山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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マックイーン「新しいトレーナー!?」

 

 

 

 

 

マック「東.........トレーナー.........!!」

 

 

東「.........お前らの言いたいことは分かる」

 

 

タキオン「.........」

 

 

テイオー「.........」

 

 

 腕を組みながら、彼は静かにそう呟きました。彼自身、ここに居るべきでは無いということを少なくとも理解はしているようでした。

 彼は一度、心無い言葉でトレーナーさんを傷付け、そして私と彼の関係を引き裂こうとしました。そんな彼がなぜ.........?

 

 

東「俺はアイツからこの話が来た時、こう思った」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「脅されてるな、と.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 思わずズッコケました。ええ、文字通り椅子の上から複数名ほど。仕方ないではありませんか、真面目な顔でそんなすっとんきょうなことを言われてしまえば、誰だってそうなります。

 

 

タキオン「冗談じゃない。こっちから願い下げだ。私は帰らせてもらうよ.........退きたまえ、桐生院くん」

 

 

桐生院「話を聞いてください、アグネスタキオンさん。彼は、桜木トレーナーが[最も信頼しているトレーナー]です」

 

 

 扉の前に立ちはだかる桐生院さんのその言葉で、あの事件を知っている人達は驚きの表情を浮かべます。恐らく、私も.........

 あの事件。今この場にいない彼が私の担当になり、一年が経過した春、東トレーナーは私を担当する為に、トレーナーさんに近付きました。トレーナーさんに、酷い言葉を浴びせ.........!!私と彼との契約を破棄寸前にまで追い込んだ張本人なのです.........!!そんな彼を.........

 

 

マック「最も信頼している.........?」

 

 

東「笑っちまうだろ?俺自身、聞いててびっくりしちまった」

 

 

ゴルシ「頬も赤らめてたぜ」

 

 

東「な、お前見てたのか.........!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「単刀直入に言います。十日間。俺の代わりにチームのトレーナーをしてもらいたい」

 

 

東「断る、と言ったら?」

 

 

桜木「そういう時点で断る気が無いのはバレバレですよ。[先輩]」

 

 

 フッ、と笑い、肩を竦めて見せる桜木。目の前に居るコイツに、俺は自然と苛立ちを覚えた。

 そもそも気に入らなかった。なぜこんないい加減な奴がチームを持てたのか、野心も野望も持たないコイツに、なぜ人々は.........俺は惹かれるのか、理解出来なかった。

 

 

東「.........なぜそこまで言える?」

 

 

桜木「貴方が、沖野さんの同期で、史上最年少でベテラントレーナーに登り詰めた男だからです。ただ野心家なだけじゃ、絶対そこまでは行けない。ウマ娘の事をしっかり考えなければ、勝利は有り得ないからです」

 

 

 そういう奴の顔は、さっきよりも腹の立つ顔で、俺を見てきた。まっすぐとした目で、その目が、何よりイラついた。

 咥えたタバコに手を伸ばし、携帯灰皿で鎮火する。灯りが無ければ、少しは奴の顔が見れなくなるかもしれない。そうは思っても、暗闇の中でもアイツの顔は、ハッキリと分かった。

 

 

東「なぜだっ!!俺がお前にしたこと忘れたのか!!?」

 

 

桜木「忘れてないっすよ。忘れるわけ.........ないじゃないっすか」

 

 

東「じゃあ.........!!」

 

 

 奴の目が、桜木の鋭い目が、それ以上言うなと牽制する。俺は勢いのまま言おうとしたことを飲み込み、その体を硬直させた。

 辺りには、噴水の流れる綺麗な水の音が響き渡る。この、綺麗とは形容出来ない奴との関係性を明るみにするBGMとしては、この上ない仕事をしてくれている。

 

 

桜木「社会人はね、例えその人とどんな事があっても、仕事しなきゃ行けないんすよ。トレーナー一本でやってきた人達には分からないかも知れませんが、業績争ってた同期とも、企画を作れと言われれば手を貸すんです。会社の為に、人の為に」

 

 

 奴の言葉に、俺は納得した。だから奴に、トレーナーらしさを感じなかったのか.........

