幸運の女神に嫌われた男が終わった遊戯王GXに転生する 作:SOD
察しが良い人なら多分今回で分かりますが、分かっても言わないでね(笑)
俺は自分を、不幸とも幸せとも分けることは出来ない。
家庭環境は間違いなく下の下に相違ない。
これを否定出来るのは恵まれない子どもたちとか括られている類の生活に身を置いている者たちくらいだろう。
中学の段階で既にどうにかして賃金を稼いで、飯代や教科書代その他諸々必要な全てを賄っていた。
ハッキリ言うが、犯罪行為もした。カツアゲで潤っているような奴を背後から狙って財布の中身を強奪したり、コンビニの廃棄弁当を盗んだりもした。あれ一応犯罪らしい。占有離脱物横領罪とか言ってたか?
だが、今のアルバイト先の棟梁と出会った俺は紛れも無く幸運だった。
あの人に出会い、雇ってもらった恩は一度死んだくらいじゃ忘れられなくて、俺の人生の指針は、あの人が歩んで出来上がった道しるべと、遥か先に立つ本人の背中となった。
デカくて、偉大で、オネエで、マッチョで。あとハゲ。本人曰くベリーショートらしいが、あれはハゲですよ棟梁。
まあ、そんな訳で、人生は幸運と不幸の両方が存在しているというのが、俺の回答になった。
だが両立は崩れた。俺の幸運は引き裂かれ、俺に残っているのは不幸の種だけだった。
だから俺は奴を決して許しはしない。
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朝目を覚まして、カーテンを開け、日差しを浴びながら寝ぼけた頭の覚醒を促す。
これが私の朝の習慣だった。
アネモネ「……………久しぶりの、朝の陽射しだ……。うん。やっぱり気持ちいい……」
しばらくして、完全に身体が起きて、タンスから下着を出して足を通す。
顔を洗って、歯を磨いて、髪にクシを通す。
割り振られたブルー女子寮の部屋に備え付けられていた冷蔵庫に、昨日のうちに買っておいた食材を取り出す。
それを洗うでも皮を剥くでも無く、エコバックに入れて、その他の必要な物も持って、部屋の外に出る。
アネモネ「…………………ずっと迷ってはいたけど、仕方ないよね。こればっかりは。」
趣味みたいなものなんだよ……。
習慣だったものなんだもの……。
落ち着かないから。
せっかくだから。
チャンスだもん。
いろんな言い訳を重ねながら、私は寮の外へ足を伸ばして、そのままアイツが寝ているオシリス・レッドへ向かって歩く。
今は5時48分。だから今頃アイツはきっと………。
朝起きて、水を飲み、用を足して、顔を洗って、ジャージに着替える。
まだ朝日も登らぬ内から外へ出てランニングを始める。
昨日までと同じ、俺の朝のルーティン。
拓野「…………さすがに、周囲が海なだけあって、景色の質は比較にもならんほど上質だな。」
しばらく走ってふと景色に目を向ければ、海は深海の濃い青と、登りかけの朝日を混じらせた薄明るさと僅かに霧を含んだ、境界を曖昧にした暗くも澄んだ
拓野「なるほどな。自然に囲まれ、空気は澄み切って……ランニングコースには事欠かない。
デュエルアカデミア、良い場所だな。」
外周を一周し、充てがわれたレッド寮に後付で建てられたであろう個室に戻った頃には、時刻は6時15分。
気分良く走ったおかげか、普段よりも早く予定の距離を走りきってしまった。
これからシャワーを浴びても、寮の朝食の時間には早い。
拓野「さて、どうするか……うん?」
トントントンとテンポ良く鳴る、何かと何かを軽く打ち付けあったような音。
そして、味噌の香り……?
