山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜 作:ギノっち@カマタラル
7月。それはスポーツに精を出す者達にとっては大切な月。それはもちろん、ウマ娘にも同じことが言える。
普段であるならば、トレセン学園所有の合宿所でトレーニングを積む日々に励むであろう。しかし、今年は一味違った.........
桜木「が、合宿所を台風が直撃.........?」
沖野「ああ、このまま行けば進路的には夏合宿真っ盛りの時期に到達する予想らしい」
お昼休み、沖野さんから話があると言われ呼び出されてみれば、合宿所を台風が直撃するという話だった。
沖野さん曰く、彼のトレーナー人生でも初めての出来事らしい。今まで何度も台風や災害はあったが、合宿所のある場所は尽く無事。喉元を過ぎれば安心してトレーニングに励めるという神に愛された土地であった。
桜木「どうするんすか?うちは今年は合宿するかわからないですけど、リギルとか毎年の様に行ってますよね?あとアルデバランも.........」
沖野「朝礼聞いただろ?今日この後、理事長直々にトレーナーとウマ娘を集めての学年集会だ.........今から胃が痛い.........」
そう言えばそうだ。今日は朝から理事長直々に朝礼で、集会があるから楽しみに!と念を押されたのだった。
怖い、あのロリっ子権力ヤ〇ザの恐るべき所はブレーキが内蔵されていないということだ。誰だあれの開発者は、さっさと出てこい!
桜木「鬱だ.........」
この先の不安を、身体は敏感に感じとったのか、今までの良い気分が無くなり、重だるい症状が現れる。
そして、その不安は俺の期待をぶち壊して、実現する事になったのだ.........
ーーー
桜木「えー。合同練習三日目となりました。今回は私、桜木玲皇がリーダーを努めます。よろしくお願いします」
ウマ娘「よろしくお願いします!!!」
グラウンドに集められたウマ娘達の前で、朝礼台に立ち挨拶をする。見た目は真面目を取り繕っているが、完全に萎え萎えだ。
理由を知りたいか?まずこの合同練習。ここの参加チームはスピカ、スピカ:レグルス、リギル、そして複数の個人トレーナーで固められている。
そして、一日目の日程は沖野さんが組んだトレーニングだ。やってる内容は傍から見れば遊びにも見えるが、その実、しっかりと身体の鍛えられるメニューになっている。
二日目はリギルの東条トレーナー。見るからにトレーニング。誰がどこから見ても立派なトレーニングだ。データの管理もしっかりとしていて、各々のウマ娘の改善点をその子と担当トレーナーに渡すほどキッチリしていた。
そこまではいい。そこまでは.........
ライアン「いやー!桜木トレーナーのトレーニング!楽しみだなー!」
桜木(期待するな期待するな期待するな)
俺のトレーニングを期待するものが若干名居る。メジロライアンにナリタブライアン、マンハッタンカフェ等、俺の滅茶苦茶さを知っている者達の視線が期待に満ちている。一体どんなトレーニングを付けてくれるのかという視線.........
桜木「えー今回はですね。筋力トレーニングを重点的に鍛えていきたいと、思いますんでね。ジムルームに早速移りましょうか」
ウマ娘「はい!!!」
沖野「.........クク」
東条「ちょっと、笑ったら失礼でしょ.........フフ」
なんだあの二人。俺をコケにしてるのか?こんな事似合わないのは百も承知だ。笑わないで居てくれてるのは東さんだけだぞ。なんて聖人なんだ!!!
桜木は心の中で、彼への信頼度を高めていた一方、東はぼーっとしながらこんなことを考えていた。
東(今日美依奈さんのカレー食いに行こうかな)
ーーー
トレーニングルームまでの道のりの廊下。俺を先頭に、ガヤガヤとした空気が辺りを支配し始める。まるで医療ドラマでよくある回診みたいな感じだ。こんな気持ちを経験出来るとは.........
