山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜   作:ギノっち@カマタラル

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安心沢「催眠療法って興味ある☆?」T「(無くは)無いです」

 

 

 

 

 

『出来らァッッ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その声を会議室で響かせた後、俺は直ぐに壁紙を学園中に貼り出した。内容は至って簡単。ファン感謝祭での中継リポーター兼カメラマン募集中というものだ。

 そして次の日、その課題はいとも簡単にクリアされた。

 

 

桜木「本当にいいのか?」

 

 

タマ「もちろんや!!おっちゃんには世話なっとるしなー!!」

 

 

 新人トレーナー職員室。俺の机には、計六人分の応募用紙が乗っけられていた。そして目の前には、その人数のウマ娘の生徒。タマモクロスを筆頭に、俺に姿を見せていた。

 

 

桜木「ま、まぁタマの姉御は良いとして.........ファルコン達は?」

 

 

ファル子「本当は逃げ切りシスターズ単独ライブがしたかったんだけど.........スズカちゃんが恥ずかしいって言うから.........」

 

 

スズカ「嘘でしょ.........?話し合いで決めた時多数決だったのに.........」

 

 

 そういうスズカの目は虚ろであった。なんだろう。とても不憫だ。一応サブトレーナーしてるチームのメンバーだ。蔑ろにはして欲しくない。

 後ろには生徒会役員のマルゼンスキー、うちのチームのミホノブルボン。そして、俺の記憶には関連付けによって強く記憶されているアイネスフウジンが居る。

 

 

フウ「.........?あたしの顔になにか着いてるなの?」

 

 

桜木「いや、そういう訳じゃないよ.........それより、マルゼンスキーさんは良いんですか?生徒会大変じゃないです?」

 

 

マルゼン「良いの良いの!!あたしも青春したいの!!モーレツにね♪!!」

 

 

 う〜ん。どこはかとなく漂うて来る死臭。何とも苦しゅうございまする。この人はこの年でどうして死語を多用するんだ?ネクロマンサーなのか?インディグネイションでも使えるのか?

 まぁ懸念材料は一つ無くなった。勝手をされてその許可を下ろしてしまえば責任は俺にある。だがあの妙に変な所で緩い生徒会の事だ。これも許してくれるだろう。

 だが、問題はまだある.........

 

 

桜木(ブルボンんんんん.........お前の事だぁぁぁ.........!!!)

 

 

ブルボン「.........?マスターからの視線を感知。どうされましたか?」

 

 

 どうしたもこうしたもねぇ!!!君は機械類に触れない人種だろう!!?タキオンから聞いたぞ!!!お前から機械をダメにする微弱な生体電流が流れてるってなぁ!!!

 どうしよう.........これを解決しないことには、この子を.........いや、この逃げ切りシスターズ達をカメラマン兼リポーターにする訳には行かない.........

 

 

桜木「う〜ん、実は結構応募が来ててねぇ〜.........選考する時間が必要かな〜.........?」

 

 

六人「じーっ.........」

 

 

 うっ、我ながら苦しい言い訳.........昨日の夜貼り出したポスターでそんな人数が来る訳ないだろう。取り敢えず、この件を最優先に解決した方が身の為だ。己の信頼の為にも、心の為にもだ。

 とにもかくにも、ここは一旦帰ってもらうしかあるまいて.........そう思い、俺は彼女達を職員室から退室させた。

 

 

桐生院「大変そうですね。桜木トレーナー」

 

 

桜木「そうですね.........本当、大変ですよ.........アハハ」

 

 

 乾いた笑いしか出せない。現状楽しい事はいっぱいなのだが、疲れているのは事実だ。

 う〜ん.........とは言ってもまた前のように倒れてしまうことは避けたい。ここは検診ついでにダメもとであの人に相談して見る事にしようか.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

安心沢「ちょっと疲労が溜まってるかもねー.........仮眠も取れないかもしれないけど、楽な姿勢でぼーっとするだけでも効果あるから、そうした方が良いわよ☆」

 

 

桜木「.........はい」

 

 

