???「イタズラにカケラを集めて遊んでみたものよ。
前提として、祭囃し後から郷壊しまでの間の世界になるのかしらね。
『大鳥が降り立つ頃に――サイカイ』の続き物よ。こちらを先に読んでおいて欲しいけれど、単独でも読めると思うわ。
始終、入江の語り話だからツマラナイかもしれないわよ?
登場人物は<東京>組である鷹野と富竹と小此木、友情出演として雲雀十三が出ているわ。
名前だけなら、悟史くんと詩音ちゃん、大石が出ているわね。
機関の【専属(性別不詳)】というモブが居るので注意しておくわね。
互いの名前の呼び方が変わる場面があるわ。これも注意しておくわね。
一部の酔狂な人たちにとっては面白いかもしれないわね。少なくとも私は楽しめたわ」
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―― 富竹さんから鷹野さんの症状を伺った時は寝耳に水でしたよ。思い当たるような言動は私の所見では見当たりませんでしたが‥‥見逃していたのかもしれませんね‥‥
悟史君を診ていた診療所スタッフの一人が、鷹野さんが患ったと聞いて専属にと進言されましたのでお世話の殆んどをお任せしてしまいましたが。慣れでしょうか、手際が良く助かっていますよ。
いつかの嘔吐事件や失踪事件、セキュリティルーム解錠事件、徘徊もありましたが、その殆んどはオオゴトには至らず、鷹野さんご自身の回復力もあり富竹さんに任せる事も増えましたので、そろそろでしょうかね。
『鷹野さんの症状は日常生活を過ごせるレベルまで回復しているので、二、三日程度ならあまり遠くない場所に遠出してもよさそうですね』と専属スタッフとお話していたところ、富竹さんがお見えになったので今のお話をしておきましたよ。
富竹さんと居る時の鷹野さんは比較的穏やかでいて時おり頬を染めたりなど‥‥富竹さんも、鷹野さんの前ではタジタジではありませんか。ふふっ、仲睦まじいですね。
仲良しといえば悟史さんと詩音さんが居りますが、悟史さんは‥‥目覚めたとはいえ、鷹野さんと同じ病室に居ては互いを傷つけ合う可能性がありましたので、まずは部屋を別にしてから紹介状を書いて興宮にある大きめの病院に転院させていただきました。元々うちの診療スタッフでしたから、事情の分かる医者が居て助かりましたよ。詩音さんもそちらに足しげく通っているようです。
今日の分の診療は終わりにして、少し仮眠を‥‥
【05】
昨晩、小此木さんからの定期連絡を富竹さんが受け取ったようで。
雛見沢村から余所に行っていた小此木さんが二、三日のうちにこちらに戻って来ると先ほど伺いましてね。それはもう嬉しそうに話されていて、私も浮き足立ってしまいますよ。幾日振りでしょうか。
帰ってくるのであれば、興宮にある造園会社の鍵を開けておかねばいけませんね。地下区画のセキュリティルームは番犬部隊主導の下で閉じられてしまいましたから。もちろん、診療所のセキュリティルームも一部を遺して完全に閉鎖されてしまいましたのでね。重厚な扉を開ける事はもう無いでしょう。開ける必要があるとすれば‥‥いえ、考えたくはありませんね。
図書館に行くついでに今朝のうちに伺っておきましょうか。いつぞやに失踪した鷹野さんの潜伏場所が造園会社だった事がございましたからね。いつでも帰ってきてもいいようにと、富竹さんと交代で定期的に整理をしに行っているのですよ。時々‥‥喧騒から外れて一人になりたい時もありますので、ね。
【06】
図書館に伺いましたら大石さんがいらしていて、少し談笑しておりましたよ。立寄所の指定がされておりますのでね。平和が一番ですね。
返却する前に何か挟まれていないか確かめておりましたら、これは‥‥懐かしいですね。診療所前で富竹さんと鷹野さん、その奥にチラッと小此木さんと私が写っている写真ですね。雛見沢に来て間もない頃のものでしょうか。お二人とも今とさほど変わっておられなくて驚きましたよ。それと、雛見沢のそこかしこで撮られた野鳥の写真が何枚か。なるほど、鷹野さん所有の写真でしたか。この野鳥観察の本は鷹野さんも読まれていたのですね。写真は後ほど鷹野さんにお返ししておきましょう。
用事は次々にこなしていきませんと。ついででないと出来ない事もありますからね。
子供達のために一部分を貸していた営林署が老朽化で撤去されてしまいましてね。興宮にある会社も、社名の看板を外され国の所有に一時的になっておりましたところ、富竹さんの働きかけで管理を診療所持ちにさせていただいたのですよ。お陰さまで今はこうして‥‥診療所と行き来が出来ているのですから、有難いですね。盗られて困るような高価なものは置けませんから、トラックも置かれていないのですよ。半分は診療所の倉庫代わりに使わせていただいていますからね。