 心から奴に掛けていた霧がかったフィルターが晴れていく。気持ち悪いとすら感じていた違和感が、ようやく消え去って行ったのだ。

 そう思っていると、奴はどこか嬉しそうに目を伏せながら、口を開いた。

 

 

桜木「.........それに俺は、この機会に感謝してるんすよ」

 

 

東「感謝.........?」

 

 

 俺がそう、困惑気味に言葉にすると。桜木の奴は恥ずかしそうにぽつりぽつりと語り始めた。

 

 

桜木「.........あの燃やした契約書は、マックイーンと話し合う前に、俺が迷いに迷って名前を署名したものなんです.........」

 

 

桜木「俺はアンタだったら、マックイーンを任せられると思ったんです」

 

 

東「.........ふざけるな......!!あん時の俺はッ!!ただ野心に心を燃やしてただけだ!!「それでもッッ!!!」.........!!」

 

 

桜木「俺にはアンタが.........カッコ良く見えてたんだよ.........!!!」

 

 

 まるで子供の駄々のように、手に拳を作りながら、桜木は叫び声を上げた。ゆっくりと上げた顔は、暗闇の中でも分かるくらい、悲しげであった。

 

 

桜木「アンタは.........!史上最年少でベテランになって!GIを最初の担当の子で勝ち抜き!チームも運営して!!俺が目指すトレーナー像そのものだった!!」

 

 

東「.........」

 

 

桜木「確かに野心に駆られてたのかもしれない!!けどアンタが言うならって......!!マックイーンに言われて気付いた。俺がどれだけ無責任な事をしてるのか.........」

 

 

桜木「あの時の俺は、自分で座った特等席をアンタに開け渡そうとした。今思うと、バカな事をしたと思うよ.........」

 

 

 タハハとその時の事を思い出し笑う桜木。それでも、その目で、強い目で俺の方を見てきやがった。

 

 

桜木「俺はもう夢を掴んだ。今度はアンタが、夢を追う番だ。俺に胸を張らせてくれ、俺が一番尊敬しているのは、アンタだって」

 

 

東「.........何言ってんだよ......!!俺はお前に!![言ってはいけない事]を言ったんだぞ!!!」

 

 

 俺は奴の胸倉を勢いのまま掴みあげた。本来なら、こうされるのは俺の役目の筈だ。けれど、この時は俺も混乱して、謝らなければいけない相手に、こんな事をしてしまった。

 だが.........奴の口からは、とんでもない事実が飛び出した。

 

 

桜木「先輩、俺はアンタのそのキャラが好きなんだ」

 

 

東「は.........!!?」

 

 

桜木「確かに、職員室じゃあ俺の悪口は常に聞こえてくる。けど、面と向かって言ってくるやつなんて居なかった」

 

 

桜木「だがアンタは、マックイーンのスランプに乗じて、自分の野望の為なら俺の心に傷付けようが、今スランプに陥ってるマックイーンを抱え込もうが関係無しに迫った。俺は心底思ったよ。アンタは俺の好きな悪役なんだって.........」

 

 

 訳が分からなかった。コイツが今、何を口走っているのか.........俺に何をされたのか、本当に理解してないんじゃないのか?記憶でも消されたんじゃないのか?それとも、誰かに脅されてんじゃねぇのか?

 そんな事を考えても、奴の目を見ればその真剣さが伝わってくる。その目が.........俺を更に混乱の渦に叩き落としてくる。

 俺は、胸倉掴んだ奴を両手で突き飛ばしたが、奴は軽くよろけるだけで、尻もちを着くことすらしなかった。

 

 

東「.........バカバカしいっ、大体俺は信用に値すんのかよっ」

 

 

桜木「.........スランプに陥ったマックイーンを、わざわざ引き取ろうとしてきたんだ。少なくとも、俺にサインさせるという手段を用いてね」

 

 

桜木「アンタは自分が思っている以上に、真っ直ぐな人なんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だからこそ、俺はアンタを一番信用している」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東「っ.........勝手にしろ!!!」

 

 

 アイツは、ニカッと笑ってそう言ってのけやがった。明かりなんて無いのに、その顔は嫌に頭に残った。太陽を直接見て、その光の跡が視界に残るように、俺の脳裏にチラついてきやがる。

 

 

東(クソ、クソっ、クソッ!)

