山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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貴顕の使命は果たせずとも

 

 

 

 

 

『最強無敵のウマ娘っ!!!トウカイテイオーだぁぁぁーっっ!!!!!』

 

 

マック「.........」

 

 

 気持ちの良い風が流れるように吹く学園のターフの上。私はそこで、菊花賞のテイオーの姿を思い浮かべておりました。

 .........いいえ、それでは語弊があります。正確に言えば、忘れられないと言った方が正しいでしょう。あの日から、テイオーのあの姿と、あの声が、脳裏から離れてくれません。

 トレーニングの最中ですら、彼女のあの姿が頭から離れてくれないのです。その理由も、分かっています。彼女は.........多くの方々の期待に応えて見せた。私は、それに応えることが出来なかった。

 羨ましい。気を緩めてしまえば、その言葉が口について出てしまう程に、私は彼女にそのような感情を抱いて居ました。

 

 

桜木「.........大丈夫か?マックイーン」

 

 

マック「っ、大丈夫です。少し.........考え事をしていただけですわ」

 

 

 私の様子があまりにも上の空だったのでしょう。近くで見ていたトレーナーさんが、私の方に心配そうな顔で近付いて来ました。

 ジャパンカップまで、もう時間はありません。彼に余計な心配を掛けたくは無いのです.........

 そう思っていると、不意にトレーナーさんのポケットから音楽と共に振動音が聞こえてきました。

 

 

マック「.........出た方がよろしいのでは?」

 

 

桜木「.........ああ、少し待ってて」

 

 

 そう言って、彼は携帯を取り出し、耳に当てながら私から少し遠ざかって行きました。

 ですが、彼が口を開くことは一切ありません。どうしたのかと思っていると、突然彼は私の方を見て、両耳に人差し指を入れるジェスチャーを見せてきました。

 耳を塞げ.........という事でしょうか?なんなのか分からずに、彼の指示に従い、私は自身の耳を前に折り畳み、両手で覆いました。

 その姿を確認した彼は、大きく息を吸い込み始めます.........もしかして.........

 

 

桜木「ダァァァァァァァァァァッッッ!!!!!」

 

 

マック「〜〜〜!!!?????」

 

 

 やはり、予想していた通り彼は自分の携帯に向けて大きな声を出しました。耳を塞いでいても、ビリビリと身体が痺れるほどの大声です。

 そのまま余韻を見せず通話を切り、不機嫌そうにこちらに戻ってきました。

 

 

桜木「ごめん、驚かせた?」

 

 

マック「それはもう.........一体誰から.........?」

 

 

桜木「知らない」

 

 

マック「えぇ!!?知らない人にあんな事をしたんですの!!?」

 

 

 そう言うと、彼はバツが悪そうに頭を掻きました。言っていいのかどうなのかという様子で悩んでおりましたが、やがて彼はその口を開きました。

 

 

桜木「最近、イタズラ電話が来るんだよ。どっから俺の番号漏れたのか分かんないけど.........」

 

 

マック「それって.........」

 

 

桜木「大丈夫大丈夫!!マックイーンはそんな事心配しないでさ!!次のジャパンカップに集中してくれ。もう時間無いだろ?」

 

 

 そう言って、彼は次のトレーニングメニューを伝えようと私の側まで来ました。ジャパンカップまでの日数欄に、今後のトレーニング予定を詰め込んだ紙を、私に見せてくださいます。

 .........けれど、そんな紙なんかより私は、彼の表情に注目してしまいました。よく見れば、その目の下はうっすらと隈が出ています。それだけで、彼が最近眠れていない事が分かってしまいます。

 

 

マック(.........私のせいです)

 

 

 きっと、あの記事のせいです。トレーナーさんが去り際にあんな事を言ったせいで、記事は酷い事を書かれておりました.........

 私を守る為.........私に心配をかけさせない為.........そう、全部.........私のせいで.........!!!

 

 

マック(ごめんなさい.........!!)

 

 

 彼の言葉すら、まるで環境音の様に耳から入って抜けていく。口からこの言葉が出てきてしまえば、きっと楽になる。

 けれど.........これ以上、彼に心配を掛けさせたくない。彼の期待を、裏切りたく無い。

 胸を締め付ける様な痛みを抱きながら、私は今度こそ、完璧な勝利を遂げてみせると、『一人』誓いました.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジャパンカップ当日。

 

 

 空模様は生憎の曇りではあるが、幸い、雨は降ってはいなかった。

 この日、マックイーンは嬉しくも一番人気で出走している。皆、前回の事を気にせず応援してくれているのだと分かり、少しほっとしていた。

 

 

 そう。俺はこのレース。『勝てると勝手に思っていた』............

 

 

桜木「っ.........」

 

 

沖野「おいおい.........!!伸びが苦しいんじゃないか.........!!?」

 

 

 最終コーナーを回った直線。マックイーンは調子が悪いのか、いつものスタミナを活かした走りが出来ていない。

 どうしてだ.........!!どうしてなんだマックイーン.........!!!

 

 

テイオー「あっ.........」

 

 

スズカ「.........抜かされちゃった」

 

 

 先頭から離され、二番目で走っていたマックイーン。一人、二人と抜かされて行き、ゴール直前ではもう四番目になっていた。

 分からない。なんで負けたんだ。何が行けなかったんだ。何が余計だったんだ。そんな迷いが頭の中でグチャグチャに掻き回されて、何も分からなくなってくる。

 それを見つけるのが.........俺の役目なのに.........!!!

 

 

「一番人気メジロマックイーン、四着に破れましたーっ!」

 

 

桜木「っ、マック......イーン.........」

 

 

 その実況の言葉を聞いて、俺はハッとして頭を上げた。見ていなかった。彼女のレースを.........自分の事ばかり考えて、一体俺は何をしているんだ.........

 .........切り替えよう。切り替えなくちゃ、俺は大人で、彼女のトレーナーなんだ。

 そう、悔しさや不甲斐なさで満たされた心を見て見ぬふりをした俺は、彼女の姿を目で追った。

 その姿は言葉に表せられない、何とも言えない表情をしたマックイーンが、順位を表す掲示板をじっと眺めていた.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「.........」

 

 

 思い空気を背負っている様な感覚に陥る控え室。それを感じているのは、私だけかも知れません。

 勝負服から制服に着替えた後、チームの皆さんが入ってきてくださいましたが、今の今まで、私は何も話せないでいます。

 .........謝らなくては。期待を無駄にした事を、皆さんの応援を、無下にしてしまった事を.........

 

 

マック「皆さん、申し訳ありません。不甲斐ない結果となってしまって.........」

 

 

タキオン「謝る必要は無いよ。マックイーンくん」

 

 

ライス「うん!ジャパンカップって、世界から色んな人が来るレースなんだよね!マックイーンさんカッコよかったよ?」

 

 

 そう言って下さるタキオンさんやライスさん。それに同意するように、ここにいる方々が首を縦に振ってくださいます。

 本当に優しい方々です。そんな人達の期待に応えられない自分が.........本当に情けない.........!!