「先生!!!」
そうそう、丁度こんなふうに看護婦さんから声をかけられて.........って
桜木「へぇ!!?」
思わず歩きながらその声に振り向く。そこには目をキラキラとさせた栗毛のウマ娘。頭には王冠を乗せているリギルの一員。テイエムオペラオーがそこには居た。
いやいや、なんだ先生って、俺は教員になった覚えはないぞ。
オペ「以前の公演!!とても感動しました!!ぜひ演技の御指導もお願いしたいです!!」
桜木「あ、あ〜.........アレね、うん。ま、また今度でいいかい?」
オペ「はい!!いつまでも待ちます!!!」
うっわぁ〜.........厄介な事になったなぁ。あのヒーローショーを見てどこに感銘を受けたんだろう?こっちとしてはもうそれをする気は無いんだけどなぁ.........
そう思っていると、話を終えたオペラオーは列へと戻って行く。その際同じリギルのフジキセキに話を聞かれて俺のヒーローショーを語り始めたが.........うん、無視しよう。
マック「人気者ですわね」
桜木「嬉しいやら面倒いやら.........」
マック「ふふ、私のトレーナーさんが人気者なのは、悪い気がしませんわ♪」
俺の隣で嬉しそうにしているマックイーン。それはいいんだがね、面倒事は面倒なんだよ(?)できればやらない方が良いんだ。もし話を持ち掛けられても頑張ってブッチしよう。
ゴルシ「けどよー。あんまし実感わかねーなー、おっちゃんがこんな大人数の先頭歩くなんてよー」
桜木「え?」
ゴルシ「どっちかってーと、集団が縦になってるところの真ん中を横切るイメージじゃん?」
タキオン「確かにねぇ、彼に引っ張られてどこに行くんだろうか.........栄光への道かい?それとも深く暗い海の底かい!?崖の先かもしれない!!はたまた宇宙の先までも」
カフェ「タキオンさん.........静かにしてください.........」
恨めしそう.........ではないが、ジトっとした目でそういうマンハッタンカフェに、タキオンは不服そうにしながらも口を噤んだ。
ようやくうるささがマシになった.........俺ははぁっと息を吐きながら、目の前のトレーニングルームの扉を開けた。
黒津木「オラオラァ!!その筋力じゃあそこら辺のボディビルダーに負けんぞ創ェ!!!」
神威「るっせぇぇぇ!!!俺はハードゲイナーなんじゃボケぇぇぇ!!!」
白銀「なんでウマ娘用のデッドリフトやらせてくれないんですか」
たづな「死にますよ?」
なんでアイツらが居るんだ。なんでここでわざわざ筋トレしてるんだ。意味が分からない。
俺は慌てて踵を返した。うん、あの子達には器具は全部何者かによって壊されてたと伝えよう。今日はターフとダートで根性トレーニングでも―――
黒津木「玲皇ッ!お前も言ってやれ!!ハードゲイナーを言い訳にするのは甘えだって!!!」
神威「お前それでも医者か!!?個人の体質を甘え認定するなんて最低すぎるぞ!!!」
白銀「え、ハードゲイ?」
三人「やめれ」
思わず反応してしまった。が、仕方ないだろう。その普段でも危なかったしい話題はここでは3倍の危なっかしさになる。
そう入口でげんなりしてると、突然、俺の背中を誰かに蹴られて地面へと這いつくばった。
ナリブ「ん?なんだ、アンタらか」
桜木「前から思ってたけどなんで俺にだけそんな乱暴なの.........?」
ナリブ「ブっさんはやめろとあれほど言ったのに聞かないアンタが悪い」
身から出た錆。完全に自業自得でした。身体も痛いし心も痛い。やっぱり女の子に虐められて嬉しくなる奴なんておかしいよ!!