 その日の午前。仕事があまり無い時間帯、俺は学園の保健室に来ていた。目の前にはいつもの様にあの変な格好をした俺と同じ企業に勤めていた先輩、安心沢刺々美さんが居る。

 テイオーの件で連れてきて以降、彼女はこの保健室でウマ娘の保健室医として、黒津木と一緒に働いているのだ。

 だが流石にこの格好は今でも目に毒だ。あの頃のように普通の格好と普通の喋り方で接して欲しいと言うのは俺のわがままだろう。実際、彼女はこれで人見知りを解消したらしい。

 

 

安心沢「それと、それだけじゃないんでしょう?」

 

 

桜木「アハハ.........そんなに分かりやすいです?」

 

 

安心沢「昔よりわね。素直な子は好きよ☆」

 

 

 あぁ.........せめてこれを普通の格好で言ってくれたらときめいたかも知れないのに.........その変な格好が俺の恋感知レーダーを阻害している。悲しきかな.........

 そんな悲しみを背負いながら、俺はとりあえず、ブルボンの事を話してみる事にした。話を聞きながら、彼女は真剣にメモを取ってくれている。

 

 

桜木「.........という事なんです」

 

 

安心沢「なるほどね〜.........桜木くん?これはほんっっっとうに賭けと同じような方法なんだけど.........知りたい?」

 

 

 勿体ぶるようにそういう安心沢先輩。書けと同じような方法という事は、効くかどうか分からないということだ。

 だが今は藁にもすがりたい気持ちだ。正直方法があるならば聞きたい。俺のそんな態度が伝わったのか、安心沢先輩はその口を開いた。

 

 

安心沢「.........催眠療法って興味ある?」

 

 

 その言葉を聞いた時、体に雷が落ちたような感覚が走った。俗に言う、矢木に電流走る、である。

 思い付きもしなかった。確かに、無意識下で発せられる身体的なものには、無意識下に問いかけるような催眠が手っ取り早いのかもしれない.........俺はその激流のように発現した感情の赴くまま、その口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありますねェ!!!ありますあります!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スペ「なまら美味いべ〜!!」ムシャムシャ!!

 

 

桜木「ほうあな(そうだな)!!」ガツガツ!!

 

 

 午前中の検診を終え、昼休みを迎えた俺は、カフェテリアで昼食を取っていた。その理由は、ブルボンにいち早く会うためだ。最近では感謝祭の生徒同士の打ち合わせのために、カフェテリアで俺の弁当を食べているらしい。

 目の前に居るスペシャルウィークは山盛りのご飯とトンカツを一気に食べている。俺も負けじと味噌ラーメン、チャーハン、小籠包を大盛りにして食べていた。

 

 

桜木「ごくん.........あっ、そういえば感謝祭の出店、北海道の名物の沢山出るぞ?」

 

 

スペ「へぇ!!?な、なんでですか!!?」

 

 

桜木「オグリさんの無茶ぶりの案が通ってな。なるべくその土地にいたウマ娘の知り合いの飲食店さんに片っ端から連絡したんだ。見様見真似の出店祭りにならなくてほっとしたよ」

 

 

 そう。なんとあのオグリさんのウマ娘の出身地の名物を出店にして食べ尽くしたいという要望が実現できることになったのだ。ダメ元で連絡して良かったと思う。なんせみんなその子に会えるとなると、即答で行くと言ったのだ。

 因みに余談ではあるが、俺がこの日本から離れる際立ち寄ったラーメン屋の北海道本店の人も来てくれる事になった。こんなに嬉しい事は無い。あの味をもう一度楽しめるなんて思っても見なかった。

 

 

スペ「楽しみですね.........!!!」

 

 

桜木「ああ.........!!!」

 

 

 同じ北海道で過ごした同士、スペシャルウィークも嬉しそうに.........いや、我慢出来ないようにそのよだれをダラダラとたらし始めた。北海道はグルメの聖地だ。大阪の食い倒れとはまた違う美味いものが沢山ある。

 楽しみだ.........集客効果で言えばそれだけでも莫大だろう。あの推しのウマ娘が愛した食を自分たちも食べられるのなら足を運ぶ人は沢山いるはずだ。

 まぁ、あの遠巻きでウマ娘が頼んだメニューを真似て食べてるデジタルよりはまともだと思うが.........

