山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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トレーナー「理事長のせいでストレスで寿命がマッハなんだが」

 

 

 

 

「厳しい状態ですね。彼の右腕では、普通に生活するのが限界でしょう」

 

 

 .........あれ、何だこれ、懐かしいな.........あの時のお医者さんじゃん.........

 

 

桜木『そんな.........』

 

 

 おいおい、そんな声出すなよ。お前は何とかそれを乗り越えたじゃないか.........って、そう言えば、最初はこんな感じだったっけな.........

 うん。これは夢だな。しかも、昔の思い出だ。懐かしい。腕が動かなくなるレベルの怪我なんてすっかり忘れてた。

 

 

「先輩.........」

 

 

桜木『ああ、悪いな.........柄にも無いけど、夢。諦めるよ』

 

 

 よくかっこつけたなー。本当は叫び散らかしたいほど感情グチャグチャだったのに、

 けど、何だろう。場面が変わらない。俺の記憶ではこの後すぐ彼奴らに振り回されるのに.........

 窓の外は朝日が登り、夕日が沈み、月が顔を出すと言う繰り返しが目に映った。流石に夢と分かっていても、不安になる。ふと思い立ってベッドを出て、洗面台に向かった。

 

 

桜木「っっっ.........!!!」

 

 

 そこには、今の俺と瓜二つの顔が写し出されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「うわぁ!!??」

 

 

 時計もまだ鳴りを潜めているボロ屋のアパートの一室。悪夢を見て飛び起きるのなんて、初めて経験した。

 

 

桜木「.........マジであん時、お前ら居なかったら終わってたのかもな」

 

 

 隣の布団で寝ている寝相の悪い男を見て、そう呟く。傍から見たら分からなかったかも知れないが、俺はあの時、根っこが腐ってたんだ。

 コイツらがゲームで俺を煽らなかったら、きっとヤケになって練習したりはしないだろう。お陰で、リハビリに熱を入れる事も出来た。所謂、奇跡って奴だ。

 

 

桜木「.........いや、割と真面目にこれ理事長のせいだろ。ストレスで寿命マッハなんだが」

 

 

 気持ちの良いとは言えない目覚め。こんな状態で仕事をした所でいい事なんか一つも無い。そう思い、今日はまず風呂から入ろうと思い、銭湯に行く為にまず、ベッドから床へと降りた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「はい、皆さん注目ー」

 

 

 生徒が殆ど居ない学園の体育館。ステージ上に立っているのは俺だけである。ステージの目の前にパイプ椅子に座っている人物は、生徒会長シンボリルドルフ。副会長エアグルーヴ。秘書さん駿川たづな。座ってない奴はゴールドシップとバイクヘルメットで変装している白銀翔也だ。

 

 

ゴルシ「おいっ!学園に不審者が居るぞ!!」

 

 

白銀「不審者じゃねえ!超有名人だぞ俺はっ!!」

 

 

ゴルシ「じゃあ誰だよ!」

 

 

白銀「ふっ.........錦〇圭です!!!」

 

 

 よく分からないポーズを決めて他人の名を使う親友の姿を見て、なんと言えば良いのか分からなくなってしまった。会長も副会長も何とも言えない顔をしているが、たづなさんだけはそうじゃなかった。

 

 

たづな「あの、錦〇さんじゃなくて、白.........」

 

 

桜木「皆さん。コイツが錦〇圭だと言ったのならそうなんです。今はそれ以上でも以下でもないです。お願いします」

 

 

 そう言うと、たづなさんは何も言わなくなったが、ゴールドシップは白銀にプロレス技をしかけている。いい気味だ。

 

 

ゴルシ「身長高くて技掛けやすいなアンタ!!アタシ専属のサンドバッグになってくれ!!!」

 

 

白銀「アァァァ〜〜!!!??痛いっっって!!!玲皇!!友達でしょ!!?義務だよねぇ!!?」

 

 

 なんでこいつは決して助けてまで言わないの?可哀想に、俺は察しても察してやらないからな。大人しくしててくれよな。

 

 

桜木「はい。お手元のプリントでね。書いてある通りに」

 

 

グルーヴ「貴様に一つ質問がある。最後のこの『仕返しイベント』とはなんだ?事と次第によっては、貴様の要望である理事長への秘匿も無くす事になる」

 

 

 あれ、そんな事書いたっけ?慌てて紙を確認してみると確かに書いてるし記憶も甦った。寝不足のまま打ち込んだから仕方ないね。と、前日までの不甲斐なさを全て寝不足のせいにするクソガキムーブで精神を安定させた。

