???「イタズラにカケラを集めて遊んでみたものよ。
それぞれが短めで繋ぎ合わせに他ならないから、何編とは言いづらくてね。
『ひぐらしの鳴く声に。』続別編。
『コマイヌのカオが■■■■頃に』続編。
『狗の悪い夢。』(祭囃し)通過。
これらを先に読んでおいて欲しいけれど、単独でも読めると思うわ。
登場人物は小此木が主軸であるがゆえに、彼以外は名前くらいしか出て来ないわね。
富竹、入江所長、鷹野、雲雀十三、番犬、野村、沙都子、R(梨花)、友情出演として命から一穂を思わせる少女が出ているわよ。
一部の酔狂な人たちにとっては面白いかもしれないわね。少なくとも私は楽しめたわ」
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森の中で右往左往していた俺を富竹に叱咤されながら、ひとまず古手神社の社務所前まで戻された。この森は、ヘアバンドを着けた快活な子――沙都子嬢ちゃんのホームグランドで、トラップと呼ばれるものが幾年も掛けて張り巡らされている。
ひとつも掛からずにさまよい続けられたのは奇跡だが、いつだかの記憶で俺が撃沈したトラップを戻る道すがらに見付けちまったのもあり、富竹が居なけりゃ抜けるのは無理だったかもしれんと肩を借りながら思う。
『念のため診療所に行ったほうがいい』と提案されたんで身体を預けているのもあり、寄る事にする。俺が姿を現した事により診療所の前が騒がしくなった。所長や鷹野はともかく、どういう訳か雲雀十三に『怪我が無くて良かった』と安堵される。飲み食いもせずフラフラしていただけだったとはいえ、頭を打っていないかなどの検査を診察室のベッドに座って受ける。診療所のベッドはいつ座ってもフカフカで気持ちの良いものだ。
カレンダーが目に入らんが、入江所長に今日の西暦と年号、日にちを言わされる。俺が神社裏の森へ出掛けた日から太陽と月が昇った回数を加味した上で、富竹に日付を訊いた時と同じ答えそのまま『昭和58年6月19日』と言ったのだが、合っているとも違っているとも付かない表情で眺められた。
そういや、この日付なら<綿流し祭>の‥‥思考が停まる。富竹も入江も鷹野も、そして雲雀十三も居るって事は<東京>の<野村>は。オレハ‥‥?
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顔に妙なものが当たる。一瞬の冷たさを感じて俺は目を開けると、天井は無かった。その代わりどんより灰色の空間からは白い‥‥雪が降っている。先程から顔に当たっているものはこれか。
古手神社のある高台から雛見沢村が見渡せるのだが、家々の屋根は雪で白く染まっている。この場所に一人で来る事は少なくない。間近で<R>の監視が出来るとはいえ、この場所では開け過ぎて目立ってしまう。今は雪で埋もれ気味だからか目立ちはしないが往来用の箇所だけ明らかに足跡がまばらに付けられている。
手の辺りが暖かい。霜焼けではなさそうだと思ったところで、俺は誰かの手を握って‥‥繋いでいる事に気付いた。
誰だったか。名前が思い出せないでいる。薄墨色の髪が靡いて紅い眼がチラリとこちらの顔を覗き込む。紅い眼‥‥石段の深雪に足を取られよろけてしまうが踏みとどまる。
「俺は三四に捕らわれてるようなもんだからなァ…」
繋いだ手の熱を感じながらボソっと呟く。その誰かは返事に困っているようだったが気には止めなかった。
視界の隅に<雲雀十三>が居る事に気づき、つい手を離しちまったが。
「雛見沢や興宮から出ようと思っていた時期もあったが、此処に留まる事に決めましたんね。誰かさんのお陰でな」
そこに居る誰かに向かって話掛けている俺を幻視する。こちらに対する返事も無い。
何かを思い出したように、神社の入り口に止めていた<山狗>所持のワンボックス車に戻り、一息吐く。ワンボックス車に乗り込む寸前で、オレハ‥‥?