 

 

「あっ、桜木さん。珍しいですね」

 

 

桜木「んお?グラスか、どうしたの?」

 

 

スペ「グラスちゃん!!」

 

 

 声を掛けてきたのはグラスワンダー。先日俺に対して今の人々に日本文化の良さを再確認する出し物は無いかと責任を投げてきた張本人だ。

 その彼女はスペに呼ばれて嬉しそうに手を振っていた。片手には食べ終えた食器の乗ったトレーを持っている。この姿だけを見ればやまとなでしこだと言われても誰も疑いは無いだろう。

 

 

グラス「桜木さん!実は私、あの後自分で考えたんです。日本文化を、今の若い人達に良い物だと理解させる出し物を!」

 

 

桜木「.........なに?」

 

 

グラス「落g「却下で」なんでですか!!?」

 

 

桜木「グラス.........良いか、落語と言うのはただ[落ちを語る]ものじゃない。それぞれの登場人物になりきりながら、語り部をしなきゃ行けないんだ」

 

 

 目の前に居る少女。グラスワンダーは確かに凄い少女だ。一点集中というスキルに関しては他に類を見ないほど卓越しているとも言えよう。

 だが、それはこの演技においては仇となる。ある程度速度を緩めなければ、ハンドルは簡単に切れないのだ。

 

 

桜木「.........とにかく、落語はダメだ。第一素人がやった所で眠りを誘う会に昇華されるだけだ。お前の優しい声は特に、人を心地よくさせるからな」

 

 

グラス「.........むぅ」

 

 

スペ「わわわっ!ぐ、グラスちゃんがほっぺを膨らませてます.........!!!」

 

 

 頬を膨らませているグラスだが、不本意ながらも納得してしまったのだろう。落語をやるにはあまりにも時間が無い。セリフを覚えるだけでは意味が無いのだ。

 とりあえず、その解決案も今模索中だ。案が浮かべば直ぐに知らせてあげよう。彼女のしょんぼりとした後ろ姿を見ながらそう思っていると、ようやくお目当てのウマ娘が姿を現した。

 

 

桜木「よーっすブルボン」

 

 

ブルボン「.........?マスターと、スペシャルウィークさん?珍しいですね」

 

 

スペ「こんにちはー!!!」

 

 

 たくさんご飯が盛り付けられた食器をトレーに乗せながら、ブルボンは現れた。彼女が席に座れるようにスペの隣に席を詰める。

 

 

「お隣失礼しますわ」

 

 

桜木「え」

 

 

 その僅かな隙間に差し込むように、マックイーンが入ってきた。あれ、君は今日イクノさんと食べるって言ってなかったっけ?

 

 

マック「イクノさんでしたら、先程カノープスの皆さんがお食事に誘っておられましたから」

 

 

桜木「嘘.........俺そんなにわかりやすい?」

 

 

スペ「はい!!!」

 

 

 すごい。スペシャルウィークに全肯定された。ということはつまりそういうことなのだろう。とても嬉しくない。

 俺はこの変な状況を自分に無理やり納得させ、ブルボンの方へと向き直った。

 

 

桜木「あのなブルボン。お前今日、カメラマン兼リポーターになりたくて応募してきたよな?」

 

 

ブルボン「はいマスター。何か問題が?」

 

 

桜木「.........お前、カメラ触れる対策持ってる?」

 

 

ブルボン「.........あっ」

 

 

 あっ、て言ったよあって、つまりこの子ノープランだったわけだ。本当に危ない所だった。

 そして目の前のブルボンは失念していたショックで耳を残念そうに垂らしていた。あぁミホちゃんよ。別にそんな顔をして欲しかったわけじゃないんだ。対策が用意されていたなら杞憂で済ませられたのだ。

 しょんぼり度合いが高まっていくのと同時に、ナイフのような鋭い視線がゆっくりと身体に突き刺さってくる。恐怖を感じ、首をギコギコと音を鳴らすようにその方を向くと、マックイーンが目を見開き、瞳孔を搾って俺の顔を見ていた。

