巨神聖戦記 作:芹沢亀吉
ワシントン D.C.陥落後のペンタゴンは金星人に占拠されていて、ホシェルとヨヴェルは中央管制室の大画面でラドンがアメリカ軍残党を壊滅させる様子を眺めている。
苦労して開発製造した 3 機をあっさり日本政府に貸与するホシェルのやり方に強い不満を抱いていたヨヴェルだが、自分達で直接3 機を操縦しラドンに挑んでいたら今頃全員喰われていたことに気付き青ざめた表情だ。
「ルクス様は私の 3 機ではラドンに勝てないことを最初からご存知だったのでしょうか?」
「そうではない。所詮人が作ったものに過ぎない兵器に完璧などあり得ないからまず試し撃ちしろということだ。正直言うとラドンの強さは私の想定をはるかに超えている。寺内や自衛官連中が全員喰われたお陰で始末する手間が省けたが、やはり巨神は侮れない。ラドンが去ったらすぐ 3 機を回収し修理だ。連中のお陰で十分試し撃ちが出来た。最終兵器実装の準備も忘れるな。」
大画面でラドンが 3 機から離れ飛び去って行くのを確認したヨヴェルは、ホシェルの指令通り部下に 3 機の回収を命じる。
ヨヴェルが 3 機の修理に向かうのを見送ったホシェルは突然大画面に向かって話しかけた。
「覗き見とはやり方が姑息ですね。私が貴方の侵入に気付いていないとでも思ったのですか?」
直後に大画面が大映しにした初老の男性は、目つきが鋭く精悍な雰囲気である。
「せっかく対面出来たのだから挨拶しておこう。私はアラン・ジョナ、危険と隣り合わせの人生を歩んできた。胡散臭さ全開の貴様を監視させてもらったよ。上手いこと日本政府に取り入ったようだが地球征服でもするつもりかな、金星人さん?」
ホシェルが侵入に気付くのを最初から承知していたジョナは平然としている。
「ペンタゴンにハッキングとは流石元敏腕エージェントですね。ですが今の貴方は国際手配中のテロリスト。そんな貴方が私達の正体を言いふらしたところで誰も相手にしません。ましてや今現在世界各国は政府中枢が麻痺し大混乱の真っ只中、そして唯一混乱を免れた日本政府がワシントンD.C.陥落に舞い上がっている今、私達の本性を貴方が密告しても無視されるだけですよ。今の日本
政府は国際手配犯である貴方の言葉ではなく顧問である私の言葉に耳を傾けます。残念でした。」
ジョナが国際手配中であることを知っているホシェルは勝ち誇った物言いである。
だが直後にホシェルの顔色が変わった。ジョナが先程ホイットモアに見せたタブレット端末の画像、即ちラドンが 3 機を撃破する様子を撮った画像を見せつけてきたからだ。
「私は反政府主義者だからサイバーテロで各国政府に大打撃を与えた貴様ら金星人達には礼を言いたいくらいだし、貴様らの正体や本心を言いふらすつもりなど毛頭無い。だが覚えておけ、地球は地球人のものでも、貴様ら金星人のものでも無い。真の地球の主である巨神達の怒りに触れた結果、貴様らの自慢の兵器がガラクタになったのも知っているさ。あまり調子に乗らないことだ。」
痛いところを突かれ勝ち誇った表情が崩れていくホシェルに対し、ジョナは更に攻勢をかける。
「貴様ら金星人は我々地球人を未開人と侮っているが故に、ラドンによる3機の撃破を我々がこんなに早く知ったことに衝撃を受けたのはわかっている。貴様の青ざめた顔に全部書いてあるからな。私には世界中に同志がいてこういう情報を得るのは早いのだよ。」
ホシェルは一瞬ジョナに対して殺意を抱くが、たとえジョナ一行を抹殺しても巨神を止められるわけではないので時間の無駄とすぐ気付いた。これ以上会話に付き合う義理も無いのでホシェルは黙って通信を切る。
「巨神が勝つのか貴様ら金星人が勝つのかじっくり見物させてもらおうか。」
ジョナは画面が真っ暗になったノート PC を畳んだ。通信を切り気持ちを落ち着かせようと椅子に座り両目を閉じたホシェルだが、まだ両膝が震えている。