 

 

ゴルシ「そんな過ぎたことよりよ!レースも終わったしなんか食いに行こうぜ!おっちゃんの奢りでよー!!」

 

 

桜木「えっ、あ、ああ!!何でもいいぞ!!パフェだろうとパンケーキだろうとドンと来いっ!!」

 

 

 元気に答えるトレーナーさんですが、その表情からはやはり、残念という感情が伝わってきます。彼もやはり、私の勝利を待っていたに違いありません。

 そんな、人の期待に応えられもしない自分が、人に甘えられるわけがありません。答えはとっくのとうに決まっております。

 

 

マック「私は.........その、遠慮しておきますわ」

 

 

全員「.........え?」

 

 

マック「『有馬記念』だって控えておりますし、走ったばかりでお腹も減っていませんから」

 

 

 皆さんに言葉を掛けているうちに、その目が徐々に悲しみを帯びてきます。そんな顔にさせたかった訳では無いのです。

 早く.........早くここから立ち去りたい。そんな事が頭に浮かび上がると同時に、どうしようもない嘘が口からついて出てきてしまいます。

 

 

マック「あっ、私、おばあ様に電話をしないと、お先に失礼しますわね.........」

 

 

 溢れ出しそうな何かを抑え込みながら、私は皆さんの顔を見渡します。本来であるならば、笑顔で溢れていたはずの空間。それが悲しみに包まれているのは、私が勝てなかったから。

 そう、思うと、抑えていた感情が徐々に隙間から漏れ出してきてしまいます。早く、ここから出なくちゃ.........

 

 

マック「皆さん、本当に.........本当に申し訳ありませんでした.........っ」

 

 

桜木「っ、マックイーンっ」

 

 

 

 

 

 ―――彼女は頭を下げた後、そのまま流れるように控え室を出て行った。彼女が走った後には涙だけが残され、光に当てられてキラキラと光っていた。

 

 

桜木「.........」

 

 

ゴルシ「.........おっちゃん演技下手すぎ」

 

 

桜木「.........うるへぇ」

 

 

 そんな事言われなくても分かってる。そうでなければ、こんな皆の見ている前でマックイーンに対して手を伸ばす様な恥ずかしい姿は晒していない。

 どうしても、彼女の前では取り繕えない自分が居る。それが何故かは分からないが、少なくとも、彼女に対して嘘など付けないのは確かだ。

 そんな中でも、今彼女を追いかけるべきなのか、それとも時間を置いてあげるべきなのか、判断がつかない。こんなの、 指導者失格だ.........

 

 

タキオン「大体君は腐っても元役者だろう。彼女を元気付けるくらいしてみたらどうなんだ!!」

 

 

桜木「っ、それが出来るんだったら最初から!!!」

 

 

 やっている。そう言おうとした瞬間、控え室のドアがコンコンと叩かれる音が聞こえてきた。

 一体誰だろう?今は取り込み中である上、今回の主役のマックイーンが居ない。その場で帰ってもらった方が良いだろう。

 そう追い返す類の声をかける前に、その扉は、特徴的な声の挨拶と共に開かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔するで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「た、タマの姉御.........!!?」

 

 

タマ「.........なんや、この辛気臭い雰囲気.........邪魔するなら帰ってくらい言ったらどうなんや?!!」

 

 

 意外な人物だ。みんなは突然のタマモクロスの登場に呆気に取られながらも、徐々にその眼差しを憧れや好意的なものへと変えて行った。

 

 

ウララ「タマちゃんだー!!」

 

 

ブルボン「タマモクロスさんも、マックイーンさんの応援に?」

 

 

タマ「そうや?ウチの応援、みんな来てくれたやろ?そのお返しにと思うて来たんやけど.........」

 

 

 キョロキョロと辺りを見回すタマモクロス。どうやら廊下でマックイーンと会っていないらしい。入れ違いになったというのが事実だろう。

 

 

桜木「ちょっと、な.........」

 

 

タマ「.........どうやら、この辛気臭い雰囲気と関係あるみたいやな。話してみ?」

 

 

 皆の顔が、タマモクロスと会えた事の嬉しさから、先程のマックイーンとのやり取りをした時のような、何とも言えない悲しい表情になる。

 こんな時ですら、俺は話していいものかと思っていると、沖野さんから肘で押される。お前が話せと言うように、俺に促してくる。

 .........情けない。こんな事すら他人に委ねてしまう自分が、本当に情けない。そう思いつつも、マックイーンの為にと.........本当はこの状況を何とかしたい自分のエゴだと自覚しながら、俺は全てを.........目の前のタマモクロスに話した。

 天皇賞・春から、今日までにかけて狂い始めた、俺と彼女の歯車の事を.........

 

 

タマ「.........分かるで、おっちゃんの気持ちも、マックちゃんの気持ちも」

 

 

 腕を組み、目を閉じながら話を聞いてくれていたタマは、そのまま俺の話を聞き終えてから口を開いた。

 話してどうにかなる問題では無いと思った。けれど俺は、その言葉を聞いて、解決の糸口を見つけられると感じた。

 どうにか、彼女がレースだけに集中出来るようになる糸口を.........

 

 

タマ「多分やけど、皆の期待に応えた過ぎるんや。マックちゃん、頑張り屋やからな」

 

 

テイオー「皆の.........期待に.........?」

 

 

タマ「.........そや。ウチにもそんな時期があった。おっちゃんは良く知っとると思うけどな」

 

 

 そう言って、タマはその視線だけを俺に移してくる。俺はそれに応えるように、タマと初めて出会い、そして話した事を思い出す。

 

 

タマ「トレセン学園に入ったからには、結果出さなアカン。けどウチは最初、ホンマ勝てんかったんや」

 

 

タマ「周りはそんなウチに期待し続ける。ウチは期待に応えられない.........発散出来へん期待が、ウチの中で積もって行ったんや」

 

 

タマ「皆口には出さへん。けど目が言うんや。お前に期待しとるで.........ってな」

 

 

 懐かしそうにそう話し始めるタマモクロスの目は、少し悲しげだった。きっと今でも、その期待と戦い続けてるのかもしれない。

 発散出来ない期待は、その人の中に消化される事無く、積もり積もって行く.........それが心の中で足の踏み場も無いほどの障害物になり得るのかもしれない.........

 

 

 俺はバカだ。次なんてどこにも存在しないのに、その次を彼女に求め続けた大バカ者だ。悔やんでも悔やみきれるものでは無いし、俺はきっと、これからも同じ事をしてしまうだろう.........

 何故かは分からない。けれど、どうしても[期待]してしまう。彼女の次を、彼女の勝利を、彼女の走りを、必ず[期待]してしまう。

 

 

ダスカ「あの.........タマモクロスさんはどうやってそれを乗り越えたんですか.........?」

 

 

タマ「そやなぁ.........『なんも知らへん素人の一般人が言った言葉』が、ウチを救ってくれたんや」

 

 

タマ「『言葉にしない期待』なんかより、『信じてくれる言葉』の方が.........頑張り屋さんには丁度ええねん」

 

 

 恥ずかしそうに頬を掻きながら、目の前のタマは笑う。それでも心なしか、彼女はどこか嬉しそうであった。

 どう乗り越えたのか、どう、そのどうしようもない期待に打ち勝てたのか、俺は知りたい。そう思って俺は.........

