幸運の女神に嫌われた男が終わった遊戯王GXに転生する 作:SOD
デュエル・アカデミアに来てから、半月が経った。
朝早くからランニングで見る景色は、変わらずに美しいまま。
俺を殺した自称女神は、今日も変わらず台所で朝食の匂いを立たせ、俺はそれで腹を満たす。
その後、登校して、日の高い内から授業を受ける奇跡を感受し、何の役に立つかも分からない知識を知る贅沢を味わう。
意外なほどに満ち足りた、実にーー人
嫌いじゃない……いや、むしろ楽しい。
前世では、朝から食事なんて取れなかった。
学校なんて行ける人間じゃなかった。
勉強に集中していられる時間なんて無かった。
何かを学ぶ時は必要な時。必要な知識を必要な分だけ頭に入れるだけ。
使用用途不明、必要性微量。そんな知識を蓄えるだけの余裕なんて無かった。
部活なんてありえなかった。
こんなにも……不必要が、楽しい。涙すら出そうになる。でも。
ただ、貴方たちだけが……いない。
その現実が俺を酔いから醒ます。
拓野「…………。」
ベンチに座りながら受ける吹き抜ける風が気持ちいいとか、見渡す限りの景色とか、そんなことしか知らないこの世界が……愛おしい。
けど、それでも俺は……
拓野「………………俺は……」
ちょこ「はい、あーん。」
拓野「ぅん…?」
唐突に目の前にあらわれた彩刃部長が、俺の口に何かを含ませた。かと思えば……
ちょこ「ほ〜ら☆こしょこしょこしょこしょ……」
拓野「ん……んん…?」
口の中の固形物に繋がった白い棒を、歯ブラシか耳かき棒のようにして、俺の口の中をくすぐり始めた。
ちょこ「美味しい?そ・れ・と・も〜くすぐったいかな〜?」
拓野「………ふぁの…彩刃部長…?」
ちょこ「はーいオシオキー。舌の方を擦ってクニクニクニ〜!」
拓野「ーー!??」
さっきまでとは違った強めの刺激が舌を襲う。痛いとも辛いとも違うが、まるで知らない感覚に驚き、思わずのけ反った。
ちょこ「はいダメでーす。逃さないよ〜だ。」
拓野「!???」
俺の反射だけの身体の動きに遅れることなく、俺の片膝の上に座る彩刃部長。その動きは洗練されており、全く無駄がない。まるで訓練された兵士のような動きだ。
そして、目を細めて、少し真剣な目で俺を見つめながら……と言うより、口内を眺めながら、オシオキとやらを再開した。
ちょこ「……こちょこちょこちょこちょ……」
拓野「……………。」
逃げ出したいところなのだが、何をどうやっているのか、足が全く立ち上がらない。
いや、理屈は分かる。要は立ち上がるのに必要な動作全てを封じることで、結果的に『立ち上がれない』を実現しているのだ。額を抑えられると立ち上がれないというように。
問題はそれをこの疑似舌ブラシをしながら謎技術で実行している彩刃部長の技量だ。小学生と見紛う小さな身体のどこにそんなものを実行できる余地があるのか……。
まあ、何にしても抵抗は無理なようなので、諦めて当人が満足するのを待つしかない。
ちょこ「…………こちょこちょこちょこちょこちょ………」
拓野「………………。」
ちょこ「……こちょこちょこちょこちょ……………ねえ、拓野くん。」
大体30秒前後位で満足したのか、彩刃部長は俺に話しかけてきた。
舌の味から察するにロリポップであろう口内の何かも、押さえつけていた舌を解放している(未だ口の中には置いてあるのだが)ので、喋ることは出来そうだ。
拓野「何ですか?彩刃部長。」
ちょこ「名前で呼んでってのは、取り敢えず言い続けるけど置いておくとして……」
拓野(言い続けるのか……)
ちょこ「ここで何してたの?」
拓野「何…?座っていましたが…??」
ちょこ「うっわ〜〜☆今の他の部員が言ってたらちょこ、思わず☆ブッ飛ばしちゃう☆かも〜」
拓野「……そう言われましても……」
ちょこ「うん。そうだよね。分かってるよ。
別に煽ってるわけじゃないし、誤魔化してるわけでも無いんだよね?