 

 

 俺が奴の頼みを聞くだろうと確信している事もムカつく、あんな事をしたのに、まだ俺をベテラントレーナーとして尊敬し、先輩と呼ぶアイツの事もムカつく。

 だが、それ以上に.........奴の頼みを聞いて、さっきの言葉を聞いてムカついているのに、断る理由が自分の中で見つからない事が、一番ムカついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東「結局俺は、奴の頼みを断る材料を、自分の中で見い出せなかったのさ」

 

 

マック「.........」

 

 

 そう言って、彼は自分に呆れたようにため息を吐きました。それに釣られて、私もタキオンさんも一緒にため息を吐いてしまいます。

 あの人のお人好しも、今に始まったことではありません。ですが、あれだけの事をした人を、まるでなんとも思ってないようにこんな事を頼むなんて、三年連れ添ったパートナーではありますが、神経を疑ってしまいます。

 さて、彼になんて言葉をかければいいのかと迷っていると、思ってもみない所から言葉が飛んできました。

 

 

白銀「えっちじゃん」

 

 

黒津木「エッッッッド」

 

 

神威「江戸とは、東京の旧称であり、1603年(慶長8年)から1868(慶応4年)まで江戸幕府が置かれていた都市である」

 

 

タキオン「黒津木くん!?何故ここに!!?」

 

 

 出口の扉の横に、腕を組みながらズラっと並ぶトレーナーさんの親友方。その皆々様がタキオンさんの声に反応すると、トレーナーさんのように、片手を立てて挨拶しました。

 

 

ライス「そ、そういえばおにい.........司書さん。お昼休みに居なかったような.........?」

 

 

タキオン「黒津木くんもだ!!一体何処にいってたんだ!!お陰で私はお昼ご飯を食べ損ねたぞ!!」ガタッ!

 

 

黒津木「許せる!!!」

 

 

タキオン「許す訳ないだろバカっ!!!」バンバン!

 

 

沖野「一気に騒がしくなったぞ〜.........」

 

 

 頭を抱え始めた沖野トレーナー。私もそう思いますが、やはり、この騒がしさには一人欠けています。

 しかし、このお三方が同時に現れたと言うことは、一緒に行動していた可能性が高いということです。どこに行っていたかを聞けば、もしかしたらトレーナーさんの行方も.........

 

 

マック「あの、先生方はどちらにいらしたのですか?」

 

 

黒津木「ああ、デジタルを連れて空港に」

 

 

神威「俺は空港のラーメンが食べたくて同行した」

 

 

白銀「ポッチャマ狩り」

 

 

ゴルシ「アタシも連れてけよ」

 

 

白銀「バカ女」ナカユビピン

 

 

ゴルシ「は?」

 

 

東「沖野、お前のチームまさかいつもこんな感じか?」

 

 

沖野「桜木が関わるとこうなる」

 

 

 目の前でゴールドシップさんと白銀さんの 取っ組み合いが始まりましたが、直ぐに白銀さんの衣服がビリビリに裂かれ始めます。彼も負けじと抵抗を見せますが、その努力も虚しく、現代日本では見られないようなファッションに成り果ててしまいました。

 そんな彼に視線を向けていると、不意にまた、開くことは無いであろう扉が勢いよく開かれました。そこには、あのアグネスデジタルさんが仁王立ちで立っていらっしゃいました。

 

 

デジタル「デジたん!ただいま職員室から書類提出を完了し!帰還しました!!」

 

 

黒津木「ご苦労」

 

 

デジタル「同志たんにそう言って頂けると心までマッサージされてしまいますぞ.........!!」

 

 

桐生院「それで、なぜ空港に.........?」

 

 

「うんうん」

 

 

 全員が桐生院さんの問いかけに同調するように頷きました。それに対し、デジタルさんはキョトンとした顔で口を開きました。

 

 

デジタル「え、ポッチャマ狩り」

 

 

ゴルシ「マジでポッチャマ狩ってたのかよ!!?」

 

 

黒津木「後それと玲皇にデジタルのレグルスのマネージャーにする為のハンコをもらいに」

 

 

マック「そっち!!!重要なのはそっちの方ですわ!!!!!」ビシッ!

 

 

 聞き捨てならない単語が二つほど飛び出し、思わず先生を指さしてしまいました。まず彼らはトレーナーさんと会っているという事。そしてもう一つはこのチームにデジタルさんが加入するという事です。

 ああもう!!頭がクラクラしてくるこの感じ!!!まるでトレーナーさんが騒いでる時のような感覚ですわ!!!

 

 

マック「とにかく!!!彼は今空港に居るんですのよね!!?」

 

 

神威「いや、もう飛び立った」

 

 

マック「どこに行ったのですか!!?大阪ですか!!?九州ですか!!?沖縄はありませんわあの人暑いのは苦手なはずですので!!!まさか北海道!!!??こうしては居られませんわ!!!!!」

 

 

 私は椅子を倒しながらも、今からトレーナーさんの後を追おうとしました。日本に居るのなら、どこまでも彼を追えます。メジロ家の力は侮っては行けないのです!!!

