山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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 前回までのあらすじ
 ズン!ズン!ズン!チャ!ズン!ズン!ズン!チャ!
 テーレレ!テーレレ!テッテーレレー♪(親の声より聞いたBGM)


 親友に別れを告げ、アグネスデジタルにチームを託した玲皇。


 (俺にも夢はある。それでも、誰かの夢も、守ってみせる)


 空を飛び立つ飛行機の中で、自らの居場所の鍵となる王冠を握りしめた。


 そして、たどり着いたその場所で


「遣米使先遣隊隊長の、ナリタブライアンだ」


「ブっさんンンンんッッッ!!!?????」


 果たして、どのような冒険が待ち受けているのか












ナリタブライアン「デトロイトは結構ビカムヒューマンしていたぞ」

 

 

 

 

 あの日、俺の驚愕は人生のピークへと達した気がした。そしてそんな俺を異常者を扱うような目で、目の前でビデオを撮っているナリタブライアンは見てきやがった。

 

 

ナリブ「うるさいな......そんなの見れば分かるだろう?」

 

 

桜木「分かるよ?俺が言いたいのは君が誰なのかって話じゃないの!!なんでここに居るかなの!!!Not who!! Yes why!!」

 

 

ナリブ「コイツが鉄砲玉の桜木だ。いざとなればハジキも何とかする」

 

 

桜木「Do itッッ!!!」グッ!

 

 

 不意にカメラの存在を意識させられて、思わず両手を振り下ろした。昔よく真似していた癖でついついやってしまう。

 いやいや!今それどころじゃあないんだよ!!こまけぇ事だが俺にとっちゃ良くねぇの!!

 そんな眼差しが通じたのか、ブライアンは舌打ちしてから(なんで?)喋り始めた。

 

 

ナリブ「アンタが有給を取ると宣言した後、私は理事長に呼ばれたんだ。同行して何をしようとしてるのか教えて欲しいってな」

 

 

桜木「そんなバナナ」

 

 

ナリブ「正直呼ばれた時は生徒会業務サボりすぎて怒られると思った。本当に怖かった」

 

 

 何言ってんだこの子、冷静な顔してそんな事言われると反応に困るぞ。ていうかそれは100%自業自得でしょ?100%中の100%。

 海外に来てようやく「あっ、俺も忙しくてシリアスな姿を見せることが出来る!」的なことを思い描いてたのに一気に悟ったよ。海外編はきっとギャグマシマシになるんだ.........

 

 

ナリブ「さっさとカメラに向けて何をしようとしてるのか説明しろ。アンタも忙しいんだろ?」

 

 

桜木「わぁったよ .........」

 

 

 正直俺自身、理事長に何も言わずに出てきた事には多少なりとも罪悪感は有った。俺を心配してのことか、それとも滅茶苦茶しないよう見張るためかは存じないが、答えるのが誠実だ。

 そして、俺はカメラの前でありのままを伝えた。テイオーの足が危ない.........という事を。

 

 

ナリブ「お前.........」

 

 

桜木「みなまで言うな、トレーナーとして、当たり前の事を「頭がおかしいのか?」え!?」

 

 

ナリブ「テイオーが怪我をするというデータは確証出来るものだとして、なんで夢を見ただけでそう行動的になれるんだ?」

 

 

桜木(確かに)

 

 

ナリブ「今学生の私から客観的に見て、アンタに足りないものがある」

 

 

 ゴクリ、と唾を飲み込む。静かに目を閉じたナリタブライアンが何を言うのかは分からない。だがその姿は、大人であるはずの俺が気圧されるものであった。

 

 

ナリブ「自制心だ」

 

 

桜木「カハァ.........!?」

 

 

 カッと見開かれたナリタブライアンの両目。眼力が凄く、見るもの全てを殺す様な圧を感じる。その全てが俺に注がれてるのだが.........

 一方の俺はと言うと吐血した。痛すぎて。言葉のナイフで滅多刺しっすねェッ!なんてモンじゃねぇ!