でもね〜今、お昼休みなんだよね〜☆
高校生が学校の屋上……屋上?みたいなところに居て、ただ座ってましたーって、結構マジで異常だよ?」
拓野「そうですか?」
ちょこ「そうだよ〜。
ちょこもね、ご飯食べ終わってぼ〜っとしてましたーなら、全然分かるよ?お腹いっぱいで眠いな〜なら、全然有り。
けど、拓野くんの行動は致命的に間違っています。」
拓野「………?」
間違っている…?どういうことだろうか?休み時間は休む時間ではないのか?
ちょこ「うっわ〜☆マジで分かりませんって顔してるよー……これは本格的だなー……」
ジト目で苦笑いをしながら、俺の口に入れていたロリポップを自身の口に入れ直すと、彩刃部長は俺の膝から降りて、シートを持ってきて拡げている。
拓野「…………口の中が甘いな。オレンジ味か…?」
ちょこ「うーん、風強いなぁ…拓野くん。こっち座って。こっち」
拡げたシートの上をポンポンと叩く彩刃部長に従い、言われるままに移動して腰を下ろすと、木製の編み物…バケット?バスケット?……を真ん中に置いた。重石の代わりだろうか?
拓野「……ベンチで座っているのが異常だから、シートに座れと言うことですか?」
ちょこ「アハハ、今どきそんな一休さんみたいなことあるわけ無いじゃん〜☆」
拓野「……時間外部活動ですか?」
聞いたことがある。昼休みに部活動に熱心な者は、休み時間すら練習に充てると。
彩刃部長も服装からは想像も出来ないほど、サイバーズ・クラブに熱心だ。当たらずとも遠からずだろう!
ちょこ「あはは………。」
更に苦笑された。
お手上げだ。まるで意図が掴めない。
拓野「
ちょこ「そこはせめて、サレンダーって言って欲しかったなぁ……」
どうやら更に更にガッカリされたみたいだ。部活では無いらしかったから、敢えて言い方を工夫してみたのだが……どうにも俺には、円滑な人間関係やソレを形成する話術が不足しているらしい。
苦笑いしつつも、世話をしてくれている彩刃部長には、感謝の念が耐えない。経緯を込めて、これからも彩刃部長と呼び続けたいものだ。
ちょこ「なんだか今、ちょこの目的と拓野くんの思惑が世界規模でズレた気がするよ……」
拓野「よく分かりませんが……すみません。彩刃部長…」
ちょこ「もーぅ!!いい加減ちょこって呼んで欲しいのにー!!