 

 

桜木「頼む.........」

 

 

全員「え.........!!?」

 

 

桜木「それがなんだったのか.........教えてくれないか.........!!!」

 

 

 俺は、彼女に向かって、地面に頭を着けた。もう、周りの事など気にしては居られなかった。

 .........空気が変わった。けれど、それは俺が変えたものでは無い。この空気の流れは、明らかにタマモクロスから出ている。そう思える程に、先程まで温かさも感じた彼女の雰囲気が、一気に冷めた。

 

 

タマ「.........別に、教えてやってもええで?」

 

 

桜木「っ!ほんと「ただし」―――?」

 

 

 俺は、その言葉に、藁にもすがる思いで頭を上げた。けれど、そこにいる俺より小さい.........いや、ここにいる中で誰よりも小さい彼女の表情は、酷く冷たい物だった。

 そして、その言葉は.........俺を酷く、躊躇させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トレーナー辞めてもらうで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「え.........」

 

 

タマ「トレーナーとウマ娘は『一心同体』みたいなもんや。そんな他人から貰った言葉で関係治っても、どうせ同じ事繰り返すやろ」

 

 

タマ「マックちゃんのとこにも行かせへん。ウチからそれ聞いたらそれ胸にしまって、トレセン学園も辞めてもらうし、二度とトレーナー.........いや、ウマ娘と関わらんといてや」

 

 

 空気が冷たい。肺に入ってきた空気が内側から身体を凍りつかせる様に、俺の身体は小刻みに震えを見せる。

 怖い、けれど、それを知らない事には、だが、それを知ったら俺はもう.........

 

 

ブルボン「タマモクロスさん!それは.........」

 

 

沖野「ブルボン.........」

 

 

 抗議を入れようとしたミホノブルボンの前を塞ぐように、沖野さんはその手を横に広げた。その目は、俺の答えをじっと待っている目だった。

 

 

桜木「......俺には、分からない.........!!」

 

 

桜木「あの子がどうして欲しいのかもっ!!どうしたら心配かけさせ無いのかもっ!!俺にはっっ!!!何もっっっ!!!!!」

 

 

タマ「.........」

 

 

 誰も、何も言ってはくれない。誰も、正解を教えてはくれない。俺の悲痛な叫びも次第に空っぽになって行き、空間は静寂になって行った。

 だが.........次第に空気は、温かさを取り戻して行った。気が付くとタマモクロスは、その表情を冷たさを感じる物から、温かさを感じる微笑みに変えていた。

 

 

タマ「.........それでええ」

 

 

桜木「.........?」

 

 

タマ「おっちゃんとマックちゃんの事なんて、アンタら以外誰も分からへん。正解はこれから、おっちゃんとマックちゃんで探すんや」

 

 

 そう言いながら、タマは俺の両肩を包むように掴み、無理やり俺をその場に立たせた。土下座をした際に着いたズボンの汚れを文句を言いながら払うとタマは今日一番の笑顔でこう言った。

 

 

タマ「じゃ!!そういう訳やからさっさとマックちゃん探しに行きいや♪!!」

 

 

桜木「へ.........?」

 

 

タマ「ボサっとせんでッッ!!!駆け足ッッ!!!」バシィンッ!

 

 

桜木「は、はいィッッッ!!!!!」

 

 

 思いっ切り背中を引っぱたかれた俺は、訳も分からず走り出した。まだ答えは見つかっても居ない。なのに.........もう動きだしたら、それすらどうでも良くなっていた。

 控え室に残る皆の顔を一瞬だけ見ると、全員鳩が豆鉄砲くらったような顔をしていた.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タマ「.........はァ〜......ホンマ世話が焼けるトレーナーやで、おっちゃんは.........」

 

 

 これでようやっと腰を落ち着かせられるわ。ウチは近くにあった椅子を持ってきて、その場にドカッと座り込んだ。

 けどなんや静かやなぁ思うてると、ウオッカが口を開いたんや。

 

 

ウオッカ「お、オレ達も追った方が.........」

 

 

タマ「かまへんかまへん。むしろ邪魔や」

 

 

スズカ「じ、邪魔って.........」

 

 

 ちょっち言い方キツイかも知らんけど、ホンマの事や。ここで下手に人増やしても逆効果。こういう時は一体一の方が、お互い集中出来てええ。

 ゴールドシップもなんやソワソワしてるけど、心配ないと思うで。おっちゃんやる時はやる男や。ウチはそれを知っとる。

 

 

タキオン「それにしても.........気になるねぇ」

 

 

タマ「だァかァらァ!!大丈夫言うてるやろぉ!!!」

 

 

デジ「しゅ、しゅごい!!タマモクロスさんの声が直接.........あぁ〜ビリビリしゅりゅ〜♡」

 

 

 なんや気持ち悪い声を出したデジタルが壁にもたれかかってもうた。心なしか色も無くなった気ぃする。まぁ誰も心配しとらんし平気やろ。知らんけど。

 そんな中でも、タキオンの方は同じアグネスやのにホンマしつっこいわ〜.........あんな声出してもそのねちっこい目でウチの事をようみとくる。おっちゃん気になっとる言うてたけどホンマはウチを気にしとるんちゃうんか?なぁ〜んて.........

 

 

タマ(.........いや、割とあるで)

 

 

タキオン「タマモクロスくんがさっき言っていた『信じてくれる言葉』!!俄然気になるねぇ!!!」

 

 

タマ(やっぱし!!!)

 

 

 アカン、さっきまで辛気臭い.........なんならミカンにカビ生えるレベルの空気やったのに、今はアサガオ咲いてまうくらい空気が澄み渡り始めおった。

 口々にみんな「確かに〜」とか、「聞きたい〜」とか、そんなおもろい話でもないで!!?

 

 

沖野「俺も気になるな」

 

 

タマ「アンタもかいっ!!?」ビシィ!

 

 

 .........まぁ、チームトレーナーであるおっちゃんを追い出してもうたんや。コイツらのご機嫌取りはウチがやるしか無い。

 ウチはおっちゃんとマックちゃんの仲直りを願いつつ、前にマックちゃんに話したおっちゃんとの出会いを、レース場の係員が叱りに来るまで延々と話してやったわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「はぁ......!はぁ......!」

 

 

 あれから、走り続けていました。ずっと、ずっと、ゴールの場所すら分からず、脇目も振らずにただただ走っていました。

 レースと違い、スパートを掛けずに走り続け、目的地も定めず、ただ走る。この胸にある何かが無くなるまでは、止まれませんでした。

 

 

マック(......けれど.........!!)

 

 

 その何かは無くなることはありません。代わりに、走り続ける事で彼ら彼女らに対する申し訳なさや、自分の弱さに対する不甲斐なさが絶え間なく自分の心の中で発掘されていきます。こんなことをしていても何も意味は無い、そう思っても、この足は.........止まってくれそうにはありません。

 

 

マック「はぁ......!はぁ......!」

 

 

 レースの疲れすらも忘れ、目から零れ落ちる雫すら気にせず、私は走らされていました。もう.........!!自分では.........!!『私一人』ではどうすることも出来ないんです.........!!!