 

 

桜木「今回。俺は理事長に痛い目を会わされてます。このまま何もせずに終われるほど俺は優しくありません。中等部の子達を楽しませながら、理事長に仕返しをする為の準備はしてあります。手伝ってくれませんか?」

 

 

白銀「ぼ、僕はやりたくないw‪w‪w」

 

 

桜木「駄目だ。お前に拒否権は無い」

 

 

白銀「」

 

 

 あっ、首の骨が折れた音が聞こえた。ナイスだゴールドシップ。ジュースを奢ってやろう。

 

 

グルーヴ「そんなくだらん事を講和で行うのか?私は反対だ。それに従う事は出来ない」

 

 

ルドルフ「私は賛成だ」

 

 

グルーヴ「会長!?」

 

 

ルドルフ「良いじゃないか。正直に言えば、私も今回の件に関しては相当参らされた。それに、中等部の子達も楽しめる様に企画してるのだろう?桜木トレーナー」

 

 

 あっちはプロレスでこっちもわちゃわちゃしだしてきている。なんだか騒々しくなってきたが、それも楽しみでこの人選にしたのだ。狙い通りだ。

 会長の目はそんな中でも真剣だ。そして何故か、俺に対して信頼を寄せている気がする。何でだろう。何かしてあげただろうか?

 

 

桜木「ええ、楽しめますよ。ドキドキハラハラのイベント間違いなしです」

 

 

ルドルフ「そうか.........君の口からそれが聞ければ私も満足だ」

 

 

白銀「質問良い?」

 

 

桜木「やだ」

 

 

白銀「放課後でよかったんじゃないか?これ」

 

 

桜木「駄目だ」

 

 

白銀「何で!!?」

 

 

 確かに、コイツの言っている事は一理。と言うより、全部ある。だが、それをひっくり返す程の材料を、俺は今持っている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マックイーンのトレーニングが見れねえからっっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルドルフ「大変だったな、エアグルーヴ」

 

 

グルーヴ「会長.........本当に賛成なんですか?奴の企画に」

 

 

 諸々のリハーサルを終えたのは、時計の針が正午を回った時だ。動きに重きを置いたイベントだったので、大して大変だとは思わなかったが、エアグルーヴは精神的に疲れたのだろう。

 

 

ルドルフ「.........彼の目は、私を見つけ出した人の目に似ているんだ」

 

 

ルドルフ「ただ走りたいだけだった幼い私に、このトレセン学園の道を教えてくれた」

 

 

グルーヴ「.........古賀トレーナーですね」

 

 

ルドルフ「ああ、ウマ娘ある所に彼ありと言われる程、彼は実力や成績、活躍問わず、幅広いウマ娘と関わりを持っている」

 

 

ルドルフ「そんな彼が、今度は人をその目で見い出した。私は、トレセン学園の生徒会長として、新しく吹く風を間近で見てみたい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴルシ「はぁ〜終わった終わった〜。後は本番頑張れば良いんだろ?楽勝じゃん!!」

 

 

白銀「そうそう!!俺のパンチでお前をKOしてやっから!!!」

 

 

桜木「.........」

 

 

 体育館から外に出て、ゴールドシップ、白銀翔也と共に歩く。コイツら本当にうるさい。出来れば出会わせたくないレベルで化学反応が起きるだろうと予測していたが、好奇心に猫は殺された。

 

 

ゴルシ「ほら!!もう昼なんだからよぉ!カフェテリア行っくぞーーー!!!」

 

 

白銀「え!?俺も行きたいッッ!!!」

 

 

桜木「!?待て!!!お前は駄目だ!!!」

 

 

白銀「お前俺の事バカにしすぎ!!!!!」

 

 

 ゴールドシップを間に挟んで男二人が獣のように睨み合う。仕方が無いのだ。白銀翔也と言うのは男版ゴールドシップ。いや、俺の認識ではゴールドシップは女版白銀翔也と言う様に滅茶苦茶だ。

 さっきもそれで大変だった。プロレスを掛けながらロケットに乗ってバンジージャンプで世界征服しようと白銀が提案し始めたり、ゴールドシップは修学旅行のホテルの枕の中にツナ缶を敷き詰めてフランスでオペラを歌おうと言う提案したりで、もう二人の世界が作りあげられていたのだ。それにもう付き合いたくは無い。