 くそう!俺も超高校級のナンタラカンタラだったら言い返せてロンパ出来たのに!何も言えねぇし気持ち良くねぇ!

 

 

ナリブ「.........ともかくだ。ここまで来たのなら早々行動に移した方がいい。アンタもそれが最善だと思うだろう?」

 

 

桜木「当たり前だ。一体誰のせいでここで時間食ってると思ってんだ」

 

 

ナリブ「アンタだが?」

 

 

桜木「お前だぞ」

 

 

 そう言って指さすと、ナリタブライアンははて?と言った顔で首を傾げた後、俺を煽るように自身の背後を覗いた。俺は怒りが有頂天になった。

 

 

桜木「お前だよお・ま・えッッ!!!ナから始まってンで終わる名前してるウマ娘で前田慶次が好きな通称ブっさんだッッ!!!」

 

 

ナリブ「失敬な、私は前田慶次という名前の響きが好きなだけで、別に前田慶次が好きという訳じゃない。勘違いするな」

 

 

桜木「ムキィィィィィッッッ!!!!!イライラするぅ〜〜〜ぅうう!!!」ガシガシガシガシ!!!

 

 

 自分の身体からこの短時間で尋常じゃないほどのストレスが検出されている。なんだ?俺は今世界にいじめられてるのか?ふざけんじゃないよ。こっちはこれから言葉が通じきるか分からないあちらのお医者様と交渉しにゃならんと言うのに。

 両手で激しく頭を掻きむしった後、俺はカメラの方に視線を回した。

 

 

桜木「.........Justッ!D」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「.........これが、その時の映像だ」

 

 

全員「.........」ポカーン

 

 

 俺は持ってきたカバンから取り出したカメラに保存されたムービーを見せた。俺自身これを見たのは初めてだが、アイツ俺のジャス、ドゥウィッ!の途中でカメラを止めやがった。渾身の出来だったのに。

 

 

デジタル「で、でもこれで分かりましたよ!桜木トレーナーさんがちょっと痩せた理由!ずばりストレス痩せっ!」

 

 

マック「私もそう思いますわ.........」

 

 

 ビシッと立ち上がりながら、アグネスデジタルは俺を指さした。他の人達も、マックイーンの言葉に同調するように首を縦に振る。

 あながち間違いではない。正直言ってブっさんと一緒にいたせいでストレスは多少感じてはいたが、俺が痩せたのには、もっと他の要因がある。

 

 

桜木「.........俺の痩せた理由を話す前に、まずはこのアメリカ旅行での結果を発表しよう」

 

 

テイオー「.........」

 

 

沖野「.........っ」

 

 

全員「.........」ゴクリ...

 

 

 皆が皆、固唾を呑んで俺の言葉を待つ。特に、この旅の理由となったテイオーと、それを知ってて俺を送り出した沖野さんは、他の誰よりも真剣な目で俺を見てきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「成果は、無かった」

 

 

沖野「.........そう、か」

 

 

 目に見えて落ち込んだ表情を見せた沖野さん。それはそうだろう。こうまでして、海外にまで行ったと言うのに、テイオーを治す手段を、俺はアメリカで見つける事が出来なかったのだ。

 

 

桜木「.........そしてここからは、コイツがどうして、こんなになっちまったかって話をするとしよう」

 

 

全員「.........!!!??」

 

 

マック「.........うぅ、何だか、聞くのに勇気がいりそうなお話になりそうですわ.........」

 

 

 胸ポケットから、背面の真ん中が窪んだ携帯を取り出して、皆に見せた。やはり、コイツはそれなりの衝撃はあるらしい。

 俺自身、大変驚いた出来事ではあったが、面白い出会いがあったのも事実だ。まぁ、おかしな事も沢山あったにはあったのだが.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アメリカ 四日目

 

 

 デトロイトのとあるホテルの一室。

 

 

桜木「」ドサッ

 

 

 俺は一人、ベッドへと倒れ伏せた。精神的疲労と肉体的疲労、そしてこれからの絶望感がこの心を包み込んでいた。

 

 

桜木(神様なんてどこにいんだよッッ!!!)

