山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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トレーナー「マックイーンに避けられてる.........」

 

 

 

 

 

マック「〜〜〜♪」

 

 

 夜の帳も既に降り、外は街頭が点っている頃でしょう。時計の短い針は既に寮の門限を指しており、私達トレセン学園に所属しているウマ娘は皆それぞれ、自分達の部屋で明日を迎える準備を整えます。

 私、メジロマックイーンもその一人です。ですが、今日はここ最近はなかった鼻歌を奏でながら、 櫛で髪をとかしていました。

 

 

イクノ「.........上機嫌ですね」

 

 

マック「あっ.........も、申し訳ございません。少々うるさかったでしょうか......?」

 

 

イクノ「いえ、ここ最近落ち込み気味だったマックイーンさんしか見られなかったので、私としても嬉しいです」

 

 

 ベッドの上で小説を読んでいた同室のウマ娘。イクノディクタスさんが微笑みながら私に顔を向けてくださいました。

 うぅ、少々恥ずかしいですが、これも仕方ないことなんです.........

 

 

マック『もう逃げる事はないと思いますが.........タバコを吸うならここで吸ってください』

 

 

桜木『.........わざわざ持ってきたのか?』

 

 

マック『貴方を捕まえた時、最後に逃げる口実を作るならこれかと思いましたから』

 

 

 あの時、私がした寄り道はトレーナー専用職員室でした。理由としては、彼を捕まえた際、最後の砦としてタバコを口実にするだろうと思ったからです。

 ですが、思ったよりも難航しました。なんせ学園でタバコを吸う場合、喫煙室を使う為、そもそも灰皿を持っている方は多くはありませんでしたから。

 柄にもなく祈りながら最後のトレーナー職員室。ベテラントレーナーが集まる場所へ赴き、訳を話すと、古賀トレーナーが快く貸してくださいました。

 

 

桜木『......本当、敵わないなぁ』

 

 

 ターフの上に座り込み、風の流れを確認したトレーナーさんは私達に背を向けてそう言いました。呆れたようで、どこか嬉しそうな声色が、今でも耳に残っています。

 

 

イクノ「良かったですね。トレーナーさんが戻ってきて」

 

 

マック「ええ♪明日からまた、元通りの毎日ですわ♪」

 

 

 私はそう言って、とかしおえた髪を確認し、ベッドの中へ入りました。そう言えば、イクノさんと談笑したのも久々だと感じます。明日からはきっとまた、元通りの毎日が.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「グス.........ヒグ.........」

 

 

東「.........」

 

 

 元通りの毎日が始まる。そんな事を思っていた時期がこの俺、東 颯一郎にもありました。

 桜木が起こしたあの大騒動とも言える逃亡劇。大規模な模擬レースが行われた会場であんな事をしたせいで、コイツの名前と凶行は大々的に記事にされた。それも、感動物語として。

 そんな日からもう一週間。なんのトラブルも無く、皆いつも通りの日常に戻っていた筈だった.........

 

 

東「.........」

 

 

沖野「.........さっ、今日のテイオーのリハビリメニューでも組むか」

 

 

 俺の机の向かいに座る沖野は自作のノートの上半分から視線を覗かせていたが、俺が出勤し、俺の机で突っ伏して泣いている桜木を、俺が視認したのを確認してその顔を引っ込めた。

 大の大人が泣いてるほどいたたまれない状況は無い。耐えきれなくなった俺はデジャブを感じながらも、自分から声を掛けた。

 

 

東「.........どうしたんだ?」

 

 

桜木「.........グス......イー......避け.........ぅぅ」

 

 

 会話もままならない。俺は沖野に視線を移すが、奴はお手上げのポーズを取って見せた。お前んとこのサブトレーナーだろ何とかしろ。

 そうは思いつつも、こうなった桜木を見捨てる訳には行かない。俺は桜木の肩を叩き、一緒に移動するよう促した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東「.........で、どうしたんだ?」

 

 

桜木「.........マックイーンに避けられてる」

 

 

東「.........はぁ?」

 

 

 喫煙室のベンチ。俺と桜木は隣り合わせで座るように会話をする。そして返って来たのはその言葉の意味も内容も伝わるはずなのに、何故か理解ができない物だった。

 これじゃあ埒が明かない。俺は胸ポケットからフィリップモリスの6ミリパッケージを取りだし、タバコを口にくわえ火を付けた。

 

 

東「.........吸わねぇのか?」

 

 

桜木「ブルボンからの罰で禁煙中だから.........」

 

 

 落ち込み気味の桜木はそう言いながら、尻ポケットからココアシガレットを取り出し、悲しそうに口を咥えた。

 

 

東「まず、状況を説明してくれ。じゃなきゃアドバイスもできん」

 

 

 正直、並大抵の事では避けられる事は無いはずだ。何せ、マックイーンと桜木は噂に聞くと両片思い状態。どっちもくっつきたくて仕方の無い状態の筈だ。

 

 

桜木「.........俺が避けられ始めたのは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「はぁぁ.........やっぱり日本の飯は最高だなぁ.........」

 

 

 カフェテリアでライスと朝食を終えた俺は、復帰一日目としてまず、自分のチームルームがどうなっているか確認しようとした。

 鍵を持ち、廊下を歩いてると、向こう側から見知った姿が見えた。マックイーンだ。俺は挨拶しようと声を掛けた。

 

 

桜木「マックイーン!おはよ―――」

 

 

マック「!!」ドキン!