 そんな私の体を、タキオンさんはがっしりとホールドする形で押さえ付けました。

 

 

マック「離してくださいまし!!タキオンさん!!!」

 

 

タキオン「落ち着きたまえマックイーンくん!!君はどうしてトレーナーくんの事になると脳筋になるんだ!!!第一さっき君が挙げた場所に、彼が居るとは限らないだろ!!!」

 

 

マック「そんなことやってみないと分かりませんわ!!!」

 

 

ゴルシ「やって見せろよマックイーン」

 

 

東「.........ナントデモナルハズダ(ボソッ」

 

 

ブルボン「?」

 

 

白銀「ああ、さっき言った中には居ねぇよ」

 

 

マック「では何処に!!!!!」

 

 

 恐らく、私は今まで生きてきた人生の中で最も大きな声を張り上げたでしょう。その証拠に、この場にいる皆さん。あのゴールドシップさんですら、驚きの表情で私の姿を凝視しています。

 ですが.........私が視線を注いでいる人物。白銀翔也さんは、そんな私のことなど気にもしないで、大きな欠伸をひとつして、ポケットからスマートフォンを操作し、数秒たってようやく答えました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今海超えてんじゃね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.........は?」

 

 

白銀「今海外行ってんの、アイツ」

 

 

 衝撃的な解答、その言葉に頭は処理を拒否しますが、今現在まで進化してきた高度な知能は無意識の内にそれを正しく噛み砕いしてしまいます。それはもう、本能と言っても差し支えはないでしょう。

 彼は、日本には居ない。その事実が明らかになってしまった瞬間.........私は声を掛けてくださるタキオンさんの支えですら意味が無いほど、私は意識を失ってしまいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東「よし、休憩が終わったら全員タイヤ引きトレーニングだ。それまでは自由にしてくれ。準備が出来たらまた呼ぶ」

 

 

ウララ「うぅ.........疲れたよー......」チュー

 

 

ライス「お疲れ様、ウララちゃん.........」

 

 

 ベンチに座り、ストローでドリンクを吸い上げるウララさん、その顔からは既に疲労困憊の様子がみてとれます。

 それも無理もありません。トレーナーさんより厳しいトレーニングを、東トレーナーは行っているのです。メニューの質は彼と同じものですが、その指導方法は全く違います。

 それでも、注意力散漫気味なウララさんをここまで集中させるのは、やはり東トレーナーの手腕と言っても差し支えないでしょう。認めたくないものですが、彼もまたベテラントレーナーだと言うことです。

 

 

マック「お隣、失礼しますわ」

 

 

ウララ「どうぞー!」

 

 

ライス「マックイーンさん、大丈夫?倒れたばかりなんだから、無理しちゃダメだよ?」

 

 

ウララ「マックイーンちゃんも寂しかったんだね.........」

 

 

マック「わ、私は別に!!」

 

 

 うぅ、思わず慌てて否定してしまいました。誰があんな無責任な方の事なんか.........知りません。ええ、もう知りませんわ!ウララさんを泣かせた上、私にこんな恥ずかしい思いをさせて!!

 

 

 大体あの人は何も言わないのがカッコイイとでも思ってるのでしょうか?帰ってきたら真っ先に否定します、絶対。有り得ませんわ、チームメンバーをこんなにも不安にさせておいて、自分は知らぬ顔で海外?ふざけるのも大概にしてくださいまし」

 

 

デジタル「どうぞ」

 

 

マック「ありがとうございます.........ぷはっ、本当に有り得ません、今も一体どれだけこの胸が張り裂けそうな思いで貴方を思ってるのだと.........あら?」

 

 

全員「.........」

 

 

 皆さん、ベンチに座りながら私の方をじーっと凝視しています。なんでしょう、私心の中で呟いていた筈ですのに、記憶にはちゃんと私の声が入っています。まさか.........

 

 

タキオン「.........ごちそうさま。マックイーンくん」

 

 

マック「〜〜〜〜〜〜!!!???わ、忘れて下さい!!!!!」

 

 

 ベンチから立ち上がり、アグネスタキオンさんの肩を揺すりますが、彼女は気にした様子は見せません。他の方も顔を赤らめたり、口元に手を当てたり、しっぽを振ったり、よく分からないという表情を見せたり、鼻血を出したりしています。

 

 

マック(うぅ.........恨みますわよ......!トレーナーさん!)

