山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜 作:ギノっち@カマタラル
桜木「あいててて.........」
ヒーローショーは大成功だった。その結果さえあれば、もう夢に悔いは無い。夢の跡地に残骸は無い。あとはもう、どこまでも続く草原だ。
あれから、理事長は恥ずかしそうに謝ってきたが、すごく申し訳なかった。全体で15分の休憩を貰ったので、体育館のステージの袖で、背中に湿布を白銀翔也に貼らせていた。
ルドルフ「.........それにしても、まさか白銀選手と知り合いとは.........君の交友関係は実に奇妙だな」
桜木「俺もそう思いますよ。会長殿」
白銀「モンハンしたいんだけど」
桜木「ダメだ」
白銀「バキャが」
罵倒された。まあマッサージされながら唾を吐かれないだけマシだ。コイツは普通にやるからな、普通に。
白銀「はぁぁ、俺様のライダーキックが炸裂したせいで、ポッチャマはボドボドに......」
ルドルフ「?」
桜木「いつも思うがなんで俺がポッチャマなんだ」
わざとらしい溜息を響かせながら、白銀はチラチラと何度も俺の顔を見る。こいつアスリート辞めても食っていけそうだ。いつもこのキャラなら。
ルドルフ「.........そう言えば、触れていい事かどうか分からないが、その腕は大丈夫なのか?」
桜木「え?あ」
疲れすぎててすっかり忘れてた。怪我した事も忘れてたし、でけえ傷跡の事も失念していた。これもう既に認知症では?最近は若年性とかあるらしいから気を付けないとな
白銀「ダイジョーブ!こいつ丈夫だから!!夢を諦めただけで済んだから!!!」
桜木「うおいッッ!!!」
こいつ、なんで的確に俺の弱点を付いてくるの?本当はこいつ俺の事嫌いだろ。
ルドルフ「夢.........?」
桜木「.........役者になりたかった。演技するのが楽しくて、身体の動かし方も勉強してたんだ」
普通に生活するのが精一杯。そう言われていた怪我も、コイツらのお陰で楽しいリハビリになったのは確かだ。
桜木「夢の跡地にゃもう何もない。今はもう、だだっ広い草原が目の前に広がってる感じだ.........ようやく、踏ん切りが着いた気がするよ」
ーーー
六時間目のチャイムが鳴り響き終わり、横の袖からステージの中央にもう一度足を運ぶ。すると、大きく、盛大な拍手が生徒達全員から送られてきた。
桜木(あーーー...............暖かいな............)
俺の夢を受け止めてくれた。自然と目頭が熱くなってしまうが、我慢だ。それは俺の自己満足でしかない。ゆっくり吐息を吸って、言葉を出す。
桜木「えーいかがだったでしょうか?楽しいヒーローショーが皆さんに届けられたらと嬉しい限りです。それでは、最後のスペシャルゲストに登場して頂きましょう!!」
ーーー
トレーナーさんがそう仰った後、横から人がスタイリッシュに空中側転をしながら登場して来ました。
「あッッ!!!??」
桜木「は!?」
しかし、着地をした際に勢いを殺しきれず、トレーナーさんを巻き込みながらゴロゴロと転がって行ってしまいました。
シンと静まり返る体育館。そんな空気を打破する様に、バイクヘルメットを被ったスペシャルゲストさんは一言言いました。
「トゥースッッッ!!!!!はァ.........ァ!!!」
テイオー(.........ねぇマックイーン。あの人芸人さんじゃないよね?)
マック(え?さぁ、その分野に関してはあまり明るくないので.........)
実際、実家では走る為のトレーニングに明け暮れていた事もあり、テレビを見ている時間は殆どありませんでした。まぁ、あったにはあったのですが.........あまり、芸人さんが出るような番組を見た事がないのです。
ですが、辺りからは漏れるように笑い声が聞こえてきています。そんなに面白いものなのでしょうか?
桜木「邪魔だよお前.........踏むんじゃないよ馬鹿が.........!!!」
「うるさいヤツメリィッッ!!!」
桜木「あぶな!!?」
先に立ち上がったゲストさんが、トレーナーさんの腹部に向かってパンチを繰り出しましたが、それを何とか転がって回避します。もしかして、ヒーローショーはまだ続いているのでしょうか?
