巨神聖戦記 作:芹沢亀吉
現在ホイットモアらアメリカ軍残党はメキシコ湾を突き進む原子力空母ジョージ・H・W・ブッシュ艦内にいて、アメリカ国内を滅茶苦茶にしたあの 3 機がメキシコシティにいるという情報を掴み、兵力を整え報復に向かっている途中だ。
「我々はもう一度独立のために戦う。必ず勝利の星条旗を掲げよう。我々は決して大人しく死の闇に消えたりはしない!戦わずして死にはしない!」
左頬が焼け焦げ左耳も半分無いホイットモアが熱弁を振るうと、アメリカ軍残党達は皆涙を流し結束を誓った。
「あの伝説の戦闘機乗りの指揮下で戦えるのは光栄の極みであります!」
「あのふざけた 3 機に我々アメリカ軍の底力を思う存分味わわせてやりましょう!」
中東を何度も空爆し勲章も授与されているホイットモアはアメリカ軍を無敵と信じていた分 3 機に完敗した屈辱感が大きい。
鏡で顔を見て自己陶酔するのが趣味なこのナルシストは、その顔に大きな火傷を負わせたという意味でも 3 機を憎悪している。
「あの 3 機は絶対ぶっ潰す!俺の顔と誇りに傷つけた落とし前をきっちりとつけさせてやるからな!」
自身に重傷を負わせた3機をひたすら憎悪するホイットモアだが、何度も中東を空爆して膨大な数の生命を奪い生存者達も今の自分と同じような姿、あるいはもっと悲惨な姿にした自分自身の行いについては全く後悔せず反省もしていない。
アメリカこそ正義と思い込むホイットモアはアメリカの戦争による膨大な犠牲を全く省みない。
程なくしてメキシコ方面から空母ジョージ・ブッシュに向かいフリゲート艦2 隻が向かってきた。
「ようこそ、空母ジョージ・ブッシュへ。大勢の部下達を見捨ててトンズラかましてここに来たその勇敢さは表彰ものだよ。」
「今度余計なこと言うと口を縫い合わすぞ。」
ホイットモアの悪意ある挨拶にエンリケス海軍少佐は立腹している。だが同時に図星でもあるのだが。
「いやあ、軽いジョークだよ。それとも図星だったかな?まあどうでもいいが。とにかく我が軍に合流してくれて礼を言う。」
エンリケスは憮然とした表情で肯いた。本音では国境に壁を作りその費用をメキシコ側に負担するよう求める等最近のアメリカの身勝手さに心底うんざりしているエンリケスだが、今はアメリカ軍残党に恩を売っておくべきと判断したのである。
だがホイットモアの無礼な態度を目の当たりにしたことでその判断は間違いだったのではないかと後悔し始めている。
「ホイットモア大尉、メキシコ軍の兵力などたかが知れています。そんな連中と合流する必要があるのでしょうか?」
「オニール君、邪悪な敵相手に人々が国境や立場を超え結束し立ち向かうのは美しいドラマ性があるじゃないか。こんな顔になった俺が再び英雄として輝くことが出来る機会を逃すわけにはいかない。何、メキシコ軍の連中も弾除けくらいにはなってくれるさ。」
敬愛するホイットモアの邪悪な本性を知ったニック・オニール海軍軍曹だが、全く幻滅せずむしろ喜んでいる。オニールもホイットモア同様にメキシコ人を見下しているのだ。
空母艦内の管制室に入ったホイットモアはやや忌々しげな表情で画面の中に映っている初老の男に語りかけた。
「まさか貴様があの 3 機の居場所を教えてくれるとはな。一体どういう風の吹き回しだ?」
画面の中の男はホイットモアの顔をまっすぐ見ながら不敵な笑みを浮かべている。