってもタイトルが変わってしまえばジンクスなどなんともありませんとも!!」

 

 

桜木「ええいこの子はなんでこんな時に限ってグイグイ行けるんだ!!」

 

 

 それを頼むからレース前にも発揮してくれ!!そんなことを思いながら、メジロの秘蔵っ子と一進一退の工房を繰り広げていると、チームルームの扉がいつも通り勢いよく開け放たれた。

 

 

ウララ「トレーナー!!!」

 

 

桜木「ウララ!!?」

 

 

 俺とマックイーンの視線が、ウララにへと集中する。まずい。どうしよう.........この感じからして、チャンバラごっこの催促だろうか?しかし、その手に玩具刀は持っていない。

 そんなことを思いながらことの行く末を見守るよう、ウララの出方を伺っていた。

 

 

ウララ「さっきね!!面白そうな遊びを教えて貰ったの!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガンマンごっこってしってる!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「も、もう勘弁してくれぇぇぇ〜〜〜!!!」

 

 

 そんな事言うウララと、その後ろをゾロゾロと付いて来たウマ娘達を見て、俺は今までで一番悲痛な叫び声を上げたのだった.........

 

 

 

 

 

  ......To be continued

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