幸運の女神に嫌われた男が終わった遊戯王GXに転生する   作:SOD

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海馬「さあ、存分に来るがいい……!!」

 白い龍が飛んでいる。靭やか、かつ力強く羽ばたく白い翼で。

 対峙する決闘者を、空よりも青く、美しい瞳で見つめている。

 

 海馬「フゥン。ふつくしい……」

 

 白き龍を従えるのは、気高き貴公子。剣よりも鋭い切れ味のカードを構え、未来のルールにも遅れを取らない科学の盾を携えて、人の上に立つものの眼光を、眼前の決闘者に向けている。

 

 拓野「…………これが、青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)

 

 そう無意識に口にした赤い制服の決闘者は、白き龍に目を奪われながら、自分の手札に意識を戻す。

 

 拓野(天命……そんな妄想と逃避の思考に尻尾を振るわけじゃないが、これはそういう戦いか)

 

 これまで彼は、デュエルに対して『戦い』と認識していたことは無い。赤い制服の決闘者……杉田拓野にとって、このカードで行う対戦はトランプと同種の物。賭け事のツールでこそあれ、彼の認識にとって、これはゲームだった。

 そんな意識の中、初めて芽生える『戦い』という意識。

 ソレは原始から刻まれた男としての戦士の本能か。或いは、人のソレから外れた者の、古い記憶のせいなのか。

 

 海馬「我がブルーアイズを前にして、ようやくその寝ぼけた様子が消えたか。

 ならばこの俺に見せてみろ。キサマの転生者としての、この世界の常識を超えるデュエルを!! カードを一枚伏せてターンエンドだ!」

 

 拓野「…………」

 

 対戦者のエンド宣言を聞き、拓野の指は静かにデッキトップにかけられる。

 彼の瞳は、ギラギラと燃え上がり、醸し出す空気が変質する。

 

 

 

 拓野「ドローカード!! 来い、サイバー・ドラゴン!!」

 

 

 サイバー・ドラゴン ATK2100

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は戻って海馬がブルーアイズ・ジェットで学園を訪れた場面。

 

 鮫島「お待ちしておりました。オーナー。

 こちらの黄緑のオールバックの生徒が鳴海翔護くんで、こちらのオシリスレッドの制服の彼が、杉田拓野くんです」

 

 鮫島に促されて、拓野は一歩前に出てビシッと礼をする。

 

 拓野「始めまして海馬社長。お会い出来て光栄です」

 

 そして翔護は……。

 

 翔護「ふわぁ……眠い」

 

 ヒカリ「ちょ、ちょっとマスター! しっかりして下さいよ、海馬社長の前ですよ!」

 

 ツクシ「無理だと思うぞ。昨日は夜遅くまで起きてたし」

 

 伝説の決闘者など知らんとばかりに睡眠欲の心地良い誘いに抗う気もなくツクシに寄りかかり、ヒカリに怒られている。

 

 閻魔「おおおおお……!! これがあの海馬瀬人ですか……サイン貰えればあっちでもこっちでもガッポガッポ稼げそうですねえ! じゅるり……」

 

 ギリギリと紙ヤスリで胃を削られるような痛みを感じつつ、鮫島は海馬に話しかける。

 

 鮫島「そっ! それでオーナー。今回はどう言ったご用向きでお見えになられたのでしょうか?」

 

 海馬「フゥン。知れたことよ。オレの預かり知らぬところでデュエル・アカデミアに入学した異界のデュエリストを見定めに来た」

 

 胃を無数のアニサキスに齧られるような激痛を味わう鮫島を他所に、海馬はまるで気にも止めずに拓野の前に立つ。

 

 海馬「杉田拓野。キサマがこの次元に降り立ったデュエリストである以上、この世界の常識を打ち破る戦術を持っているのは必定。

 

 その力をオレに見せてみるがいい」

 

 拓野「承知しました。海馬社長。

 非才の身でありますが、全霊をお見せします」

 

 社長の言葉は神の言葉と言わんばかりにイエスマンをして、拓野はすぐに距離を離して海馬と対峙し、デュエルディスクを構えた。

 

 ちょこ「おお〜! 拓野くんが伝説のデュエリストとデュエルするのか〜! 頑張れ〜☆ ダーリンっ♡」

 

 拓野(未だよく分からないこのGX世界で、稼ぎ口が無くなるのは死を意味する。既に死んではいるが、動き、働き、飯が食える以上は生きる。棟梁との約束、死してなお違えはしない) 

 

 海馬「先行と後攻、好きな方を選ぶがいい」

 

 拓野「では、後攻を頂きます」

 

 海馬「ほう……? 敢えて後攻を選ぶか。いいだろう。

 

 ならば行くぞ!」

 

 

 海馬・拓野「「決闘(デュエル)!!!!」」

 

 海馬・拓野 LP4000

 

 海馬「オレのターン!」

 

 拓野(ーー!??)