桜木「えー、話が進まないのでね。さっさとヘルメット脱ぎやがれくださいこの一回戦敗退野郎」
「ぬわぅぐわ!!!痛いよぉ.........」
軽口を叩き合いながら進行するお二人。恐らく親しい友人同士なのでしょう。この様な形で紹介するのですから、もしかしたら私も知っている方かも知れません。
ゲストさんがその手をヘルメットに掛けました。
桜木「えーご紹介致します。現在世界ランク.........なんぼだっけ?」
「今は8位」
桜木「世界ランク8位のプロテニス選手」
「白銀翔也選手でーす」
そのトレーナーさんの声と共に、ヘルメットから染め上げられた銀色の髪が顕になりました。
そして、その顔を見て、全員が驚きました。
「白銀選手ってあの!?」
「最近企業も設立したって.........」
「凄い!世界で活躍してる人だ!!!」
「帰れー」
最後の声に全員で振り向くと、口笛を吹いているゴールドシップさんがそこに居ました。
白銀翔也さんは現在、白銀コーポレーションと言う会社を建て、社長という役職に着いています。私もメジロ家のパーティで遠目から姿を拝見した事がありました。
品行方正で言葉遣いも丁寧。物腰も柔らかく、紳士な方です。少なくとも、あの様な破天荒な方ではありません。
白銀「うるせぇ!!バカ女ッッ!!!」
ゴルシ「あぁ!?アタシのどこがバカ女なんだよ!!!どっからどう見ても見た目IQ564ある知的な容姿してっだろ!?!?!?」
白銀「見た目だけだッッ!!!このバカチンがァッッ!!!」バシン!
桜木「痛い!!!」
白銀さんとゴールドシップさんのお二人のせいで、講和会はしばらく収集がつかなくなりました。
ーーー
桜木「はい、じゃあ質問ある方ー」
額の青筋をひくつかせながら、トレーナーさんは白銀さんへの質問を募集しました。
肝心の白銀さんは両手両足を縛り上げられ、不服そうな表情でした。
テイオー「はい!!白銀さんはテレビで見ると全然違く見えるのはなんでなの!!!ですか!!?」
白銀「ふっ.........カメラと言うフィルターが俺様の認識を歪めるから.........」
桜木「はい、猫被ってるだけでーす」
テイオー「ありがとうございました!!!」
テイオー(すごいなー!世界で戦ってるってスケールがすごいよね!)
元気の良い声と笑顔でテイオーはお礼を言うと、席に着席しました。無敗の三冠を取ると息巻いている彼女も、やはり世界と言う物に興味がある様です。
次に手を挙げたのは、C組のダイワスカーレットさんでした。
ダスカ「あの、質問があります!」
ダスカ「白銀さんにライバルは居ますか?また、負けた時にどう言った方法で立ち直りますか?」
桜木「え?お前負けるの?(笑)」
白銀「ぶっころっそぉ!!?」
ゲラゲラと笑うトレーナーさんと、それに釣られて笑う白銀さん。本当に仲が宜しいのですね.........
そう思っていると、白銀さんは先程までのおふざけとは違う、真剣な表情を浮かばせました。
白銀「ライバルなぁ.........これは本当に言いたくないんだけど、マジで居ない」
白銀「俺、勝つのは好きだけど、負けず嫌いでは無いんだよね。勝つ為の努力はなんだってしてるつもりだし、負けたら負けたであっちの力が上回ってただけの話だからな」
白銀「あんまり負ける事に拘っちゃ行けないと思う。勝ち続ける事は難しいけど、負けをしっかり受け止める事も必要だと思う」
桜木「因みに一回戦敗退の時何した?」
白銀「泣いてかんしゃく起こしたし相手選手に殺害予告しかけた」
マック(滅茶苦茶ですわ!!)
言っている事が支離滅裂すぎて、聞いているだけで疲れてきてしまいます。ゴールドシップさんとトレーナーさん、他複数名の方も笑いが止まらない見たいです。
白銀「まぁ、悔しい気持ち以上に、勝つのが好きだから、あんまし落ち込まねえかな」
ダスカ「あ、ありがとうございます.........」
参考になったのかならなかったのかは分かりませんが、スカーレットさんはそのまま席に着席しました。
どうしましょう。私も質問したい事があるのですが.........いえ、ここで引いていてはメジロのウマ娘として顔が立ちません!!