着用していたジャージの汚れを払うように両手でほろいながら立ち上がると、もう既に殆どがジムの中へと入っていってしまった。
マック「ドーベル?大丈夫ですか?」
ドーベル「た、ただでさえ苦手なのに.........三人も増えた.........」
それは申し訳ない事をした。が、一度現れれば日が暮れるまで一緒に居ることになる。アイツらはきっと生まれ変わりなんだ。あのマリオUSAの鍵もってたら追ってくる奴の。
まあでもいいんだ。俺には仲間がいる。何か困った時はマックイーンに相談が―――
「すいませーん、メジロマックイーンさん居る?」
マック「え?せ、先生?どうされましたか?」
先生「ああ良かった!実はさっき親御さんから電話があってね、その、ここでは言い難いことなんだけど.........」
マック「.........?ああ、あの件ですか.........」
なんの事だか分からない、という顔から何かを納得したような表情に変わったマックイーン。
良くない、良くないぞ〜この流れは.........頼むからここで話をつけてくれないかな.........?そうは思いながらも、俺の方に振り向いた彼女は申し訳なさそうに頭を下げた。
マック「すみません、少々離れさせて頂きます.........」
桜木「良いの良いの、お家の事はなんも出来ないから、仕方ないさ」
マック「ありがとうございます、トレーナーさん」
礼を言った彼女は足早にトレーニングルームを去っていった。本当は行かないで欲しかった。ツッコミ役が一人いなくなるだけでやって行けなくなるんだあの連中は。
ルドルフ「落ち込み気味の所申し訳ないが、今日はどういうメニューだろうか?桜木トレーナー」
桜木「あーうん、今日はねー.........」
そうだ。落ち込んでいる暇はない。今の俺はこの大所帯を引っ張るトレーナーなんだ。しっかりしなくては.........
そう心に喝を入れながら、今回のトレーニング。前回の東条トレーナーからのデータで分かった筋力的部位の弱点の補強をするメニューを個人に作り、それを渡して行った.........
ーーー
ゴルシ「よーテイオー!!今暇かー?」
テイオー「うん!ちょうど今日のリハビリが終わった所なんだ〜♪」
ビデオ通話でウキウキとした表情を見せるテイオーは誰かを探すように、その視線を画面の端から端まで動かす。
相変わらずだなーと思いながら、アタシはスマホを持ってランニングマシーンで軽く流している会長様の姿を映した。
テイオー「きゃーーー!!!カイチョーだーーー♪♪♪」
ルドルフ「ん?ああ、テイオーか。そう言えば今日はまだ話してなかったな」
テンション爆上がりのテイオーが映るアタシのウマフォンをルドルフの前に置くと、生徒会三人組と今日あった事を話し始めた。こういう所でアイツのストレス発散が出来るならお易い御用ってもんだぜ。
ゴルシ「さーってと、アタシもトレーニングすっかなー」
タキオン「おや!珍しいじゃないかゴールドシップくん!君が真面目にトレーニングに取り組むなんて!」
ゴルシ「失礼なやつだな!!アタシはいつだって真面目だぜー!!?真面目に不真面目してるっつーの!!!」
全く、タキオンの奴も困ったもんだぜ。アタシはやる時はやるウマ娘なんだ!!
とりあえず今日はサンドバッグにスープレックスかける練習でもすっか!!!
そう意気込みながら、アタシはデジタルが運んでるサンドバッグを一つ拝借しようと抱き抱えると、ルドルフと話していたはずのテイオーが声を上げた。
テイオー「ゴルシーーー!!!」
ゴルシ「ああ!!?なんだよ!!アタシはこれからプロレスでビバメヒコするんだよ!!」
テイオー「マックイーンの姿が見当たらないけど、どうしたの?」
ゴルシ「あー、なんか家の事で先生に呼び出されてたぞー?」
疑問を抱いていたテイオーに、アタシは的確な回答を投げて解決した。よし!これでルチャリブレの練習が出来るぜ!!
そう思っていたら、今度は別の問題を、テイオーが出してきやがった。
テイオー「あー、もしかしてアレかも.........」
ゴルシ「アレ?」
少し、不穏な空気が漂い始めた。なんせ、いつも明るく元気なテイオーが、心配を帯びたような声でそう言ったからだ。 アタシだけじゃなくて、傍に居るウマ娘は全員、テイオーが映るアタシのウマフォンへと集まっていた。
テイオー「実はね?」
ーーー
ゴルシ「医者の跡取り息子と婚約ゥ〜!!?」
テイオー「わ!!声が大きいよゴルシ!!」
いっけね、思わず声を上げちまった。おっちゃんにはバレてねーよな.........?
後ろに振り返って様子を見ると、縄跳びでぴょんぴょんと身体を慣らしている様子が見えた。大丈夫、見た感じバレてねー。
アタシと他の連中はホッと胸をなで下ろした。
ゴルシ「ライアン知ってたか?」
ライアン「い、いや!!あたしも知らなかったよ!!マックイーンがこ、婚約なんて.........///」
ドーベル「あ、アタシもそういう事は聞かなかったかも.........聞いてたら、マックイーンに直接聞いてたし.........」
ありゃりゃ、どうやらここに居るメジロ家のお嬢様達は全員予想だにしてなかったっぽいな.........つーか、テイオーはどこからその情報仕入れて来たんだよ!!