 そしてもう一つ。コイツ、ものすごい女好きなのだ。猫を被ってた甲斐も虚しく、彼女に振られている為、フリーだ。女に対する欲求も高い。コイツは手を出す。

 

 

桜木「手を出すでしょうが!!!しないって言えるんですかーー!!?」

 

 

白銀「言えねーーだろ!!!占い師かてめぇはーーー!!」

 

 

白銀「ジャンケンな!!決着はジャンケンで決めよう!!!」

 

 

ゴルシ「お!!!おんもしれーーー!!!審判は私に任せてくれ!!!!」

 

 

 よし!これで不正は無くなった!!そう思いながら、ジャンケンの構えをしていると、ゴールドシップがサングラスを掛ける。あれ?俺が一昨日無くした奴じゃね?盗まれてたの?

 まぁ良い。これで勝てば良いんだ。勝てばコイツは学園に明日まで追放出来る。そうだ。勝てばいいんだ勝てば

 

 

「「最初はグー!!!」」

 

 

桜木「ジャン!!!」

 

 

白銀「ケン!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ぽん!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「え゚!!??」

 

 

白銀「俺の勝ち」

 

 

 なんだ?俺は、幻覚を見てるのか?薬でも飲まされたのか?こいつ。いくら頭おかしいからって、ジャンケンのルールも分からんのか?

 俺の出されたチョキが指し示すもの。それは奴の両手が突き出された構えだ。本来であれば無効だ。ここは審判に委ねるしかない。

 

 

桜木「審判.........?」

 

 

ゴルシ「コイツの勝ち!!!」

 

 

白銀「オッシェェェェイッッ!!!」

 

 

桜木「はァァァァァ!!!??なんでルール守った俺が負けんだァァァ!!!!?」

 

 

白銀「玲皇。かめはめ波には勝てない」

 

 

桜木「くっ.........確゛か゛に゛!!!」

 

 

 悔しい。だが、理解してしまったし、納得してしまった。そう、たかがチョキ如きが、かめはめ波に勝てる訳が無いんだ。

 仕方ないよね、見たいな優しい雰囲気をまといながら慰める白銀翔也。騙されるな。これが猫被りだ。本当のコイツは暴君なんだ。

 

 

ゴルシ「行くぞサンドバッグ!!カフェテリアに眠るお宝を貪り尽くすぜぇぇ〜〜〜!!!」

 

 

白銀「シャァオラァァ!!任せとけよ!!!なんたって俺は白.........錦〇圭だからなぁ!!!」

 

 

 拝啓神様。今日をもって私のトレーナー生活は終わりを告げようとしています。どうかお助け下さい。新人トレーナー桜木より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 拝啓神様。何とかなりそうです。

 

 

白銀「乗った!!乗ったから!!止めて!!こやし玉投げないで!!!」

 

 

桜木「オラ!!臭いモンスターの上で踊れ踊れ!!!」

 

 

 大分注目を集めてしまっているが仕方あるまい。片や新人トレーナー。片や訪問者のプレートをつけている顔がバイクヘルメットで見えなくなっている男二人が、一昔前のゲーム機で遊んでいるのだ。目立たない訳が無い。

 因みにゴールドシップはこれと同じのを持っているという事で寮に取りに行っていて不在だ。

 

 

白銀「不味い!!助けてれおぱんちょん!!」

 

 

桜木「無理」

 

 

白銀「はぁぁ!力尽きました〜〜」

 

 

 昔から気になっていたが、なんだぱんちょんって。コイツの語学センスは本当にイカれている。そのくせして国語の成績は俺より良かった。意味がわからん。

 だがゲーム機を持ってきていて良かった。これで奴はモンハンに集中出来るだろう。しめしめ

 そう思っていられたのも束の間だった。目の端からカフェテリアに入ってきた人物を見て、通信中のゲーム機を閉じた。

 

 

白銀「あ!!???」ドゴォ!!

