幸運の女神に嫌われた男が終わった遊戯王GXに転生する 作:SOD
クロノス教頭先生の案内で校舎へ向かう道中、俺の隣りには、死神が歩いていた。
アネモネ「幸運の女神だから。死神って呼ぶなし」
拓野「人の心を読むな死神」
アネモネ「聞こえてる言葉すら無視する薄情者に、死神呼ばわりされるの納得行かないし」
拓野「話を聞いても理解出来ねえんだよ。
なんでテメエが制服着てんだよ?」
アネモネ「そりゃあ、わざわざ受肉して一緒に船乗ってたんだから、一緒に編入するでしょ。
………ところで、私、この制服似合ってる?」
拓野「わざわざ人間の生活に混ざって、一体俺の何をフォローするつもりでいるんだ?
あと本当にそれ学校の制服なのか。俺の赤い制服と言い、完全にコスプレにしか見えねえ。」
それもオッサン受けを狙うタイプの水商売用。
アネモネ「水商売とか止めろし!傷つく生徒だっているんだぞ!?」
拓野「…………そうだな。この学校の女生徒全員がソレを強制的に着用させられていることを考慮しない発言だったな。
出来れば、今からでも質の悪い冗談だったと言われたほうが良かったがな。」
拝啓、棟梁様。
お元気ですか?私は今、学校に編入したと思っていたらイメクラに放り込まれた気分です。
いつか皆様に再会出来ることを心待ちにしておりましたが、現実になる日は、悠久の彼方と言った所でしょうか。
もう既に常識が違うのが痛いほど伝わってきます。
かつて運動不足解消と言って高速を走る資材トラックと並走して県を一つ跨いだ大工の姐さん方。どうか貴方方のメンタルを、私に分けてください……。
「アンタ達!!危ないよ避けて!!!」
拓野「ん?」
などと現実逃避をしていると、俺達は坂道を上っていたようで、上からオバチャンくらいの年代の声がかかる。
見上げると、積み荷が乗った台車が迫って来ていた。
恐らくはこの坂道を引いていた誰かが不幸にも落としたんだろう。
アネモネ「え?台車!?」
クロノス「マンマミーア!!??」
石やらなんやらが車輪に引っかかって、決して早くはない。
だが重量が分からない以上、言われた通り避けるのが無難だろう。
トントンと足場を蹴って、状態を確認する。
いい具合に固めやすい土だ。ピッチャーのマウンドを連想させる。
俺の手には贈り物のジュラルミンケース。あのくらいの台車の車輪なら、充分ストッパーの役目を果たす。
台車が大して早くないおかげで、ギリギリ間に合った。
アネモネ「え?何してんの!?止める気?
止めなし、怪我するよ!?」
拓野「人殺しといて、寝言ほざいてじゃねえよ。」
アネモネ「心配して言ってるんじゃん!ほら、早く脇に避けるし!!むぅーーっ!!!」
力尽くで俺を動かそうと腕を引っ張ってくる死神。
けど無理だ。物理的に俺を動かすには、力も重さも足りていない。
こっちとらバイトとはいえ大工の見習いだ。筋トレも欠かさない。
だから
拓野「盾にされたくなかったらとっとと退け。邪魔で目障りで鬱陶しい。」
アネモネ「酷っ!??死んでも生まれ変わってもこいつ全然変わって無いし!!!」
拓野「時間切れだ。退け。」
アネモネ「きゃっ!??」
受け止めるにも体勢とタイミングを図る必要がある。
これ以上邪魔されれば本当にケガするだけになる。アホらしいので、とっとと死神を蹴り飛ばして台車に向き合う。
拓野「準備はした。人事は尽くした。あとはそれなりになんとかなれ。」
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「凄いねえアンタ。まさか本当に台車を無傷で止めちゃうなんてねぇ」
拓野「うまく行って何よりです。」
クロノス「ワタクシは心臓が止まるかと思ったノーネ……」
積み荷のいくつかが溢れたが、大方問題無く、台車を止めることに成功した。
あとからやって来た中年のオバサンは、見た目の印象に反して息一つ切らさずに走って来た。
日頃からこういった力仕事をこなしているんだろうか。
「ありがとうね。でも、無茶してちゃ、いつか大怪我するから、気をつけるんだよ?