 その時ふと、入った道の光景にある日の思い出が重なります。そこで私はようやく、足を止めました。

 

 

マック「はぁ......ここは.........?」

 

 

 ここは.........そう、彼と歩いた道。彼と二人きりで、並んだ道。美味しい物や、知らない人に絡まれた思い出よりも先に、隣を歩く彼の横顔が浮かび上がりました。

 

 

マック(.........思い出に浸るのも、悪くありませんわね)

 

 

 彼との事を思い出している内は、申し訳なさや不甲斐なさは一切、その顔を出す事はありませんでした。

 この道を歩けば.........彼との思い出を辿っているうちは、この苦しみから解放される.........そう思った私は、夏祭りの会場であったこの誰も居ない道のりを一人、歩きました.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「はぁ......!はぁ.......!クソっ、どこまで行ったんだ.........!!?」

 

 

 脇目も振らずただ走った。人である俺が、走り去る彼女に追いつける訳も無いのに、それでも止まることも、歩くことも出来なくて、俺はただただ、ひたすらに走り続けた。

 何が悪かったのか、どうすれば良かったのかまだ分からない。けれど、それでも彼女に会わなければ行けない。間違いを見つけるのはそこから.........

 

 

「だから!ここはこうだって!」

 

 

「もう!さっきからそうやってるじゃない!」

 

 

桜木「はぁ......?なんだ.........?」

 

 

 帳も降り始める時間帯。この時間に一体どうしたのだろう?そう思っていると、がむしゃらに走っていた時には入ってこなかった景色がようやく、頭に情報として入ってくる。

 間違いない。この声は公園からする。しかもここ.........俺が休みの日に利用する公園だ。

 そう思った俺は、マックイーンに申し訳ないと思いながらも、その男女の喧嘩を止める為に公園を目指して走った。

 

 

「っ、何回言えば.........あれ?」

 

 

「あ!桜木さんだ!アドバイス貰いに行こ?!」

 

 

桜木「はぁ......お前ら.........」

 

 

 公園の塀から上半身だけ出ている俺を見つけて、その若い二人は俺に駆けてくる。近くの学校で演劇をしている子達だ。俺もたまに、演技指導している。

 

 

「桜木さん!聞いてください!俺達全国大会に行けるんですよ?!」

 

 

桜木「あ、ああ.........知ってるよ。地区大会見れなかったけど、他の子が教えてくれたから.........」

 

 

「私達、どうしても全国で金賞取りたいんです!アドバイスくれませんか?!コイツマジで伝えるの下手くそなんですよ!!」

 

 

 そう言う二人はキラキラとした眼差しで俺を見てくる。正直付き合いたいのも山々だが、俺には時間が無い。今回は止めておこう.........

 なんて、思っている内に二人は俺の意見すら聞かず、目の前で演技を始めだした。

 

 

「行かないで......!」

 

 

「.........俺だって行きたくないよ。けど.........これが来たらさ、俺達。行かないと.........」

 

 

 後ろから抱きつく少女。その子に顔を見せず、悲しそうな抑揚でそう言い放つ少年。時代背景は戦争時代だろうか?白紙の紙をチラリと見せる様にすると、少女は後ろに、ワザとバランスを崩しながら後ずさった。

 

 

「酷いよ......!貴方はいつもそうやって私から離れてく!せっかくまた会えたのに......!どうして.........!!」

 

 

「.........心配してくれて、ありがとう」

 

 

桜木(.........?)

 

 

 はにかむ様な微笑みで少年は言った。少女はその顔を見て、わぁっと泣き崩れる。演技としては、この上ないほど素晴らしいものだった。

 だけど.........その、少年が放った言葉が何故か引っかかる。心の中で、罪悪感と共に疑問が浮かぶ。

 そんな俺の事なんて知らない二人は、演技を続けた。

 

 

「待ってる......から.........!!」

 

 

「うん」

 

 

「信じてる......から.........!!」

 

 

「俺も......お前を信じてる。俺も、お前を心配するから」

 

 

桜木(.........そうか)

 

 

 二人は面と向かって抱き合った後、しばらくの間お互いを感じる様に強く抱き締めていた。少年はしばらくしてピクっと身体が反応する。恐らく、何かの音響がここで入るのだろう。

 

 

「俺、行くよ」

 

 

「.........うん」

 

 

 少年は、ぎこちなさそうに少女に敬礼をする。三秒ほどその姿を見せた後、少年は振り返らずに少女の反対方向へと歩いて行った。

 少女は、名残惜しそうに手を伸ばすが、伸ばしきりはしなかった。その伸ばそうとした手を片方の手で包み込んで、胸の位置まで持ってくる。

 

 

「.........どうでした!!?」

 

 

「今の最っ高!!舞台で出来たら絶対金賞取れるよ!!」

 

 

桜木「.........うん。何も言うことは無いかな」

 

 

 そう言うと二人は年相応に嬉しそうな顔を見せてくれる。そんな姿が.........彼女を思い出させる。

 思っていたより俺は頑固だったのかもしれない。一つの正解を追い求めて、他のやり方を見落としていた。『一心同体』にも、他の形があるはずだ。

 

 

「.........あ、そう言えば言った方がいいのかな?」

 

 

桜木「え?」

 

 

「さっきね!マックイーンさんみたいな子が走ってったよ!あっちの.........神社の方!」

 

 

 そう言う少女の指さす方向は、夏祭りで花火を見た神社の方角であった。

 俺は二人に礼を言ってマックイーンを追いかける.........事はせず、公園の水場で、頭を冷やす為に冷水を被った。

 

 

「うわ、冷たそう.........」

 

 

桜木「助かったよ。演技も良かった。大会、頑張れよ。今のが出来れば、必ずいい結果になる」

 

 

「「っ、はい!!」」

 

 

 タマモクロスの言葉を意識し、二人を信じているという言葉を送る。この年でお互いぶつかりあえる程真剣にやっている頑張り屋さんだ。返事をしたその顔は、やはり、嬉しそうだった。

 

 

 俺は、また走り出す。今度はゴールに向けて、居なければ電話をしてでも呼び出してみせる。そんな勢いのまま、俺は神社を目指して行った.........

 

 

桜木(待っててくれよ、マックイーン.........!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「変わりませんわね.........ここは」

 

 

 記憶よりも冷たい風が頬を撫で、木々をザワザワと揺らします。金木犀の赤や黄色で敷き詰められた地面に、秋の季節を感じます。

 神社の近くにあるベンチの上に積もった葉っぱを払い、そこに座ります。階段を登りきった鳥居を見ていると、あの日の私達の後ろ姿が浮かび上がるように思い出されます。

 

 

『綺麗だな』

 

 

マック「っ、違う.........!」

 

 

 まるで、今呟いたかのように鮮明に聞こえてくる彼の声と、後ろ姿。それを見てようやく、気付きました。

 ここが変わっていないのではありません。私が.........変わってしまったのです。あの時より、臆病に、奥手に、卑屈になってしまった.........

 そう思ったらもう.........あの頃のようには戻れないと思ってしまった。あの頃のように、あの人の隣を歩く事は出来ないと.........当然です。私のせいで、彼は明らかに、誰かしらに嫌がらせされているのです.........