テイオー(あ!マックイーン!)
マック(ちょっと!うるさいですわよテイオー!)
手を挙げた私をニヤニヤとした顔で見てきました。あれほどからかうのはやめて欲しいと言ったはずですのに.........
そうしていると、副会長のエアグルーヴさんからマイクを手渡されました。うぅ、何故だか分かりませんが緊張してきましたわ.........
マック「あ、あの!ト.........」
マック「桜木さんと白銀さんはどういう関係なのですか?」
危ない所でした.........いつもの調子でつい、トレーナーさんと言いそうになってしまいましたが、何とか堪える事が出来ました。
本当に気になる所です。彼らは一体どこで知り合ったのでしょう?
桜木「あー、まぁこいつとは小学校からの友達ですねー。転校初日で寂しそうだったから声掛けたんだよな?」
白銀「確かそうだった気がする。昔からお前は変わんねえよダックスフンド」
桜木「せめて前にレオナルド付けよう?皆わかんないよ?レオナルドダックスフンドが渾名だって」
白銀「デブレオ・デブレイは昔から面白ぇ奴だから皆仲良くしてやってな!!!」
桜木「ただの悪口だから。それ地味に傷付いてた奴だからねそれ」
ーーー
マック「トレーナーさん!」
桜木「うお、マックイーン!」
あれから、特に何事も無く講和会は終了した。白銀の奴は理事長と話があると言って居なくなったので、絶賛後片付けをほぼ一人でやっている様な状況だ。
マック「素晴らしかったですわ!何から話していいのやら.........」
桜木「ははは、皆に喜んで貰えた様で嬉しかったよ」
よっこいせとステージに登る階段に腰を下ろす。すると、隣に何故か座ってくるマックイーン。お?大丈夫か俺?
桜木(マックイーンは中等部マックイーンは中等部.........)
マック「.........普段のトレーナーさんは、とても生き生きしていて、男の子の様に感じてしまいますが.........」
マック「今日のトレーナーさんは、とっても輝いていました」
桜木「.........ああ、昔置いてきた夢を、空に返したからな」
マック「夢.........ですか?」
桜木「ああ、また今度話そう。今はこいつらを.........何とかしなくちゃなー.........」
そう言って視線を移した先には、高性能カメラ6台。ライダースーツと怪人スーツ。使用したワイヤーが一箇所にまとめられていた.........
ーーー
「「「「「かんぱーーーい!!!」」」」」
賑やかな声が響き渡る店内。辺りには焼かれた肉の音と匂いが充満して、空腹を刺激する。
あの後、マックイーンが手伝ってくれて作業は早く済んだのだが、トレーニングを見るのは一週間後にしてくださいと釘を刺され、泣く泣く学園から帰還したのだ。およよ。
現在は午後7時。今回の講和会の打ち上げに参加した白銀翔也、ゴールドシップ、その付き添いの沖野先輩。そして何故か着いてきた古賀さんで焼肉バイキングレストラン『美味美味(ウマウマ)肉天国』で打ち上げをしていた。
ゴルシ「かーーー!!!疲れた身体にはカルピスが染み渡るぜーーー!!!なんてったってこのカルピスはゴルゴル星の海で生成された砂糖を原料にしてんだ!!!染み渡るのはあたりまえだーーー!!!もういっぱい持ってこよーーー」
白銀「あの女うるさすぎじゃね?」
沖野「翔也、あれはもう慣れるしかない」
古賀「カッカッカッ!ゴルシは面白いウマ娘だからな!!」
そう言いながら頭を抱え、オレンジジュースをチビらと飲む沖野さん。学生の付き添いである手前、酒なんて飲めない。
古賀さんは話しながらも黙々と肉を焼いて行っている。肉は食うより焼くのが好きらしい。面倒見の良さが見て取れる。
桜木「あ、アイツらに連絡しねえと」
白銀「お?夢を叶えましたってか?」
桜木「そんな所だ。お前は何でジャンプ読んでるんだ?」
白銀「ワンピが今すっげぇから」
そう言いながらウーロン茶をグビっと飲んでペラペラと分厚いジャンプを読んでいる。イカれてるのか?肉を焼いてるこの状況で.........
