巨神聖戦記 作:芹沢亀吉
「お前なんか怖くねぇ!野郎!ぶっ殺してやる!」
「くたばれ化け物!大和民族の力を思い知れ!」
空母上空で旋回していた F-2 数機がゴジラに機銃やミサイルや地中貫通爆弾を浴びせる。だが例によってゴジラには全くダメージを与えられない。大和民族の力とやらも巨神の前では塵同然である。
突然 1 機の F-2 が糸で機体をがんじがらめにされそのまま墜落した。モスラが飛来したのだ。
ゴジラに空母の撃沈を依頼したのは他ならぬこのモスラである。
戦争という環境破壊を楽しむ腐れ外道連中を断じて許さない姿勢を示すため、今回はモスラ自身も自衛隊殲滅に参加したのだ。
「蛾の方を狙え!あいつを撃ち落とせ!」
F-2 が標的をモスラに変えた途端に今まで特に反撃もしなかったゴジラが尾による殴打で次々と F-2 を墜落させていく。
モスラを狙い F-2 が放った空対空ミサイルはゴジラが口から吐く放射熱線によりモスラに命中する前に全て撃破されている。
この二神は共生関係にあり、ゴジラはモスラを狙う F-2 を絶対許さず徹底的に殲滅し、モスラもゴジラを狙う F-2 をカマキリ状の前肢で真っ二つにする等互いに援護し合っている。
短時間でワシントン D.C.を陥落させた F-2 部隊だが結局二神の共闘により短時間で全滅した。
勝利の咆哮はせず無言で天を睨むゴジラは一体何を考えているのだろうか。
ゴジラが空母を撃沈させたのは無論モスラに依頼されたためなのだが、同時に原子炉の核エネルギーを吸収し自己強化に繋げる狙いもある。
ゴジラは本能的にとある強大な存在が地球に接近しているのを感じ取っていた。
そしてその強大な存在こそ 10000 年前にゴジラと激闘を繰り広げた様子が壁画に残されているあの三つ首龍キングギドラに他ならない。
ではその 10000 年前に何があったのかを見ていくことにしよう。
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ペルム紀末期以降深海で眠り続けていたゴジラが突然目覚めたのは、全身に痺れるようなものを感じたからだ。
そのまま海面に浮上し近くの陸地に上陸したゴジラにいきなり雷が直撃した。宇宙から飛来したキングギドラが深海からただならぬ気配が浮上してくるのを感じ取り、雷を操って攻撃したのである。
一瞬卒倒しかけたゴジラは気合で持ち直し、上空のキングギドラを睨みつけた。
「お母さん、海から物凄く大きなのが出てきたよ。星と一緒に降ってきた方も物凄く大きい。あれ何かな?」
「あれは神です。私達は触ることは勿論近寄ることも許されません。早く離れましょう。あのように神が上陸しただけで浜辺が大波で飲み込まれ、天から降りてきた神も雷を落としています。神と神の戦いが終わるまでどこかに隠れましょう。」
この母親はキングギドラとゴジラの二神に近寄ってはいけないことを本能的に理解している。
文明の力を過信し巨神を侮る寺内や自衛官連中のような愚かな現代人と違い、太古の人々は自然の猛威を痛感する機会が多い分巨神が現れれば安全な場所に避難するしかないことをすぐ理解出来るのだろう。
この親子の周囲に数人いるが、皆狩りの手を止め隠れる準備を始めている。
コイル鳴きのような音と共にゴジラの背びれが尻尾から順に青く発光し始める。体内原子炉を臨界状態にしているのだ。直後にゴジラの口から青白い放射熱線が放たれる。
放射熱線が腹部に命中したキングギドラは悲鳴を上げ墜落しそうになるが、こちらも即座に持ち直した。
キングギドラの右の首が急かすような表情で中央の首を見ると、頷いた中央の首が左右の首に目で何かの合図を送る。 キングギドラの中央の首が甲高い声で鳴くのと同時に各首が一斉に引力光線を吐いた。
この鳴き声こそ司令塔である中央の首による引力光線を吐く合図に他ならない。
物体の分子構造自体を乱す引力光線は、数十回の核爆発の直撃に耐え抜くほど頑丈なゴジラの身体にも痛手を負わせる。引力光線の直撃で海面に押し戻されたゴジラは悲鳴を上げながら水没した。
「さっきはあんなに豪雨だったのに、嘘みたいに晴れてきた。神々の戦いが終わったのか。天の神と海の神が戦いを始めたら我々は巻き添えを食らわないよう身を隠すしかない。」
洞窟から出てきた人々は晴れ間が戻った空を眺めている。ここは岩山で二神が激突した海岸から直線距離で 2km 以上離れているものの、広範囲の積乱雲を操れるキングギドラによりこの辺りも豪雨だったのである。
「神がいつ現れ、いつ戦うのか我々にはわからない。せめてこんな戦いがあったということを描き残しておこう。」
この時人々が二神の激闘を描き残したものこそ、10000 年後にジョナ一行が発見することとなるあの巨大な壁画に他ならない。