巨神聖戦記 作:芹沢亀吉
アトランティス大陸を沈没させたキングギドラの前にゴジラが出現した。
不意を突かれたキングギドラは海中に引きずり込まれてそのままくんずほぐれつの大激闘となる。昨日のように遠距離からの撃ち合いでは自分が不利になることを学んだゴジラは、強引に接近戦に持ち込んだのである。
水中で仰向け状態のキングギドラは馬乗りになり攻撃してくるゴジラ相手に苦境に立たされている。地球最強の巨神は人工物に過ぎない人造怪鳥や人造怪物とは強さの次元が違う。人造怪鳥の群れも人造怪物も簡単に滅し短時間でアトランティス大陸を沈没させたキングギドラ相手に互角以上に戦えるのを踏まえると、ゴジラもまたアトランティス文明を簡単に滅ぼせる存在なのは間違いない。
ゴジラはキングギドラの左の首を喰いちぎろうと力一杯噛みついた。中央の首は左の首を救うため至近距離からゴジラに向け引力光線を吐く。引力光線の直撃で左の首から離れたゴジラが中央の首を睨んだ。途端にゴジラの背びれが青白く発光し始める。
キングギドラの右の首は中央の首を狙うゴジラの攻撃を阻止するため引力光線を吐いたものの、一瞬早くゴジラが吐いた放射熱線が中央の首を吹き飛ばす。直後に引力光線の直撃でゴジラが転倒し、その隙に体勢を立て直したキングギドラは飛翔を開始し海中から脱出した。
左の首は中央の首を吹き飛ばしたゴジラに激怒し、力みながら引力光線を吐いている。
怒りで破壊力が上昇したのかキングギドラの左右の首が吐く引力光線は昨日より高威力で、ゴジラの背びれを軽々と抉り取った。
悲鳴を上げたゴジラだが背びれを失い体内原子炉の制御が難しくなったのを逆手に取り、全身から体内放射を拡散し空中のキングギドラを吹き飛ばす。
だが無理な技を使って力尽きたのかそのまま海中に沈んでいった。
体内放射で空高く吹き飛ばされたキングギドラは途中で飛翔を開始し、そのまま大西洋北西にある大陸の沿岸に着地する。奇しくもこの時キングギドラが着地した沿岸こそ現在のヴァージニアビーチである。
キングギドラの左の首は吹き飛ばされた中央の首の付け根を悲しそうな目で眺め、右の首は中央の首を守れなかった自分の不甲斐なさを呪いたい気持ちで一杯だ。
突然キングギドラの中央の首の付け根がムクムク動き、傷口から半透明の羊膜で覆われた新たな首が生えてきた。
驚いた左右の首が羊膜を噛み破ると中から完全な形の中央の首が出てきて両目を開き咆哮する。実はキングギドラが再生能力を発揮したのは今回が初めてだ。
これまで使ったことのない再生能力を使わざるを得ないくらいゴジラは強敵だったのである。
「貴様!自分がやったことの重大さをわかっているのか!他には未開人しかいないこの星で我々が苦労して築き上げた偉大な文明を滅ぼしたのだぞ!我々が遺伝子工学の英知を結集させ誕生させた神々を皆殺しにした罪の重さを少しは考えろ!」
近くに漂着していたアトランティスの生存者達はキングギドラを罵倒するが、直後に全員引力光線の餌食となり消し飛んだ。
地球の生態系を破壊しかねない生体兵器を生み出した大罪を偉大な功績と思い込む愚劣な輩は死ぬまで反省しない。
人造怪物や人造怪鳥を神と言い張るのは、それらを生み出した自分達が地球で一番偉いと思い込む傲慢さの現れだ。
高度な遺伝子工学を確立して調子に乗り自然の摂理を無視した生体兵器開発を行った罪深きアトランティス文明への報いには文明自体の滅亡が相応しい。
同じ地球人を未開人と見下すのもアトランティスの人々の傲慢さの現れだ。そしてキングギドラとゴジラの激闘を描いた壁画がそうであるように、アトランティス以外の人々にもそれぞれ独自の文化や技能がある。自分達の愚劣さに気付かないままキングギドラに滅ぼされたアトランティスの人々は、高度な文明を確立すると愚かで傲慢になる人類の性質をそのまま体現していると言えるだろう。
元々キングギドラが地球に来たのは金星帝国の残党の捜索が目的だが、金星人が地球に来た形跡自体が見つからないためこれ以上地球にいても埒が明かないのは明白だ。その代わり地球環境を滅茶苦茶にしかねない人造怪物や人造怪鳥を生み出したアトランティス文明を完全に滅ぼすことが出来たのだから地球に来た意味自体はきちんとある。
キングギドラの各首は相談し今回のゴジラとの対決は痛み分けでいいと結論付けた。
地球の主である巨神の中でも最強の存在、ゴジラの強さを文字通り痛感し、また明確な競合相手が出来たことで更なる精進に励めるからである。再びゴジラと戦う日が来ることを楽しみにしながらキングギドラは地球を後にした。
10000 年前の死闘を回想し終えたゴジラの目の前にヴァージニアビーチがある。無論現在のヴァージニアビーチ沿岸にキングギドラの姿は無く、自衛隊の空爆による焼け野原が広がるのみだが、ゴジラの脳裏には沿岸に着地し中央の首を再生させたキングギドラの映像が浮かんでいる。
なおその時の戦いでキングギドラに抉り取られたゴジラの背びれも直後に再生し元の形状に戻っている。 突然ゴジラの背びれの上にとまっていたモスラの全身が金色の粒子と化した。
再びキングギドラと戦うことを決意したゴジラと融合し自身も共に戦うというモスラの決意の表れだ。金色の粒子を全身に浴びながら咆哮するゴジラの背びれは赤く光っている。