テイワット探索日誌   作:昼寝してる人

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【序章】風を捕まえる異邦人③

 騎士団本部から出た空は、パイモンに話しかけられた。

 

「これからの冒険はますます危ないかもしれないから、ちゃんと準備しておいたほうがいいぞ。モンドの鍛冶屋に行ってみようか」

 

 なるほど、確かに。

 騎士団から階段を降り続けると、モンド城壁近くから鉄を打つ音が聞こえてきた。

 カンカンと気持ちのいい音と、鉄臭い匂い。

 

「鍛冶屋はあそこだ!」

 

 それは空にも分かる。

 早く行こうと急かすパイモンに走らされ、空は鍛冶屋ワーグナーの前に立つ。

 

「なんだ?」

「パイモンの武器が見てみたい」

「おい、なんだそれ! オイラを先陣に立たせるつもりか?」

「こんなに小さいし、オーダーメイドしかないな」

「オーダーメイドできるんだ……」

 

「当然だ。販売、オーダーメイド、精錬、すべてこの鉄工房の仕事だ。お前に鉱石があればな」

「どこで鉱石が手に入る?」

「どこにでもある。じゃあこうしよう。この付近で鉄が見つかりやすい場所を教えるよ。鉄を持ってくれば、製造してやる」

「分かった、ありがとう」

「礼はいらない。仕事に戻るよ」

 

 仕事熱心な人のようだ。

 話す時まで仕事中だったし……流石に話す時は手を止めて欲しかったけれど、それだけ仕事に熱を込めているのだろう。

 ワーグナーから少し離れたところで、パイモンは少し怯えたように空に話しかけた。

 

「なんかイライラしてる……邪魔したのかな?」

「単純に、仕事一筋な人なだけだと思う。地図に印を入れて貰った、行こう。ワープポイントのすぐそばだ」

 

 空はワープポイントに飛んだ。

 一瞬の空白後、空はワープポイントの傍に立っていた。そこからすぐズレたところにある岩場を覗く。

 地図に記された通り、そこにはたくさんの鉄の鉱石がごろごろとあった。

 

「ええと、確か……三つでいいんだっけ?」

「おう、そうだぞ!」

 

 パイモンのお墨付きを得たところで、空は鉄の鉱石を三つ採掘する。しっかりとバッグに詰め込んだら、モンドへと戻る。

 橋を渡ってモンド城内に入って左に曲がると、鍛冶屋だ。

 

「なんだ?」

「鉄を見つけてきた」

「ああ……そんな事もあったな。忙しすぎて忘れてたよ。まあいい、この色のものも使えないわけじゃない」

鍛造(たんぞう)依頼したい」

 

 仕上げ用雑鉱の依頼をして、空は出来上がったそれを受け取る。

 

「鉱石を見つけたら、こっちに来るといい。もちろん、俺が忙しくない時に来るのが1番いいがな」

「なんか機嫌悪い気がする」

「鉄を打つには集中力が必要だ。客の世間話に付き合うのは苦手だ。腕が良ければ、依頼が来る。他のことはいらないんだ。用がなければ仕事に戻るぞ」

 

 鍛冶屋から少し離れたところで、パイモンは話し出す。

 

「さっきおまえが言ってた通りだった、真面目な人なんだな……。ちょっと短気なところもあるけど、製造は彼に任せておけば大丈夫な気がするぞ」

「ああ。これで準備は整った――神殿の遺跡へ向かおう」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 モンド城から1番近い、西風の鷹の神殿。ワープポイントから少し歩いた場所にある神殿の前に、アンバーが立っていた。

 走りながら声をかけてくる空とパイモンに、アンバーは手を振って応えた。

 

「ここが、放棄された四風守護の神殿の一つだよ。この神殿が放棄されたのは何年も前でね、モンドの人も滅多にここには来ないの。だから、中は獣やヒルチャールの巣窟になってるかもしれないね。はぁ……風魔龍でさえ自分の神殿を捨てた程だし……」

「『自分の神殿』とは……?」

 

 失言だったのか、空の疑問にアンバーは少し狼狽える。

 そしてとても言いづらそうに、その事実を口にした。

 

「あっ……えっと、実はね……私もショックなんだけど……風魔龍はかつて『四風守護』の一つとして数えられていたの」

「えっ?」

 