 表情を変えずに、俺はまたギコギコと視線を戻した。汗すらかけないってなに?仲間意識強すぎない?まぁウマ娘は習性的に群れで行動するとは聞いてたけど。

 

 

桜木「いや、いじめたかったわけじゃないんだ。もし対策を用意してたら杞憂で済ませられたからさ」

 

 

マック「あら、まるで何か対策を用意してきたかのような言い草ですわね」

 

 

桜木「そうですわお姉様」

 

 

マック「誰ですか貴方」

 

 

 流れるようなツッコミを喰らいながらも、雰囲気が何とかマシになったのを感じた。俺は自分の足元に置いてある紙袋から、紙と道具を取りだした。

 

 

スペ「な、なんですかこれ.........?」

 

 

桜木「催眠術を掛けるための「破廉恥ですわ!!!」はぇ?」バチーンッ!!!

 

 

 え、なんか視界が急に乱回転してんだけど。どういう事?さっきの音何?俺飛んでるの?

 あ、急にほっぺめちゃくちゃ痛くなってきた!!!俺打たれたんだ!!!痛い!!!でも凄い!!!こんな思いは初めて!!!

 地面に着いても勢いは止まってくれず、そのまま顔面を擦り付け、頭のてっぺんを隣のテーブルの足にぶつけてようやく前進が止まった。

 ええい!!!こんな事をしてる場合では無いのだ!!!俺には時間が無い!!!呻き声や痛がっている余裕は無いんだ!!!

 そう思い、何事も無かったかのように立ち上がり、服やズボンに着いた汚れを払い、俺はマックイーン達の方へ向き直った。

 

 

マック「や、やるなら私だけにしてください!!!///」

 

 

スペ「ひゃぁあ〜〜〜!!?そ、そんな〜〜〜!!!マックイーンさん大胆だべ〜〜〜///」

 

 

ブルボン「?」ポカーン

 

 

 そこには何故か顔を赤らめながら声を上げるマックイーンと、それを恥ずかしそうにしながらもしっかりと見ているスペ。そして目の前の状況が何一つ分かっていない口を開けたブルボンが目の前に居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マック「そ、そういう事でしたの.........私てっきり.........」

 

 

桜木「俺は今年25だぞ!!!犯罪者にはなりたくない!!!それよりどこでそんな知識身に付けて来たの!!?」

 

 

マック「も、黙秘権を行使致しますわ!!!///」

 

 

 先程座っていた場所に戻り、経緯を説明した。最初は酷く聞く耳を持ってくれなかったが、何とかなった。

 マックイーンの隣のスペから溜息が聞こえてきたのは気の所為だろう。この子は一体何を望んでいるんだ。

 

 

桜木「.........さて、早速試したいんだが「待ってください」.........今度は何?」

 

 

ブルボン「マスター。催眠など効く訳がありません。他の対策を探した方が効率が良いかと」

 

 

桜木「手袋履いても壊すんならもう手に靴はめるしかないよ?」

 

 

 そう言ってやると、ブルボンはそれに反論すること無く、その口を閉ざした。このミホノブルボン。手袋を履こうとも機械に触れた瞬間壊してくる。本当に酷いマシーンキラーだ。ドラクエのパーティで居たら絶対採用している。

 

 

桜木「まぁ掛かりやすさを確かめる為にも、まずブルボンを寝かせよう」

 

 

ブルボン「だから―――「貴方はだんだん眠くな〜る」Zzz.........」

 

 

マック「.........即落ちですわね」

 

 

 そう呟くマックイーンの顔を思わず見てしまう。だって仕方ないだろ。あの時の勘違いのせいでそういう意味に聞こえてしまうんだから。

 彼女と視線が合った瞬間、少しは疑問に思っていたが、自分が言った意味を理解したのだろう。直ぐにその両手で口元を抑え、顔を赤く染めあげた。

 

 

マック「違います!!!違いますからね!!?」

 

 

桜木「いやだって、即落ちって.........」

 

 

スペ「即落ちってなんむぐぐ!!!!!」

 

 

二人「しーっ!!!!!」

 

 