積み荷はもちろん大事だけど、生身のアンタと違って、取り返しは付くんだからね。」
拓野「そうですね。でも、止めなきゃいけない気がしたんです。これ、購買部の商品ですよね?」
「ああ。そうだよ。あたしは購買部のトメだよ。よろしくね」
拓野「やはり、アナタがトメさんだったんですね。
本日編入してきました、杉田拓野と申します。実はクロノス教頭先生に、トメさんを紹介して頂けることになっていたんです。」
クロノス「ああ!そうなノーネ!
実はかくかくしかじかカニソースなのーね」
トメ「そうだったのかい。そういうことなら、あたしは大歓迎だよ!
あとは校長先生に許可を貰って来てくれれば、いつでもバイトに来ておくれ。」
拓野「ありがとうございます。それでは、また後ほどお願いします。」
トメ「あいよ!それと、拓野ちゃん。」
拓野「?はい、なんでしょうか?」
トメ「そんな堅苦しい言葉遣いしなくても良いんだよ。
あんたのそれ、余所行きの言葉なんだろう?わたしは購買のオバチャン。バイトすることになったってね、わたしはアンタの先輩だけど、同僚なんだからね。
もっと肩の力抜きなよ。拓野ちゃん。」
拓野「…………はい。トメさん。
改めて、杉田拓野です。力仕事は慣れてるんで、よろしく使ってやって下さい。」
トメ「ああ!これからよろしくね。拓野ちゃん。
もしも校長先生が許可を出さないなら、わたしに言いなさいね!
絶対に説得してやるよ。大丈夫。校長先生はわたしに弱いんだから!」
購買のオバチャン。トメさんか……。
なんつーか…母ちゃんってきっと、こういう感じなんだろうな。アカデミアの母って印象だな。俺、母ちゃんいないけど。
こうして、バイト場(予定)の上司に無事顔合わせした俺は、クロノス教諭に連れられて、校長先生と思われる人のいる部屋に通されたのだった。
クロノス「校長先生。編入生の二人を案内してましたきましたノーネ。」
鮫島「ああ、ありがとうございます。クロノス教頭先生。
始めまして。杉田くん。アネモネくん。
デュエルアカデミア校長の、鮫島です。」
拓野「はじめまして鮫島校長先生。改めまして、杉田拓野です。
よろしくおねがいします。」
アネモネ「アネモネ・ライトロードです。よろしくお願いします。」
鮫島「ふふふ。お二人とも、気持ちの良い挨拶ですね。
これからの学校生活が有意義なものになるように、頑張って下さい。」
拓野「はい。これからデュエルアカデミアの一員として自覚を持ち、頑張って行きたいと思います。」
アネモネ「はい。」
鮫島「さてと…それでは、早速ですが、私からあなた達に、贈り物をしましょう。」
鮫島校長はそう言うと、トレイに置かれた2つのケースを差し出してきた。
拓野「これは、カードデッキですか?」
鮫島「いかにも、カードデッキです。
実は私は、デュエルアカデミアの校長であると同時に『サイバー流』という、古くからあるデュエル流派の師範代を襲名しているのです。」
サイバー流?