 

 海馬の先行第一ターン。拓野は己の手札を確認し、目を見開いた。

 

 拓野(何だ……この手札は)

 

 幸運の女神の加護の一切を否定された拓野には、運良く手札が良いという事象は発生しない。これまでも散々な手札で騙し騙し戦って来た。そして、何だかんだどんでん返しを起こして最後には負けている。今回もその筈だ。その思考を疑うこともせずにいた。

 

 ならば何を慄く必要があると言うのか?

 

 

 

 海馬「いでよ我が魂のしもべ。

 

 ーー青眼の白龍!!!!」

 

 

 青眼の白龍 ATK3000

 

 

 

 

 

 

 

 時は冒頭に戻る。

 

 クロノス「マンマミーア!! 伝説のブルーアイズナノーネ!!」

 

 鮫島「まさかこんな近くで見ることが出来るとは!!」

 

 

 アナログなオッサン達がアナログな反応をしているが、若者たちは至極平然としている。

 

 転生者の翔護は珍しい物を見る顔をしてはいるが、それは言うなれば本物のブラック・マジシャン・ガールのカードや、ステンレスの通常モンスターのカオス・ソルジャーを見るような物。

 

 ヒカリ、ツクシも珍しいカードを見る以上の反応が無い。かつて最強の名を欲しいままにした威光は、若者には過ぎ去った過去なのだ。

 

 そんな中で拓野は

 

 拓野「…………」

 

 アネモネ「何であんな難しい顔してるんだろ? 手札が悪いのなんていつものことのハズなのに」

 

 ちょこ「そりゃ〜モネちゃん。いつもと違う顔をしてるんだから、いつもと違うことが起きてるってことでしょ〜☆

 

 ……例えば、物凄く手札が良い……とか?」

 

 アネモネ「それは無いし。あの人の運のなさは、あたしが完全保証するよ」

 

 ちょこ「あっはは☆ イヤ〜な保証w

 

 さぁ〜て、ダーリンはどんな風に伝説のデュエリストと戦うのかな〜」

 

 

 

 拓野(やはりおかしい……手札があまりにも都合が良すぎる)

 

 既に場に出したサイバー・ドラゴンを横目に、拓野は自分の手札を見る。

 

 

 拓野の手札

 

 サイバー・ドラゴン・コア 機械仕掛けの夜〜クロック・ワーク・ナイト〜 パワーボンド 一時休戦 サイバー・ドラゴン

 

 

 拓野(コアを召喚してサーチカードを手札に加えてからサイバー・エンド・ドラゴンまたはサイバー・ツイン・ドラゴンを融合召喚して攻撃すれば勝てる。

 

 機械仕掛け夜を場に出してコアと青眼の白龍でキメラテック・フォートレス・ドラゴンを出してサイバー・ドラゴンと総攻撃攻撃すればそれでも勝てる。

 

 倒せなくても一時休戦を使えば手札を補充しつつダメージを完全無効化して相手のターンを凌げる。

 

 こちらのモンスターだけフィールドから除去されても墓地のコアの効果を使ってフォートレスを喚べる。)

 

 ジワリと嫌な汗を掻きながら、海馬の場を見る。

 

 拓野(異常だ……こんな状況は)

 

 海馬「随分悩んでいるようだが、よもやこのオレに恐れをなしたか」

 

 拓野「ーーあ。

 手札から、サイバー・ドラゴン・コアを召喚。デッキからエマージェンシー・サイバーを手札に入れます」

 

 海馬「ふん。ようやく動いたか」

 

 拓野(ここからどっちのルートを取るべきか。いや、悩むまでもない。俺の幸運は死んでいる。あのリバースカードがモンスターの攻撃力を参照して効果ダメージを与えるようなカードだった場合、サイバー・エンド・ドラゴンでもサイバー・ツイン・ドラゴンでも、パワーボンドの効果で攻撃力を上昇する以上敗北が確定するんだ。

 

 他の他人ならともかく。俺にはこちらのプランしかない)

 