 やたらおだってる(はしゃいでる)スペの口を二人で抑え、静かにするよう促す。周りを見るに、あまり気にされていないのだろう。

 だがグラス。エルと話しながらも耳が確かに動いたのを視認したぞ。今回は俺の胸の内に秘めておこう。

 .........まぁ、女の子と言っても年頃だ。そういう下なアレにも興味が出てくる頃だろう。しかもトレセン学園なんか完全に女子校だ。そういう話題とか頓着が無くなると通っている妹からも聞かされている。

 まだ恥ずかしがっているマックイーンはマシな方なのだろう。うちのエースがまともで何よりだ。

 

 

桜木「.........今回は追求しないぞ。時間が惜しいからな」

 

 

マック「.........助かりますわ」

 

 

桜木「とりあえず催眠を解こう。確か手を叩けば良いんだっけか.........」パン

 

 

ブルボン「んん.........?」

 

 

 俺の手を叩く音に反応したのか、彼女は耳をピンッと上に張った。そして、寝ぼけているのか彼女は普段聞かないような声を上げている。

 見た感じどうやら催眠にかかっていた自覚すら無いらしい。これでどうやら、ミホノブルボンの催眠の耐性がよわよわであることが露呈されてしまったのである。

 

 

桜木「成功だな」

 

 

ブルボン「.........メモリー検証。不明なログアウトを確認。説明をお願いします」

 

 

スペ「なんか即落ち?らしいですよ?」

 

 

ブルボン「.........?」

 

 

 二人とも何が何だかわかってないようだ。スペは首を捻り、ブルボンはやはりポカーンとしている。二人が純粋で助かった。

 まぁ、今日はそういう日なのだろう。俺自身下ネタが止まらない時とか昔はあった。触れてこなかった分野が面白く感じてしまうのであろう。

 軽く咳払いをして何とか場の空気を変える。なぜならもうマックイーンが限界そうだからだ。案外物知りさんなのかもしれない。可愛いもんだ。

 

 

マック(うぅ.........私としたことが.........)

 

 

 

 

 

 ―――なんとも間抜けなことをしでかしてしまったのでしょう。本当、穴があったらそこに入り、上から土を被せて欲しいです.........

 だって!!!し、仕方ないではありませんか!!!私も年頃ですし、そ、そういう物事に関心が向きますわ!!!.........ま、まぁ実際にそのものは見た事はなく、あくまで刺激の薄いと言われている官能小説の内容ですが.........

 本当、インターネットとは恐ろしいものです.........対して深くも無い用語を調べた瞬間、関連に色々出てくるんですもの.........しかも、そのどれもが想像が及ばないものばかり。少し覗いてしまうのも無理はありませんわ.........

 そう自分の中で自分を納得させているうちに、トレーナーさんはまた、ミホノブルボンさんに催眠を掛け始めました。 今度は先程より念入りに掛けております。

 そして、それと同時にカフェテリアがだんだん盛況になっていき、ガヤガヤとして参りました。

 

 

マック「あの、トレーナーさん?場所を改めた方が.........」

 

 

桜木「待ってくれ!!!これを成功させないと一台30万のビデオカメラがお釈迦になるんだ!!!」

 

 

 周りの声や喧騒すら耳に入っておらず、彼は私の顔すら見ずにそう言いました。カメラというのはおそらく、彼が講演会で使用し、学園に寄付した物でしょう。

 先程より意識が混濁してきているブルボンさんの様子を見て、彼は意識を集中させ、口を開きました。

 

 

桜木「貴方はだんだん、機械を壊さなくなる.........」

 

 

ブルボン「.........」?

 

 

 傍から見ると、催眠は順調に進んでいるように見て取れます。ですが、何だか妙な胸騒ぎがするのです。彼が何かをする際、トラブルが起こらなかった試しはありませんでした。

 

 

桜木「貴方はだんだん、機械を壊さなく.........」

 

 

「『可愛いアイドルになる』にはどうすればいいんだろう〜?」

 

 

マック「あっ」

 

 

 その瞬間、喧騒の中でも一際大きい声が聞こえてきます。大きい、と言っても、ウマ娘の耳を持ってしなければ聞こえてこない物です。しかし、それが問題でした。彼は催眠を続けていきます。

 

 

「そういえば.........『語尾にニャンって付けるようになる』薬を、この前タキオンさんが作ったらしいですよ.........」

 

 

「えぇ.........そんな薬何に使うんだ.........?」

 

 

 今度は違う方向から声が聞こえてきます。あれは.........マンハッタンカフェさんと司書の神威先生でしょうか?