付き合い始めて半月だよ!?そろそろ名前で呼んでよー!!」
拓野「しかし、交際しているとは言え、俺は部活動の後輩でもあります。他の部員に示しが付かないというか……」
ちょこ「ここ屋上!!誰もいないからー!」
その後、なんやかんやでバスケットの中身の彩刃部長手作りサンドイッチを頂く流れになった。
どうやら昼休みにあるまじき行動と言うのは、昼食を取らないでいたことだったらしい。
拓野「肉体労働もしていないのに、昼食を取る必要性があるんですか?てっきり俺は酒や煙草なんかの娯楽の一種なのかと……」
ちょこ「普通、人類はご飯を日に3食食べるものなんだよ?」
拓野「ダイエットで抜く人や、朝食べる暇のない日本人は今の時代爆増しているらしいのですが……」
ちょこ「うっさい!ちょこは今、健全な学生の話をしていますっ!」
拓野(主語が“人類“だったのは……ツッコまない方が良いのだろうか……)
ちょこ「それに、さっき独り言で朝ご飯もアカデミアに来たから食べるようになったって言ってたよね?拓野くん中学時代1日一食だったの?」
拓野「厳密には休日は水だけで過ごしていたので週5食…ですかね」
ちょこ「……………」
話すことが得意な彩刃部長、絶句。
そんなにまずいだろうか?当たり前過ぎてて分からなかった。
拓野「彩刃部長、人間、一日二日くらい食べなくても死には……」
ちょこ「ていっ!」
拓野「しむぐっーー!??」
サンドイッチを突っ込まれた。
ちょこ「あーもう、駄目だコイツ。目離してらんない。」
拓野「むぐむぐ。美味しい。パンが野菜の水気を吸わないように丁寧に塗られたマーガリンとマスタード、トマトの甘みが絶妙に……」
ちょこ「ーーそんなマトモな食レポが出来て何でそんな食生活してるの!?」
拓野「すみません。」
ちょこ「もういいよ!拓野くん朝は食べてるんだったよね。」
拓野「夜も食べてますね」
ちょこ「よしよし!偉いぞ〜!」
何故か頭を撫でられた。今の、『生きてて偉い』って言われる位ハードルが低い褒められ方したような気がするんだが……
ちょこ「と言うわけで、お昼はちょこが作ります!」
拓野「どうしてこうなった?」
ちょこ「休みの日はレッド寮にも行くからね!」
拓野「あ、すみません。休日はアルバイトで居ないので……」
ちょこ「休めー!休日は休む日だー!!」
拓野「休日は大体いつも10:00〜15:00時なので、とても楽ですよ。おかけで予習とか復習も出来るくらいで……」
ちょこ「…………拓野くん。ちょこ、暫く拓野くんについて回ることにする。キミね、目離した隙に野垂れ死にしそう。」
拓野(圧死はしましたね。五体不満足の遺体で)
ちょこ「というわけで〜しばらくはラブな学校生活編、ってことで〜取り敢えずはい、あ〜ん♡」
拓野「よく分からないけど、彩刃部長が望むなら、特に問題ないですね。サンドイッチも美味いですし。あーん。」
サンドイッチが今度はゆっくりと口に運ばれていく。
クロノス・デ・メディチ「ーーシニョール・拓野!!!!やっと見つけたノーネ!!今すぐ校長室に来て欲しいノーネ!!!!」
ーー食べることは出来なかった。
ちょこ「…………………。」
呼ばれたからには迅速に行動し、校長室へ入室する。何せ上司の呼び出しだ。飯を中断してでも行くしかない。雇われの生活など、こんなものである。
拓野「お待たせしました。一年生、オシリスレッド、杉田拓野です。」
鮫島「はいりたまえ。」
拓野「失礼します。」
ノックののち、許可を得て、一礼して、入室。常識ある者ならば流れるように出来る、当たり前の作法だ。
鮫島「突然呼びだして済まないね。もうすぐ他の者も……」
ちょこ「ーー鮫島アアアアァァァーーーー!!!!」
鮫島「ぐぶっふぅーーッッッッ!!!?」
グシャリ。クラウチングスタートからの、飛ぶような勢いの全身全霊ダッシュ膝蹴り。これを人中に刺さるようにクリティカルヒット!!痛くないはずなど無い!!!!
鮮血が舞い散る!!!!
クロノス「な、何やってるノーネエエエエエエーーーー!!!???シニョールちょこー!???」
ちょこ「ーー挨拶!!!!当たり前だよなァ!?」
拓野「………。」
ノックののち、許可を得て、一礼して、入室。常識ある者ならば流れるように出来る、当たり前の作法。
拓野「……棟梁が言ってたな……『当たり前』は、地元ルールだって。」
たまにラブコメ成分摂取しないと死んじゃうので、苦手な人は許して下さい。
締めはギャグにしたから……
好きなヒロインを選んで下さい。
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アネモネ
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ちょこ
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棟梁(w)