幸運の女神に嫌われた男が終わった遊戯王GXに転生する   作:SOD

4 / 22
アカデミアに編入する転生者って少ない気もする。


アネモネ「ーーーー言わないから。」

プオオオオオーーー!!!!!

何かが放出されている音がする。

 

鼻孔を刺激する磯の香り。

 

揺れる大地。

そしてーーーー

 

 

 

拓野(頭を支えている、柔らかい何か。)

 

 

目が覚めた。瞼の裏だけを見つめていた眼球が最初に認識した光景は……。

 

 

 

アネモネ「あ…起きた?」

 

 

 

俺を殺した幸運の女神が覗き込んでいた。

 

 

拓野「………………。」

 

拓野(思考が纏まらない。転生、したんだろうか?

ここは何処だろう?

何故俺はこいつに覗き込まれているんだ?)

 

 

あの時、寝起きのように散らかった思考を整頓して言語にしたらこんなものだろう。 

 

そして、そのうちに目の前のコイツが、自分を殺した張本人である現実をようやく思い出し、血の気が引いて、一気に冷静な思考を取り戻して、その場から飛び退いた。

 

 

アネモネ「きゃっ!?」

 

 

拓野「…………ここは何処だ。」

 

アネモネ「船だけど。」

 

拓野「船だと?」

 

言われて部屋の外に出てみると、周囲は一面翡翠色の海。

聞き慣れないウミネコの鳴き声と、寝ていた時より強く感じる磯の香り。

波に揺られる床。

 

 

拓野「………船だ。」

 

 

 

人生で初めて見る海を見渡しながら、アレが嘘を言っていないことを確認すると、隣にアイツが歩み寄って来る。

 

 

アネモネ「こういう場所で手荷物から目を離すと、無くすわよ。」

 

 

そう言って無感情に差し出してきたのは、見覚えの無い……いや、幸運の大女神が転生直前に渡してきたジュラルミンケース。

 

それを無言で受け取ると、取り敢えず中身を確認してみた。

 

まず目に付いたのは

 

拓野「何だ、このカードの束。」

 

アネモネ「デュエルモンスターズのデッキよ。」

 

拓野「……でっき??」

 

 

アネモネ「あー…そう言えばやったことないんだったっけ………えっとー…あ、あった。はい。」

 

 

ケースの中から取り出してきたのは、学校の教科書よりも分厚い本。

 

拓野「なんだそれ」

 

アネモネ「デュエルモンスターズのルールブック。

 

私達はこれから、デュエルモンスターズの学校。デュエルアカデミアに編入すんの。まあ、今はもう7月だから、編入してすぐ夏休みだろうけど。

 

だから覚えて。この遊戯王GXの世界でデュエルは基本中の基本だから。

 

それこそ、歩んだ歴史が違えば、住民登録にデッキが必要になるくらいに常識として浸透してるし。」

 

 

拓野「キチガイみたいな世界だ…子供の玩具を身分証明の代用品とは。」

 

アネモネ「違うし。このデュエルモンスターズは、子供の玩具だけど、精霊界と繋がるゲートの役割を果たしてるし、世界の命運を賭けた決闘にも使われる兵器なの。

 

なんなら宇宙で創造されたカードも幾つもあるし、人の命で創造したカードもある。」

 

 

 

拓野「何も違わないな。子供の玩具を兵器にするなんて狂ってるし、兵器を子供の玩具にするのも狂ってる。

 

卵が先でも、鶏が先でも、腐ってるなら全部同じだ。」

 

 

アネモネ「…………そうね。貴方もそうだもの。」

 

拓野「何だと?どういう意味だ。いや、そもそもお前は何で俺を」

 

アネモネ「ーーーー言わないから。」

 

拓野「あ?」

 

アネモネ「………言わないから。それだけは、絶対に。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

拓野「拒否権があると思うのか」

 

首に下がっていたアイツを従えるカードを手に取る。

 

アネモネ「ーーーー私は絶対に言わない!!!!!

首を絞められても、殴られても、犯されても………それだけは言わないから。

貴方が私のカードを使って言わせようとするなら、その前に舌を噛むから……」

 

 

拓野「……………。」

 

 

アネモネ「……………。」

 

 

拓野「……………。」

 

 

アネモネ「……………。」

 

 

暫く無言で睨み合う状態が続き………。

 

 

 

拓野「………いつか必ず、お前を殺す。」

 

 

 

手に持った“カード”を懐に戻し、差し出されたままのルールブックを開き、デュエルモンスターズのルールを読み込み始めることにした。

 

 

 

 

 

 

 

アネモネ「……………そう。」

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ましてから2時間が経過した。

 

確認したところによると、どうやら俺の身体は死の直前の状態の物を再生して、そこに俺自身の魂を浸透させて転生とするらしい。

 

 

となれば、炎天夏でタオルが絞れるほど汗を書いて肉体労働していた身体は、喉も乾いているし、腹も減っていた。

食事はフェリーの自販機で売っていた物で済ませ、そのついでに、戸籍を確認し、ルールブックを再度読み込み、デッキのカードも把握した。

 

 

だが、聞いたところによると、今乗ってるフェリーはあと1時間は目的地まで到着しないらしい。

 

退屈で仕方ない。

 

正直、アイツに自分から声をかけるのは気に入らないが…無駄に時間をかければかけるほど、棟梁達との再会が遅くなるだけだ。

 

 

殺されたことは忘れないが、利用できるところを私怨で捨てるのは、仕事の出来ない無能上司だ。

 

棟梁は言っていた。仕事に私情を挟むことなかれ………。

 

南無三……!!!!

 

 

 

俺は、看板で風に当たっていたヤツを見つけて、話しかける。

 

話し掛けた時、少しポカンとしていた気もする。

 

 

アネモネ「………え?もうルール覚えたの?」

 

 

拓野「ああ。デュエルモンスターズは二人用の対戦カードゲームなんだろ。

やることもないし、相手してくれ。」

 

 

アネモネ「…………意外。私にそういうこと頼んで来るんだ」

 

 

拓野「飯食ってる間に頭が冷えた。

 

 

お前を殺すことは忘れないが。

 

使えるものは使う。

使ったことのない仕事道具は、仕事の前に試しておく。

仕事道具は自身の手足と同じくなるまでは点検を怠るべからず。

 

……棟梁の教えだ。必要になる以上は…やる。」

 

 

アネモネ「本当に尊敬してるんだ」

 

 

拓野「………始めよう。」

 

アネモネ「そうね。」

 

 

 

さあ、人生初のカードゲームだ。

トランプすらしたことの無い人間の初プレイ。

ご笑覧あれ……。

 

 

 

 

 




女の子の膝枕って良いよね。


次回、初デュエル。
拓野とアネモネのデッキ……何にしようかな………???
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。