 

 

マック「.........!」ペコリ!

 

 

マック「.........!」サササ!

 

 

桜木「.........え?」

 

 

 俺が挨拶するまで上の空だったが、俺に気付くと酷く動揺を見せて、何も言わずお辞儀をし、そそくさと目の前を去っていった。

 調子でも悪いのだろうか?トレーニングに支障でもきたさなければ良いのだが.........最初はそう、軽く思っていた.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東「.........それが物の見事に1週間続いてる、と?」

 

 

桜木「うん」

 

 

 まずい。アドバイスどころかなんも分からん。というよりこれ桜木悪くないんじゃないか?マックイーンに根本的な原因があると思われる.........

 うーん、うん。そうだな。それがこいつの為だ。俺も鬼になろう。

 

 

東「桜木」

 

 

桜木「?」

 

 

東「直接聞け。忙しいから俺は職員室に戻る」

 

 

桜木「は?」

 

 

 俺はベンチで硬直する桜木を残し、喫煙室の扉を開ける。床になんか力強い足跡みたいなのがあるが、知らん。東 颯一郎はクールに去るぜ.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「むぐぐ!!?むぐぐうむ!!?」

 

 

 ここはどこでしょう.........?教室でない事は分かりきっています。なんせ、HRの後廊下に出た瞬間に拉致されましたから。

 あぁ、視界が完全に塞がれています。目隠しでもされたのでしょうか?あまりに突然でそれすら把握ができません。しかし、これをした犯人など既に分かりきっています。

 

 

マック「むーぐぐむっぐ!むぐぐむぐぐぐぐ!(ゴールドシップ!早く解きなさい!)」

 

 

ゴルシ「あー?なんだよー。すぐアタシだってバレんじゃん。今度からブルボンに頼もー」

 

 

マック「むむむむむうむむぐぐぐむんむむむむんむむむむ!!?(私のチームメイトをなんだと思ってますの!!? )」

 

 

マック「劇団メジロのコント集団」

 

 

マック「.........」

 

 

 否定できませんわ.........なんせ一癖も二癖もある方々の集まりですもの.........トレーナーさん含めて.........って!なんで言葉が通じるんですの!!?

 そう思っていると、不意に視界が急にクリアになります。暗い所から急に明るくなったせいで、ちょっと目が痛いです.........

 そして気がつけばいつの間にか、椅子に座らされ、目の前には案の定ゴールドシップさん、単独犯という予想に反してスカーレットさん、スペシャルウィークさん、それに、ウマフォンのテレビ通話で繋がっているテイオーさんの姿が目に飛び込んできました。

 

 

マック「あ、あの.........これは.........?」

 

 

ゴルシ「単刀直入に言うぞ」

 

 

ダスカ「サブトレーナーの事、避けてるみたいじゃない」

 

 

マック(ギクッ)

 

 

 うぅ.........今一番触れられたくない話題に躊躇なく足を踏み入れましたわね.........!

 わ、私だって避けたくて避けてる訳ではありません!!あんな.........!あんな夢さえ見なければ.........!!

 

 

スペ「変ですよ!!!」ダンッ!

 

 

マック「へ、変!!?」

 

 

スペ「だってマックイーンさん!!サブトレーナーさんの事が好きなんですよね!!!」

 

 

マック「声が!!!声が大きいですわ!!!」

 

 

 私の目の前にある机。その向かい側にいるスペシャルウィークさんが体重を掛けるようにその両手で音を出すように突き立てます。

 あぁ.........! またあらぬ誤解が!!好きではないんです!!ただ彼を見ていると我を忘れてしまったり!!考えているとぼーっとしてしまうだけですわ!!!

 

 

テイオー「あーあ〜、せっかくサブトレーナーが帰ってきたのにさー。このままじゃ誰かに取られちゃうよ〜?」

 

 

マック「べ、べべ、別に?彼は私のものではありませんし?第一彼を取ろうとする物好きなんて、この学園には.........?」

 

 

 自分でもわかりませんが、視線を泳がせて弁解していると不意に、皆さんの視線が刺さりました。それに気がついて目を移すと、皆さんの人差し指が私の方向を指しています。

 いえ、そんな.........まさか、えぇ?私が彼を狙っているとでも?いえいえ!彼は確かに良きパートナー(トレーナーとして)ですが!流石にそんな仲には.........

 

 

ゴルシ「ゲロっちまった方が、スッキリするぜ.........?」

 

 

マック「電気スタンドとそのカツ丼を退けなさい」

 

 

ダスカ「こわ、もしかして減量中?悪いことしちゃったわね.........」

 

 

スペ「いただきまーす!!」

 

 

テイオー「うわ!!カツ丼じゃなくて海鮮丼じゃん!!いいなー!!ボクも食べたいよ〜!!」

 

 

 あぁ.........なんだか頭がクラクラしてきましたわ.........こんな空間に居たらまともで居られません.........次の授業もありますし、ここはさっさと退散しましょう。

 そう思い、溜息を吐きながら立ち上がりましたが、誰もそれを止める方は居ませんでした。きっと皆さん飽きたのでしょう。巻き込まれるこっちの身にもなって下さい。

 私は今日こそはと思いながら、ドアに手を掛けました。

 

 

ゴルシ「なー」

 

 

マック「.........なんでしょう?」

 

 

ゴルシ「このままでいいのかよ」

 

 

マック「.........良いも悪いも、私の問題です。時間が解決するしか―――」

 

 

ゴルシ「ビビってるだけじゃ前に進めねーぞ?」

 

 

 .........私はゴールドシップさんのその言葉に、言葉で何かを返すことは出来ず、扉を思い切り閉めて返しました。なんだか、負けた気分です.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「.........はぁ」

 

 

 直接聞け.........って、言われてもなぁ。避けられてるんじゃ話も出来ないよ.........