 拓野「永続魔法 機械仕掛けの夜〜クロック・ワーク・ナイト〜 を場に出します」

 

 クロノス「おお! アレは昨日ワタクシーがプレゼントしたカードナノーネ」

 

 拓野「この効果で、フィールドの表側表示モンスターは全て機械族になります。

 

 更に、こちらの機械族モンスターの攻撃力は500加算され、相手の機械族モンスターの攻撃力は500マイナスに修正されます」

 

 青眼の白龍 ATK2500

 

 サイバー・ドラゴン ATK2600

 サイバー・ドラゴン・コア ATK900

 

 海馬「ブルーアイズの攻撃力をサイバー・ドラゴンが上回ったか」

 

 拓野「更に、海馬社長の青眼の白龍と、俺の場のサイバー・ドラゴン・コアを墓地へ送ります」

 

 海馬「何だと!?」

 

 拓野「サイバー・ドラゴンを含む任意の機械族モンスターを墓地へ送り、エクストラデッキからキメラテック・フォートレス・ドラゴンを特殊召喚」

 

 キメラテック・フォートレス・ドラゴン ATK2500 

 

 クロノス「トレビア~ン! 早速クロック・ワーク・ナイトを使いこなしていまスーノ!! 流石はシニョール拓野ナノーネ!!」

 

 ちょこ「お〜! さっすがちょこのダーリンだ。この攻撃が決まればサイバー流としては文句無しのワンショットキルだね。

 

 ちょこ、この攻撃が決まったらダーリンと結婚して『赤の王』として名前を拡めるんだ☆」

 

 翔護「今なんか唐突に死亡フラグ立ったなオイ」

 

 

 海馬「おのれ貴様……ッッ!! よくも我がブルーアイズを……」

 

 鮫島「オーナーのブルーアイズをキメラテック・フォートレス・ドラゴンの召喚素材に使うとは……拓野くんも、恐れを知りませんね……」

 

 

 拓野「バトルフェイズに入ります。キメラテック・フォートレス・ドラゴンで、直接攻撃」

 

 

 クロノス「マンミーア!? まさかこんな一方的に伝説のデュエリストにシニョール拓野が!?」

 

 アネモネ「そんなバカな……何で幸運の無いあの人が、こんな!?」

 

 ヒカリ「ここで勝負が決まったら、本当にかっこいいんですけどね。マスター」

 

 翔護「ん? ああ、終わったら起こしてくれ zzz...」

 

 

 キメラテック・フォートレス・ドラゴン ATK2500

 

 海馬LP4000 

 

 主からの攻撃の命を受けたキメラテック・フォートレス・ドラゴンがエヴォリューション・レザルト・アーティアリーを解き放ち、海馬に襲いかかる。

 

 海馬「…………まるで己の勝利を確信しない目をしているな」

 

 その攻撃をどこ吹く風と、海馬は拓野に声を掛ける。

 

 拓野「はい。海馬社長がまるで己の敗北を感じていらっしゃらないので」

 

 海馬「フゥン……デュエリストとしての嗅覚は、まずまずと言った所のようだ。

 リバースカードオープン。破壊輪!!」

 

 海馬の場の伏せカードが開かれると同時に、サイバー・ドラゴンに首輪が巻かれ、あっという間に爆発した。

 

 海馬LP1500

 拓野LP1500

 

 海馬「フゥン」

 

 拓野「…………」

 

 

 

 クロノス「両者とも破壊輪で大ダメージナノーネ!」

 

 鮫島「そうですね……しかしこのデュエルは」

 

 ちょこ「やった〜☆ ダーリンのかっちだ〜☆」

 

 シズク「何だ? 伝説のデュエリストってこんなもんなのか……?」

 

 

 

 拓野「………………」

 

 海馬「場のカードが破壊され、自分の場か墓地に青眼の白龍が存在する場合、このカードは手札から特殊召喚出来る!!

 

 いでよ、ブルーアイズ・ジェット・ドラゴン!!」

 

 ブルーアイズ・ジェット・ドラゴンATK2500

 

 

 

 ちょこ「場のカードが破壊されたら特殊召喚出来るモンスター!?」

  

 ヒカリ「そんな反則みたいなモンスターがいるんですか!?」

 

 翔護「驚いたな……あんなカードあんのか」

 

 シズク「攻撃力はサイバー・ドラゴンの方が上なのに、攻撃表示で出してる……まさか更に効果があるのか?」

 

 

 

 

 海馬「さあ、存分に来るがいい……!!」

 

 

 

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