 

 

 自暴自棄にもなっている。振り上げた拳は、そのまま力を失い、ゆるゆると柔らかいベッドの上で眠るように横たわった。

 どこまで行ってもふざけている。話を聞くと言ったリストの医者は、そのほとんどが、あれは冗談だったとか、患者もほとんど来ていない病院では忙しいから無理だと突っぱねられた。話を聞いてくれたのは、ほんの2、3人だ。

 

 

 俺はスーツを脱ぎ、下着姿のままベッドの上で寝転んだ。この疲労感をどうにかしなければ、動けるものも動けないからだ。

 

 

 そうこうしている内に、時間は既に五時過ぎになっていた.........

 

 

桜木(.........お、眠くなってきたぞ〜.........)

 

 

 俺は昔から超絶的に寝つきが悪い。半端じゃないレベルで酷い。目を瞑って三時間経過していたとかざらにある。俺はそんな時間が好きじゃなかったが、何も考えたくない今は、とても有難かった。

 そして、その夢の中で.........

 

 

桜木『ウワァァァァァァァ!!???』

 

 

桜木「ハァ!ダメダァ!オデハァ!アノコタチヲトレーニングサセナケレバ!オデノカラダハ!」

 

 

 粉々に散っていく自分の身体。ストレスのせいで悪夢でも見たのだろう。そしてさっき口走ってた言葉はよく分からない。ニゴリエースでも封印したくなったんじゃないか?

 時計を見ると、朝の六時だ。ブっさんのトレーニングを見る時間まではあと三十分ある。なんで旅行に来て普段より早起きする必要があるんだろうか?

 そんなことを思っていると.........

 

 

 ―――ドンドンドンッ!

 

 

桜木(はっ!?ブっさんか!?まだ時間じゃねえぞ!!開けるわけねぇだろタコッ!)

 

 

 気配を悟られないよう、布団を深く被る。なんでわざわざいつもの早起きより早く起きなきゃ行けないのだ。俺は少しでも寝たいんだ。寝かせてくれ。

 しかし、扉を叩く音は止まない。

 

 

 ―――ドンドンドンッ!開けろッ!デトロイト市警だッ!

 

 

桜木「すいません今開けますんでお命だけはお助け下さい」

 

 

 流石に警察官となれば話は変わってくる。一体何があったのだろう。俺はここに来て品行方正な態度で過ごしてましたわよ?それは勿論、日本語を喋る時はマックイーンみたいな口調で

 なんて言ってる場合では無いが、さすがに下着姿で出るのも恥ずかしい。急いで俺は私服に着替えた。

 

 

 ―――ツインモルガン、下がってろ

 

 

桜木「早く開けなきゃ」

 

 

 ジャスト40秒。ラピュタに出演できるレベルの早着替えだ。アイツらの前だったら拍手喝采が起こっていただろうが何、それはさして重要ではないんだ。俺は少し突っかかりながらも、前のめりで部屋の入口へと向かって行った。

 

 

 ―――ドガァッッ!!!

 

 

桜木「ビカムヒューマンッッ!!!??」

 

 

 そうだ。靴を脱ぐ習慣がない外国のドアは内開きだったんだ!!俺は強いタックルで開け放たれたドアに当たり、少し頭をフラフラとさせてしまう。

 .........そのせいなのか、この世のものとは思えない声が聞こえてくる

 

 

ようこそ、デトロイトビカムヒューマンへ。

 

 

桜木(ファ!!?)

 

 

 自分がよぉーく知ってるゲームのナレーションが聞こえてくる。あれ?ここ、現実だよね?いや、さっき警官が言ったセリフもゲームで.........

 もしかしてと思い警官の方を見てみるも、ポンコツアンドロイド(≠うさみん)もスモウ大好き中年も居ない。代わりに、ウマ娘の婦警さんが二人で俺の前に立っていた。

 

 

ここからは、あなたの選択が未来を切り開くことになります。自分の可能性を信じてください.........