 俺、なんか悪いことしたかなぁ。もしかしてちゃんと許されてないのかなぁ.........

 

 

桜木(.........考えてても仕方ないよなぁ)

 

 

 暫しの間、喫煙室で噛み砕いたココアシガレットを口の中で転ばしていても、何も答えは出て来ない。それどころか、帰って深みにハマるばかりだ。とにかくここを出よう。

 そう思い、俺は転がしていた破片も噛み砕き、飲み込みながら外へ出た。そこへ―――

 

 

「きゃっ!?」

 

 

桜木「うお!?ごめ.........!!?」

 

 

 左右の注意を怠ったせいで、体を廊下に出した瞬間、生徒であろうウマ娘と激突してしまう。まぁ倒れたのは俺の方だが。

 慌てて不意に出たことを謝ろうと顔を上げると、そこには今まで避けられてきたマックイーンが冷や汗を流し、俺をじっと見てきていた。

 

 

 

 

 

 ―――ああ、どうしましょう。謝らなければ、流石にここで謝罪をしなければメジロのウマ娘として.........いいえ、人として落ちぶれてしまいます。そ、そうです。謝れば良いのです。謝れば.........

 

 

「「あ、あの!」」

 

 

「「あ!先にどうぞ!」」

 

 

「「じゃ、じゃあ.........え?」」

 

 

 まるで鏡合わせのように、同じセリフ、同じ動作で行動します。彼とこうして何気ない会話をするのは久しぶりのはずですのに、何故か息が合ってしまいます。

 

 

マック「その、ごめんなさい.........不注意でした.........」

 

 

桜木「い、いや、俺の方、こそ.........」

 

 

「「.........」」

 

 

 お互い頭を下げ、暫くの間沈黙が入ります。何を言えば、何を話せば良いのでしょう?私は、彼と今まで一体何を話してきたのでしょう.........?

 

 

マック「で、では授業がありますので!私はこれで!」

 

 

桜木「待って!!」

 

 

マック「.........!」

 

 

 彼の力強い言葉の制止が、そのまま逃げようとした私の足を止めました。恐る恐る振り返り、彼の顔を見ると、そこには怒りや不安などの感情はなく、優しさと温かさを感じる笑顔がそこにはありました。

 

 

桜木「お昼休みに.........いや、トレーニングが終わった後でもいい。言い難いかも知れないけれど、俺を避ける理由を教えてくれないか?」

 

 

マック「.........」

 

 

 そう言いながら、彼はゆっくりと、私が怖がることがないように近付いてきます。そんな事、ある訳ありませんのに。

 ですが.........そう、思いながら、何故か心臓の鼓動は徐々に高まりを見せています。彼が一歩近づく度に、ドクン、ドクン、と、それは静まりを忘れたように大きく、強くなって行きます。

 そして、彼が手を差し伸ばしてきた時.........

 

 

マック「!い、いや!」パシン

 

 

桜木「へ?」

 

 

マック「.........はっ!も、申し訳ございません!!失礼致します!!」

 

 

 私は廊下を走りながら、我に返りました。あぁ、私は彼になんて酷いことをしてしまったのでしょう.........いくら半分無意識だったとは言え、彼の手を払ってしまった自分が憎い。

 彼の様子を見るべく、視線を動かして後方を確認すると、彼はあまりの出来事に固まってしまっていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「」

 

 

桐生院「.........」

 

 

 お昼休みのチャイムが鳴るトレーナー職員室。いつも通りならば、桜木トレーナーは自分のチームルームへとご飯を食べに行くはずです。

 しかし、今私の隣の席にいる彼は、まるで長時間絶句しているような表情で椅子に座っていました。

 

 

桐生院「め、珍しいですね.........」

 

 

桜木「」

 

 

桐生院(な、何か!!何か話題を.........!!)

 

 

 彼が居ない職員室に慣れてしまったせいか、彼と何を話せばいいのか分からなくなってしまいます。

 ここは.........そうだ!彼と担当の子について話せばいいんだ!私と彼はトレーナー!ウマ娘について話すことは何よりも自然な話題です!そこから彼のことを聞けば!

 

 

桐生院「最近マックイーンさんとはどうですか?」

 

 

桜木「」…ポロポロ

 

 

桐生院「え」

 

 

 い、意外!桜木さんは絶句した表情のまま涙を悲しそうにポロポロと流し始めました。まさか、悩んでいたのは担当について.........?

 うぅ、この桐生院葵、一生の不覚です.........彼の悩みの元を解決してあげるどころか、それを刺激して泣かせてしまうなんて.........

