巨神聖戦記   作:芹沢亀吉

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例によって物語は今の世相を厳しく斬る内容で今回は特撮オタクも手厳しく批判している。しかもこれはその作品のファンか否かに関係なく真剣に考えるべき社会問題で。そうした問題に正面から切り込んでこそ現実味と普遍性のある物語になる。


国威発揚を挫く破壊神

「ご覧下さい。 これがわが国の技術の粋を集めた高速増殖炉、 『みろく』 です。 ナトリウム漏れが多発した以前の 『もんじゅ』 とは比べ物にならない高性能。 是非とも2025年に開催される万博を大阪に誘致し、この未来のエネルギーを世界に向けて宣伝したいものです。」

 

記者会見に臨んだ大阪府知事、 桜田一夫は得意げな表情だ。 福島原発事故で原発安全神話が瓦解 してもなお原発利権に目がくらみ続ける政治屋や財界人の欲望の結晶がこの 『みろく』である。

 

こんなものを国威発揚に使うのも大概だが、 国威発揚自体、麻薬や覚醒剤を服用し刹那的な興奮状態になるのを国単位でやっているだけだ。

 

先代の大阪府知事 川本勲が強引に府庁の移転先に決定す るも、耐震性の問題で府庁の機能を全て集約させることが不可能と判明した大阪湾岸の超高層ビル の周囲は半ばゴーストタウン状態で、そこに 『みろく』を中心とした新たな学術研究都市を作るというのが桜田知事と関西の財界の思惑であった。

 

だがその構想が実現する日など永遠に来ない。 大阪湾に出現したゴジラが大阪に上陸し 『みろく』 を破壊したからだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

新たな原子炉を大阪に建造という桜田知事の誤った政策が、 核に手を出すという人類の愚挙により覚醒し人類の作り出す巨大な エネルギーを憎悪するこの太古の破壊神を大阪に呼び寄せたのは言うまでもない。

無論、原発推進を エネルギー政策の要とし桜田知事の愚策を後押しした門長四郎内閣も同罪だ。

 

なお門長首相の意向を付度し経済産業省内の慎重論を押さえ込んで強引に 『みろく』 建造を認可した小野寺寛 経済産業相のやり方には政治主導なるもののろくでもない部分が強く出ている。

 

ゴジラ上陸で大阪の街は大混乱だ。 機動隊に先導されたゴロツキ達が、 ゴジラ上陸に乗じコリア ンタウンを襲撃したのは長年この国に蔓延する韓国朝鮮への差別意識及び歪みきったルサンチマン の顕在化である。

 

大阪在住のコリアンからすれば嫌韓なる稚拙かつ暴慢な感情論に毒された日本人の方がゴジラなどより遥かに危険で有害だ。

 

歴史から何も学ばずコリアンへの憎悪を煽る書籍や TV 番組、 まとめサイト等の大嘘を真に受けた愚かで罪深い日本人の手で関東大震災直後のコリアン虐殺という断じて繰り返してはならない歴史が繰り返されてしまった。

 

もっとも、今回はゴジラ上陸時に日本人から襲撃されることを恐れたコリアン達がすぐ大阪から脱出したため犠牲者は出ず、 私達が歩きながら無意識のうちに雑草を踏むのと同じ感覚で膨大な数の命を奪う破壊神ゴジラの犠 牲になったのは、既にもぬけの殻のコリアンタウンを襲ったゴロツキ達及び機動隊員である。

 

同じ頃一人の男が半壊した大阪の街中を避難所に向かって走っていた。

この男はゴジラをはじめとする怪獣のフィギュアで猥褻な画像を作成しSNS に投稿する悪癖の持ち主で、 最近特撮ファンの女性を侮辱する台詞をゴジラフィギュアに言わせる四コマ漫画的なものを投稿したため、良識あるSNSユーザーから非難が殺到しアカウント削除に追い込まれたばかりだ。

 

勿論悪いのはこの男一人ではなく、 特撮ファンの女性を侮辱する投稿を自分が面白いからという理由で持て囃した大勢の特撮オタク達も同罪である。

 

特撮好きな女性を侮辱するのは絶対やってはいけないと認識出来るだけ の良識がある特撮オタクばかりならこの男もあそこまで調子には乗らなかった。

 

ゴジラをネタにす ることに慣れ過ぎてすっかりゴジラを舐めきっていたこの男はゴジラがすぐ自衛隊に倒されると思い込んでいて、 ゴジラが倒された後また新アカウントを作ってゴジラを下劣なネタにする投稿を再開しようと走りながらほくそ笑む。

 

だが、この男が避難所に到着することはなかった。

航空自衛隊の F-2戦闘機がゴジラに向け放ったミサイルのうち一発が直撃し爆死したからだ。

 

自衛隊の執拗な攻 撃に激怒したゴジラの背びれが青白く光り口から青白い光が漏れたその直後、ゴジラの口から放たれた放射熱線が自衛隊を徹底的に殲滅。大阪全体を火の海に変えていく。

 

地下に避難していた桜田 知事は放射熱線が引火したガス管が爆発したことで発生した落盤で帰らぬ人となった。

 

元々、大阪全体を焼き払う気など一切なかったゴジラだが、自衛隊の総火力攻撃で怒りが臨界点を超え、 自衛隊だ けでなく大阪自体を殲滅する決意を固めたのである。

初めてゴジラが出現した 1954年当時の自衛隊とは比べ物にならない軍事力を有する現在の自衛隊ならゴジラを倒せると本気で思い込んでいた 日本政府は、自衛隊の爆雷攻撃でゴジラに東京襲撃を決意させた1954年当時と全く同じ過ちを繰り返したのだ。

 

見るも無残な焼け野原と化し放射能で汚染された大阪に破壊神の咆哮が響き渡る。

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