 

 

桜木(スゲェッ!まるでゲームの世界みてぇだッ!早速この場を切り抜ける選択肢を見せてくれ!!)

 

 

 そう言われたら誰だって期待する。俺だって期待する。見せろと言われてどう出てくるのか謎だったが、それは目の前にスゥーっと現れた。

 

 

 ?

 ?

 ?

 ?

 

 

桜木(俺の可能性閉ざされてんだけど!!?どうしてくれんの!!?ねぇ!!!)

 

 

うるさいわね......今回だけ特別に開けてあげるわよ。

 

 

バリィーンッ!

 

 

桜木(なんかハンマーでカチ割られた音聞こえたけどまぁいい!!この場を打開できる策を.........)

 

 

 △ 捕まる

 □ 捕まる

 ○ 捕まる

 × 捕まる

 

 

桜木(ダメみたいですね)

 

 

これもうおわりよね?

 

 

婦警1「さっきからブツブツブツブツと、立て。お前には署まで来てもらうからな」

 

 

 そう言われて、地面に手を着いていた所を無理やり起こされ、手錠をかけられそうになる。しかし、それに待ったを掛けるようにもう一人のウマ娘がその手を掴んだ。

 

 

婦警2「待てツインモルガン。情報によればコイツは二人組で行動していた。もう一方も捕まえるぞ」

 

 

モルガン「はっ!承知致しました!レインズゲート警部補!」

 

 

レインズ「全く、『このホテルを立てた日本人』と同じ国から来たと言うのに、病院で怪しい行動をしていると通報があったぞ」

 

 

 .........どうやら、手当たり次第に病院に行っていたのが不味かったのだろう。ここはアメリカだ。日本じゃない。それをそうとは思わずに軽率に行動していた俺も、悪いのかもしれない。だが.........

 

 

桜木(俺は.........悪くねェッ!)

 

 

 身に覚えのないカルマを背負わされて黙っていられるほど、俺は大人しくは無い。だがここは一旦、この人らの言う通りにしよう。弁解は、同じウマ娘であるブっさんの方がしやすい可能性もあるだろうからな.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナリブ「.........」

 

 

モルガン「〜〜〜!」

 

 

レインズ「〜〜〜...」

 

 

桜木(助けて...助けて...)ウルウル

 

 

 .........なんだ、この状況は。何が一体どうなっている?この二人のウマ娘警察官はなんだ?桜木はなんで捕まってる?分からない。早くトレーニングがしたい。

 そんな時だった。私の耳に何かが触れた後、誰かの声が耳に聞こえてきた。

 

 

 ようこそ、デトロイトビカムヒューマンへ。

 

 

ナリブ(なんだそれは?と言うより誰だ?)

 

 

 そんなことは聞いても、この声の主はそれに反応することは無い。一方的に私に話しかけてきてるようで、少し腹が立った。

 

 

 ここから先、貴方の選択により物語が大きく変化します。

 

 

 △ 人違いだと弁明する。

 □ 名前も知らないと言い張る。

 ○ とりあえず殴る

 ?

 

 

ナリブ(.........最近の、なんだ。ホテルは凄いな。こんな職質の対応もしてくれるのか)

 

 

 すごいな、デトロイトは.........日本よりハイテク化は進んでいるとは思ったが、こんなにも先進的だったとは思わなかったぞ。姉貴にも帰ったら教えてやろう。きっと喜ぶ。

 しかし、あの最後の選択肢は気になるところだ。一体何が選択出来るのだろう.........?

 

 

 それは、貴方が今現在持ち合わせている可能性.........それを導き出せば、自ずと正解に辿り着けるはずです.........

 

 

ナリブ(誰だか知らないが、ありがとう。おかげで思い出せたぞ。私は確か机で寝落ちした会長から英語メモを取ってきたんだった)

 

 

 私は一旦、ドアを閉じて部屋の隅に置いたリュックを漁った。クリアファイルの中を覗いてみると、何十枚か束になった英語のメモを見つけることが出来た

 

 

 ―――パリン!