 いいえ!ここでへこたれてる場合じゃない!恩人に対してできることは何でもしなければ!

 

 

桐生院「な、悩みがあるならなんでも聞きます!マックイーンさんとの事で何かあったんですか!!?」

 

 

桜木「.........実は」

 

 

 そこから、彼は途切れ途切れで話を始めました。どうやら理由もわからずマックイーンさんに避けられ、先程手を払いのけられたようです。

 うーん.........私はあまりマックイーンさんと関わりがないですが、理由もなくそんな事をする子ではないと思います。彼の話を聞いている限りでは、その理由も分かりません。

 .........でも、あのアドバイスが役に立つかも

 

 

桐生院「桜木さん」

 

 

桜木「?」

 

 

桐生院「直接聞きましょう!」

 

 

桜木「.........だからそれは」

 

 

 私の提案に対して、期待外れというような表情を見せて、彼はそのまま言葉を繋げようとしました。それを掌を勢いよく彼の顔に突き出し、止めます。そんなもの、彼の話を聞いていればとっくに理解しています。

 颯一郎さんが直接聞けと言ったのは、それが手っ取り早いという事もありますが、私達トレーナーがまず初めに教わることでもあります。

 直接聞くこと。そして、聞けなければまた聞く機会を見つける事。それがウマ娘との絆の作り方だと、私も色々な人に教わりました。それが功を奏し、今ではミークが私の担当です。

 

 

桐生院「トレーナー業と言うのは半分はデータや経験、そしてもう半分は体当たりです」

 

 

桐生院「自分の目で信じたものを疑わず、ただひたすらに突き進む。それがトレーナーであり、桜木さんの足りない部分です」

 

 

桜木「俺の......足りない部分.........」

 

 

 そう、彼はトレーナーでありながら、トレーナーらしくない。違うと思われればすぐに切り替えが効く。その考え方が、今では多くのトレーナーに広がる程、彼は知らない所で風としての役割を果たしています。

 ですが、絆の作り方は変わりません。傷付く事を恐れてしまえば、そこで終わりです。転んでしまっても、手当やケアをしっかりすれば、傷は塞がるものです。

 

 

桐生院「桜木さん。当たって砕けろ。です!」

 

 

桜木「.........ありがとう。頑張ってみる」

 

 

桐生院「その意気です!桜木さん!」

 

 

 ようやく悲しげな空気を振り払い、話をしようと決心をする桜木さん。やっぱり彼は強引で、自分勝手でなければ、そう思いながら、彼との久々の昼食を楽しみました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タキオン「なるほどねぇ。通りで最近二人の様子がおかしかった訳だ」

 

 

 後ろで今までの二人の経緯を話すゴールドシップくん御一行。私はそれに目を合わすことなく、茂みから高性能盗撮カメラ(黒津木くんの私物)で噴水の方を取り続ける。

 

 

イクノ「それにしても、マックイーンさんのトレーナーが帰ってきた時はあれほど上機嫌だったのに.........一体何が?」

 

 

ゴルシ「おいおい〜、それを知りたいからイクノも呼んだんだぞー!」

 

 

ダスカ「八方塞がりって訳ね.........」ハァ

 

 

 私は後ろで騒ぎ始めた彼女たちに人差し指を立て、静かにするよう促す。それを見て先程まで喋っていた子達は口元を抑えた。

 見たまえ、スペシャルウィークくんを。こんなに静かにしてるじゃないか!

 

 

スペ「お腹が空きました.........!」

 

 

テイオー「さっき海鮮丼食べたじゃん.........」

 

 

 あぁ、無駄なエネルギーを消費したくなかっただけか。まぁいいさ、私の邪魔さえしなければね。

 そう思いながら私は好機を待っていると、不意にイクノディクタスくんが何かを思い出したようにあっ、と声を上げた。

 

 

イクノ「もしかして、アレになにか関係が.........?」

 

 

全員「あれ?」

 

 

イクノ「.........あの、マックイーンさんには内緒にしてあげて下さい」

 

 

 そう言うと彼女は、どうやら彼が帰ってきた日の、マックイーンくんの就寝後について話し始めた。

 

 

イクノ「マックイーンさん。偶に野球の夢を見るのか、『かっとばせー!ユ・タ・カ!』と声を上げ、パッと目を覚ます時があるんです」

 

 

ゴルシ「ヤベー奴じゃん」

 

 

イクノ「その日は酷くうなされていて、私もその苦しそうな声で起きたんです。そしたら.........」

 

 

 わざとらしく作られた間に、私達は皆唾を飲んだ。一体何があったというのだろう?まさか、彼女の夢の中で、トレーナーくんがマックイーンくんに酷いことでもしたのだろうか?だったら納得が―――

 

 

イクノ「『かっとばせー!!!トレーナーさん!!!』.........と、いつもならその声で起きるはずなのですが、そのまま夢心地のまま.........」

 

 

全員(.........ん?)

