巨神聖戦記 作:芹沢亀吉
ヴィジュアル系ロックバンドの祖として名高い ZERO-NIPPON が現在武道館で行っている派手なライブはワシントン D.C.陥落を祝うものであり、現地で日本軍が虐殺を繰り広げていたのに日本国内では花電車を出して南京陥落を祝っていた 80 年前と本質的には何も変わらない。
ドラム担当でグループ結成時の中心人物でもあるYASUSHI がマイクを握った。
「20 年以上前、僕は仲間の死もあり落ち込んでいましたが、当時の天皇陛下、今の上皇陛下の即位 10 周年を祝う式典でピアノ演奏を行い精神的に救われました。そして今、上皇陛下の御父上、現陛下のご祖父の夢である大東亜共栄圏の実現に向け、日本は偉大なる一歩を踏み出したのです。僕はそんな日本を誇りに思い、そして皆様と喜びを共有したいと思います。」
YASUSHI は歓声を上げる人々に向け大きく手を振っている。寺内や自衛官連中がアメリカ中で大量虐殺を繰り広げた件は当然伏せられているが、天皇を戴く自分達が世界で一番偉いと思い上がる今の日本国民なら仮にその事実を知っても反日国の捏造だとわめくか、日本に原爆落とした報いだと言い正当化するだろう。
本人が言っている通り、YASUSHI は前の天皇の即位 10 周年を祝う式典で奉祝曲を演奏した身だ。天皇が日本の文化の頂点に君臨していると全国に印象付ける洗脳工作の一環としてこの式典に著名な芸能人やアスリートが多数参加し、天皇の即位 10 周年を祝う様子が全国放送された。
報道機関と結託した政府によるこの洗脳工作に多額の税金が使われているのだから笑えない話だ。
ボーカルの SATORU の熱唱は人々の歓声でかき消され全く聞こえない。歓声を上げる人達の中には近隣諸国への武力行使や在日外国人の殲滅を叫んでいる連中もいる。集団で歓声を上げる一体感と高揚感の中で邪悪な本性が出ているのである。
ZERO-NIPPONの武道館ライブはTVカメラで生中継され全国の地上波で観ることが出来る。
ファンの1人である門長も首相公邸でその生中継を観ていたのだが、防衛省から緊急連絡が入り急遽公用車で皇居に向かった。外はすっかり夜の帳が下りているが、街路灯やビルの窓の明かり、大通りを走行する数多くの自動車のライト等都心の夜を照らす光は数多い。
「陛下、寺内防衛相がメキシコで消息を絶ちました!消息を絶つ直前にガルーダ機内から墜落するとの通信があり、救助に向かいたいのですがなにぶん怪鳥が暴れている状況ではそれも難しく、生存は絶望的です。」
駆け足で参内した門長はすっかり狼狽している。だが天皇は報告を聞いても顔色一つ変えず食事の手を止めようともしない。
「今はお食事どころではありません、陛下!防衛相が、この国を守る要職にある者が消息を絶ち最早生存は絶望的なのですよ!」
必死で天皇に訴えかける門長だが、今日は特にお気に入りのメニューだったこともあり天皇は苛立った。
「くどいぞ門長!朕は全閣僚を引き連れ靖国神社を参拝したかったのにあの男はニューヨークで遊んでいて来なかった!そんな男がどうなろうと知ったことではない!すぐに新たな防衛相を選任せよ!朕の代わりは一切いないが防衛相の代わりなんていくらでもいることくらい覚えておけ!そもそも朕は今食事中ぞ!折角の夕食が不味くなるからそういう話は後にしてくれ!わかったか!」
防衛相が消息を絶つ事態よりも自分の夕食が大事という天皇の冷酷な身勝手さに戦慄した門長だが、天皇の身勝手さを咎める気概など持ち合わせていないこの世襲政治屋は教科書通りの受け答えをするしかない。
「で、では暫定措置として防衛相の臨時代理を立て、後任の防衛相が見つかり次第すぐ選任致します。」
「門長よ、知っての通り兄は公務で色々忙しい。そんな兄に夕食の時間を与えてやってほしい。」
天皇の弟は門長をたしなめた。もっともその公務の大半は視察等無駄に税金をかけた単なる暇潰しに過ぎないのだが。
「たっ、大変失礼致しました。そ、それでは私はこれにて失礼致します。」
すっかり震え上がった表情の門長は逃げるように宮中を退出した。国会の審議では野党議員、特に女性議員に対して横柄で傲慢な振る舞いを見せることの多い門長だが、天皇ら皇族の前ではこのように小物ぶりをさらけ出す。