 もう、終わりにしなければ行けないのかも知れません。私にはもう、彼の隣で歩く事は許されないのかもしれません。彼を悲しませる私を、私は決して、許しはしないでしょう.........

 

 

マック(ごめん......なさい.........!!!)

 

 

 膝の上で握った両手に雫が跳ね、小さい水たまりが出来上がります。今まで顔を見せてきた悔しさや、申し訳なさや、不甲斐なさではありません。明確な悲しみが、突然込み上げてきました。

 けれど、私はもう自分で決めてしまった。心の中でそれが一番良いと思ってしまった.........ならば、大切な人の為にそうするしかありません。

 .........綺麗な思い出だけ。もう少し、その記憶に慰めて貰おうと涙を拭うと、今まで聞こえてこなかった小さな音が聞こえてきました。

 

 

マック(ち、近付いてきますわ.........!?)

 

 

 階段を上る音。そして徐々に近付いてくるその小さな音はやがて、荒々しい呼吸音だという事が分かりました。音の間隔からして、相当早く登って来ております。

 ま、まずいですわ.........きっとランニングをしている男性です。こんな所を見られたらきっと、心配をかけてしまいます.........!

 そう思いながら私は、慌ててベンチから立ち上がり、木々を観察していると装えるよう階段から神社にかけての道に背を向けました。

 

 

「はぁ......!はぁ......!」

 

 

マック(早く......!早くどこかへ.........!!)

 

 

 ここじゃない場所に行って欲しい。そんな事を思いながら、私はひたすらに目を閉じて居ました。

 それでも、その男の人は全速力で走ってきたのか、いつまで経っても呼吸が整う事はなく、吐く息に混じった糸のように細く高い音も聞こえてきます。

 

 

 一分ほど、経ったでしょうか。呼吸を落ち着かせたその姿も分からない男性は、ゆっくりと歩きだします。最初は神社の方へ向かわれるのかと思いましたが、違いました。

 道から外れ、多くの落ち葉が落ちているこちら側に歩いてくるのが分かります。この時間に一人、女の子が居たから心配してくださったのかも知れません。

 声をかけられたら、笑って大丈夫ですと言いましょう.........それくらいの余裕は、作れましたから.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.........よう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「っ!!?トレーナー.........さん」

 

 

 振り返った目の前には、何故か雨に打たれた様に頭を濡らしたトレーナーさんが居ました。いつものつんつんとした髪型ではなく、前髪が下りきっています。

 それでも私は、振り返らずとも彼であると分かりました。優しい声で.........それだけで彼だと.........

 

 

マック「どうして.........?」

 

 

桜木「何となく.........って、カッコつけたいところだけど、走っていく君を見たって聞いたんだ。情けないよな」

 

 

 私の疑問に対して、彼はそうどこか悲しそうな笑みで答えました。最近はもう、そんな顔しか見ていないような気がしてしまいます。

 

 

マック「.........けれど、貴方はこうして来てくれました.........来て欲しい時に必ず来てくれる。貴方はいつもそうです」

 

 

桜木「.........」

 

 

マック「でも、もうおしまいにしましょう?こんな勝てなくなった私など抱えていても、迷惑しか掛けられませんわ」

 

 

 ああ、自分で言っている内に、身体がどんどん冷え込んで行きます。まだ冬にもなって居ないのに.........まるで、氷の中に居るような、そんな気持ちになってしまいます。

 .........これでいいんです。これが最善なんです。この人に迷惑をかけるくらいならいっその事.........!!

 そう思いながら、私は彼の側を横切ろうとしました。これでもう.........綺麗な思い出ともさよならしてしまうと思うと、またあの悲しみが胸に込み上げてきます。

 

 

桜木「.........待ってくれ」

 

 

マック「っ.........離して、ください.........!」

 

 

 私の左手首を右手で包み込むように、彼は掴みました。振り払おうと思えば、振り払える筈なのに.........それを無意識に拒んでしまいます。

 だから、彼の方から離して欲しかった.........!!彼の方から諦めて欲しかった.........!!なのに、彼は何も言わず、私の目をじっと見つめるだけ.........

 

 

桜木「.........」

 

 

マック「離して!!!」

 

 

桜木「嫌だッッッ!!!!!」

 

 

マック「っ.........!!!」

 

 

 私の声よりも数倍大きい声で、まるで発言を掻き消すかの様に彼は重ねてきました。その目や表情は、私に今まで向けた事の無い、初めての物でした。

 

 

桜木「勝てなくなったから、俺が期待しなくなるとでも思ったのか?」

 

 

マック「.........」

 

 

桜木「レースであっちゃいけない事したから、皆期待しなくなるとでも思ったのか?」

 

 

マック「.........っ」

 

 

 真っ直ぐ、その目は私の心を見透かす様に、私の目を見つめてきます。真剣な表情から一切、彼の顔は変わることはありません。

 そんな表情で、そんな事を言われてしまえば.........まるで、私が全部間違っているみたいではありませんか.........!!

 彼の優しさが、そんな私をダメにしてしまう様な優しが.........!!私は嫌いなんです.........!!!

 

 

マック「だって.........!!そうではありませんか.........!!?」

 

 

マック「私は斜行という一歩間違えてしまえば大惨事になっていたかもしれない行為をしました!!!」

 

 

マック「そのせいで貴方やチームの皆さんに多大な迷惑を掛けたのも事実です!!!」

 

 

マック「それなのに.........!!どうして.........!!!」

 

 

 せっかく我慢していた悲しみが、また溢れ出して来ます。今度は手の甲という受け皿のない涙は、地面へとただただ流れるままに落ちていきます。

 それなのに.........!!目の前のこの人は表情一つ変えず.........!!私の事をその目で真っ直ぐ見つめてきます.........!!こんな私を.........!!

 しばらく、木々の揺れる音も、風が吹く音もありませんでした。あったのは、私の嗚咽だけ。けれど、それも落ち着いた頃にようやく、彼はその口を開きました。

 

 

桜木「変なこと言うかもしれないけど.........マックイーンはさ、ユタカなんだよ」

 

 

マック「え.........?」

 

 

 急に、ユタカの名前を出されて全てが真っ白になります。そして、その言葉の意味もよく分かりません。そんな事が顔に出ていたのか、トレーナーさんは困った様に笑いました。

 

 

桜木「例えばさ、ユタカが全打席奪三振取られたとするだろう?」

 

 

桜木「マックイーンはもうユタカの応援はしない?」

 

 

マック「!!そんな事!!.........あっ」

 

 

 有り得ません。そう、頭ではなく、つい反射で答えそうになってしまいました。そして、それと同時に気付いたのです。

 きっと、彼にとっては私が、そういう存在なのです。何があっても、次に期待してしまう.........私にとっての、ユタカと同じ存在。

 そんな私の様子を見て、分かったのでしょう。彼は掴んで居た手首を、ゆっくりと離して下さいました。

 

 

桜木「.........それと、もう一つだけ」

 

 

マック「なんですか.........?」

 

 

 そう言って、彼は一歩、私に歩みを進めてきました。以前ならばよく見ていた彼の姿.........そういえば、こんなに近くに感じるのも、久しぶりの気がします。

 おもむろに伸ばされた手に、私は頭を撫でられると思いました。またいつものように、優しい手つきで心地よくなってしまう.........そう、勝手に.........