 

 

 待って欲しい。今の要素でどこに彼を避ける要素がある?普通ならば夢に出てきてくれたのだから、喜ぶなり彼との話題の一つにするなり出来ただろう。これは多分違うだろうね。

 あまり有益では無い情報にため息が出そうになるが、私の右耳と左耳に、それぞれ違う種類の足音が聞こえてくる。

 そしてそれは、他の子達も一緒だったらしい。一瞬にしてザワザワしてる空気がしんと静まり返った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「あ.........」

 

 

桜木「.........よう」

 

 

 学園の三女神が模された噴水の前。彼の手を払った先日の傷は、まだ私の中で癒えていません。

 それなのに、彼にそれを謝ることは出来ず、余計に避けてしまっている気がします。今日だって、お昼ご飯すら食べずに、こんな所をフラフラと.........

 ですが、彼はそんな私を見て、嫌そうな顔一つせず、優しく微笑みかけてくださいます。

 

 

マック「.........失礼します」

 

 

桜木「まぁまぁ、そう言わずに」

 

 

マック「と、通してください!」

 

 

桜木「やーだよ!」

 

 

 私が、彼の横を通ろうとすると、通せんぼするように私の前へと両手を広げます。こうされると、私は何も.........

 そう思っていると、彼は不意にその通せんぼを止め、噴水の方へと歩き出しました。この隙に逃げてしまえば良かったのに、私は彼を視線で追ってしまいます。

 

 

桜木「カフェテリアに居なかったからさ。ここかなって思ったんだよ」

 

 

マック「.........」

 

 

桜木「『一心同体』ってのも、悪くないな」

 

 

マック「!」

 

 

 そう言って、彼はまたニカッと笑います。いつもであれば、私の専売特許の様なものですのに、今日はどうやら、トレーナーさんが一枚上手なようです。

 彼は手に持った包みを私に見せるように揺らしてから、彼の座る隣へと置きました。

 

 

マック(.........そういう所、お上手なのね)

 

 

 つい、心の声が素に戻ってしまう程、力が抜けてしまいました。どんなに拒絶されても仕方が無い事をしたはずですのに、彼はそれを気にせず、また私とこうして関わってくれる。

 

 

マック「.........お隣、失礼します」

 

 

桜木「どうぞ。見たところご飯まだそうだったから助かった。お弁当無駄になるところだったよ」

 

 

マック「わ、わざわざ作ってくださったんですの?」

 

 

桜木「ああ、居なくなる前はこれが普通だったから、普通通りの方がマックイーンも過ごしやすいかなって」

 

 

マック「今日会えるとは限らなかったのではありませんか.........」

 

 

桜木「言っただろう?『一心同体』だって、今日は会える気がしたんだ。お弁当も食べてくれるって」

 

 

 .........本当、この人は私を喜ばせる事に長けている気がします。この人を避ける理由なんて些細なものですのに、今までなんで.........

 そう思いながら、彼から手渡されたお箸でお弁当を食べ進めます。日数にして見れば、ざっと二週間以上はご無沙汰だった彼のお弁当。どんな料理よりも、美味しく感じられます。

 

 

桜木「.........多分、期間が開きすぎたんだ」

 

 

マック「?」

 

 

桜木「十日なんてあっという間だし、大した長さじゃない。マックイーンも、そう思っただろ?」

 

 

 確かに、トレーニングをしている日々は早々に過ぎていくことが多く、ひと月もふた月も、気付けばあっという間に過ぎていることもあります。

 ですが、彼の居ない十日間は、とても寂しく、この短い人生の中で、酷く長い十日間でした。

 

 

桜木「.........俺もさ、案外寂しがり屋だから、行く前に覚悟を決めてたんだけど.........すっげぇ寂しかったんだ」

 

 

マック「トレーナーさん.........」

 

 

桜木「多分、それのせいでまた、マックイーン達との心が離れちゃったんだと思う」

 

 

 そういう彼は、寂しいであろうはずの心を、笑って誤魔化しました。けれど、その眉は悲しそうに寄せられていました。

 謝らないなければ、今までの事を.........その気持ちが前に出ると共に、焦りと、不安と、そして恥ずかしさが現れます。

 そして、そんな私に、彼は優しく声をかけてくださいました。

 

 

桜木「だから、ちょっと話そうか。お互いの事」

 

 

マック「.........!」

 

 

『だから、ちょっと話そうか。お互いの事』

 

 

 それは、私が彼の前で倒れ、保健室で言われた言葉と同じもの。

 あの日と違うのは、 彼とすごした年月と、日々積み重なって行った彼への信頼と、そして.........私の、彼に対する感情。

 あの日と同じように、少年のような笑顔でそう言った彼に、私はまた釣られて微笑みを零しながら、焦り、不安、恥ずかしさが私の中から霧散し、まだ、名前の付けていない感情が溢れ出しました。

 

 

マック「.........ええ、私も久しぶり、貴方とゆっくりお話したかったんです」

 

 

桜木「決まりだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「あの、思ったのですが、やはり整髪料などは付けてないんですか?」

桜木「え、まだ疑ってる?匂いなんてしないでしょ?」

マック「そ、そうですけど、やっぱりその髪型は無理がありますわ」

桜木「よし、一本抜いて確かめてみるか!」

マック「えぇ!?」

桜木「......っ、ほら!指で弾いても元通りの形だろ!!?」

マック「け、形状記憶してますわね.........」

桜木「よく知ってるなそれ。習ったの高校の時だったんだけど.........」

マック「実験の時は貴方を呼びますわね♪」

桜木「いや、たづなさんに連行されるからやめてね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「好きな食べ物はなんですか!!!」

