巨神聖戦記   作:芹沢亀吉

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#6

 

ゴジラを水没させた翌日、キングギドラが急襲したのは大西洋上のアトランティス大陸だ。

 

人々は逃げ惑い、兵士達は弓矢や投石器で攻撃するものの、ゴジラの放射熱線で致命傷を負わないキングギドラは平気な顔をしている。アトランティス文明が生み出した金属、オリハルコンは炭化タングステン並に頑丈だが、そのオリハルコン製の槍もキングギドラの身体には全く刺さらない。

 

「何て化け物だ!投石器は効かない、槍も刺さらない、あんなのどうやって倒せばいい?」

 

「全くだ!ただでさえヤバい群れがいるというのに!」

直後にこの兵士2 人を捕食したのは若葉マーク似の頭部と蝙蝠状の両翼が特徴で、アトランティス文明の異様に発達した遺伝子工学の産物、人造怪鳥(ギャオス)である。

 

生体兵器として生み出された人造怪鳥だが見ての通り全く制御不可能な上繁殖力が凄まじく、野放しにしておくと地球全体に蔓延して生態系そのものを壊滅させるのは目に見えている。

 

(ガメラ)よ、悪しき群れ(ギャオス)から我らを守り給え。」

 

シャーマンと思しき女性が勾玉似の物体を天にかざすと、甲羅を背負い下顎に巨大な牙を 2 本生やした人造怪物が飛来した。シャーマンに「神」と称されたこの 2 足歩行の人造怪物は勿論アトランティス文明の遺伝子工学の産物で、後脚からのジェット噴射で飛行する。

人造怪物は人造怪鳥に対抗するため地球上の生体エネルギーを集めて作られた生体兵器である。

 

 

「群れが三つ首の化け物の周囲に集まり始めたな。このまま群れと化け物が共倒れになればありがたいが。」

「確かに共倒れになってくれれば最高だな。俺達の神の出番が無くなるのが残念だが。」

 

アトランティスの人々はキングギドラと人造怪鳥の群れの共倒れを期待したが、この後事態は人々の期待とは真逆の方向に進展することとなる。

キングギドラの咆哮にひれ伏し操り人形と化した人造怪鳥の群れが人造怪物や人々に襲い掛ったのだ。

「おい嘘だろ!あの首が 3 つある化け物、群れをひれ伏させやがった!」

 

「何でなんだよ!?製造した俺達の言うことを全然聞かない群れが何であの化け物の言いなりなんだよ!?」

 

人々が慌てふためく中、シャーマンは両目を閉じ祈る姿勢を崩さない。

 

「悪しき群れよ、悪しき多頭の者よ、神の火の玉で滅びるがよい。」

シャーマンの祈りに連動し人造怪物は口から吐く高温のプラズマ火球で人造怪鳥を数体爆砕した。ところがこの火球、キングギドラには全く効いていない。

 

自衛隊の重火器で大怪我する程度の耐久しかない人造怪物が数十回の核爆発に耐え抜くゴジラの放射熱線と同威力の火球を吐こうとすると、その威力に耐えられず吐く前に人造怪物の全身が破裂する。

 

つまり人造怪物が吐く火球の威力は自分の全身が破裂しない程度で、放射熱線の直撃にほぼ無傷で耐えるキングギドラを負傷させるには余りにも威力が足りない。

 

「何故じゃ?何故あの悪しき多頭の者には神の火の玉が効かぬ?何故じゃ?」

 

人造怪物の主力攻撃技が全く効かないキングギドラという現実を目の当たりにしたシャーマンは完全に心の平静を失い、他の人々同様に狼狽えている。

 

キングギドラの右の首は人造怪物への反撃を試みるが中央の首に制止された。今は人造怪鳥に任せるべきというのが中央の首の方針である。左の首は周囲を飛び回る人造怪鳥の群れを見回している。

 

人造怪鳥が黄色い光線を吐くと人造怪物は飛行してかわし、命中したのは人造怪鳥の操り主、即ちキングギドラだ。

この光線には物体を切断する効果があるものの、肝心の威力がゴジラよりはるかに脆弱な人造怪物に軽傷を負わせる程度なので頑丈さではゴジラにも引けを取らないキングギドラにはかすり傷1 つつけられない。とはいえキングギドラの右の首を怒らせる効果はあるようだ。

 

キングギドラの右の首は光線を当ててきた人造怪鳥を引力光線で粉砕した。生体兵器は粉々にして肥料やプランクトンの餌になった方がよいと判断した中央の首が左右の首に人造怪鳥の殲滅を許可したため、人造怪鳥は次々と引力光線の餌食になっていく。

 

「何かあの首が 3 つある化け物、群れを始末し始めたんだけど。これ俺達に味方してくれてるってことでいいよね?」

 

「何呑気なこと言ってるんだ!?あの化け物群れと一緒に建物もぶっ潰しているだろうが!うわーっ!」

 

確かに引力光線で人造怪鳥の群れと共にアトランティスの建物もことごとく破壊しているキングギドラがアトランティスの味方の筈が無い。

キングギドラを味方と信じた男も直後に引力光線を浴び自らの事実誤認に気付く前に全身が消し飛んだ。

 

「そなた達、神に念を送るのじゃ!皆の念をこの玉に込めれば神の火の玉は必ず悪しき多頭の者を滅する!」

「我々は先程からずっと念を送っております!ずっとです!」

 

シャーマン達の必死の祈りも虚しく、キングギドラの各首が吐く引力光線は火球を四散させ人造怪物の全身を爆砕した。人造怪物は自衛隊の通常兵器で大怪我する程度の耐久しかなく、数十回の核爆発に耐えるゴジラに痛手を負わせる引力光線の直撃に耐えられる筈も無いのだ。

 

人造怪物の爆砕と同時にシャーマンが天にかざしていた勾玉らしき物体も粉々に砕け散る。

 

「終わりじゃ、何もかも終わりじゃ。わらわの念が、神がこんなにも非力とは、無念!」

 

「もう十分です。貴方様は精一杯やりました。これ以上生き恥を晒してはなりません。潔く美しい最期を迎えましょう。」

 

「その通りじゃな。そなた達と共に最期を迎えることが出来て嬉しく思うぞ。」

 

人造怪物を始末し人造怪鳥を全滅させたキングギドラは足元に向け引力光線を吐く。

このアトランティス大陸は厳密には大陸ではなく大西洋に浮かぶ巨大な人工島であり、キングギドラはその人工島を浮かせている反重力装置を破壊したのである。

引力光線で真っ二つに割れたアトランティス大陸はキングギドラが発生させた暴風雨に伴う高潮に飲み込まれ、あっという間に沈没した。

 

地球のエネルギー「マナ」を多量に浪費し地球全体の自然の調和を乱す害悪、それが人造怪物の本質である。最初は人造怪物の殲滅に消極的だったキングギドラの左の首だが、人造怪物の本質が害悪であることを一目で見抜いた中央の首に説得され人造怪鳥もろとも殲滅する意思を固めていた。

ちなみに攻撃的な性格の右の首は最初から人造怪物の殲滅に大賛成だ。

 

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