 

 

マック「え...あ......?」

 

 

 冷え込んでいた身体が、急に暖かさを感じ始めました。それだけではありません。等間隔に脈打つ音が、私の耳に強く響いて聞こえてきます。

 抱きしめ.........られている......。それに気付くのに、時間はそう掛かりませんでした。

 

 

桜木「.........なぁマックイーン。俺達今まで二人とも、『一心同体』だと思って頑張ってきたよな」

 

 

マック「.........はい」

 

 

 彼の言葉と共に、彼と共に歩んできた道のりを思い返します。その道のりは、先程まで私を慰めていた記憶とは違って、血が通っている様な暖かさを感じられました。

 

 

桜木「.........お互い、無駄な心配かけないように、無理して取り繕って、実際無理して.........」

 

 

桜木「今日、タマが来てたんだけどさ、アイツに言われて気付いたよ.........それは間違ってるって」

 

 

 彼は優しい声で、私に静かに語りかけてきました。そしてそれは、私にとっても、決して無関係な事ではありませんでした。

 無駄な心配を掛けたくない。彼にはトレーナーとしての仕事だけ集中して欲しい.........それが、一番幸せだと思っていたから。

 今、それを否定されてしまった私は、酷く動揺してしまいました。

 

 

桜木「それからずーっと考えてた『一心同体』って、なんだろうって.........」

 

 

マック「.........」

 

 

 少し、抱きしめている彼の腕が強ばる感触を感じとりました。彼もまた、苦しんでいたのだと思うと、それに気付けなかった自分が情けなく思ってしまいます。

 

 

桜木「俺はずっと、心配事や考え事を減らして行く為のものだと思ってた.........けどそれじゃ、成長しない。成長できない」

 

 

桜木「それは、相手を束縛して、把握するだけなんだ。相手の考えを狭めて、心配事を一蹴して、その場で留まらせる」

 

 

桜木「.........やめよう。こんなこと」

 

 

 しばらくの沈黙の後、彼はそう言いました。その言葉は.........私との関係を終わらせるのと同じ意味を持っていました.........

 離れて行ってしまう。この温もりが、優しさが、無邪気さが、そして.........隙間から溢れるような、未だ名前を付けていない感情が全て.........私の傍から消えてしまう.........そう思うと、怖くて怖くて、仕方ありませんでした.........

 声をあげて泣き出してしまいたい衝動を抑えながら、私は.........恐れつつも、大粒の涙を地面に落としつつも、彼の意志を聞きました.........

 

 

マック「っ.........では、もう.........『一心同体』は、おしまいですのね.........!!」

 

 

桜木「ああ.........独りよがりの『一心同体』はもう。やめにしよう.........」

 

 

マック「っ、ぅぁあ.........ああぁ.........!!」

 

 

 もう、抑えられない.........止める事はできない。押さえ込んでいた蓋はどうやら、どこかへ飛んで行ってしまったように、悲しみは今まで抑圧してきた分を勢いよく上へと押し上げてきます。

 彼との道は、これでおしまい.........そう思うと、私はもう.........自分で立つことすら叶いませんでした。

 .........けれどその分、立てない私を支えるように、彼は力強く、私を抱き締めました。

 

 

桜木「.........だから、今度は二人でちゃんと、『一心同体』になろう」

 

 

マック「え.........?」

 

 

桜木「心配事は共有して、考え事は一緒にしよう。相手と共有して、信頼する.........」

 

 

 彼が何を言っているのか、もう頭の中がぐちゃぐちゃで、何が何だか分からなくなっていました。そんな混乱の中でも、彼の腕が震える程力も入れていないのに、振動している事に気が付きました。

 そして.........時折、彼の身体が跳ねるような感触を感じ取りました。もしや、彼の身に何かあったのでしょうか.........?

 彼の身を案じ、安否を確認する為に顔を上げた瞬間。頬に暖かさを感じる何かが落ちてきました。そして、それがゆっくりと私の頬を通った後.........その後を追うように、私の目からもその線を沿う涙が溢れ出しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺達は.........!ひとりじゃないんだから.........!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼はそのまま、私を強く、強く抱き締めました。私も、彼の背中に手を回し、力強く抱き締めながら、ただひたすらに泣きました。

 彼の鼓動.........彼の温もり.........彼の優しさ.........その全てが、私を守るように包み込んでくれる。

 苦しい、切ない、離れて欲しい、もっと感じていたい、傍に居て欲しい、暖かい、心地良い.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ああ.........)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(やっぱり.........好きなんだ.........)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今、ようやく気付きました。

 

 

 気付いてしまいました。

 

 

 好き。

 

 

 好きなんです。

 

 

 どうしようもないくらい優しいこの人が。

 

 

 どうしようもないほど.........好きなんです

 

 

マック(好き.........!!)

 

 

マック(大好き.........!!)

 

 

 こんなに自分の為に泣いてくれる人の事を、好きにならない人は居ません。背中に回した手に自然と力が込められます。彼の衣服の匂いも、先程より身体に取り込もうとしているのか、強く感じてしまいます。

 名前の付いていない感情は、やはり[恋]でした。親愛や友愛ではなかったのです。テイオーやゴールドシップさんが言っていたように.........私は、この人の事が.........異性として、大好きなんです.........

 

 

 その日、会話はあれきりで、私達二人は抱き合いながら泣き続けました。流石に彼は恥ずかしくなってきたのか、最後には抱擁を解きましたが、正直名残惜しい気分でした。

 彼は私を抱きしめていた手で、私の流れる涙を拭いた後、ただ笑って、私の手を引っ張って行きました.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「ここは.........」

 

 

桜木「入ってくれ、皆待ってる」

 

 

 そう言って、トレーナーさんは扉の横の壁に背をもたれかけました。そこは、私達がよく知るチーム[スピカ:レグルス]のチームルームでした。

 中の明かりが、扉の窓から見えるに、この中でチームの皆さんが待っているのでしょう.........私は意を決して、その扉を開けました。

 

 

マック「あの......ただいま戻りましたわ.........」

 

 

ゴルシ「おっ!?帰ってきたか!!」

 

 

 一番最初に反応したのは、ゴールドシップさんでした。嬉しそうな顔をする前に一瞬だけ、寂しそうな顔をしていましたのに、私を見た途端に、そんな事無かったように振る舞います。

 

 

ウララ「マックイーンちゃん.........!!」

 

 

マック「う、ウララさん.........!!?」

 

 

 次に、ウララさんがこちらまで駆け足で近付き、抱きついて来ました。その目には、大粒の涙が溜まっており、私を心配してくれたのだと一目で分かりました。

 そんなウララさんを落ち着かせるように、泣かせてしまった事を償うように、私はその頭を優しく撫でました。

 

 

ライアン「おかえり、マックイーン!」

 

 

ドーベル「メジロ家のウマ娘が夜遊びだなんて、おばあ様が知ったら大変だよ?」

 

 

