巨神聖戦記 作:芹沢亀吉
火山の火口で長年眠り続けていたラドンが突然覚醒したのは「声」に導かれたからだ。
覚醒直後に北の方角からただならぬ気配を感じそちらに向かおうとしたラドンだが、気配の位置があちこち変わるため現在はメキシコ上空を旋回し様子見中である。
そんなラドンの目の前に突然ガルーダ、ガンダルヴァ、ナーガが出現した。瞬間移動装置を搭載している 3 機はニューヨークからメキシコシティへの瞬間移動もお手の物である。3 機が発する凄まじい邪念を察知したラドンは気配の正体がこれだと気付いた。
瞬間移動を繰り返し破壊と殺戮を楽しむ寺内や自衛官連中が発する邪念は遠く離れた場所にいるラドンにしっかり届いていたのだ。
「待たせたな、糞バード!この正義の味方、寺内太一様が天に代わって成敗してくれるわ!者共、糞バードを取り囲むのじゃ!即刻討ち取って首を刎ねよ!日本に持ち帰り晒し首にするのじゃ!かかれぇ!」
時代劇に影響されまくりの口調で寺内はガンダルヴァとナーガにラドンを取り囲むよう命じた。
泣き叫ぶ民間人を標的に殺戮を楽しんでいた寺内と自衛隊連中こそ今すぐ成敗されるべきなのは言うまでも無いが。
「大臣、アメリカ軍を蹴散らしたこの 3 機なら糞バード 1 羽くらい数秒で灰に出来ますよ!では早速砲撃します!」
「糞バード!さっさとくたばっちまいな!俺達自衛官は正義感に満ち溢れた死刑執行人だ!今から貴様への死刑を執行する!世界最強の軍隊である自衛隊に喧嘩売った自分がいかに馬鹿だったか地獄で後悔しやがれ!」
ガルーダは正面のラドンを狙い機首から光線砲を放つ。ガンダルヴァとナーガもラドンを狙い一斉に砲撃した。寺内だけでなく自衛官連中全員が短時間でアメリカを攻め落としたことで調子に乗り完全にラドンを舐め腐っている。「炎の悪魔」に挑むというのにそんな舐め腐った態度で大丈夫なのだろうか。
「光線砲、全て命中するも効果ありません!」
「攻撃が全く効かないだと!?糞バードの癖に生意気な!」
ラドンにガルーダの光線砲が全く効かず寺内は苛立つが、ナーガやガンダルヴァの集中砲火もまるで効果が無いためどうしようも無い。
アメリカ軍を短時間で壊滅させた光線砲や連装ミサイルでも火山内の高温高圧で長年鍛え抜かれたラドンの頑丈な身体を傷つけることなど出来はしない。
ラドンは集中砲火をものともせずガルーダに狙いを定め飛びかかってきた。
「ヤバい!糞バードが突っ込んできたぞ!回避しろ!回避だ!急げ!」
「はい!右に移動します!」
ラドンの猛進から逃れるためガルーダは横移動や急旋回、垂直上昇といった様々な飛行手法を披露する。だが一旦上昇し雲に隠れ急降下し雲から出てきたところを同じく雲の中に入って追跡を続けるラドンに追いつかれた。
ガルーダに飛び乗ったラドンは後脚でしっかりと機体を掴む。
「何やってる!?もっと地上からこの糞バードをガンガン撃て!攻撃の手を緩めるな!」
「標的の飛行速度が速過ぎて捕捉不可能です!それに今撃てば仮に命中してもガルーダが被弾します!」
「何てことだ!完全に 3 対1 が裏目に出ているじゃないか!」
3 機の連携を切り崩すのに成功したラドンは両脚でガルーダを掴んだまま機体をつつき回す。アメリカ軍の砲撃やミサイル攻撃では無傷という頑丈さが売りのガルーダの機体だが、それ以上に頑丈なラドンの嘴でつつき回されると至る所から火花を吹き出した。
なお、ガルーダの急旋回や垂直上昇で気分が悪くなった寺内は、座席横のエチケット袋のお世話になっている。
「大臣!ガンダルヴァとナーガを見捨てるおつもりですか!?」
「うるさい!黙れ!俺は未来の総理だ!こんな所で死にたくないんだよ!」
「大臣!見損ないましたよ!共に戦った仲間達を見捨てて逃亡なんて最低です!」
「お前ら自衛官だってさっきはニューヨークでニヤニヤ笑いながら老夫婦を殺しただろ!赤ん坊を抱きながら泣いて命乞いする若い女を赤ん坊ごと粉々にするのを楽しんでいただろ!所詮俺達は同じ穴のムジナなんだよ!今更善人ぶるな!見苦しい!俺みたいにもっと正直者になれ!バカチンがぁ!」
ガンダルヴァとナーガを置き去りにして逃亡を企てる寺内だが、機体の損傷は深刻で何度ボタンを押しても瞬間移動装置が全く作動しない。
機内で寺内と自衛官連中が仲間割れしている間にもガルーダはみるみるうちに失速していく。現地で「炎の悪魔」と呼ばれ恐れられているラドンの強さは半端ではない。
「防衛省司令室、こちらはガルーダ機内です!当機は今から墜落します!メーデー!メーデー!メーデー!」
「何故だ!?金星人の軍事支援を得た俺達日本は世界最強ではないのか!?お、お助けを!うわーっ!」
墜落し始めたガルーダから離れたラドンは素早く後脚でガンダルヴァを掴みナーガにぶつけた。余りの素早さにガンダルヴァ、ナーガ双方の乗組員は瞬間移動装置のボタンを押す暇も無い。
ラドンに衝突させられた 2 機は既に瞬間移動装置を含む全機器が停止状態だが、ラドンは攻撃の手を緩めず上空から何度も体当たりする。ガルーダ、ガンダルヴァ、ナーガの 3 機は鬼神の名を冠してはいても所詮は人の手で作られた兵器に過ぎない。
その 3 機でよりにもよって本物の神である巨神ラドンに喧嘩を売った時点で寺内及び自衛官連中の惨敗は確定していたのだ