マック「そ、それは以前紅茶とクッキーだと」

桜木「好きな食べ物はなんですか!!!」

マック「.........す、スイーツです......///」

桜木「やっと言ってくれた.........」ホッ

マック「もう.........貴方が好きな物はお母さんの手作り料理だと、お姉さんから聞きましたわ」

桜木「げっ、姉ちゃんバラしたのかよ。恥ずかしいな.........」

マック「ふふ、良いではありませんか。私も母の手料理が好きですもの」

桜木「.........じゃあ俺の料理で好きな物は?」

マック「.........お豆腐で作ったハンバーグです」

桜木「.........ははは」

マック「な!!?そ、そこは笑う所ではありません!!!」

桜木「いや、マックイーンの為に作る料理の中で一番手間暇かけてるんだよ」

マック「そ、そうだったんですの?」

桜木「うん。それを一番好きだって言ってくれて嬉しい」

マック「うぅ.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「そう言えば、十日ぶりの学園はどうですか?」

桜木「なーんも変わってないなぁ。強いて言うならなんか理事長が忙しそうな事くらい?最近ずっと悩んでるみたいだし」

マック「.........もしかしたら、新しいレースの提案でも考えているのでしょうか?」

桜木「ありそー。あの人の事だからバカでかい奴をポンっと出してきそうだなぁ」

マック「長距離でしたらお任せください。初代勝者に君臨してみせますわ!」

桜木「自信満々だなマックイーン。やっぱその顔見なきゃ帰ってきた気がしないよ」

マック「!もう、それではいつも私が一番だと思ってるみたいではありませんか!」

桜木「まぁ、流石にスカーレットほどじゃないけど」

マック「あの人の1という数字への固執は、目を見張るものがありますからね.........」

桜木「二進数とか嫌いそう」

マック「ふふ、確かに、どこか悶々として解いてる姿が目に浮かびますわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「テイオーとは連絡取ってるのか?」

マック「ええ、先日は確か、安心沢さんの足つぼマッサージを受けたようです」

桜木「え、足つぼ?」

マック「はい。聞いていたより痛みくなかったらしく、安心沢さんも驚いておりました。健康体そのものだと」

桜木「いっっったいぞ〜?身体の悪い部分突かれると悶絶するからなぁ」

マック「あら、ではトレーナーさんもマッサージしてくれます?私どこが悪いのか確かめたいですわ」

桜木「遠慮しとく」

マック「する側ですのに?」

桜木「男にはな、特殊な人種が居るんだよ。俺は女の子の足を触っちゃいけない.........近くに居ちゃ、行けない.........」

マック「トレーナーさんですのに?」

桜木「良いかいマックイーン。この話は無かったことにしよう。オールフィクションだよオールフィクション」

マック「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「ご馳走様でした」

 

 

桜木「お、お粗末さまでした。美味しかった?」

 

 

マック「ええ、久々に、貴方の味がしましたわ♪」

 

 

 私がそう言うと、彼は照れたように頬を掻いて濁します。そんな姿を見ていると、やはり申し訳なさが出てきてしまいます。

 言いましょう。言って楽になってしまいましょう。そうすれば、明日からはまた元通りの日常です。今度こそ、待ちに待った.........

 

 

マック「.........トレーナーさん」

 

 

桜木「え?どったの?」

 

 

マック「その、今更ではありますが、今まで避けてきた謝罪と、その理由をお話したくて.........」

 

 

桜木「お!ついにか!!!」

 

 

 ずいっ、と私の方に顔を寄せてくるトレーナーさん。その顔はどこかワクワクというか、ウキウキしたような表情でした。

 

 

桜木「いやー、普段から自分勝手と言うか、普通のトレーナーらしい行動なんてしてこなかったからさー。嫌われても仕方ない所を、笑って着いてきてくれただろ?」

 

 

桜木「そんなマックイーンが俺を避けるなんて、よっぽどすごい理由なんだなって思うとワクワクしてきちゃってさ!」

 

 

マック(.........全くもう、この人は.........)

 

 

 呆れてしまうほど能天気といいますか、彼のそのなんでも楽しもうとする姿勢は、尊敬すら値します。私もこれほどゆったりしていれば、こんなことで悩まずに済んだのかも知れませんのに.........

 ですが、そんな呆れて漏れそうになった声には、嬉しさが混じっている。まだどこかで、拒絶されるかもしれない恐怖があったのかもしれません。そんな恐れを、彼はまた、その持ち前の明るさで払ってくれました。

 

 

マック「.........実は―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気が付いた時、私の耳には割れんばかりの歓声と、熱狂的な空気に包まれながら、スタンドの方でビクトリーズの試合を観戦していました。

 掲示板を見ると、九回裏で2-1と、攻撃側のビクトリーズが一点負けておりました。

 

 

マック(だ、大丈夫!いつもの夢ですわ!きっとユタカがここでホームランを.........!)

 

 

 見たところによると、現状はノーアウト一塁といい状況でした。ユタカがバッターボックスに入る姿を見て、この試合の勝ちを確信しました。

 

 

 ですが.........

 

 

 コンッ!

 

 

マック「なっ!!?」

 

 

マック(そんな!!?夢の中でのユタカの戦績は100%!!!何故そこでボール球に手を!!?)

