巨神聖戦記 作:芹沢亀吉
数時間前、ヴァージニアビーチ沿岸に停泊するロナルド・レーガン艦内は万歳の声で覆い尽くされていた。
F-2 部隊の空爆でワシントン D.C.が陥落する様子は艦内の大画面でも映されており、乗組員達の高揚を後押ししている。F-2 の操縦士達は 1 機も失わず軍事超大国アメリカを陥落させたことで舞い上がり、着艦後に燃料を補給した F-2 で空母上空を旋回する操縦士も多い。
「お前ら日本に帰ったら天皇陛下から勲章貰えるぞ。一生の宝に出来るな。」
「英霊の無念の声に見事応えたお前らは大和民族の英雄だよ。」
空母に着艦したF-2から降りてきた操縦士達は溢れんばかり賛辞の声を浴び続けている。無論ワシントンD.C.空爆時に犠牲になった大勢の民間人を悼む人は誰もいない。
大勢の民間人を機銃で射殺したことを自慢げに語る荒川雅夫2 等空尉に至っては今すぐ地獄に落ちるべき外道と断じていいくらいである。
「ねえ、いくら何でもそれは酷くない?逃げる民間人を撃ち殺したことを自慢するって酷過ぎるよ。あんまりだ。」
整備士の小田喜三が荒川に苦言を呈すると、大声で笑っていた自衛官全員が一斉に静まり返り皆小田を睨んだ。
「勝利で盛り上がっている俺達に水を差すとかお前最低だな!前線で勇敢に戦った俺達自衛官を悪く言うとかお前工作員だろ!」
逆上した荒川は小田の胸ぐらを掴み罵声を浴びせた。SNS 上で「深川玄」と名乗り野党議員や政権批判者を他国の工作員と決め付け誹謗中傷を繰り返してきたこの外道は、自分の気に入らない人達を工作員呼ばわりするのが癖になっている。
「小田!テメーは整備士の分際で荒川さんにイチャモンつける気か!ふざけんな!荒川さんだけじゃなくて俺も怒るぞ!」
「荒川さん、ワシントン陥落という歴史的偉業を成し遂げた俺達に嫉妬する生意気なコイツにお仕置きしてやりましょう。」
真田甚太准空尉、相島均空曹長、そして荒川と外道自衛官の中でも特に凶悪な 3 人が小田に殴る蹴るの暴行を加えて死なせてしまったが、他の自衛官連中は小田の死体を眺めてニヤニヤ笑うだけで誰一人この殺人を咎めない。
「この程度で死ぬとかコイツ本当に雑魚過ぎて何だか笑えて来ましたよ。荒川さんもこれ笑えますよね。」
「この雑魚の死体、魚の餌にしようぜ。自然保護は大切っす。」
「雑魚1 匹死んだくらいで俺達が殺人犯扱いされるのは余りにも理不尽だ。さっさと死体を海に捨ててなかったことにしよう。」
殺人の隠蔽の口実に自然保護を利用するのは、自然保護自体を愚弄する行為に他ならない。
民間人を機銃で射殺しても良心の呵責を全く感じない外道自衛官連中は F-2 を安全に飛行出来るよう丁寧に整備した小田を集団暴行で死なせても平気だ。
金星人から貸与された 3 機で民間人を標的にして大量殺戮を楽しんでいた寺内一行も大概だが、こいつ等も間違いなく人間のクズである。
空母艦内に「海ゆかば」の合唱が響き渡る。この歌は戦時中に出征する兵士を送る際に歌われた軍歌だ。
市民達が「海ゆかば」を歌う行事の後援を止めるよう教育委員会に抗議する一件があった。卑怯な右翼は軍歌として歌ってほしい本音を隠し「軍歌ではなく戦没者の鎮魂歌だ。」と嘘をつくが、日本兵に殺された人々を全員無視し日本兵の戦没者だけ鎮魂する発想自体が差別的だ。日本が死者を差別しない国というのは大嘘で、実際は見ての通り堂々と死者を差別している。
軍歌の合唱で再び有頂天になった自衛官連中だが、直後に全員奈落の底に落ちることとなる。突然ロナルド・レーガンが轟音を上げて真っ二つに割れ、海中からゴジラの背びれが出てきたのだ。
「いきなり何だぁ!?助けてくれぇー!」
「こんなところで死ぬのは嫌だぁあああっ!」
空母は瞬く間に沈没し、先程まで浮かれていた連中は絶叫しながら海水に押し潰された。タイタニック号が有名だが大型船の沈没時には巨大な渦が発生し海面に逃れた人達を襲うのだ。ゴジラはメキシコ湾で空母ジョージ・ブッシュを沈めた時同様に原子炉の核エネルギーを全て吸い尽くした。
小田を死なせた邪悪な 3 人を含む空母の乗組員全員が海の藻屑と化したのは言うまでも無い。
「俺は野党を批判する気も無ければ政府を擁護する気も無いが、野党は無駄なことに時間を使い過ぎなんだよ。政府は短期間で軍備を整え自衛隊は短時間でワシントンを陥落させた。これが実行力の差というものだよ。16:29/2019/6/8 深川玄」
これが荒川の最後の投稿である。日頃から屁理屈とデマで政府を擁護し野党を執拗に誹謗中傷しておきながら「俺は野党を批判する気も無ければ政府を擁護する気も無い」と平気で嘘をつく荒川は本当に性根が腐っている。
フォロワー数の多さもありデマ発信源と化していた荒川のアカウントだが、荒川本人の死亡により更新が止まり今後新たなデマを発信することは永遠に無い。