アネモネ「『サイバー・エンド・ドラゴン』を切り札にした、相手をリスペクトするデュエルを信条にする流派のことよ」
鮫島「なんと…!アネモネくんは、サイバー流を知っていたのですか。」
アネモネ「ほんの聞きかじった程度の知識ですが。」
鮫島「嬉しいですねえ。編入生の方にも名前が知られているというのは、師範代として、喜ばしい限りですよ。
さて、もうお分かりだと思いますが、そのケースの中には、サイバー流の門下生に配っていた入門デッキ。
そこに本来は一子相伝であった『サイバー・エンド・ドラゴン』も入った、往年のサイバー流デッキの完成形が入っています。
もちろん、在校生全員も、同じデッキを送っています。」
……………この師範代の人、一子相伝を学生全員に配ったのか………
鮫島「悲しい限りですが、現代のデュエルモンスターズにおいて、最終目標がサイバー・エンド・ドラゴンではもう、時代の流れについて行けないと判断し、現在私の弟子だったサイバー流の継承者と、新たな切り札を創造することを決定し、現在製作中なのです。
そこで、サイバー流も新たな時代に突入するに当たって、門下生を獲得するべく、サイバー流のデッキにだけでも触れる機会を増やそうという試みなのです。」
それ、公私混同なのでは?
アネモネ「なるほど。つまり、学生の中で流派を募集するための、このサイバー流デッキということなんですね。」
鮫島「そういうわけです。もちろん、使用に制限はありません。
テストでも、私用でも、好きなときに使って下さい。
学園の中では、サイバー流デッキの使い方を研究する【サイバーズ・クラブ】という集まりも存在していますし、有意義だと思いますよ。希望者には、サイバー流の入門心得を記した本も配っていますので、気軽に言ってくださいね。」
鮫島校長の言葉もそこそこにデッキを取り出して中身を確認するアネモネを尻目に、俺は個人的な話を持ちかけることにする。
拓野「ありがとうございます。校長先生。
サイバー流デッキ、ありがたく頂戴いたします。
……それと、ひとつ個人的なお話をよろしいでしょうか?」
鮫島「ええ。構いませんよ。トメさんから聞いています。
購買部でアルバイトがしたいとのことですね。」
拓野「はい。」
鮫島「………我が校は、オーナーの意向で生徒の自主性に関しては、最大限以上に尊重しています。
なので、学園として貴方のアルバイトを止めることはありません。」
拓野「それはありがたいお言葉です。」
鮫島「ただ…我が校の購買部でアルバイトとなれば、賃金が発生する以上、こちらもあなたの人となりを知って置かなければなりません。」
拓野「当然のこととお察しします。鮫島校長先生。」
金を出して労働させる以上は、何かやらかせば、偉い人が責任を取らされる。
これは世の常だ。であれば、雇う側も命を預けるに等しい危険を孕んでいるのだ。
鮫島「キミはクロノス先生の言っていた通り、本当に礼儀正しい青年ですね。」
拓野「無知な子供に人の道を。そして社会で生きることを示してくれた方がおりました。
私の礼節の全ては、その方からの贈り物です。」
鮫島「なるほど。その言葉だけでキミが歩んできた道行の険しさを悟ることは出来そうです。
しかし、そうとなれば尚更、私は校長として…………いいえ、サイバー流道場師範代として、キミのことを知りたい。
そこで、明日の放課後。面接デュエルを行います。」
拓野「…………面接デュエル…ですか??」
面接を受ける側が言えた立場じゃないが…さっきのカードゲームで合否を決めるってのか?
俺、カードゲームに負けたら働けないのか??
鮫島「この学園はデュエルの学園です。
なので、つかみ取りたい未来は、自らの力で切り開いて下さい。」
拓野「………なるほど。ごもっともなお言葉です。では、明日の放課後に面接をよろしくおねがいします。鮫島校長先生。」
鮫島「はい。面接デュエル、頑張ってくださいね。杉田拓野くん。」
拓野「激励をありがたく頂戴します。それでは、失礼いたします。」
アネモネ「あ、私も失礼します。」
あ、こいつまだいたんだ。
アネモネ「蹴られた……」
拓野「あ?」
アネモネ「--蹴られたっ!!」
拓野「………俺のそばにいた、お前が悪い。」
アネモネ「心配してるのに!」
拓野「ハッ!!笑わせんな。クソが」
アネモネ「…………あ…………………痛い……。」
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