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強烈な眩しさを感じて己の両腕を瞼のある箇所に持っていき、ギュウと押さえつけながら身を捩らせて薄く目を開ける。自分の腕や身体が動かせる事に気づく。動く度にギィギィと鳴るのはちぃと嫌な音ではあるが、診察室のベッドである事は確かだ。眩しいのは照明のせいか。なら、そこには入江か、でなければ診療所の常駐スタッフが居るだろうよ。
「おや、気付かれましたか」
その声はやはり入江か。薄手のタオルケットでも流石に暑く感じ乱雑にのける。拘束されていない事を再度確認するように腕を上げ下げし手首をぶらぶらして感覚を取り戻す。
どうして俺が此処にいるかと尋ねると、昨日から体調を崩していたらしい。隊長失格だな。壁に掛かった日めくりカレンダーは『昭和58年6月19日』の表示が見える。なら、<綿流し祭>は‥‥他の者共は酒盛りの真っ最中らしい。入江は閉会の音頭を取ってきたばかりだとも言っていた。チクタク音のする方向――時計を探す。じきに日付が変わるようだった。
つまり俺は、祭という吉日に、何もしないまま過ごした事になる。この後、鷹野は<東京>の<野村>の陰謀に踊らされて消されるだろう事は予想される。入江は此処に居る。なら富竹は。雲雀十三は。そして監視対象の<R>は。オレハ‥‥?
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今度は何だ‥‥おかしな夢を立て続けに見たのかそもそも夢なのか現実なのか少し疑う事を覚えた。先程の眩しさとは段違いにチカチカと激しい明滅が目の前で行われた。
以前の記憶から探る。聴こえてくる音を拾う限り<番犬>が来ているようだった。
「総員、伏せろっ。番犬もだ!」
残っていた<山狗>と、富竹に呼ばれたであろう<番犬>は古手神社の裏――鬱蒼とした森の中腹部に居た。<山狗>の投降直後、そこから沢へ下山しようとしたところでそれは起きた。だからこそ俺は叫んだのだった。
明滅が落ち着いた頃、伏せていた身体を起こす。<番犬>も<山狗>も何事もなく元々の負傷者を除いて無事を確認した。気分が悪くなった者については沢ではなく診療所に寄らせる。
爆竹という単純なものではあったが、どこをどうしたらあんな‥‥沙都子嬢ちゃんとやら、侮れんな。流石は<雲雀十三>を負かしただけの事はありますんねえ。
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許されざる事をした俺は洗いざらい話す事になった。防衛省が企画していた事はもちろん<東京>の<野村=舞沢=高城>の話もしたが、どこまで信じて貰えたやら。
<番犬>から一時的に解放された俺は、ここ、古手神社の祭具殿前に来ていた。長時間の聴取により心身的に疲労をきたしていたようで、雛見沢村及び興宮への一時帰宅が許されたのだった。
診療所の所長である入江が先に戻ってきている事を富竹から聞かされていた。富竹も入江も<番犬>に聴取を受けていたのは知っている。
鷹野は‥‥今も診療所で療養中らしい。らしいって言うのは、収容されてからの様子は聞かされていないからでな。最近やっと聞かせてくれるようになったが。
富竹にも入江にも、そして鷹野にも、迷惑が掛からんようには供述しておきましたんねえ。
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富竹と<番犬>、入江所長の聞き取りもあり、どうやら俺は赦されたらしい。やっちまった事は仕方ねぇんで、これからは真面目にやる事を<東京>の別組織である第三者委員会とやらに、約束事として交わした。階級は無いも同然になったが。診療所は地下区画の一部を遺して封鎖し地上部は存続、俺の事務所である造園会社も診療所――つまり、入江持ちで存続ときたもんだ。ありがてぇ話だな。
これは後から入江と富竹に聞いた話になるが、鷹野の件に関しては後回しになったようだ。鷹野の聴取をもって終結する事になる。そりゃそうだろう、表に出したら不味いものばかりだからな。
富竹に連絡ついでに聞いたのだが、二、三日だけになるが鷹野に遠出の許可が降りたらしい。<雲雀十三>を呼んで向かうか。興宮の事務所も色々と整理してぇんでな。
戻りたくなっちまったなァ‥‥雛見沢村に。
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そして【大鳥が降り立つ頃に】に続いていく。
円盤で消されてしまった悔しさもあり、繰り返す者によってカケラを変えられた小此木さんを描いてみたかったもの。
謎の少女は、命に存在する一穂さん。あったかもしれないカケラ。本来面識はないはずなのですが、私が書き(萌え)たかったので書いただけ。