 

 

「お前も『辛党になる』ような薬作ればいいのに」

 

 

「断る!!!」

 

 

マック「あぁ.........!」

 

 

「なぁハチ!!!『ドモンカッシュになる』にはどうしたらいいと思う!!?」

 

 

「『情緒不安定になる』」

 

 

マック「あぁ.........!!!」

 

 

 私はこの身を震わせながら、手を口に添えました。もう、止めることは出来ません。だって、トレーナーさんは既に自分の世界に入ってしまって居られます。

 その間にも、様々な情報がブルボンさんに入って行きます。主に、あそこに座って話しておられるゴールドシップさんと白銀さんのせいで.........

 

 

桜木「貴方はだんだん、機械を壊さなくなる.........よし」

 

 

ブルボン「.........」?

 

 

 よし、ではありませんわ。この人はこの先に起こる災厄を予想出来ておりません.........い、一体何が起ころうと言うのでしょう.........私は、ブルボンさんが口を開くのをただただ待ちました。

 

 

桜木「調子はどうだ?」

 

 

ブルボン「.........キュピーン☆」

 

 

三人「え?」

 

 

ブルボン「私!!『ドモン・カッシュ』!!『可愛いアイドル』を目指す『辛党』の女の子だ『ニャン』!!!」ダバー!!!

 

 

 あぁ.........恐れていた事が怒ってしまいました.........目の前に居るブルボンさんは可愛らしいポーズを取りながら、何故か号泣しております。

 隣に居るトレーナーさんを見ると、完全にその姿を見て思考停止されてました。

 

 

桜木「.........ぶ、ブルボン.........?」

 

 

ブルボン「うぅぅぅるさいッッ!!!」

 

 

桜木「」

 

 

 なんと、あの従順なはずのブルボンさんがトレーナーさんを拒絶しました。あまりの光景に彼も絶句した様子で固まっております。因みにスペシャルウィークさんもお口元まで運んでいたご飯が箸からこぼれ、お皿の上に乗りました。

 

 

ブルボン「あっ!!私ダンスの練習しなくちゃニャン!!!超級覇王ッッ!!!電影ェェェ弾ァァァァんッッッ!!!!!」

 

 

マック「トレーナーさん!!!手!!!手!!!!!」

 

 

桜木「.........はっ!!!」パチパチパチパチ!!!

 

 

 カフェテリアに響き渡るほど大きい拍手が何度も響きわたりますが、身体をまるで台風のように回転させ(何故か顔は回転していませんでしたわ)ブルボンさんは出ていってしまわれました。

 

 

マック「追いかけますわよ!!!」

 

 

桜木「でもマックイーン!!!お前まだご飯食べてないよな!!?」

 

 

マック「こんな時に言ってる場合ですかおバカ!!!私の空腹よりチームの体裁ですわ!!!」

 

 

 もう!!!この人はこんな時ですのになんで私の事を心配するんですか!!!それに反応して顔を赤くする私も私です!!!今は抑えなさい!!!

 そう自分の心を押さえ付けながら、私とトレーナーさんは二人でカフェテリアを後にしました.........

 

 

スペ「.........あ、あれが即落ち.........?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「くっ!!ブルボォォォン!!!」

 

 

ブルボン「うるさいですよ!!!学園では静かにするのが常識ニャン!!!」

 

 

桜木「ごめぇぇぇん!!!」

 

 

 誰もいない廊下を割と早いペースで歩くブルボンさん。ですが、人であるトレーナーさんは少し走るのを強要されるスピードです。

 そして尚且つ、普段のブルボンさんには見られない反抗的な態度がどんどん彼の心を痛め付けています。身から出た錆ではあるのですが、正直少しだけ可愛そうです。

 

 

マック「ここからじゃその手の音は届きませんの?」

 

 

桜木「それが反射的に耳をキュってするんだよ.........誰かに押えてもらえれば.........ん?」

 

 

 彼が不意に何かに気づいたように視線を動かしました。私も、それに釣られるようにその目の先を追います。

 すると、廊下の曲がり角からテイオーの姿が見て取れました。チャンスです。彼女に協力してもらえれば.........?