診療所内のインスタント珈琲と紅茶がそろそろ尽きるので補充に少し持っていきましょうか。外出用の救急バックにも少し入れておきましょう。流しの水場とガス栓も確認して。もちろん換気もして。市販薬の補充をして。
おや、見覚えのある顔が訪ねて来たようですね。この姿は‥‥ええっと確か、十三さんでしたか。どうして私はこの方を知っているのでしょう‥‥小此木さんから聞いていたかお逢いした事があるのかもしれませんね。ともかく、中に入れるほうがよさそうですね。
「私、入江診療所の入江京介と申します。雲雀十三さん、ですよね。小此木さんと一緒に居た‥‥山狗の」
「ヒュー、正解! あぁーっ! そっ、その顔は入江診療所のっ。入江所長、でしたっけ? 久し振りですん!」
元気の良い返事を返されて悪い気はしませんからね。どうしてコノヒトがここに居て何をしているのか、私には知る由もありませんが。小此木さんの所在を訪ねると『隊長は診療所に向かったみたいですぜ』と‥‥入れ違いになってしまいましたか。仕方ありませんね。待っていれば来るかもしれませんが他の用事も残っているので、この場所はお任せしましょう。にしても‥‥お早いご帰還でご報告と違うのですが。ふむ、お逢いしたその時に尋ねますか。
余っていた『エンジェルモート』のチケットを渡して『お腹が空く事があれば訪ねるように』と言っておきましたし小此木さんへの伝言も頼みましたので大丈夫でしょう。
他の用事を済ませて、はやいところ診療所に戻りますか。
【07】
専属から外出許可を聞いた鷹野さんが、小此木さんが以前仕事をしていた造園会社に行きたいとの申し出がありましたので、色々と支度をしておりましたよ。
朝早くに起きて富竹さんとおにぎりを作られていたようで、私の分もいただいてしまいました。失敗したからとおっしゃっておりましたが、そんな事は無く美味しかったですよ。
鷹野さんはトランシーバーを腰に差して、後ろから富竹さんもおにぎりの重箱を片手についていくようです。行ってらっしゃい鷹野さん。富竹さんも行ってらっしゃい、ですよ。
昨日みたいに入れ違いが起こらないようにしておきませんと。鷹野さんが昨日、窓の外から小此木さんを見掛けたと富竹さんから話を聞きましたので。今日なら大丈夫でしょう。余ほどの事が無い限りは外出しないように、昨日お逢いした雲雀さんに伝言を頼んでおきましたからね。
さて、私は診療所でささやかではありますが飾りつけをしましょうか。『雛見沢にお帰りなさい、小此木さん』『快復おめでとうございます、鷹野さん』久し振りに筆を持ちましたが、中々の出来ですね。それから、回りに紙花と輪を。よくある飾りですね。出来合いものですがお好み焼きを用意しておきましょう。他に、つまめるお菓子と飲み物も用意しまして、と。たまたまでしたが昨日のうちに買い出しに行けて良かったですよ。
あとは‥‥待つだけですか。富竹さんがついているので大丈夫でしょう。行き帰りがどちらも歩きなら、午後三時頃になるでしょうか。その時間まで仮眠を‥‥
【08】
揺り動かされて顔を上げましたら富竹さんが居りまして。おは‥‥いえ、こんにちはですかね。えぇっと、今何時でしょうか。おや、もうすぐ午後四時ですか。富竹さんが居るという事は‥‥ハッ、小此木さんは‥‥あぁ、鷹野さんともうすぐ此方に着くのですね。ふぅ、危なかったですね。
迎える準備の最終確認をしていましたら、鷹野さんを抱き上げている小此木さんを窓の外で見掛けたので、つい駆け寄ってしまいました。何かあったのかと思いましたが‥‥ふふっ、鷹野さんが甘えていただけのようです。
改めて、診療所の入り口まで来たところで富竹さんと合流しまして。中に入って貰うよう促したところで、ぱぁんとクラッカーを鳴らして『おかえりなさい』を言う手はずになっていたのですが‥‥小此木さんも軍に所属していた人ですから鳴らしたとたん、鷹野さんを庇いながら身を伏せられましてね。『あぁ、驚かせて済みません、小此木さん。大丈夫ですよ。狙撃する人など居ませんから、ね?』と、富竹さんと一緒に謝りました。確かに鉄砲の音に酷似していますものね。気が付きませんでした。次から気を付けませんとね。
鷹野さんと小此木さんを起こしてあげて、奥に誘い入れて、さぁ、パーティーの始まりです!