 

 

 × 英語のメモ

 

 

 よし、これでこのトラブルを切り抜ける事が出来る。正直私は英語が分からん。キャンキャンうるさい政府の犬には即刻帰ってもらうとしよう。

 

 

桜木「助けて!前田慶次助けて!!」

 

 

 ドアを開けると、もう手錠をつけられてバシバシと叩かれている桜木が居た。可哀想に。大人しくベジータなんかじゃなくてブロリーを好きだと言っておけばこんな事にはならなかったんだ。それにしても.........

 

 

ナリブ(正直打算見え見えすぎて助ける気も失せるが、仕方あるまい。英語でなんて書いてるか分からないが、適当に言えばいいだろう)

 

 

ナリブ「I won't die ...

As long as I feel this shining moment, the darkness of death will not come to me ... the moment will be eternal!」

 

 

桜木「は?」

 

 

ナリブ「I hate ... I ...! do not want to lose!

I'm hungry! I'm thirsty! To win!

Even if you take the victory in your pocket! I am! !! !!

You said, if you put a button on this turn! I am! win! !!」

 

 

桜木「」

 

 

 ふぅ、なかなか良い発音ができたな。よく分からんが身体の底から溢れるような感情に身を任せて吐き出すように喋ってしまったが、見ろ。二人の警官も桜木も私の力の籠った演説に見惚れている。

 

 

―――ザザザッ!

 

 

ナリブ(ん?今一瞬ノイズのような音が.........)

 

 

 × ヘルカイザー

 

 

ナリブ「」

 

 

 もう一度、メモに目を通してから、私はゆっくりと婦警達の方を見た。汗は沢山出るし、正直怖い。権力というのは時に、暴力に勝る恐怖を感じる。

 二人はもう、私を逮捕する気満々だった。もうどうする事も出来ない。そう思っていた所で.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「地面を殴れッッ!!!ブっさんッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナリブ「なっ.........!!?」

 

 

 その言葉に耳を疑ったが、次に桜木から聞いた言葉で、それはいい案だと考えた。

 

 

桜木「地面を殴って地震を起こせッ!アイツらは耐性ないしッ!この建物は日本人が作ってるッ!耐震性は信頼出来るッッ!!!」

 

 

ナリブ「くッ!アンタはたまに悟空みたいな機転が効く、なァッッ!!!」ドゴァ!!!

 

 

 言われるがままに地面を殴り付ける。幼い頃、やんちゃなウマ娘達の間で流行る遊びと言えばこの地震ごっこだった。

 もちろん、育ちきってないウマ娘の力では近くの者でも震度を感じるか感じないかだ。だが、あまり不謹慎でトラウマを持っている子もいたので、私は一人の時か、姉貴に頼み込んで観てもらったものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だから.........私は地面を叩くことに関しては、他のウマ娘より自信がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地面が揺れる。ハッキリと体感できるほどの揺れが、座っていても分かってしまう。俺は改めて、目の前のナリタブライアンと言うウマ娘の凄さを実感した。

 

 

モルガン「こ、怖いぃ〜!!」

 

 

レインズ「何よこの揺れぇ〜!!」

 

 

 頭を守るように手を回しながら、二人のウマ娘は地面に倒れていた。やはり、外国人にとっては未知の体験だったのだろう。

 

 

桜木(悪い、他の階にいる人達.........)

 

 

 出来ることなら一人一人に頭を下げたい気分だが、そうは言ってられない。今はこっちも大変なのだ。

 胸ポケットに入れたアラームがなる。いつもの曲ではない、英語で歌われる曲が流れ始める。

 

 

桜木「くっ!止めたいけどコイツが!」

 

 

ナリブ「手を出せ!桜木!」

 

 

 そう言われてびっくりした俺は、反射的にナリタブライアンに手を差し出した。

 すると、さっき地面を殴った時と同じモーション。今度は手刀で俺の手と手の間を、上から下へと下ろす。手錠はハズレはしなかったが、両腕は大分自由を取り戻した。

 だが、アラームを止めようとしたが、動かした視線の先で、婦警が頑張って立ち上がろうとしたのを見て、その油断を解いた。

 