 

 

 そう思いながら、もう一度ベンチに座り込みました。もう彼の事は考えないようにしましょう。きっとまた墓穴を自分で掘る羽目になります。

 そして手元のスポーツ飲料に口をつけ、飲み込むと、遠くから何故か恥ずかしそうにしている東トレーナーがやってきました。

 

 

マック「.........さぁ、休憩は終了ですわ。行きますわよ、皆さん」

 

 

ウララ「うん.........ウララ、がんばる!」

 

 

タキオン「それで、次はあっちのトラックに移動すればいいんだろう?」

 

 

東「あー.........その事なんだが、今日はもう終わりだ。悪い」

 

 

全員「え?」

 

 

東「その、恥ずかしい話なんだが.........張り切りすぎた.........本当はもう少し早めに切りあげるつもりだったんだが.........」

 

 

 この人、本当にトレーナーさんに迫り、酷い言葉を浴びせた方ですの?よく似たそっくりさんではありませんか?いいえ、ウマ娘の事ならば周りが見えなくなるタイプなのかもしれません.........きっとそうなのでしょう。

 あんなことが無ければ、私達も彼とわだかまりもなく、仲良く出来たかも知れません。そう思っていると、可愛らしいお腹の音がなるのが聞こえました。

 

 

ライス「わぁ!ごめんなさい!うぅ、お昼ご飯いっぱい食べたのにぃ.........」

 

 

ウララ「そうだ!!ねぇねぇ!みんなで何か食べに行こうよ!!」

 

 

 お腹を押さえ、その音が漏れないようにしていたライスさんも、ウララさんのその声に反応します。この場にいる全員が、その提案に対して良い感情を持ちました。

 

 

ブルボン「良いですね。私も、東トレーナーの事を知らないので、彼の同行の許可を貰いたいのですが.........」

 

 

東「は?俺と一緒に居ても楽しく.........」

 

 

ウララ「来ないの.........?」ウルウル

 

 

東「.........行きます」

 

 

 目の前で中々の葛藤する姿を見せてくれましたが、東トレーナーは結局諦めて、一緒に夕飯を食べる選択を取りました。

 よく頑張った方ですわ。トレーナーさんも沖野トレーナーも、あの目で見られると直ぐに返事をしますので.........。

 

 

マック「.........ふふ」

 

 

ウララ「あ!マックイーンちゃんやっと笑った!!」

 

 

マック「だって、仕方ないではありませんか。思った以上に彼が面白いんですもの.........」

 

 

東「クソ、カレーで良いか?美味い店知ってんだ」

 

 

全員「えー?」

 

 

 彼の提案に、全員が反対の意見を示すように声を上げました。カレー.........お店で食べるようなものはやはり、私達ウマ娘にとっては辛く感じてしまうのです。

 しかし、彼はスマホを操作しながら私達が上げた声に対する解答をしました。

 

 

東「安心しろ。そこの店のカレーは甘口だ。行く前に予約しないと行けないっていうめんどくさいオプションが着いてるけどな」

 

 

黒津木「へー。俺も食いてぇ」

 

 

神威「一緒に行こう」

 

 

東「まて、どっから現れた」

 

 

 音も無く東トレーナーの隣にやって来たお三方。もしかしなくても暇なのでしょうか?いつも通りのおふざけをお供に、東トレーナーに近づいて行きます。

 

 

白銀「三人追加で」

 

 

東「あの、あんまり話したことありませんよね?」

 

 

白銀「はぁ?何話しかけてきちゃってんの?」

 

 

東「おい。コイツぶん殴っていいか」

 

 

全員「どーぞ」

 

 

 その場にいる全員がそう答えました。ええ、もちろん黒津木先生と神威先生もご一緒に。本当にお友達なのでしょうか?彼らを見てるとその疑問がいつも湧いてきます。

 

 

白銀「俺世界的なプロテニスプレイヤーなんだが暴力振るわれるの?」キョトン

 

 

東「歯を食いしばれ!修正してやる!!!」

 

 

ブルボン「.........!」

 

 

デジタル「バ、バイオレンス!!今後の資料に役立ちそうなので、もう一度お願いします!!」スッ!

 

 

黒津木「やめなさいデジタル。君の作品に暴力は似合わない。純愛の甘々を書くんだ。特にサクマクな」

 

 

デジタル「バ力もわからん人を描きたくありません」

 

 

 カメラを構えながらふいっと顔を逸らすデジタルさん。あんなに仲が良いのに、言うことを聞かない時もあるのですね.........