 驚きの声をあげるパイモンと、目を見開く空。

 疑念が空の頭の中を支配する前に、アンバーは大きな声で話題を変えた。

 

「この話は置いといて、どう? 何か感じた? ここの『風』、少し変わってる……、中へ入ってみよう、旅人さん。気をつけて、龍の力が影響を及ぼしているから」

 

 疑念はともかく、風魔龍がモンドに暴風で襲っているのは事実。それを振り払うために、モンドの人々を守るために、彼等が動いていることも。

 空は疑念を一時取り置いて、神殿に足を踏み入れた。

 そこは先に行く扉がしまっていて、どうも八方塞がりのようだ。

 

「あの操作台を使えば、扉は開くよ」

 

 アンバーの言葉に、空は扉の前にある石のような操作台をを見る。それに触れると、先に進む扉は開いた。

 扉の向こうへ行くと、道は茨のような物で阻まれている。空を見上げると、そこには。

 

「見えた……神殿の最深部だ!」

 

 そこが、今回の目標地点。

 しかしこの茨をどうやって取り除こうか。空が悩んでいると、アンバーは空の前に躍り出る。

 

「ここは私に任せて」

「え?」

 

 パチリとウインクしたアンバーは弓を構える。そのままの状態で数秒過ぎると、矢先には炎の元素力が集まった。

 その矢を茨に向かって放つと、茨は燃焼し始めた。

 

「そうか……茨って燃えるんだっけ」

「うん、だからこういう時は私に頼ってね。さあ、先に進もう!」

 

 先に進めば、またも茨で道は塞がれていた。アンバーがいなければ進めなかっただろう。

 燃やし尽くされた茨を踏み抜きながら、空は先に進む。これ以上道はなく、落下して進むようだ。幸い空には風の翼がある。

 

「下にヒルチャールがいるぞ! 盾と棍棒を持ってる……元素視覚で見てみようぜ」

「えっと……ああ、見えた。緑色?」

「緑色は草元素を表してるんだ。草元素は炎元素で燃やせるよ。私がヒルチャールの盾を燃やすから、旅人さんはヒルチャールを倒してくれる?」

「分かった」

 

 アンバーに続いて空は飛び降り、地面に着地する。一足先に着地していたアンバーがヒルチャールを狙い撃つと、ヒルチャールの盾が燃える。

 慌てて火を消そうとしているヒルチャールに、空は風元素で攻撃する。

 そして吹き飛んだヒルチャールに肉迫し、剣を一振り。崩れ落ちたヒルチャールを見て、空は剣を背中に戻す。

 

「まずい! 角笛の音! きっと、さっきの戦闘のせいで気づかれたんだ。でも……こういう状況に陥った時のために、秘密兵器を用意してきたの。その名も、爆発人形『ウサギ伯爵』!」

 

 アンバーが投げたウサギ伯爵は、襲ってきたヒルチャール二体を引き付けた。その隙に空とアンバーは体勢を立て直し、難なくヒルチャールを撃破した。

 二人とパイモンは、ヒルチャールが出てきた部屋に侵入し、そっと様子を伺う。

 ヒルチャールは4体。近くには……

 

「あれって……火薬がつまったタルだよね? うん……矢で撃てば起爆できると思う!」

 

 アンバーがタルを起爆させて奇襲を仕掛けたと同時に空は走り出す。タル爆発に巻き込まれたヒルチャールが倒れている所に飛ぶように、空は無傷のヒルチャールに重撃を放つ。

 そしてそこから、元素爆発!

 

「風邪と共に去れ」

 

 悲鳴と共に、ヒルチャールは崩れていく。

 炎元素の影響を受けた竜巻は高威力だ。あっという間にヒルチャールを殲滅した。

 先に進もうとした三人は、そこで道が途切れている事に気が付いた。三人が見上げれば、

 

「高いね……上に何かあるみたい」

「でも、どうやって行くんだ? ……ん? あれは、炎元素の石碑? 強い元素で攻撃すれば、起動させられるかもな!」

「アンバー、お願い」

「まっかせて!」

 