 

桜木「あの子らが起きるまで時間がある!走るぞッ!」

 

 

ナリブ「なるべく全速力で頼むぞ!相手はウマ娘だからなッ!」

 

 

桜木「こっちは毎日ワガママタキオンの特性トレーニングをみっちり受けてたんだッ!せいぜい足掻いてやるさァッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「そ、それでトレーナーさんは.........?」

 

 

 話の途中で、そうマックイーンの声が聞こえた。目を向けてみると、よっぽど心配だったのか、その顔はもう泣きそうだった。

 俺は安心させるために、両手を広げ、自分の姿が無事だと分かるように見せる。

 

 

桜木「おいおい、今俺がここに居るんだから、それが答えだろ?」

 

 

タキオン「それにしても心外だ。私よりトレーナー君の方がよっぽどワガママだと思うけどね」

 

 

桜木「まま、それはお互い様って事でさぁ?」

 

 

 そう言うと、アグネスタキオンは不満気に鼻を鳴らした。お前のそれを聞くのも、だいぶ久しぶりだ。

 

 

ライス「け、けどどうしてブライアンさんのメモで怒っちゃったのかな......?」

 

 

桜木「あー.........後で見返したけど、アレの一つ前の文章。途中で終わってて、その最後の単語が『make』だったんだよ.........」

 

 

全員「.........あっ」

 

 

 多分、makeで頑張って親父ギャグを言おうとして自爆したんだろうな.........青白い炎を背景に筆を動かし続けている姿が目に浮かんでしまう。

 ここまで来ると、ヘル化の概念はもう既にシンボリルドルフ固有のものとなっている気がする。偶に模擬レースの際に出遅れるとどうしても変身してしまうらしい。困ったものだ。

 そう思っていると、ゴールドシップが腕を組みながら不思議そうな顔で尋ねてきた。

 

 

ゴルシ「けどよ、結局まだ撃たれてねーじゃんか」

 

 

桜木「まぁまぁ、話はまだ、ここからなんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 デトロイト生活、五日目

 

 

「へいブラザー!他に何かいい曲は無いのか!」

 

 

桜木「焦んなよボブ」

 

 

「俺はジミーだよ」

 

 

 運転席で流暢な日本語を話す外国人の男。筋肉はムキムキだ。俺は助手席でその男に、自身のミュージックアプリで、アラームにしてる音楽をかけた。『heavy day』という題名が、今の俺達を表している。

 

 

 あの逃走劇を繰り広げたあと、しばらく体調が悪くなってしまい、それを見兼ねたジミーと、もう一人の外国人。しかもウマ娘であったクレセントパールさんが、わざわざ車に乗せてくれたのだ。

 しかも、二人とも大学で日本語を専攻して尚且つ、トップクラスの成績を収めていたらしい。

 片や筋肉もりもりマッチョマンの男、もう一方は金髪ブロンドで碧眼のウマ娘。思い描いたような外国人像が目の前で俺達と会話している。

 

 

パール「貴方凄いのね!!三冠なんて!!」

 

 

ナリブ「い、いや、私としてはただ強い奴と走りたかっただけで.........」

 

 

パール「もう!!三冠なんてそんなスケールじゃないの!!貴方の周りの評価も関わるんだから!!そこは素直にアリガトウ!!日本人の悪い癖よ!!」

 

 

ナリブ「む......わ、悪かった」

 

 

 後部座席では、あのブっさんがタジタジにされている。正直可哀想だと思い、俺は苦笑いを浮かべた。ここの人達は、思いを直接ぶつけてくる。その分傷付く事もあるが、その分その温かさを感じることもある。一長一短だ。

 

 

ジミー「それにしても災難だったな、多分アンタら、怪盗『クレシェンテルーナ』に巻き込まれちまったんだろうな」

 

 

桜木「へ?クレ、なんだって?」

 

 