 いつも通りの元気さを見せてくれるライアンと、注意しつつも、嬉しそうにしてくれるドーベル。

 周りを見渡すと、皆さんの嬉しそうな顔が見えました。タキオンさんやライスさん、テイオーさんやスズカさんも、優しい表情で私を出迎えてくださいます。

 みんな.........期待してくれている。それは私の勝利ではなく、私を、一人のウマ娘として期待してくれている。そう思ったら、心の中にあった足の踏み場の無い空間も、綺麗な装飾の施された空間に様変わりしていくのが分かりました。

 

 

「なんや!全然心配なさそうやん!」

 

 

マック「タマモクロスさん.........!!?」

 

 

タマ「材料買ってきたで!!今日は粉もんパーティや!!」

 

 

 私が入ってきた入口から、タマモクロスさんがホットプレートとビニール袋を持ってきてやってきました。

 手際良く準備をしている傍ら、タキオンさんやスカーレットさんに、私が居なくなってからの事を聞きました。

 

 

マック「そんな事が.........」

 

 

ダスカ「本当ビックリしたわよ」

 

 

ウオッカ「急に土下座しだすんだもんなぁ」

 

 

スペ「けど、その分サブトレーナーさんの本気が伝わりました!」

 

 

 まさか、あの人がそんな事を.........そうさせてしまった事に申し訳ないと思うのと同じくらい、何故だか嬉しくなってしまいました。きっと、彼が好きなんだと自覚したせいでしょう.........

 覗き込んでくるテイオーとタキオンさんに悟られないために、頬の紅潮を抑えようとしていると、不意に視界が広がりを見せました。何かと思い下を見てみると、イタズラが成功したような笑顔のゴールドシップさんが、私を見上げています。

 

 

ゴルシ「ほら!!今日の主役だぞー!!」

 

 

マック「な、やめてください!!恥ずかしいですわ!!」

 

 

ライス「良かったぁ.........ライス、マックイーンさんが帰ってこなかったらって考えてたから.........」

 

 

 泣きそうになりながらそう言うライスさん。今度はウララさんが、彼女を慰める為に背中を撫でました。

 .........確かに、ここから居なくなろうとしました。ここに居るべきでは無いと.........一人で勝手に、そう結論付け、危うく皆さんと離れる所でした。

 けれど、それはもう絶対にしません。彼に会い、ここに立った事でようやく気付いたのです。ここが.........この場所こそが、私の『居たい場所』なのです。

 

 

マック「.........心配をかけさせてしまい、申し訳ありません」

 

 

マック「私はもう、逃げたりはしません。勝っても、負けても、チーム[スピカ:レグルス]のエースとして、走り続けてみせますわ!!」

 

 

デジ「ひょわぁ〜〜〜.........マックイーンさん美しカッコイイです〜.........♡」

 

 

テイオー「これならもう、心配要らないよね♪」

 

 

 そこまで言い切って見せると、ゴールドシップさんは満足したのか、私をその場におろし、わしゃわしゃと頭を撫でてきました。彼と違って乱暴ですが、不思議と嫌な気分ではありませんでした。

 

 

タキオン「.........それにしても、もう一人の主役はどこに行ったんだろうねぇ?」

 

 

マック「.........はっ!!私呼んできますわ!!」タッタッタッ!

 

 

 身体が軽い。それだけではありません。心も晴れやかで、空を飛んでしまいそうなほどに軽いのです。

 それも全て、彼のお陰です。こんな素敵な人達を集めてくださった、トレーナーさんのお陰なのです。ここに彼が居なければ、何も始まりません。

 そう思い、私は勢いよく扉を開け放ちました。

 

 

マック「トレーナーさん!!!.........?」

 

 

桜木「.........」

 

 

 先程まで彼の顔があった位置に視線を動かしても、そこにあったのは壁だけでした。しかし、彼の気配はしっかりとここにあります。

 そこからゆっくり視線を動かして行くと、壁にもたれかかったまま、座り込んでうずくまっている彼がそこにはいました。

 

 

マック「トレーナーさん.........?」

 

 

タマ「.........多分、疲れたんやな」

 

 

桜木「.........Zzz」

 

 

 タマモクロスさんの声に返事をするように、彼は寝息を立てました。その姿がなんだかおかしくて、愛おしくて.........私は思わず、笑ってしまいました。

 彼の寝ている姿に視線を合わせるようにかがみこんで、私は彼の下がった前髪を優しく、後ろに戻しました。

 

 

マック「.........ありがとうございます、トレーナーさん」

 

 

 本当は、ここで抱きしめてしまいたかったのですが、人目がありますので止めました。チクチクとした彼の髪質が手に攻撃をしてきますが、それも何だか、嬉しいです。

 そうしていると、廊下の方から何やら騒がしい音が聞こえてまいりました。彼から慌てて手を離し、振り向きました。

 

 

沖野「だから!!ここ学園だから!!酒は飲めねぇんだってェッッ!!!」

 

 

白銀「うるせェ!!俺は大株主だぞッッ!!!」

 

 

神威「水で良いだろ」

 

 

黒津木「ナメック星人乙」

 

 

東「今日はカレーの気分なんだが.........」

 

 

 そこにはいつもの皆さんと、沖野さんと東さんの姿がありました。しかも両手に、沢山の飲み物が入ったビニール袋を携えております。

 

 

マック「トレーナーさん」

 

 

桜木「んん.........」

 

 

マック「トレーナーさーん」

 

 

桜木「.........Zzz」

 

 

マック「もう......仕方の無い人.........」

 

 

 こんなに疲れるまで、走ってくださったのですか?こんな所で寝てしまうまで、私の事を探してくださったのですか?そう考えると、胸が少し、締め付けられます。

 ですが、それは今まで感じてきた痛みよりも、むしろ心地良さが感じられます。私は彼の頭をもう一度人撫でして、後は男性陣に彼の起床をお願いしました.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「あぁ〜.........寝不足」

 

 

桐生院「だ、大丈夫ですか?」

 

 

 既にしっぽの方まで出ていた欠伸を噛み殺しながら、俺は桐生院さんと廊下を歩いていた。朝礼が終わり、仕事をしようかと思っていた俺達は理事長室に来いと言われたのだ。

 

 

桜木「昨日は結構パーティしたからな.........帰った後アイツらと酒飲んだし.........」

 

 

桐生院「ふふ、本当に仲がよろしいんですね」

 

 

 どこかだ。昨日なんて後半悪口大会になったんだぞ。まぁ事の発端は俺が白銀の事をS〇X大魔神なんてあだ名つけたせいなんだけど。

 けどさぁ!流石に酷くない!!?なに芦毛ロリマニアって!!!俺もう絶句しちゃったよ!!!