 

 

 現実世界ならばまず手を出さない初球のボール球。しかし、今回の夢の世界でのユタカはそれに手を出してしまい、ピッチャー側に返したゴロのボールをそのまま取られてしまいワンアウト。

 そして、打つだろうと思っていたのか、大きく走り出していた一塁の選手も差され、形成は一気に狂い、逆転とは程遠い状態になってしまいました.........

 

 

マック(まずいですわ.........次の打者はノザキ。ユタカがホームランにならず長打した際のカバーは一級品ですが、出塁者が居ない場合の彼の打率は厳しいもの.........)

 

 

 今日の目覚めはさぞ悪いものでしょう。そう思っていました。

 しかし―――

 

 

「代打。『桜木』背番号27番」

 

 

マック「.........へ?」

 

 

 私の聞き間違いでしょうか?ですが、確かにアナウンスは代打を『サクラギ』と呼んでおりました。

 .........まぁ、割と珍しめな苗字ではありますが?トレーナーさんとは限りませ―――

 

 

「うおっ!ここで桜木玲皇かよぉ!!」

 

 

「行けぇぇぇ!!!ビクトリーズに奇跡を起こしてくれぇぇぇ!!!」

 

 

マック(トレーナーさん!!?本当にトレーナーさんですの!!?)

 

 

 思わず、前のめりになりながら自前の双眼鏡でバッターボックスに入ろうとする選手の顔を覗きこみました。そして間違いありません。あれは正真正銘、トレーナーさんでした。

 

 

マック「か、か、か.........」

 

 

マック「かっとばせー!!!トレーナーさん!!!」

 

 

 思わずそんな声を出してしまうほど、私は興奮が昂ってしまいました。この状況で打ったらきっと、夢の世界とは言えトレーナーさんは一躍代打の神様として名乗りを上げます.........!どうしても私は、その瞬間が見たかったのです。

 

 

 そして―――

 

 

 カキンッ!

 

 

マック(な、内角低めの変化球を初球で!!?)

 

 

 ゾワゾワとした感覚が背中を走ります。今までにないほど、身体の感覚が昂るのを感じます。

 その打球はファールにならず、あと一歩でホームランというところでフェンスに当たりました。

 ですが、それが逆に功を奏したのでしょう。トレーナーさんは二塁まで走り込みを決め、この流れを途切れさせない感じでした。

 そして、それはまだまだ続きます。

 

 

マック(次はハタナカ。ホームランを打つには打ちますが、あまり期待をかけてはいけません。堅実に行きましょう.........!)

 

 

 いつしか、夢であることを忘れて夢中で展開を読んでしまいます。そしてその初球。なんとトレーナーさんは二塁から三塁までの盗塁を図り、成功させてしまいます。

 

 

マック「〜〜〜!!!!!」

 

 

 次のヒットで確実に一点が入ります。夢の中ではありますが、やはりトレーナーさんは人を流れに乗せるのがお上手だと思いました。

 そしてその予想は見事的中し、ハタナカは無事ヒット。続くイブチも、長打のヒットを出し、堅実な逆転劇を見せてくださいました。

 

 

マック(ああ.........すごい!!こんな試合を夢とはいえ見られるなんて!!!)

 

 

 しかもこの展開。いつも通りであれば何故かヒーローインタビューにお邪魔して、私がユタカに質問攻めをしてしまう展開です。

 あぁ、何を話せばいいんでしょう!待っている間はそれをずっと考えてしまいます。大丈夫。彼は逃げません。落ち着いて、深呼吸を.........

 

 

マック(!き、来ましたわ.........!!)

 

 

桜木「どうも」

 

 

マック「.........え、あっ」

 

 

 その、彼の顔を間近で見た瞬間、考えていた事は全て真っ白に塗りつぶされてしまいました。いつもは.........ユタカにインタビューをする時はあんなに喋れますのに、何故かトレーナーさんには、それが出来ませんでした。

 ただ、嬉しい気持ちと、恥ずかしい気持ちにも似た、とても切ない.........そう、まるでトレーナーさんと初めて夏祭りに行った時の感情が膨れ上がったような感覚を感じながら、私はそこで目を覚ましました.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「.........良かったぁ」

 

 

マック「え?え!?」

 

 

 私の夢の話をして、長い沈黙の後、帰ってきた言葉は安堵の言葉でした。正直、それが帰ってくるとは予想していなかったので、酷く驚いてしまいます。

 

 

桜木「嫌われてなかったんだなぁ.........」

 

 

マック「.........嫌いになんて、なるはずありません」

 

 

 あそこまでして、貴方を追いかけましたのに、今更嫌いになんてなれるはずがありません。いえ、何も言わず居なくなった時は確かに、いっそ嫌いになってしまえばとも思いましたが.........

 隣に座ってほっとため息を吐く彼を見て、私も安心して、つい顔が緩んでしまいました。

 

 

マック(.........それにしても、この人と一緒に居る時に顔を覗かせるあの感情は、一体何なのでしょう.........?)