 

 

マック「何か様子が変では.........?」

 

 

桜木「た、確かに.........」

 

 

テイオー「.........」ブツブツ

 

 

 何かを考えているのか分かりませんが、彼女は下を向き、何かを呟いておりました。普段の彼女とかけ離れた姿で、とてもではありませんが声をかける気にはなれません。

 ブルボンさんが横を通り過ぎても、お構い無しに彼女は自分の世界へ入り浸っておりました。

 

 

桜木「て、テイオー.........?」

 

 

テイオー「.........そうだよ。それが、愛し合うってことなんだね.........♪」ニタァ

 

 

二人「ひぇ.........」

 

 

 お、恐ろしい.........一体全体何がどうなっているんですの.........?私達に気付いているのか居ないのか、彼女は他の世界など意に返すことはせず、廊下を歩いて行きました。

 そうこうしているうちに、ブルボンさんはライブ練習をするためのレッスン室に入って行ってしまわれました。早く催眠を解かなければなりませんのに、トレーナーさんはその扉の取っ手を掴んだまま固まってしまわれております。

 

 

マック「トレーナーさん?」

 

 

桜木「.........ダメだ。多分、逃げられる」

 

 

 珍しく弱気な発言ですが、私もその言葉に少なからず共感してしまいます。今のブルボンさんは、どこか彼を避けている節すら感じられます。

 それはきっと、いつも変な事をしている彼を肯定している反動なのでしょう。心のどこかで、それをやめて欲しいという願いがあるのだと思います。

 どうしたものでしょう.........そう思っていると、不意に後ろから声をかけられました。

 

 

「どうした?何かあったのか?」

 

 

桜木「東先輩.........」

 

 

マック「いえ、特に何かあったわけでは.........」

 

 

桜木「マックイーン、正直に話そう。この際体裁なんて気にしてられない」

 

 

東「?」

 

 

 私の言葉を遮ったトレーナーさんは、今まで起きた事を東トレーナーに話しました。彼もまた、チーム[スピカ]の沖野トレーナーと同じベテラントレーナーの一人です。

 トレーナーさんから一通り聞き終えたあと、彼は少し考えた後、何も言わずにレッスン室に入って行かれました。

 そこには、備え付けられていた音響を起動させ、一生懸命ダンスをしているブルボンさんが居ました。

 

 

東「ブルボン。いるか?」

 

 

ブルボン「あっ!!東トレーナー!!お久しぶりです☆」キュピーン!

 

 

 その催眠にかかった姿を実際に見て、彼は少したじろぐ様子を見せますが、直ぐに気を持ち直しました。その安心感を感じさせる姿を見て、トレーナーさんが一番信用していると言うのは嘘では無いことが分かります。

 一息、気合を入れるように息を吸い込んだ東トレーナー。その緊張がこちらにまで伝わってきます。閉じた彼の目がカッと見開かれたのと同時に、彼は拳を前に突き出しました。

 

 

東「流派ッ!!東方不敗はァ!!!」

 

 

二人「!?」

 

 

ブルボン「っ!!王者の風よッ!!!」

 

 

二人「!!?」

 

 

 先程までの可愛らしい反応とは打って変わり、ブルボンさんは腰を深く落とし、まるで武闘家のような構えを見せ始めました。

 東トレーナーは首を少し回し、後ろに居る私達に視線だけ送ります。これは、黙って見ていろ.........という事でしょうか?

 戸惑っていると、彼は次に、強烈なラッシュをブルボンさんに叩き込み始めました。

 

 

東「全新ッ!!!」ババババッ!

 

 

ブルボン「系烈ッ!!!」シュシュシュシュッ!

 

 

「「天破侠乱ッ!!!」」ドゴォ!!!