テイオー「いやー。よくマックイーンお見舞いに来るんだけど、その時ポロッと口に出しちゃってたからさ〜。それかなーって」
タキオン「けど、あながち間違いでは無さそうだ」
カフェ「婚約.........まだ中等部なのに.........」
そうそうそうそう!!そうなんだよ!!まだマックイーンが結婚すんのは早すぎんだよなー!!
それに、おっちゃんと結婚してもらわねーと困っちまうんだよアタシとしても!!なんでかは言えねーけどな!!
ナリブ「.........聞いた事があるな、その佐枝という名前」
ルドルフ「佐枝大病院という名は聞いた事があるだろう。なんでも、とある海外の医者に憧れてウマ娘の研究に専念し、最近ではトレーナー資格も取ったそうだ」
グルーヴ「とある海外の医者.........ですか」
黒津木「.........?」
エアグルーヴの言葉を聞いたのと同時に、アタシ達はこの学園に来る前、ウマ娘について研究していた物好きな元ニューヨーク在住の医者の方を見た。
コイツだ。間違いねー。なんでおっちゃんの周りにはトラブルを起こすやつしか居ねーんだよ!!
白銀「あった事あるぞソイツ」
ゴルシ「おわっ!!?」
こ、コイツ.........!!いつの間にアタシの隣に.........!!?
やべー。ドキドキする。別に何とも思ってねーけど!!コイツの事なんて!!とりあえず一旦離れよ。
デジ「な、なんですか?デジたんを盾にして.........」
ゴルシ「しばらくアイツからの盾になってくれ」
デジ「デジたん昇天案件のシチュですね」
くっそー.........まさか会話に混ざってくるなんて思わねーじゃんか!!ずるい奴だぜ全くー!!
そう思いながら、アタシはデジタルの肩から頭の上半分だけ出して、白銀の様子を伺った。
白銀「医学の分野の精通はもちろん、半年でトレーナー資格を取れる熱量、オマケにスポーツ万能でハンサムだったぜ」
ウマ娘「ほえー.........」
聞くだけ聞いてみると、高スペック人間そのものじゃねーか。人類のいい部分いいとこ取りしたような人間.........
ゴルシ「病院の一人息子でハンサムで、トレーナーっつーと.........モテモテだな」
タキオン「モテモテだね」
白銀「ま!!!ゴルシは気にしねぇような面だったけどな!!!」ケラケラ
黒津木「まゴルシは良いとして」
神威「ゴルシは置いといて」
白銀「な、なんで.........?」
置いてかれた。アタシは結構ほっぺ熱くしてんのに。まーでも誰も気付いてないからラッキーっつったらラッキーだけどな!!
ゴルシ「まーでも!!そんだけすんげー所ばっかだとよー!!」ニタニタ
桜木「.........ん?なんだどうした、なんか問題でも―――」
タキオン「マックイーンくんも婚約をしてしまうかもしれないねぇ!!!!!」ニタニタ
桜木「ファッ!!!??」
―――え、なになに!!?婚約!!?どういう事なの!!?君達一体なんの話をしてる訳!!?