 というより、サクマクというのはなんでしょう?なにかの隠語でしょうか、とても引っ掛かりを覚えますが、まぁいいでしょう。

 

 

タキオン「甘口なら私も大丈夫そうだ。最もトレーナーくんのカレーが一番美味しいがね」

 

 

黒津木「俺のは?」

 

 

タキオン「君は辛党すぎる」

 

 

ウララ「私も!!トレーナーのカレー大好きー!!」ピョンピョン!

 

 

東「そんなに美味いのか、機会があったら食わせてもらおうかな.........」

 

 

 一人そう思案しながら、東トレーナーはお店に電話をかけていました。そして、律儀にもお三方を加えた人数を報告して、電話を切りました。こういう所、トレーナーさんにそっくりな気がします。

 

 

三人「ゴチになりまーす」

 

 

東「コイツらの分だけだ。お前らは自腹で払え」

 

 

白銀「玲皇は払ってくれるのに」ボソッ

 

 

東「あ?もう一発行くかコラ」

 

 

白銀「切れてなーい」

 

 

東「俺はもうブチ切れてんだよォォォッッ!!!」

 

 

デジタル「おー!まさにチームレグルスって感じですね!」

 

 

マック(私達、傍からはああ見られているのですね.........)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウララ「カっレー!カっレー!」

 

 

 東トレーナーの運転する一番後ろの席で、ウララさんの楽しそうな声が聞こえてきます。そういえば、トレーナーさんが倒れてから、私達は各自で食事をとっていたので、これが久々のチーム揃っての食事となります。彼女も、それが嬉しいのでしょう。

 

 

マック(それにしてもこの通り.........どこかで見たような.........?)

 

 

タキオン「黒津木くん。大体日本人は甘いもの好きが大半なんだ。現に私もその一人だ。だったらその私に合わせるべきだろう?」

 

 

黒津木「中辛は甘口だろ」

 

 

タキオン「Do you understand Japanese?」

 

 

 隣で繰り広げられるタキオンさんと黒津木先生の夫婦漫才のせいで、浮かんだ疑問も直ぐに見失ってしまいます。

 その光景を見ていると、思わず顔がニヤついてしまう感覚に襲われてしまいます。もしかして、いつもタキオンさんが私達を見ている時も、このような感じなのでしょうか?

 

 

マック(.........って、行けませんわ。私ったらまたトレーナーさんの事を.........!!)

 

 

 やめましょう。せめて、晩御飯を楽しく食べている時くらいは、この寂しい気持ちに蓋をしましょう。そんなことを考えていると、東トレーナの運転する車が停止しました。どうやら目的地に着いたようです。

 

 

ライス「わぁ......美味しそうな匂い.........!」

 

 

ブルボン「そうですね。カレー以外の料理を匂いから感知しましたが、そちらも大変美味しそうです.........?」

 

 

マック(やっぱり、この通りはどこかで見た覚えがありますわ.........あっ)

 

 

東「ここが俺の行きつけの店だ」

 

 

 自信満々に答える東トレーナー。その背に、目的地であろう飲食店があります。そこは商店街より賑やかな街にある、庶民的な食事屋さんです。

 そう.........『商店街より賑やかな街にある、庶民的な食事屋さん』なのでした.........

 

 

マック「.........ウソ......」

 

 

タキオン「マックイーンくん?早く行こうじゃないか」

 

 

マック「!」

 

 

 私はタキオンさんの声で我に返り、慌ててお三方の様子を確認しました。残念な事に、ここがどこか気が付いてはいらっしゃる様子でしたが、考えるのが面倒なのか、全員の目が点になったまま、何も考えずに店の中へ入って行っています。

 

 

マック(貴方はどうやら、この場に居なくても面倒なトラブルを引き起こす天才なのかもしれませんね.........!!!)

 

 

 静かに目を閉じながら、身体の底から昂ってくる憤りを何とか鎮めます。世間は狭い、という事で済ませてしまえば良いのでしょう。残念ながらそんな当たり障りのない定型文で済ませてあげられるほど彼を甘やかす事はこれ以上できません。

 

 

マック「.........申し訳ございません、少々立ちくらみが」

 

 

タキオン「いや、結構しっかり立って「立 ち く ら み で す わ」.........そういうことにしとこう」

 

 

 そう言って、私はこの美味しそうな匂いを漂わせているお店の中に入っていく決意を固めます。そう.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トレーナーさんのお姉さんが切り盛りするお店に.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ......To be continued

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