 

 

白銀「」

 

 

桜木「ふぅ」

 

 

 ごめん。これは本当に俺が悪いわ。そう思いながら、気絶したかもしれない白銀をゆっくりと机に自然体に見えるようにうつ伏せにさせる。他から見えないよう死角から殴ったから、誰にも気付かれないはずだ。

 

 

「あの.........」

 

 

桜木「ああ、連れを起こさないでやってくれ。死ぬほど疲れてる」

 

 

 心配になって話しかけて来たウマ娘が来てしまったが、コマンドーを履修している俺に死角はない。こう言ってしまえば後は引かざる終えないだろう。

 

 

白銀「あとどれ位突っ伏してれば良い?」

 

 

桜木「無論死ぬまで」

 

 

白銀「おk」

 

 

 まぁ俺の鍛えていないパンチでコイツが気絶するはずが無い。が、空気を読んで大人しくなってくれた。こういう所があるから憎めないのだ。

 

 

桜木「.........さてと、どんな感じだろうか」

 

 

 食事を貰い、空いている席へと座るウマ娘。今日初めて見るメジロマックイーンの姿がそこには居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 席に着いて黙々と食事を続けるマックイーン。表情から察せられるのは、その食事に決して満足はしていないという事だった。

 皿の上を見ても、巷では当たり障りの無い言葉で健康に良いとしか言われていない食材ばかり。自分の体とろくに相談もせずに考えた食事なのだろう。

 

 

マック「うぅ.........物足りませんわね.........」

 

 

 可哀想に、彼女のその体質が彼女をここまで追い込んでいるというのか。どうすれば良い?正面切って直接太った方が良いと伝えるのは有りか?そう思って白銀を見るも、奴は静かに、机に突っ伏したまま器用に首を振った。

 確かに有り得ない。年頃の女の子にそんな事を言えば、ダメージは計り知れないだろう。

 

 

マック「いえ、いけませんわ!食事は決めたメニューだけに留めなければ.........!」

 

 

桜木(良いんだよマックイーン.........食べても良いんだ.........!)

 

 

 直接言えないならば、せめて心の中で強く思おう。彼女が我慢出来なかった時は思い切り喜んでやろう。そうすれば罪悪感なんて多少は吹き飛ぶ筈だ。

 そう思っていると、白銀の後ろからゴールドシップの声が聞こえて来た。

 

 

ゴルシ「あいつ、まあーだ『ゲンミツ』やってんのか!LOVEが止まらねー甘いモンを我慢かよ。呆れちまう精神力ですわね〜」

 

 

 ピコピコとこれまた古めかしいゲーム機をぽちぽちいじりながら再登場を果たしたゴールドシップ。それ、多分モンハン出来ないぞ。

 とは思ったが、それ以上に気になる事も言っていた。

 

 

桜木「マックイーンって、甘い物好きなのか?」

 

 

ゴルシ「おっと聞こえちまったか?って聞こえちまうわな、この距離じゃな」

 

 

 よっこいせと言う掛け声と共に、俺達の居る丸机の向かい側に座るゴールドシップ。一生懸命ピコピコとやっているが、音的にこれ、マリオUSAじゃないか?実機かよすげーな。俺も子供の頃にやったっきりだぞ

 

 

ゴルシ「自由と平等=ゴルシちゃんなら、スイーツ=マックイーンってレベルで当たり前だからなあ」

 

 

桜木「スイーツ.........ねぇ」

 

 

 横で突っ伏しているコイツを流し目で見る。成程。丁度いい所に、丁度いい立場の、丁度いいスイーツ好きの太りやすい奴がここに居た。

 

 

白銀「何?」

 

 

桜木「いや、今は良い。後で話を聞かせてくれ。兎に角今は、ひと狩りいこうぜ?」

 

 

ゴルシ「あぁぁぁぁあ〜〜〜ーーーッッッ!!?!?よく見たらこれッッ!!!マリオUSAじゃねえか!!!??ちょっともっかい取りに戻る!!!」

 

 

 脱兎のごとく走り抜けるゴールドシップ。あまりの速さに度肝を抜かれたが、こういう滅茶苦茶さもコイツのせいで慣れてると思うと、何故か重い溜め息が吐き出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつも通りのトレーニングコース。いつも通りのトレーニングメニュー。いつもと違うのは、今日は彼の姿が見えないという事だけでした。

 

 

マック(.........今日はいらっしゃらないのですね.........)