いや落ち着け、ここは大人の余裕だ。それが必要だ。そう思いながら、俺は背中を向けるゴールドシップに声をかけようと近付いた。
桜木「き、君達?一体なんの話を―――」
ゴルシ「完璧超人トレーナー対おっちゃんか.........普通だったら完璧超人の方だが」
桜木「」
タキオン「安心したまえ!!!年月を考えたなら君の方に軍杯が上がるよ!!!」
お、おお、何とも珍しいタキオンのフォロー。普段からロジカル的な理詰めをしてくれる彼女のフォローによって安心したのか、自然と息が漏れる。
しかし、その隙を突くようにタキオンは間髪入れずに俺に不安の種をまいた。
タキオン「まぁメジロ家の繁栄を願う場合は勝ち目がないが」
桜木「へ?」
ゴルシ「考えても見ろよ」
そう言いながら、ゴールドシップは俺の方に振り返った。いつものようにからかう様なニタニタ顔だったならば冗談で済んだだろう。
しかし、その顔には汗が浮かんでおり、ゴールドシップ自身も相当焦っている様子が見て取れる。
ゴルシ「もしこのままマックイーンが卒業して見ろ。おっちゃん、マックちゃんは婚約者出来てんぞ」
桜木「そ、そんな.........い、いやいや!!誰だって結婚はするだろうし!!?第一俺とマックイーンはそんな関係じゃぶぐ!!?」
額に痛みがビリリと走る。ゴールドシップが俺の喋っている間に一瞬で近付き、俺の襟を掴んで頭突きをかまされた。
ゴルシ「まーだそんなこと言ってんのかコノヤローッッ!!!おっちゃんのそのウジウジウジウジウジウジした態度が前から気に入らなかったんだ!!!!!」
ひ、酷い.........!!!昔から優柔不断だと言われる節はあったけど、そこまで言われるのは初めてだ.........正直泣きそう.........!!!
ゴルシ「好きなら好きでハッキリしやがれーッッ!!!」
桜木「き、嫌いじゃないけど.........」
ゴルシ「嫌いじゃないだー?じゃあ好きでも無いんだなァッッ!!!??」
桜木「い、いや、どちらかと言えばだな―――」
ゴルシ「あーーーもうウジウジしやがってッ!おっちゃんの気持ちなんざ皆分かってんだよォッッ!!!」ドカッ!ドカッ!
い、痛いッ!ゴールドシップの怒りに任せた頭突きが俺の額を襲う。それも一回や二回ではない。何度も等間隔で浴びせられる頭突きに、何か脳に問題が発生するレベルの衝撃を与えられる。
ゴルシ「くっつきそうでくっつかないラブコメヤローにッッ!!!うんざりしてんだよォッッ!!!」
ゴルシ「言えェ!!言っちまえェ!!マックちゃんに好きだってよォッ!!!佐枝に取られても良いのかァ!!?」
桜木「さ、佐枝って誰.........!!?」
は、話の流れが分からない。なんで俺は今頭突きされてたの?なんで好きだと伝えることを強要されなきゃならないの?佐枝って誰?
分かんない、わっかんないよ!!!ゴルシちゃんの言ってること全然わかんないよ!!!ラブコメしてて何がダメなの!!?ウジウジしたっていいじゃん俺の性格だよ!!!
それになんで誰も止めてくれないの!!?ウマ娘の力で頭突きされてたんだよ!!?パンチドランカー確定だよ!!?来いよデジタルッッ!!!オメェだよォッッ!!!なんでさっきから深く頷いてんだよッッ!!!
そんな誰も止めてくれない状況に涙を流しそうになるが、ここで一人、尻もちを着いた俺とゴールドシップの間に立つ人物が現れた。
「まあ確かに強引ではあるが、ゴールドシップくんの言う事も一理ある」チッチッチ
桜木「ミツルギタキオン.........」
タキオン「君は今や有名トレーナーだ。マックイーンくんの悲願、いや、メジロ家の悲願を達成したんだ。どこへ出ても一人前の男として胸を張れる.........とりあえず、いい頃合じゃないかい?」ユビサシ
.........まずい、助け舟かと思いきや、これは敵国行きの密輸船だったかもしれない。その先の言葉が何かを察しつつも、俺はそれが何かを目で訴えかけた。
すると、ミツルギタキオンはやれやれ、と言うように両手を広げて首を左右に振ったあと、言葉を発した。
タキオン「告白のね」トゥルーン...