拓野(………どういうことだ?俺の部屋には不必要に広い割に、俺以外に誰も住んでいないと聞いているが)
少しだけ警戒しながら、匂いの元へ歩み寄る。
そこにいたのは、俺をこの学園に入学させた元凶がいた。
アネモネ「あれ?いつもより早いね」
拓野「何をしている、死神」
アネモネ「アネモネだってば。本当にアンタって、興味ないことは覚えないよね。」
拓野「………何だと?」
何だ、こいつ。昨日と雰囲気が違う……リラックスしている?バカな…昨日の今日でそれはおかしい。
アネモネ「はい、お水。」
拓野「…………。」
アネモネ「どうしたの?いつもランニングの後は水飲んでるじゃん?いらないの?」
拓野「…………お前、いったい俺をどこまで監視していたんだ」
アネモネ「監視なんてしてないし。早く受け取って欲しいんですけど?そろそろかつお節取り出さないと、お味噌汁の味が濁っちゃうよ?」
拓野「……………。」
今更この水で俺をどうこうするとは考えにくいが、とりあえず受け取るだけ受け取って机に置いておいく。
アネモネ「あとはお味噌を入れて…っと。良し。こんなもんかな。
今朝は卵焼きどうする?ネギ入り?チーズ?カニカマ?」
拓野「そもそも何故当たり前のように俺の部屋で飯作ってんだテメエは?」
アネモネ「そりゃあ、習慣だから。」
拓野「テメエに飯作らせる習慣なんざ俺にはねえぞ」
アネモネ「それは、
拓野「忘れているだと?」
カポン、と鍋に蓋をした死神は、俺に向き直って
アネモネ「…………ほら、このお味噌汁。具は分かる?」
拓野「知るか。興味もねえ」
アネモネ「じゃあ、今焼いているお魚は?」
拓野「以下同文だ。」
アネモネ「うん。そうだろうね。アナタは私が朝ごはん作っても、別に気にしてなかったもんね。」
拓野「何を言ってやがるんださっきから」
アネモネ「いっぱい頑張ったんだよ。アナタに食べてもらうの。
朝は食べずにいる人だったけど、それじゃ身体に悪いから。
私は料理全然上手じゃなかったから、まず勉強して、練習したんだよ。
アナタは一度も褒めてくれなかったけど。」
拓野「記憶の捏造が激しすぎんだろ」
アネモネ「でも、食べ残しだけはしなかった。
そんな些細なことですら、幸せだったなあ………」
拓野「………付き合ってられん。」
踵を返して、部屋を出ようとする。
起きて寝言言いやがって、気味が悪い
アネモネ「--早く思い出してくれないと『殺しちゃう』よ?」
拓野「---!??」
振り返ると、そこにアイツの姿は無かった。
『ご飯、ちゃんと食べてあげてね。今朝はアナタの好きな、大根の細切りのお味噌汁だよ。
毒なんて入ってないから、拒絶しないで欲しいな。
幸運はずっと、アナタのそばにいるよ』
ドスン--!
自分の身体がビクリとは跳ねて、衝撃はベッドが吸収したものの、眠っていた意識までは守ってくれるはずもなく。
俺は昨夜自分が眠ったベッドの上で目を覚ました。
拓野「…………夢か。」
つまりは、起きて朝の準備をして、ランニングをして帰ってきたことも、全て夢なわけで、必然、その後の出来事は徹頭徹尾ただの夢だ。
アネモネ《--早く思い出してくれないと『殺しちゃう』よ?》
拓野「どっちがだ………?」
お前が俺を殺すのか?それとも俺が?
いや、それはおかしい。俺がアイツを殺すことがじゃない。それはただの未来に過ぎない。
問題なのは、俺が殺すことは『殺しちゃう』なんて間違って引き起こす事故ではなく、俺の意思で引き起こすもの。
間違っても、いや、間違わず殺すがゆえに《殺しちゃう》などと咎められるような事柄ではないのだから。
ならば、アレはあいつ自身からの殺害予告--
拓野「………下らん。夢になにを真剣になっている。」
たかが夢だ。
切り替えて朝の準備をしよう。俺が望まぬこととは言え、数年ぶりに俺は学生として朝を行動するんだ。
どうせなら楽しむさ。
棟梁が言っていた。
『どうにもならないことを悩むなら、今の自分が何を楽しむべきかを考えなさい。アンタが一秒後に笑うのは幸運の女神だって止められない、アータ自身の自由なのだから!!』
さて、身体を起こして顔を洗おう。くだらない夢を忘れて切り替えよう。
俺がこのデュエル・アカデミアで何を成すのかは俺の自由だ。せめていずれ棟梁に再会した時に恥ずかしくない己でいよう。
拓野「……………なんだ?この匂い---ッッッ!???」
この匂いは…バカな!そんなことがありえてなるものか!!?