まぁ、こんな奴の事はほっといて、テレビ通話をかける為に、ちょうど席全体が見えるように携帯を配置し、電話を掛けた。
白銀「つか、アイツら今仕事中だろ」
桜木「案外出るだろアイツらなら」
「もしもし、どしたー?」
お、まずは一人目が掛かった。
黒津木 宗也(くろつぎ しゅうや)。今は海外で働いている高スペックオタク。大学も海外で出ているが、その理由がいつか現れる推しの為に、最短で人生を満喫出来る金を稼いで、早めに隠居して貢ぐと言う、ある意味でかい夢を才能で叩き付けて周りを黙らせた男だ。
コイツはまだ予想できる。しかし、もう一人の方はどうだろう?
黒津木「なんだなんだ?トレーナーが辛くなってヘラっちまったか?」
桜木「ははは、抜かしよる」
「おいっすー。おまんらどうしたー?」
お、二人目も掛かった。
神威 創(かむい はじめ)。コイツは日本で暮らしてるけど、仕事の都合で各地を転々としている。都合と言っても、コイツが落ち着ける場所が早々ないのが理由だ。携帯の通知を切ってるのでSNSですら反応を寄越さない。
けれど、揃って良かった。これでようやく報告出来る。
桜木「俺、ようやく終わらせられたよ」
黒津木「マ?おめやん」
神威「お、だから肉食ってんの?羨ましいなおい。俺にも寄越せよ」
白銀「うわすっげ!!!聞けよルフィが」
あ、神威との連絡が途切れた。仕方が無い。アイツ、コミック派だからな。今回報告出来ただけでも良しとしよう。
そうこうしていると、先程ドリンクを取りに行ったゴールドシップが戻ってきた。
ゴルシ「よー!!機械のカルピス全部アタシが貰ってきたぜ!!!」
沖野「何してんだお前!?」
黒津木「え!?!?!?!?!?!?!?」
白銀「うるさ」
激しい金属音と書類が落ちる音が携帯から聞こえてくる。何をそんなに驚いてるんだ?
黒津木「なんでウマ娘と一緒に居るんだ?」
桜木「.........?トレーナーだから?」
黒津木「え?なんでトレーナーがウマ娘と?」
.........?なんだろう、話が良く噛み合わない。まずコイツは何を勘違いしてるんだ?
桜木「お前、何か勘違いしてるんじゃないか?」
黒津木「え?え?だってトレーナーって、白銀のトレーナーだろ?」
二人「?????」
何言ってるんだコイツは?俺が白銀のトレーナー?凸してきた時何してたんだ?
思い返してみる。あの場には確かに黒津木の奴もいた。アイツは何してた?アイツは.........
べろんべろんに酔い散らかしてたわ、そういや。あーもうめちゃくちゃだよ〜
桜木「お前は最高のモルモットだァァァァッッッ!!!!!」
黒津木「え?あ.........ふーん(察し)」
白銀「乙!!!!!!!」
アイツは目からハイライトを消しながら、職場の固定電話でどこかに掛け始めた。
黒津木「もしもし責任者メン?」
英語で電話を掛けながら、アイツは通話をブチ切った。可哀想なことをしたかもしれない。
白銀「シャンクスごっこしようぜ?」
桜木「は!?」バシャー!
うっわ、カルピス顔面にぶちまけられた。誰に需要があるんだ誰に。
そんな俺の姿を見てゲラゲラと笑う白銀を、ゴールドシップが技を決める
ゴルシ「てめーー!!!カルピス畑のおっちゃんが泣いてんぞ!!!それでもお前カルピス畑の隣に住む割り箸メンマ専門店の創設者か!?!?!?」
白銀「いっっっってーーーー!?!?!?!?」
沖野「お、おい!!流石にここで暴れるのは不味い!!」
古賀「カッカッカッ!!やれやれーゴルシ!一回戦敗退野郎を打ちのめせー!」
がやがやと周りの賑やかな音に負けない程うるさい宴会は九時まで続き、俺の新たな夢への門出を祝福してくれた様だった。
トレーナーのやる気が上がった!!
『夢への執着』を解消した!!
『夢追い人』になった!!
『変人』になった!!
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ......To be continued