 

 

二人「」

 

 

 激しいラッシュを捌ききったブルボンさんは、そのまま拳を前の方へと突き出しました。それに合わせるように、同じポーズで東トレーナーも拳を突き出し、ブルボンさんの出した拳とピッタリ合わせました。

 もう何が何だか分からないです.........驚く体力も有りませんわ.........私もトレーナーさんも、二人並んで呆然としてしまいます。

 

 

「「見よッ!東方は紅く燃えているゥッッッ!!!!!」」

 

 

東「今だァァァ!!!」

 

 

桜木「.........はっ!!!」

 

 

 赤く燃え上がって見えるような幻覚を背景に、目の前のお二人は声高々に声を発しました。その後、東トレーナーはそれがチャンスだと言わんばかりにトレーナーさんに声をかけます。

 呆けていた彼も、その声と共に意識を元に戻し、1回、2回と手を叩きます。その数が10を超える頃、ブルボンさんは体に入っていた力が抜けるようにその場で膝から崩れ落ちました。

 

 

東「おっとと.........大丈夫か?」

 

 

ブルボン「.........?東トレーナー.........?ここは.........?」

 

 

 何とか東トレーナーが抱える形で倒れる所は防ぎましたが、私は安心して足の力が抜けてしまいました。

 倒れそうになった所を何も言わず、そして気にもとめない様子で支えて下さるトレーナーさん。この人は一体、どこまで人の事を考えているのでしょうか?

 

 

桜木「すまんブルボン.........こんな事になるなんて.........」

 

 

ブルボン「.........いえ、マスターの対策は完璧のようです」

 

 

三人「.........?」

 

 

 支えられている所から一人で立ち上がり、ブルボンさんは指を指します。その方向は、今も音楽を流し続ける音響機械でした。

 確かに.........この機械を操作したのはブルボンさんに間違いありません。それは、先程まで一人で踊っていたという事実がそう示しております。

 

 

ブルボン「マスター。私からお願いがあります」

 

 

桜木「.........?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファル子「やったー!!これで晴れて逃げ切りシスターズ!!全員リポーターになれたね!!」

 

 

 職員室で嬉しそうにそう声を上げるファルコン。カメラを難なく操作してみせるブルボンを囲むように円が出来上がっていた。

 その様子を遠くから俺は見守る。初めて触れる機械類。ブルボンはどこか嬉しそうな顔でカメラを撮っている。

 

 

ブルボン「マスター」

 

 

桜木「ん?どうした?」

 

 

ブルボン「ピース」

 

 

 おもむろに近付いてきたブルボンが、ピースサインを見せてきている。だが、一向にそのポーズを解く気を感じない。

 もしや、俺にそれをさせたいのだろうか?可愛い所もあったものだ。サイボーグだなんだと揶揄された割には、この子も普通の女の子なんだ。

 

 

桜木「おいおい.........それ写真じゃなくてビデオだぜ?」

 

 

ブルボン「問題ありません。思い出にはピースが付き物だとお父さんに教わりました」

 

 

 苦笑しながらも、俺はブルボンと向けられたカメラに向かってピースを作る。彼女の父親が言っている事も最もだ。

 日本では平和の象徴でもあるピースサイン。思い出はいつだって心を穏やかにさせる素敵なものだ。

 たとえ.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――雨が降っていた.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜木「.........」

 

 

 たとえ、その雨が、全てに絶望をもたらしても、本当に穏やかにさせてくれるのだろうか?

 その雨が、頬を濡らしても、俺は笑っていられるのだろうか。そんな疑問が、頭をよぎる。

 

 

ブルボン「.........マスター?」

 

 

桜木「っ、悪い悪い。ちょっとぼーっとしてた」

 

 

 心配そうに覗き込むブルボンの顔を見て、ようやく意識が現実に向く。そうだ。今考えたって仕方ないじゃないか。

 俺は、心の中で生まれた得体の知れない焦りを見て見ぬふりをし、ブルボン達からカメラを回収した。

 元気に職員室去っていくブルボン達を見送りながら、俺は砂嵐に埋もれた雨の匂いと、そこに何故か混じるココアの微かな甘い匂いに戸惑いながら、ココアシガレットを口にくわえた。

 

 

 

 

 

  ......To be continued

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