ジミー「クレシェンテルーナ。今アメリカを騒がせてる大泥棒さ!!」

 

 

パール「そうよ!!悪い人から物を取り上げて!!成敗するの!!カッコイイでしょ!!」

 

 

 そんなことを言われても、俺はあまり実感が湧かなかった。この現代社会。しかも、日本より進歩しているアメリカでそんな義賊まがいな事をするなんて、まるでルパン三世だ。

 

 

桜木「はぁ......それに巻き込まれたってんなら、俺は相当ツイてないよな.........」

 

 

ナリブ「アンタはよく司書のアイツに不幸の原因をなすり付けるが、アンタも人のことが言えないレベルの不幸体質だぞ」

 

 

桜木「社会人になってから薄々そう思ってたよ.........」

 

 

 憂鬱気味になりながらもそう答える。実際あのブラック企業に入ったのだって自分の不幸が原因だが、それに気付かずに邁進した俺も悪い。

 それでも、あそこで精神を病ませて居なければ今が無かったと考えれば、この不幸もいつか奇跡に繋がる。そう思えてしまうものだ。

 そんな思いに耽っていると、ふとパールさんからの視線を感じた。

 

 

パール「貴方、結構良いアクセサリーつけてるわね!!」

 

 

桜木「え?ああ、これですか?」

 

 

 あの時、警官の対応をしようと着替えた時に運良く付けれた王冠のアクセサリーを掴む。今はこれだけが、唯一俺とレグルスを繋げる存在だ。

 

 

桜木「.........コイツは、俺が俺で居られる、大切な物です」

 

 

ナリブ「.........」

 

 

パール「そう、そういう物が一つでもある人間って、結構強いのよ?」

 

 

 そう言いながら、パールさんは胸にかけていたネックレスに優しく手を添えた。そこには、黒い色の、三日月のアクセサリーが確かに存在していた。

 

 

パール「私もね?母国......あ、私イギリス出身なんだけど、娘を置いてここに来てるの。私と同じウマ娘なんだけどね」

 

 

桜木「それは.........?」

 

 

パール「.........これは、私の母。クレセントダイヤの形見なの。三日月の意志。やるべき事をやり抜くと誓った私の、大切な母としての証.........今はこれだけが、私をあの子の母として証明してくれる唯一なの」

 

 

三人「.........」

 

 

 優しく微笑みながら、撫でるように三日月に触れる彼女の顔は見覚えがある。やんちゃして泥だらけになった服を見て、俺を怒ったあとの母の顔と、そっくりだった。

 時折、本当に女性には敵わないと思い知らされる時がある。うちの母親もそうだが、こうして心の強さを見せられると、すぐ不安に陥ってしまう自分が恥ずかしくなる。

 

 

ジミー「.........お、そろそろスーパーマーケットに着くぞ!」

 

 

桜木「ようし、流石に何か食い物を買わないとやってけないからな、サンキューブルーノ」

 

 

ジミー「Who is it!?My name is Jimmyっ!!!」

 

 

 心地の良い大声が車内で響き渡る。俺は笑いながら車の扉を開けて、外へと降りた。空気の味がやはり日本のそれとは全く違うが、不味くは無い。

 久々に甘えられる大人と行動できて、思ったよりもそれが表に出てきてしまう。流石アメリカクオリティ。ビッグなものが好きな分懐もビッグだぜ。もうジャックは「ジミーだ」そう硬いこと言うなよ元ジャック。結構嬉しそうに笑ってんの分かるんだぜ?

 そんな俺にため息を吐きながらも、車を降りて着いてくるナリタブライアン。目指すはスーパーマーケット。いざと言う時の切り札を作る為に訪れた場所だ。

 

 

桜木「よーっし!生き残るぞ!デトロイトっ!!!」

 

 

ナリブ「全く、いつまでもうるさいやつだ.........」

 

 

 やれやれと言った様子でそういうナリタブライアンではあったが、俺が振り向いて文句を言おうとした時に見た顔は、どこか満更でもなさそうであった。

 

 

 

 

 

  ......To be continued

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