女神のミスで死亡したオタ女子の私が、BLを求めて異世界転生したら百合展開が多い件〜無駄に高性能にされたんだけどそんな事よりBLを寄越せ。美形だらけの世界だから正直妄想が捗るんだが〜   作:くろひつじ

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常識ってある程度は大事だと思うんだよね

 

 朝ごはんを食べる為に魔王ちゃんの私室に御呼ばれしたのは良いんだけども。

 えーと、うん。魔王の食事だから豪華な物が出るんだろうなーとかいう予想はある意味正解というか。

 

「わぁ! 今朝のご飯も美味しそうだね!」

「少し多めに作りすぎてしまったので丁度良かったです」

 

 まさか魔王の手料理とは思わなかったわ。

 いや、これ手料理って言っていいのか?

 

「勇者ちゃんの好きなモンブランケーキもありますよ」

「ありがとう! やっぱり魔王ちゃんの手作りが最強だよね!」

 

 うん。手作りなんだろうけどさ。

 全部お菓子なのはどうかと思うぞ。

 しかも全てにおいて勇者ちゃんへの愛がうかがい知れる飾りつけだし。

 黒い剣型チョコレートケーキとか『マイスイートハニー勇者ちゃん』っとか書いてあるし。

 せめてそこは名前書けよ。

 

「もしかして先生は甘いものが苦手でしたか?」

「いんや、好きだけどさ。もう少し栄養バランスの良いものを食べた方がよくない?」

「ああ、それは大丈夫ですよ。私も勇者ちゃんも食事を必要としていませんので」

「は?」

「大気中の魔力だけで生命活動を維持できるんです。食事は娯楽ですね」

 

 ナチュラルに人間やめてんなこいつら。

 いやでも、魔王ちゃんはともかく勇者ちゃんって人間なんだよな?

 レベル高いからなのかなー。

 

「ですのでご心配なく。お飲み物は紅茶で良かったですか?」

「あ、うん。ありがと……う?」

「勇者ちゃんは角砂糖五個のカフェオレだよね?」

「うん! 魔王ちゃんはブラックコーヒーでしょ? こっちで入れておくね!」

「ありがとう……先生? どうしました?」

「いや、よく転ばないなーと思って」

 

 狭いキッチンを右往左往しつつも、二人の両手は繋がれたままである。

 魔王ちゃんが手を上げたらその脇から勇者ちゃんが手を伸ばし。

 勇者ちゃんがひょいと飛びのくと同時に魔王ちゃんがヤカンを手に取る。

 すごく息の合ったコンビネーションだ。

 

 これはあれだろうな。普段からこうしてんだろうな、この子たち。

 あんまりいちゃつかないでってお願いしたんだけど……これが二人にとっての当たり前なんだろう。

 

 しっかしまー、見てる分は面白いな。

 元気でボクっ子、活動的でよく笑う赤い髪が特徴的な勇者ちゃん。

 お淑やかで礼儀正しい、金髪色白で物静かなお姫様系の魔王ちゃん。

 見た目は本当に正反対なのにこれだけ仲が良いのは微笑ましい。

 GLも見てる分は被害が無いし。てぇてぇ。

 

「慣れていますので。さぁ準備が出来ましたよ」

「いただきまーす!」

「あ、じゃあいただきます」

 

 うながされるままに勇者ちゃんの似顔絵が描かれたショートケーキを皿に乗せる。

 圧がすげぇなこれ。イラスト上手すぎて食べにくいわ。

 フォークで切り分けて一口……うわぁお、あっま。

 なんだこれ、死ぬほど甘いんだけど。

 あ、そういうやカフェオレに角砂糖五個とか言ってたな。勇者ちゃんって相当甘党なのかもしんない。

 何にしてもこれはちょっときついな。甘いものも嫌いじゃないけどちょっと尋常じゃねぇわこれ。

 一食で一週間分の糖分を摂取できそうだ。

 

 目の前の光景もあわせてね。

 

「はい勇者ちゃん、あーん♡」

「あむっ! うん、美味しい! 魔王ちゃんも、あーん♡」

「はむ……ふふ、おいしい♡」

 

 うーん。美少女同士で食べさせ合ってる光景って糖度高いなー。

 なんか周囲にハート浮いてるし。あれは幻覚なのか魔法的な何かなのか。たぶん後者だろうなこれ。

 見てる分は芸術鑑賞的な感じで目の保養なんだけど、目の前でやられると対応に困るな。

 アメジストたん達くらいの距離感なら構わないんだけどさ。

 あー……あとであの二人に会いに行こうかな。癒しが欲しいわ。

 

「ん……ちゅっ、んぁっ♡ ダメだよ勇者ちゃん、ご飯のあとでね?」

「えへへ、お菓子も魔王ちゃんも一緒にいただきまーす!」

「や、あんっ♡」

「はいアウトー」

 

 スパァンッ!