 石碑が何かは知らないが、これみよがしに置かれているなら、きっと何か打開することの出来る装置だ。

 空は炎元素を操るアンバーに頼んで起動して貰う。すると、無風だったそこに風域が現れた。

 下から上へと吹き抜ける風。この強さなら、きっと神殿の最深部まで行けるだろう。

 風の翼を広げて飛び降りると、吹き上げる風が空を上空へと連れていく。

 神殿の最深部へと降り立った三人は階段を駆け上がる。そこには、何か力を放つ石が設置されていた。

 

「龍の気配がする。あれが力が集まるポイントかな? よしっ、壊そう!」

 

 空が剣を振るえば、その石はすぐに破壊出来た。

 

「ふぅ……疲れた。でもこれで、少しはジンさんの役に立てたと思う。以前なら、城内の安全を死守することはできた。まぁ、それもジンさんの力があればこそなんだけど。でも今、風魔龍が直接城内を襲うような事がああったら……」

 

 そこでアンバーは、声色を変えて、誰かの真似をするような仕草を見せた。

 

「『風向きが変わったのなら、策も変えるべきよ』」

「いい言葉だ」

「これはリサさんの口癖だよ。そうだ、前に話した『四風守護』の話だけど――過去の歴史に興味があったら、リサさんに聞いてみるといいよ」

 

 なるほど、確かにそうだ。

 先程まで疑念を抱いていたけど、わざわざ教えてくれるのなら、単純にアンバーが言いたくなかっただけだろうか?

 空は疑念を小さくする事にした。

 

「……先に言っておくけど、私が歴史苦手とか、そういうんじゃないからね! 図書館司書の知識が……偵察騎士を上回っているのは、当たり前のことでしょ?」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 空が次に向かうのは、北風の狼の神殿。

 モンドから近い順に回っていこうという訳だ。そこで待っていたのは、リサではなくガイアだった。

 リサだったら風魔龍や過去のことについて聞こうと思っていたので、空は少し残念に思う。

 

「来たか。近くに来てくれ、何か臭うか?」

「……何も」

 

 空は少し周りの匂いを嗅いでみるが、特に何も感じない。

 

「この神殿で、少し予想外の事があった。スライム、ヒルチャール……そして……風魔龍が残した魔力の繋がり。ははっ、中はきっと賑やかになっているだろうな」

「危ないのか?」

「ああ……賑やかだが、危なくはない。『北風の狼(ボレアス)』の神殿が、こんな風になるなんて実に残念だ」

 

 本当にそう思ってるのか分からない。

 腹黒というか、人を弄んでるというか、人の反応を見て遊んでるような人だ。

 空はちょっとだけガイアが苦手だなあと思った。

 

「行こう、少年。『四風守護』は祀られなくなったが、古の風が消えることは無い……。『四風守護』の周りを掃除してやろうか」

 

 しかしそれと今回の仕事に別だ。こくりと頷いて、空は神殿の扉を開いた。

 神殿に足を踏み入れ、階段を上る。すると、ガイアは空に笑って言った。

 

「さてと、俺が騎士団の戦い方を見せてやるぜ」

「……わかった。俺は援護に回るよ」

 

 騎士団は弓使いのアンバーの戦闘しか見ていない。ガイアは空と同じ片手剣タイプだ。何か今後の参考になるかもしれない。

 神殿の先に進むと、前回と同じように上空に何かが見えた。

 

「俺の推測が正しければ、神殿の突き当たりはそこだ」

「何でわかるんだ?」

「経験だ。……長年後片付けをしていた経験だよ」

 

 問いかけたパイモンが、経験ってすごいな……と呟いた。

 先に進む道がなく、落下して進む。下は水場で、ヒルチャールが三体。

 

「大人しくしやがれ」

 

 ガイアが元素スキルを放つと、水に浸って湿潤状態だったヒルチャールは凍結反応を起こす。しかし二体しか凍らせる事が出来なかったため、空は元素スキルを放つ。

 

「……風刃!」

 

 空の元素スキルによる拡散で三体が凍結反応を起こす。

 そこをガイアが剣を振るい、氷砕きを起こしながらヒルチャールを倒した。

 そこからまた神殿を進みながら、ガイアは話し出す。

 

「旅人……お前は神の目を持っていない。そうだろ? どうやって元素の力を使ってる?」

「不思議な現象だよな」

 