拓野「俺は夢から覚めたんだ…そんなはずが…………!!」
アネモネ「あれ?今日はランニング行ってないんだ。慣れないベッドで寝れなかったとか?」
拓野「な、何でテメエがここに………!!」
アネモネ「ハァ?見てわかんない?朝ごはん作ってあげてるのよ。」
スッとナベの中身をかき混ぜる死神の姿が、そこにあった…………。
拓野「…………味噌汁の具は大根ってか?」
アネモネ「--!!?」
心底から驚いた表情で固まるアイツと、その様子から中身が言い当てた通りだと悟る俺。
つまり、アレは正夢なのか?
アネモネ「………………えっと」
拓野「……………。」
アネモネ「……………」
拓野「……………。」
アネモネ「……その、味見してみる?」
拓野「いらねえ。」
脊髄反射で拒否する俺。当然だ。誰が自分を殺したやつの作った飯なんざ食えるか。
アネモネ「……………そっか。そうだよね。」
何故か?何故そんな消え入りそうな表情で
期待したとでも言うつもりか?
『ご飯、ちゃんと食べてあげてね。今朝はアナタの好きな、大根の細切りのお味噌汁だよ。
毒なんて入ってないから、拒絶しないで欲しいな。』
ありえない。だったらそもそも何故お前は俺を殺した?殺して当然だと宣ったその口で、俺にお前を受け入れろと言うつもりか?
ふざけている。
俺はお前を受け入れる義理など無いし、そもそもお前が俺を殺さなければ
俺を脅かし人生の全てと断言出来る幸福を奪ったのはお前だ!!
何故
拓野「お前は………何がしたいんだ」
アネモネ「…………。」
拓野「…………………俺を殺した、俺の幸福を奪ったお前が、俺に何を--」
アネモネ「言わない。」
拓野「はあっ!?」
アネモネ「言わないって、昨日も言ったし……」
拓野「ふざけんなやコラァ!!!!」
寝起きで頭が回らない。変な夢を見て混乱している。
それより何より、こいつの顔がずっと気に入らない。
拓野「何がしてぇんだテメエは!?人を殺して、命握らせて、飯作って!やってることが滅茶苦茶なんだよ!!!さっさと吐け!!!何が目的だぁ!?」
いらつく。昨日したように同じく、首元を掴んで恫喝する。
アネモネ「やだっ!!それだけは……っっ、言わない!!言わないっっ!!」
感じているのは恐怖か?痛みか?辛そうに顔を歪めて、涙目になって、それでも口を閉ざすのはなんだ?
分からない。知らない。いらつく。
俺は、火にかけてあった鍋に手を出した。
アネモネ「っっっ!!!?」
それだけで何をしようとしているのか、この状況で察しがつかないバカはいるまい。
例に漏れず、こいつも分かっている。沸騰したこの味噌汁と鍋で何をしようってのかを。
拓野「………吐け。」
スッと…頭が冷えていくのを感じた。
これからやろうとしていることを実行しようとした瞬間。俺の頭はひどく冷静になった。
冷静に……こいつを痛めつける算段を考えていた。
拷問は…大丈夫。知っている。難しいことなど何も無い。
アネモネ「……………」
拓野「吐けよ。」
さっきまでの喉が潰れそうな恫喝か嘘のように冷えている。
なんだか、とても気持ちが落ち着いている……。
ああ…もうさっさとやってしまえ。そうすれば楽になる。
ボロボロと涙を溢して、それでも俺の目を見つめるコイツを見なくて済む。
だから……!!!!
アネモネ「ーーしょ…に」
拓野「………ようやく言う気になったかよ」
何だ、言うのか。まあ、それでも良いか。多少は楽に--
アネモネ「いっしょに…たべよう?」
拓野「ッッーーーー!!?」
ああ…駄目だな。こいつは選択を誤った。
結局こいつが何を考えてるのか、知らないままだったな。
大変です先生!!!編入当日に暴力事件起こしたオリ主が、今度は傷害事件起こそうとしています!!!!
しかもこいつ今日バイトの面接で、初授業です!!!!
アネモネの正体が気になりますか?
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はい
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いいえ
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寧ろ棟梁が気になる