 

 

桜木「アイツらとはもう縁を切った」

 

 

桐生院「えぇ.........」

 

 

テイオー「あれぇ?サブトレーナーじゃん!」

 

 

 廊下を通っていると、これから移動教室なのか、マックイーンとテイオーが二人で向こう側から歩いて来た。テイオーは俺に気付いて小走りでやってきたあと、マックイーンは慌てず、ゆっくりとこちらに歩いて来た。

 

 

マック「おはようございます、トレーナーさん」

 

 

桜木「お、おう.........おはよう」

 

 

マック「.........///」

 

 

桜木「.........///」

 

 

二人「.........?」

 

 

 彼女の顔を見ると、昨日の事が思い出されてしまう。つい勢い余って彼女の体を抱きしめてしまった。直前で見たあの演劇に影響を受けたのだろうが、それでもやりすぎだろう。

 女の子の身体をあんなふうに力強く抱き締めた事はなかったと思う。少なくとも、俺の記憶にはあんなに気持ちのいい感覚は存在して居ない。

 そして、目の前にいる彼女も俺と同じようにあの日の事を思い出しているのか、いつものクールな表情の上に、赤色が乗り始めていた。

 

 

マック「.........さ、行きますわよ、テイオー」

 

 

テイオー「うぇぇ!!?ち、ちょっとマックイーン!!何があったのさー!!」

 

 

 この空気に耐えきれなくなったのか、マックイーンはテイオーの手を引いてさっさと行ってしまった。彼女は振り返ってこちらを見ると、ニコリと微笑んでくる。本当にやめて欲しい。

 

 

桐生院「.........元気ですねー」

 

 

桜木「ああ、本当.........怪我が治ってよかったよ」

 

 

 きっと、桐生院さんはテイオーの怪我の事を言っているのだろう。そう思った俺は、彼女の後ろ姿を見えなくなるまで見送っていた。

 そして.........俺は、あの日の事を。黒津木達がパスワードを解析し、それを送ってきた日の事を思い出していた。

 

 

桜木『.........マジなんだな』

 

 

黒津木『ああ、大マジだ』

 

 

 病院の電話に掛かってきた奴からの電話。俺はその内容を聞いて、驚愕した。その名前は、聞いた事があるからだ。

 

 

桜木『パスワードは本当に!!![クレセントダイヤ]で間違いねェんだなッッ!!!』

 

 

ナリブ『っ!!?なんだと!!?』

 

 

黒津木『な、何そんなに怒ってんだよ.........入れりゃあ良いだろ?俺はもう仕事終わらせたんだから寝るぞ、おやすみ』

 

 

 アイツはそれきりで、電話を切ってきやがった。その名前はあの時、俺を助けてくれた恩人の一人である[クレセントパール]さんの、母親の名前だった。形見のアクセサリーを自慢げにしていたからよく覚えている。

 エディ・ファルーク.........これからまた、その名をどこかで聞く気がする。

 

 

桐生院「―――さん?桜木さん!」

 

 

桜木「え?」

 

 

桐生院「ボーっとしてどうしたんですか?」

 

 

 どうやら、結構長い時間物思いにふけっていたらしい。寝不足も相まって、もう誰もいない廊下をじーっと見つめていた。

 俺は桐生院さんに謝りながら、理事長室を目指した。その間、お互いの担当の事や、最近出かけた場所などを話し合った。なんだか最初の頃より、桐生院さんは遊び方を学んでいる気がする。

 そうこうしているうちに、目の前に大きな扉のある理事長室までたどり着く。俺は心を落ち着かせて、ノックを響かせた。

 

 

「了承ッ!!入ってきたまえ!!」

 

 

二人「失礼します」

 

 

 煌びやかな内装の理事長室。華やかさを感じると同時に、厳かな雰囲気も感じ取れる。

 その中でも、目の前の机と椅子は別格だ。座るべき者だけが座れるのだと、肌で感じとれる。

 そして、そこに彼女。トレセン学園理事長の秋川やよいは座っていた。

 

 

やよい「歓迎ッ!!よく来てくれたな!桐生院トレーナー!桜木トレーナー!」

 

 

桜木「あの、要件は.........?」

 

 

 そう伺うと、理事長は一瞬キョトンとした顔をした。一体どうしたのだろうと思い桐生院さんを見てみると、こっちは何故か俺の方を見て驚愕していた。

 

 

桐生院「み、見てないんですか.........!!?」

 

 

桜木「何を!!?」

 

 

やよい「.........ま、まぁ桜木トレーナーは多忙ゆえ致し方無し!!」

 

 

やよい「配慮ッ!!ここにもう一度宣言する!!」

 

 

 何が何だかわからない状況で、俺は頭が酷く混乱していた。そんな中でも理事長はその椅子からひょいっと飛んで降り、逆光を作るように窓の前まで移動した。

 

 

やよい「桜木トレーナー。君は今、多くのウマ娘を同時に育成している」

 

 

やよい「その中で感じたはず.........この子達が距離や適正に関係なく、正当に評価されて欲しいと.........!!」

 

 

桜木「っ.........!!!」

 

 

 その通りだった。理事長の言う通り、距離や適正なんかで、あの子達が評価が決まるなんて、俺は耐えられない。

 

 

 マックイーンも

 

 

 タキオンも

 

 

 ウララも

 

 

 ライスも

 

 

 ブルボンも

 

 

 マネージャーとして居るアグネスデジタルだって、俺にとっては大切な教え子だ。距離や適正なんかで、優劣を付けられたくは無い。

 そんな俺の滲み出るような思いが伝わったのか、理事長はニカッと笑みを作り上げ始めた。

 

 

やよい「そこで―――ッッ!!!」

 

 

 大きくその場を踏み締め、扇子を広げて見せる彼女の姿は、幼ないながらも、大人になんて負けないくらいの迫力であった。

 

 

やよい「[全ての距離][全てのコース]を用意した新たな大レース.........その名も―――ッッ!!!」

 

 

 俺は.........もう、その言葉だけで全てを悟った。この人は本当に.........ウマ娘の為なら何でもやってしまう、出来てしまうんだと.........

 そして、偉大なレースの名が響き渡る。過去も現在も未来も、全てを巻き込む大レースのその名が、この部屋の中で響き渡ったのだった.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「[URAファイナルズ]ッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのレースの名こそ.........後世に語り継がれるであろう伝説を、開催第一回目にして発現させた物になることを.........今は誰も、知る由もなかった.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山あり谷ありウマ娘

第二部 夢守り人編 ―――完―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 点滅するような光が沢山発生する。その光全てが、まるでライスのことを責めてるみたいで.........ライスは泣きそうになった。

 

 

ライス(やっぱり.........ライスは勝っちゃダメだったんだ.........!!)

 

 

ライス(変わらず.........!!弱虫のままだった方が.........!!)

 

 

 今は色んな人がいるから、我慢しなくちゃ.........そう思って、握りこぶしをお膝の上に作った。

 そんな中.........ブルボンさんはライスの背中をさすってくれた。ライスはそんなブルボンさんに、ごめんなさいとしかずっと言えなかった.........

 

 

司会「他に質問のある方.........居なければ本日は―――え?」

 

 

桜木「.........」

 

 

ライス「お兄......さま.........?」

 

 

 今までずっと、記者さん達の質問を淡々と受けていたお兄さまが手を挙げた。普通は記者さんが挙げる所なのに、司会の人も慌てて、お兄さまに発言を促してた。

 けれど.........手を真上に挙げながら、お兄さまはじっと辺りを見回している。その目は鋭く尖ってて、針みたいで.........ちょっと、怖かった。

 そして、記者さん達の顔を一人一人見た後、お兄さまはその手を思い切り.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「冗談じゃねぇ.........ッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前のテーブルに、思い切り振り下ろしたの.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 山あり谷ありウマ娘

 

 

第三部 夢探し人編

 

 

coming soon.........

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