鷹野さんの快気祝いと小此木さんの帰還祝いを合わせたのですよ。本当でしたらもう少し余裕が出来たはずなのですが、予定が早まってしまったので急遽‥‥えぇ、簡単なものしか用意出来ませんで。
【09】
ドンチャン騒ぎ‥‥と言う程でもなく静かに飲み食いしておりましたところ、小此木さんから報告があると聞いて何かと伺いましたら『鷹野さんの護衛をする事になった』と。どういう経緯かは存じ上げませんが、富竹さんもニコニコ聞いていますし、私もその方が安心して任せられますので、良いでしょう。
私の手から離れるのは少し寂しいですが‥‥今のうちに言っておかなければいつ言うのだろうと胸の中で燻っているそれを、今は‥‥皆さんの居る前では言えなくなってしまいましたね。
気づいたら眠ってしまっていましたよ。鷹野さんだけは、ぼぉーっとしながらではありますが起きていたようです。富竹さんも小此木さんもソファーで眠ってしまわれたようですね。グースカピーと豪快なイビキをかいているのが富竹さんで、スウスウと寝息を立てているのが小此木さんで、面白い事に、イビキに性格が現れていますね。空になった缶や肴のまだ残る袋の口を閉めたりなどしていると、<泡の出るジュース>の香りを漂わせた鷹野さんが『夜風に当たりに行きたいのでついてきてくださらない?』とお誘いを受けまして。もうそのような時間なのですね。
ゴミは端に纏めておきましたし火照った身体を少し醒ますのもありまして、誘いを受けることにしたのですよ。
【10】
月の灯りを頼りに鷹野さんを連れて診療所の出入口まで来たところで私は‥‥鷹野さんに話しておくべき事があると、打ち明けようと‥‥背中越しの肩にそっと両手を置いて。
「聞いてくださいますか、鷹野さん‥‥」
「ええ、私でよければいつでも聞くわよ? どうしたのかしら、いつもの所長らしくないわ」
私は‥‥研究に没頭していて、鷹野さんをよく見ているつもりで見ていなかったのですね。研究だけでは、私はここまでやって来れなかったでしょう。鷹野さん‥‥私は、鷹野さんが‥‥いえ、鷹野さんがここまで快復してくださって私は嬉しいですよ。解明にはもう少し時間は掛かりますが。必ずや撲滅を目指して。
「これからも頑張りますので。鷹野さん‥‥雛見沢症候群の研究に、ご協力いただけますか?」
「ええ、もちろんよ。私自身が検体になるだなんて思いもしなかったけれどね」
肩に置かれた両手が震えているわ。相当の覚悟がおありのようね。それに応えるように私も、返事をしたの。私は……ここに居るみんながだいじだから。みんなが私を生かせてくれたのだから、その分をお返ししないといけないわね。
「入江所長……いえ、京介先生ね。私の分まで研究を続けてくれていて感謝しているわ。これからも、少しづつではあるけれど。私と一緒に、研究を続けてくださらないかしら?」
「えっ‥‥はい、えぇと。もちろん、研究は続けますよ。いつか撲滅まで持っていけたら寛解に近づけるなら。鷹野‥‥三四さんと一緒なら、きっと、ね」
月灯りを受けた鷹野さんの顔は良くは見えなかったけれど、私の顔は良く見えていたはずで。下の名前を呼ばれた事に気づくのが一刻遅れてしまい。初めてでしたからね。お返しに私も呼んでみましたが慣れるまでフルネームで呼んでしまいますね。鷹野‥‥三四さんには、富竹さんも小此木さんも居ますから。私の入る余地は無いものだと思っていましたから。
目の覚めるような冷たくも暖かな風が、二人の間に吹いて包み込む。これから先、どのような事があろうとも。みんな一緒、ですからね。
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『大鳥が降り立つ頃に――サイカイ』の続編ですっ。続編というよりは、ほとんど入江の独り言だったりしますが。
研究家としての入江と、研究がうまくいかず悩む入江と、色々な思いがあるけれど、悩みを誰に打ち明けているのか分からないのですよね。
入江は、鷹野さんに打ち明けていればいいなと思いまして、書いてみたのです。うまくいっているか分からないですが。
書いている途中のものが上がりそうになって、急遽時間延ばしの魔法を使ってしまいました(12時03分に投稿したかったのですが、ちょっと無理だったorz)
私が満足いく仕上がりにはしましたから。たぶん。きっと、おそらく。