 

 

 彼が居ない。その一つだけの事実だけで、自分の士気が下がっているのが手に取る様に分かりました。

 行けませんわ、メジロのウマ娘として、例え一つ環境が変わったとしても、強くあり続けなければならないのです。

 そう思いながらも、まだ彼の言葉が頭に過ります。

 

 

マック「.........明日は対策を立てると言ったではありませんか.........」

 

 

 自然と口から文句が出てきてしまう。彼の姿を初めて見てから三日目の夕方。既にその存在が日常と変わっているという事実だった。

 それを振り払う為に、軽く走ろうとした所で、私の視界の端には、心の底ではずっと待っていた彼の姿が写っていました。

 

 

マック「トレーナーさん」

 

 

 決してそんな弱い部分は見せてはならないと、平成を装いながら私は彼に声を掛けました。声のボリュームはいつも通りだったはずです。

 そんな私の声に、彼は静かに手を挙げるだけで答えました。私と違い、余裕そうな挙動で近付いてきます。

 

 

マック「今日は随分と遅いのですね」

 

 

桜木「あ、怒ってる?」

 

 

マック「い、いえ。怒ってる訳では.........」

 

 

桜木「ごめん。ちょっとこれを作ってたんだ」

 

 

 そう言うと、彼はその手に持っていたノートを、私に渡して来ました。

 

 

マック「これは.........?」

 

 

桜木「取り敢えず読んでみてよ」

 

 

マック「分かりました。拝見いたしますわね」

 

 

 ノートの表紙を捲ると、そこには料理の名前と、カロリーが記載されておりました。それだけではなく、料理に使われる材料の名称。身体に及ぼす影響。オススメの食べ合わせも書かれていました。

 

 

マック「献立表.........?これを、トレーナーさんが全て.........?」

 

 

桜木「いや、俺はただ聞いてそれを書いただけだよ。傍に丁度頑張ってる奴が居てくれて助かったんだ」

 

 

 私よりも一回り歳を重ねている筈の彼でしたが、初めて見るその笑顔はまるで、少年の様な表情でした。

 その姿に微笑ましさを感じながらも、献立表を捲っていきました。そして、後ろの十数ページの目次を見て、私は目を疑いました。

 

 

マック「これ.........!スイーツ、ですわよね!?」

 

 

マック「た、食べて、宜しいのですか!?」

 

 

桜木「ああ、その方が頑張れるだろ?鞭打つだけじゃ、身体は動いてくれないよ」

 

 

マック「トレーナーさん.........」

 

 

マック「.........この献立表、しばらくお借りしてもよろしいでしょうか?」

 

 

桜木「いや、あげるよ。元々君の為に作ったんだから」

 

 

 彼は照れる事もせずに、笑って私にそう言ってくれました。本当に、ズルい人です。

 本当に、お優しい方です。まだ担当ですらない私を、こんなにも気にかけてくださるなんて.........きっとそう言っても、彼は少しも照れてはくれないでしょう。以前の様に、好きでやっている事だと言ってくれるのでしょう。今は、その気持ちがとても嬉しく感じました。

 ここまでして頂けたのです。必ず彼の期待に応えなければなりません。私の彼に対する信用は大きく、強固な物になりました。後は、私の実力を、彼に認めて頂くだけです。

 

 

マック「1週間後にまた、トレーニングを見に来て下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メジロの名に恥じぬ走りを、今度こそお見せ致しますわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、マックイーンとは別れ、特に何事も無く帰宅した俺だったが、今は耳に残る音楽が鳴り響くスーパーマーケットにいた。

 

 

桜木「そうだよなぁ.........二日だろうが飯の減る量はブースト掛かるんだもんなぁ」

 

 

白銀「アイスゥ!!」

 

 

桜木「お前、アイスは一つだけだ。6つも食ったら腹やられるぞ」

 

 

 俺がそう言うと、白銀は渋々カゴに入れたアイスの内、5つを戻して来た。昔は目の前で十個食ったのを見た時はバカみたいに笑ってしまったが、コイツの身体は大切だ。文字通り、そこらの一般庶民よりも

 そう思いながら、向こう三日分の食材をどうするか目処を立てていると、急に白銀の雰囲気が変わった。

 

 

桜木「?どうした?」

 

 

白銀「なぁ、明日やっぱ代わるよ。お前の役」

 

 

桜木「なんでさ」

 

 

白銀「いや、腕とか危ねぇよ」

 

 

 あぁ、成程。心配してくれてるのか。そう思うとなんかむず痒い感じがするな。

 

 

桜木「良いんだよ。俺鍛えてねえからへなちょこパンチしか出せねえし。何よりもう痛みはねえんだ。どうなってるかは病院行ってねえから分かんねえけど」

 

 

白銀「.........悪い」

 

 

桜木「謝んなよ。調子狂うわ.........うっし。今日は一本だけ飲むか」

 

 

白銀「マジ!?イェェェーーーイ!!!」

 

 

 その後、俺達二人は帰りながらお酒の歌を歌いながら帰宅して行った。

 

 

 

 

 

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ......To be continued

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