桜木「」ゴクリ
黙ることすら出来ない。俺は思わず唾を飲み込んだ。苦しい、今までこんな苦しい空間は経験した事がない。息を吸う事もままならず唾を飲み込むなんて、相当ストレスがかかっている。
とにかく、ここは言い訳しなければ行けない。俺はなるように口を動かした。
桜木「け、けど俺は他の子のトレーニングも見なきゃだしマックイーンだってレースが、ぃぃ.........!?」
俺の身体の前面に大きな影が重なる。まさかと思い視線を向けると、そこには冷たい表情のゴールドシップが立ちはだかっていた。
ゴルシ「トレーナーだろうがウマ娘だろうが、現役でいる内はいつだってレースは控えてんだぜ.........?」
ゴルシ「それに婚約決定になってからじゃ思い伝えてもなんもいい事無いじゃねーか」
た、確かにそうだ.........もし仮に、マックイーンが婚約を受ける形になってしまえば、俺のこのファンとしての気持ちにして誤魔化してきた感情は、どこに出しても受け取られなくなってしまう。
だが.........それでも俺にはそんな勇気は無い。そうだ!!ここで俺の親友だ!!白銀の奴はともかく他の二人はチキンだ!!俺の気持ちもわかってくれ―――
「「こっくはくっ!!こっくはくっ!!」」
ダメだ、アイツら完全に自分達に火の粉が掛からねぇと思ってこの状況を楽しんでやがる.........!!こうなったら自分で弁解するしかねぇ.........!!
俺は尻もちを着いた状態から正座に座り直し、考えを練った。
桜木「け、けどな?その〜......えっと〜.........」
ゴルシ「アタシがおっちゃんのスマホで電話掛けてやらァッッ!!!」タッタッタッ!
桜木「アァ!!?」
ゴールドシップは俺の目の前で踵を返し、出口へと向かって行った。ジャージの裾を掴んだが検討虚しく引き剥がされてしまった。もうこの際アイツらじゃ無くていい!!デジタル!!いやスペ!!頼りになるのはお前らしか―――
「「「こっくはくっ!!こっくはくっ!!」」」
桜木「おっおーい!!野次ウマ娘どもォッッ!!!」
ダメだ。デジタルもスペも、ついでにスカーレットもワルツを踊るように腕を組んで楽しんでいやがる。踊ってない子達は手を叩いて音頭をとっている。
桜木(まずい.........この流れは非常にまずい.........!!!)
ゴルシ「電話持ってきたよぉ〜ん♪♪♪」タッタッタッ!
ノリが軽い。軽いからこそ、俺の足では到底追いつけない所まで走りきってしまっている。このまま行けば俺は、勝算のない勝負に挑む羽目になる.........!!それだけは.........それだけは絶対に避けたい.........!!
ゴルシ「さー!!」
タキオン「さぁ!!」
テイオー「さぁ♪♪」
それぞれが手を差し出して、俺に告白を催促してくる。ゴールドシップに至っては俺のチームルームに置いてきたスマホを持ってきている。鍵かけた筈なのにどうやって入ったんだ。
いや、そんな事はもはやどうでもいい。些細な事だ。重要なのは、今この場の空気が完全に、俺を告白させるような流れになっている事だ。ここは.........!!何かで決着を付けるしかない.........!!
桜木「.........ウララ」
ウララ「!なになにトレーナー!!」
桜木「ちょっとチームルームから、机を持ってきてくれ.........」
意気消沈気味になりながらも、俺は地面に滴り落ちる汗を見て気を落ち着かせる。ウララは俺の言った言葉に疑問を持つ事はなく、直ぐにチームルームへと向かって走って行ってくれた。ここにいる連中と違って優しい子だ。ライスも優しいな、ブルボンも優しい。
スズカ「大丈夫かしら、サブトレーナーさん.........」
グルーヴ「.........あれが心配が必要な目に見えるか?」
ゆっくりと息を整えて、俺はその場に立ち上がって見せた。堂々と、怖気付くこと泣く。立って見せた。
その姿に若干気圧されたのか、ゴールドシップとタキオンはその身を少し引いた。テイオーは楽しそうな事が起こりそうな予感を感じとってウキウキしてやがる。
桜木「俺は逃げない。例えこの先が、地獄の道だったとしても.........!!必ずこんなふざけた空気をぶち壊し!!俺は、俺の平穏を掴んでみせる!!」
ゴルシ「はァ!!?オマエ!!この期に及んで告白しねー気でいんのかよ!!」
桜木「それはお前ら次第だ.........!!」
「腕相撲で俺に勝ったらッッ!!!告白でもなんでもやってやらァッッ!!!」
その宣言の後、若干の静寂と共に、皆の熱気が最高潮に達したのか、全員が声を上げて、この後起こる大激戦の熱を高めさせて行った。
......To be continued