 

 

 暫しの間、心地の良い居心地の悪さの中で、ゆっくりと思考を凝らしてみます。こんなこと今まで.........いえ、彼と出会うまでは、一度もありませんでしたのに.........そう思いながら、また彼との楽しい談話を再開させました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タキオン「.........」

 

 

ゴルシ「.........」

 

 

テイオー「.........アレだったね」

 

 

ダスカ「.........そうね」

 

 

 殆どが口をポカンと開けて、マックイーンくん達の様子を見守っていた。いや仕方が無いだろう。まさか違うと思っていたものがまさかの原因だったのだから。

 

 

タキオン「まっっったく回りくどい!!どうしてこうも素直じゃないんだ!!!」

 

 

ゴルシ「ホントだよなー!!?ハラハラさせてくるこっちの身にもなれよな!!!」

 

 

ダスカ「ゴールドシップも人のこと言えないでしょ!!!」

 

 

ゴルシ「今はアタシの事は関係ねーだろ!!!!!」

 

 

テイオー「ゴル」ピッ

 

 

 喋りかけていたテイオーくんとの通話を切ったゴールドシップくん。その顔はどこか赤らんでいて恥ずかしそうだった。

 そしてその後すぐに彼女の携帯にかかってくる。電話を取って聞こえてきたのは甲高いテイオーくんの声だった。

 

 

テイオー「ナンデキッチャウノサー!!!」

 

 

ゴルシ「次何か言ったらマックイーン達が話してる間電源切るからな」

 

 

テイオー「ゴメンナサイ」

 

 

 ひと仕事終えたように、ゴールドシップくんは溜息を吐いた。いやいや、私も彼女らと同意見だよ。

 隣で空腹で横たわっているスペシャルウィークくんとトレーナーくん達が来る一時間前から死んでるデジタルくんの様子を見ていると、不意に後ろから声が掛かった。

 

 

「何してんだ?」

 

 

ゴルシ「あ?決まってんだろー!おっちゃんとマックイーンの逢引を―――」

 

 

白銀「マジ?警察案件じゃん。通報しとこ」

 

 

ゴルシ「」

 

 

 おー。みるみるうちに顔が赤くなっていくねぇ。これはマックイーンくん達とは違う反応が見れそうだ.........黒津木くんにも連絡しておこう。

 

 

ゴルシ「お、おま!!!おまえ!!!なんでここにいんだよ!!!」

 

 

白銀「俺は実質筆頭株主だぞ!!!トレセン学園は全て俺のもんだァァァ!!!」

 

 

デジ(「」)

 

 

タキオン(おー。死んでるはずのデジタルくんが更に死んだぞ!!実験器具を持ってきていないのは残念だが、この条件ならいつでも起きそうだねぇ)

 

 

 私とスカーレットくんとテイオーくんは自然と頬を緩ませながら、トレーナーくんと白銀くん達を交互に見やる。手のかかる被検体だなぁ全く.........

 

 

「何をしてるんですか?」

 

 

白銀「決まってんだろ!!玲皇とお嬢の逢引シーンを撮って黒津木にお願いして俺の持ってるAVコレクションの一つと合成編集して楽しもうと―――」

 

 

 待て待て待て待て、この男は何を言っているんだ。スカーレットくんやテイオーくん分からずに首を傾げているのが唯一の救いだが、ゴールドシップくんの顔からは湯気が出ているぞ。

 というより誰だい?さっきから私の後ろから圧を掛けているのは.........

 

 

タキオン「.........や、やぁマックイーンくん。今日は皆で呑気にキャンプでも洒落こもうと思ってねぇ」

 

 

マック「道具が見当たりませんが?」

 

 

タキオン「え、エアキャンプさ!!流石に学園の敷地内で火をつけるのは危ないだろう!!?」

 

 

マック「その手に持っているカメラ、見せてもらっても?」

 

 

タキオン「」

 

 

 終わった。このカメラには先ほどのマックイーンくん達のやり取りが詰まっている。見られてしまえば即終了だ.........!

 

 

ダスカ(ど、どうするんですかタキオンさん!!)

 

 

タキオン(ひ、一つだけ!方法なら残っている!!!)

 

 

タキオン「逃げるんだよォ!スカーレットくん―――!!!」ダッ!

 

 

 私は脱兎のごとくその場から逃げ出した。このアグネスタキオン。デビューは未だしていないとはいえトレーニングはこう見えて真面目にしている!!いくらマックイーンくんとも言えども追いつける訳が―――

 

 

タキオン(ん"ン"!!?何故かは分からないが妙に身体が重いぞ!!!)

 

 

スペ「私に黙って食べ物を食べに行くんですか!!!ずるいです!!!」

 

 

タキオン「逃げると言っただろう!!?」

 

 

 まずい!!!まずいまずいまずいまずいまずい!!!非っっっ常にまずいことだよこれは!!!まさかスペシャルウィークくんが背中に張り付いてるだなんて!!!

 だがこれだけは.........!!!私の余生を楽しませる為の感情を解き明かすためのツールは!!!死んでも離さないぞぉ!!!

 ウマ娘一人くらい乗っけて走ってみせる!!アグネスタキオンは伊達じゃない!!!

 

 

 

 

 

桜木「.........何やってんだあの子ら」

 

 

 突如始まってしまった追いかけっこに困惑しながらも、ようやくいつも通りのチームレグルスに戻ったと感じた俺は、目の前で首をゴールドシップに締め上げられている白銀を尻目に、今日のトレーニングを楽しみにしながら、噴水から去っていったのだった.........

 

 

 

 

 

  ......To be continued

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