巨神聖戦記 作:芹沢亀吉
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ベルリンに押し掛けた大勢の市民達が街を東西に分断する壁を破壊したのは 1980 年代末期の出来事だ。
折しも小学校教師になったばかりのマリア・ヴォルタースは圧政から解放された安堵感よりも自分はこれからどうなるのかという不安の方が強く、自宅の窓から夜空を眺めながら今にも泣き出しそうである。
「ママ、パパ、私はどうすればいいのでしょうか?」
マリアの両親は幼い彼女を連れベルリンの壁を越え西側に亡命を企てたため秘密警察シュタージ(国家保安省)に射殺され、彼女自身は事実上の一党独裁制で東ドイツを支配していたドイツ社会主義統一党幹部の養女として育った身だ。
ところが最近になってマリアの養父母が突然蒸発した。政争に巻き込まれシュタージに逮捕されたとも西側に亡命を企て射殺されたともいわれている。
近くの森に落下する一筋の流星が視界に入った途端マリアは何かに突き動かされるかのように自宅から飛び出した。
森の中でマリアが対面したのは直径1m以上ある銀色の金属光沢を放つ球体である。無論この球体を追うかのように太陽系から約30光年の距離を光速で移動する巨大隕石の存在など地球上の誰一人知る由も無い。
マリアの目の前で球体の扉がゆっくりと開き中で赤子が産声を上げた。元気な男の子だ。マリアが両手で優しく抱き上げると赤子は無邪気な声で笑い始め、彼女の心は安堵感で満たされた。
「貴方の名前はパウル、そうパウル・ヴォルタース。」
この赤子を自分の手で育てようと決意したマリアの頭上では明けの明星が輝いている。
第一章 凶星
長年アメリカと肩を並べる軍事超大国だったソ連が、ベルリンの壁崩壊からわずか 2 年後に崩壊したのは誰もがご存知であろう。
工学博士としてソ連の宇宙開発に携わってきた「バイカルの魔女」ことイリーナ・マミーロワにとって当然これは死活問題である。
「何故だ?ソビエトが、私の祖国が何故崩壊する?」
特撮映画好きなマミーロワは1957年公開の「地球防衛軍」が特にお気に入りで、劇中に登場するロボット兵器モゲラを自ら製造するのが長年の夢であった。
普通なら夢のまま終わりそうな話だが、アメリカとの宇宙開発競争を制する切り札だと軍や共産党幹部に訴えたマミーロワは党幹部らの支持を得て、本当に MOGERA 製造を開始したのだから驚きだ。
「まだだ。私は決して諦めない。元々ペレストロイカで軍事機密費が大幅に削減された中でここまで来た。私はUFOの残骸の解析で他のどの地球人よりも優れた科学技術を手にした身だ。その私が MOGERA を完成させるのは天命なのだよ。」
バイカル湖近辺で UFO に拉致されるも直後にその UFOが墜落し奇跡的に助かったマミーロワは、他の科学者達全くが解析出来なかった UFO の構造を残骸から簡単に解析し、党幹部や軍将校達の度肝を抜いている。
マミーロワが「バイカルの魔女」と呼ばれるようになったのはこの時からで、UFO の残骸を解析して得た技術を駆使すれば MOGERA 製造も別段難しいことではない。
「ですが博士、もうMOGERA製造開発に使える資金が底を尽いています。我々一同博士の科学技術力には何度も驚かされてきましたが、こればかりはもうどうしようもありません。」
エンジニア達の懸念通り、現在はソ連そのものが崩壊したことでペレストロイカの頃より状況は圧倒的に悪く、MOGERA 製造開発を進めるための資金確保は余りにも重過ぎる課題だ。
「資金が無い?だったら自前で確保するのみだ。私は軍上層部との繋がりがあり、国内の核兵器貯蔵施設の位置をほぼ把握している。その核兵器を売ればいいんだよ。どうせ今の時代核を撃つ愚か者はいないのだからな。MOGERA 完成こそ第一だ。」
思いもよらぬマミーロワの発言にエンジニア達は騒然とした。
元々核兵器の野放図な拡散を世界規模の核戦争の前兆と危険視し続けていたマミーロワだが、ソ連崩壊で精神的衝撃を受けた彼女は MOGERA 完成のためなら最早手段を選ばなくなっている。流石にやり過ぎと思ったエンジニアの 1 人が苦言を呈した。
「博士、もう止めましょう!私達は核兵器の拡散に強く反対する博士の信念に共感しここまでついてきた身です。博士ご自身がその高尚な信念を捨てるまで追い込まれているのですからこれ以上は無理です。止めましょう!」
途端に爆竹のような音が鳴り、マミーロワに苦言を呈したエンジニアが首の後ろから出血し倒れ込んだ。
「貴様ら全員の延髄に小型爆弾が埋め込んであるのを忘れたか?我々は皆運命共同体。MOGERA 製造開発からの途中離脱はこの世からの離脱だ。既に核弾頭はいくつか取り寄せているから後は他国に売るだけでいい。軍の連中は私腹を肥やすため他国に兵器を横流ししているが、私はあくまでも MOGERA 完成という大義のための資金確保だ。」
エンジニア達が震え上がる中、1 人笑うマミーロワは魔女そのものである。マミーロワは小型爆弾をエンジニア全員の延髄に埋め込んでいて、起爆装置であるリモコンの保有で生殺与奪は意のままだ。無論この小型爆弾も UFO の残骸を解析して得た技術で製造したものである。かくして「バイカルの魔女」は核弾頭の横流しで資金を確保し、ソ連崩壊の翌年に MOGERA を完成させた。
まぢでゴミみてえな悪文