 そこで、一度会話が止まる。

 道は火炎放射器から放たれる炎で塞がれている。ガイアが元素スキルで攻撃すると、それは一時的に停止した。

 二台の火炎放射器を停止させて、三人は進む。

 

「ふぅ……やっと着いた」

「前に道がない。風域を利用して上に登ろう」

 

 ガイアの提案に乗り、空は風の翼を広げて上昇する。

 登った先では、閉じた扉と操作台。操作台に触れて扉を開ければ、そこには大きな炎スライムが一体。そしてネイビーの石が一つ。

 

「水の琥珀だ! あれを砕くと、一部に雨をふらせて範囲的にに湿潤効果を付与できるぞ!」

「へぇ……じゃあ、あれを砕けば炎スライムも、ガイアは凍結させられるの?」

「勿論だ。やってみせようか?」

 

 はははと笑いながらそう言ったガイアに、パイモンが目を輝かせる。

 それを見た空は、ガイアに頷いた。

 

「随分と甘いなあ」

「パイモンは俺の仲間だから」

「た、旅人……! オイラはおまえのそういうところが好きだぞ!」

「俺、パイモンのそういうところは嫌い」

「なんでいきなり!?」

 

 知り合って二ヶ月経つ仲間に旅人呼びされたくない。

 

「早く倒そう」

 

 けらけら笑っているガイアを追い抜いて、空は水の琥珀を砕いた。

 雨が降り、炎スライムの炎が蒸発する。ガイアはその炎スライムにむかって元素スキルを放った。

 

「凍れ」

「おお〜、ほんとに炎スライムが凍ってるぞ!」

 

 手を叩いて喜ぶパイモンに、空は小さく微笑んだ。そしてその後に真顔になった。

 

「炎スライムが凍ると、そのまま食えそうだな……じゅるっ」

 

 生きたままスライムを踊り食いし始めたりしたら、絶対に止めさせようと空は決意した。

 危ない目付きでスライムを見るパイモンを引っ張って、空はガイアをちらりと見る。心得たように、ガイアは何処からか現れた炎スライム数体を蹴散らして、空の隣に並んだ。

 炎スライムを倒した事で開かれた扉の先は、床に溜められた水によって阻まれていた。水底にはトゲがあり、泳いで渡ることは出来ない。

 

「……ガイアって、水を凍らせることはできる?」

「当然だ。そこに気付くとは中々やるな」

 

 空が言い出すまで言わないつもりだったらしい。

 じとりとガイアを見るも、笑うだけだ。空は溜息を吐いた。やっぱり苦手だ。

 

「そういえば、知ってるか? 風魔龍はかつて『四風守護』の一つでな。詳細は俺もよく知らないが、興味があるなら代理団長にでも聞いてみるといいぜ」

 

 流石は代理団長というべきか。知識もあるのだなと空は思う。

 風神や妹のことも、知っていたらいいけど。

 リサに聞いて、分からなかったらジンに聞いてみよう。

 歩きながら話していた三人は、そこで足を止める。視線の先には、力を纏う石がある。

 

「風魔龍は、あれで力を吸い寄せてるのか?」

「可能性はある。さっそくやるぞ」

 

 空がその石を砕くと、ガイアはぱちぱちと拍手する。

 

「おおっ! いい動きするじゃないか。まさか有能な戦士だったとはな。神殿での戦いは勉強になったぜ」

 

 褒められている気がしない。

 空は複雑な気持ちになった。

 そもそも騎士の戦い方を見せてやると言っていたのは誰だったか。ガイアである。

 逆に空から勉強しないで欲しい。

 

「……こちらこそ」

「はははっ、騎士の『謙虚さ』も兼ね備えているとはな。お前がモンドを救う雄姿、きっと自由の都の新たな伝説になる。俺は騎士団本部にいるから、暇な時いつでも来てくれ」

 

 多分行かない。

 

「そうだ……いい酒場を知っているから、そこでもいいぞ?」

 

 酒は飲まないから行かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三人は神殿で一息ついてから、また話し出す。

 

「何とか収穫はあった、だろ?」

「風魔龍から遺跡を一つ奪うことに成功したな」

「ここからは俺の片付けの時間だ。他に用があるなら先に戻っていいぞ」

「じゃあお先!」

 

 

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