 

 インベントリから取り出したハリセンで勇者ちゃんの後頭部を迷わずひっぱたいた。

 目ぇ離した隙に何やってんだお前ら。

 

「あいたー……え、何がダメなの?」

「まずは魔王ちゃんの胸から顔上げようか」

「でもフカフカしてて気持ち良いよ? ここ触ったら魔王ちゃんも嬉しそうだし」

「ふぅんっ♡」

「黙れ。いいからどけ」

 

 さりげなく手を動かすんじゃない。禁書指定されるだろうが。

 あと地味に喜んでんじゃねぇよ魔王。

 

「良い? さっきも言ったけど人前でえっちなことしちゃいけません」

「あ、そうだった。でもなんでダメなの?」

「説明が難しいんだけど……えっちしてる時に魔王ちゃんが他の人見てたら嫌でしょ?」

「それは嫌だ!」

「それに、魔王ちゃんの特別な姿を他の人に見られるのって嫌じゃない?」

「たしかに! なるほどね!」

 

 おぉ、分かってくれたか。案外聞き分けは良いんだよなこの子。

 

「あ、でも先生と一緒なら嫌じゃないよ?」

「だから私を巻き込むんじゃ……あれ、魔王ちゃん?」

 

 こっそり人の背後に回って何してんだ?

 

「いえ、ちょっと先生に拘束魔法でもかけようかと。一度やっちゃえば先生も慣れてくれるかなって」

「魔王ちゃんナイスアイデア! 先生も一緒ならみんな幸せだよね!」

「うふふ、抵抗しても無駄ですよ、私のレベルは50なので」

「……そぉい!」

 

 女神直伝! 緑色のトレイの角で頭を殴る攻撃!

 

「あいたぁっ!?」

 

 よっしゃ。二話目以来の登場だけどだけどちゃんと再現できたぜ。

 

 ……あれ? 二話目ってなんだ?

 まぁいいや。とりあえず魔王の脅威は去った訳だし。

 

「あれ、なんで動けるんですか? 拘束魔法はちゃんと効いてるはずなのに」

 

 うーん。拘束魔法が効かないのってSTRとINTとどっちの効果なんだろうね。

 あ、状態異常無効化さんの仕事かもな。

 何にせよ私にそういうのは効かん。たぶん。

 やばそうだったらアテナとかライラが助けてくれるだろうし。

 ……どうせ見てんだろうなーあいつら。

 

「理由なぞ知らん。それより無理やりしちゃダメでしょ? ちゃんと相手の了承を得ること!」

「わかりました……では次は不意打ちで(ぼそり)」

「……魔王ちゃんさ、もしかして常識が無いんじゃなくて知ってて守ってないだけ?」

 

 無知な勇者ちゃんとイチャつくためにルールを捻じ曲げてるだけじゃねぇかこれ。

 よく考えたらこの子って礼儀作法とか知ってるもんな。

 魔王って事は魔界出身なんだろうし、欲望に忠実でも何もおかしいことは無い。

 

「……な、何のことでしょうか」

 

 あ、目ぇそらしやがった。確定だな。

 

「これ、勇者ちゃんにばれたらどうなるかなー(小声)」

「ほら勇者ちゃん、ちゃんと座って大人しく食べるのがマナーですよ?」

「え? あ、うん! わかった!」

 

 ふむ。今度からこの路線で教育していくか。

 美少女同士の絡みとか目に毒だから自重させた方が良いし。

 私個人が見て楽しむ分は別に問題ないんだけどね。

 ただほんと、いい加減BL分がほしいんだけど。

 

「あ、そうだ。魔王ちゃんに聞きたいことがあったんだけどさ」

「はい? なんでしょう」

「私が人間の町に行くのって問題ある?」

 

 何か前に問題があるかもしれないって止められたんだよね。

 でも人間の町ならここより男性が多いかもしれないし。

 

「あぁ、それでしたら大丈夫ですよ。先生の行動記録は兵士からもらってますし、素行的にも問題ありませんから」

「あれ、ちゃんと王様っぽいこともやってんのね」

「魔王ですから」

 

 意外……でもないか。しっかりしてそうだし。

 

「んじゃ近い内にちょっと遊びに行ってくるわ。その間良い子にしててね?」

「……前向きに善処します」

「他の人からちゃんと話聞くからな? やらかすんじゃねぇぞ?」

「はぁい。ちゃんと周りにばれないようにしまーす」

「ん、それで良し」

「え、良いんですか?」

「人に迷惑かけないならそれで良いよ。あとは好きにやんなー」

 

 二人は合意の上でやってんだし、それを第三者がとやかく言うのもおかしな話だ。

 特に問題が無いなら好きにさせた方が良いだろう。

 こっちとしては勇者ちゃんが最低限の常識を身につけてくれれば良いだけだし。

 

「……先生って変わった方ですね。今までの教育係とは少し違います」

「適当なだけよ。それか他の人が真面目なだけ」

「ふぅん。先生、本当に三人でえっちなことしてみませんか? 私、興味が沸いてきました」

「それはお断り。二人だけで濃密に楽しんどけ」

「ではまたお誘いしますね」

 

 にっこりと。無邪気を装ってそんな事を言う魔王に頭痛を感じながらも、まぁ何とかなるかなと思えてしまうあたり私は楽観的なんだろう。

 さーて。それよりも、だ。

 問題はこの糖分過剰接種状態の朝食をどう片付けるかだな。

 ……食うしか、ないんだろうなー。

 

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